緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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Bullet110

 

 橘夫妻の協力もあって、ようやくバチカンに捕らえられた羽鳥の居場所を突き止めたオレとジャンヌは、早急な作戦立案の後にその救出へと乗り出す。

 羽鳥の捕らえられている教会は英理さんのくれた間取り図によれば、1階の大聖堂とその裏のいくつかの小部屋があり、さらに地下にも空間があるようで羽鳥はその地下の部屋の1つに幽閉されている。

 まずはそれを念頭に割と堂々と正面入り口から入って礼拝堂に乗り込む。

 変装はしたままだし、羽鳥さえ救出できれば変装も必要なくなるわけで、失敗した時の保険など自己暗示をかけたオレには無用。

 礼拝堂は英理さんの絵を見てだいたい把握していたが、クオリティー高かったなあの絵。見たまんまだ。

 

「礼拝堂に入った。人はいないが……」

 

『当然だ。今日は日曜ではないから礼拝は行われないし、昼時となれば人の足は食事へと向く。それでも一般人が来る可能性は捨て切れないから急いで地下に移動しろ』

 

 英理さん達の調べでは間取りこそ判明してはいたが、やはり人の有無や配置までは常に同じであるわけもないので実際に侵入しないとわからない。

 だから逐一でジャンヌには報告は入れるのだが、割と他人事で物を言うジャンヌにため息が出る。やるのはオレなんですよ……

 とはいえジャンヌのこれは今に始まったことではないので切り替えて礼拝堂の横にあった2つの扉の1つに近付き、音もなく開けて礼拝堂の裏へと移動。

 最悪ここで見つかっても間違えて入ったとジェスチャーしながらに引き返せるわけだが、先の廊下には人の気配もなく問題ないようだった。

 しかしこの廊下も割とシンプルで隠れる場所がないので、ジャンヌの用意した物を設置しつつ急いで地下へと続く階段へと向かって、監視カメラとかないかも一応の警戒はしたが、金目の物もほとんどない教会に盗みに入る輩もそういない証拠だな。それらは設置されていなかった。

 地下へと続く階段は螺旋構造で石造りと古めかしさがあり、その地下も石畳に石積みの壁と古い造りになっていて、どうやら上の教会部分は改修でもされてこっちは昔そのままといった感じらしい。そんなに古い建物な印象はなかったし。

 まぁ、いつからある教会なのかは今はあまり関係ないので、こっちもこっちでシンプルな構造なのは間取りでわかってたが、四角く1周できる廊下にその内側を4つの部屋で分けた地下は厄介。逃げるにしても階段が1つしかないからここを押さえられたら詰み。

 

「襲撃の可能性は考慮されてないっぽいな。そりゃ羽鳥を奪還しようとする存在を考慮するほどの警戒心がありゃあんなボロは出さん」

 

 とかなんとか考えながら角の階段から二手に分かれた廊下の両端までを見て、その範囲に誰もいないためにちょっと気が抜けそうになる。

 そもそも仲間がいる可能性を極端に消して形勢不利な状態でわざわざ血相変えたフリまでして逃走した羽鳥のやり方が上手すぎたわけだが。

 

『あまり悠長にするなよ。フローレンスのいる部屋は階段から1番遠い反対側の部屋だ。つまり廊下を回り込めば必ず誰かと出くわす』

 

「…………実際問題、羽鳥がどの程度の拘束を受けてるかも作戦には折り込まれてるわけだろ。最悪の場合は本当にヘルプに来るんだろうな?」

 

『任せておけ。その時は私がRPGでも撃ち込んで教会を攻撃する』

 

「冗談でもやめてくれ。生き埋めは御免だ」

 

 バチカンに対する残念評価をわざわざ言葉にしたのは当然、ジャンヌへの報告も含まれるからだが、これから先の作戦は羽鳥がどのレベルで拘束されてるかで決まると言っていい。

 レベル1から3までを定めてはいるが、3の場合。要は羽鳥がここから連れ出すのが不可能なレベルの場合は、ジャンヌの強襲と合わせて敵戦力の無力化を行使せざるを得ない。

 まぁそれは最悪のケース。オレには単分子振動刀があるからよっぽどの拘束具でもないとそんな事態にはなり得ないと思ってはいる。鉄枷だろうと真っ二つにできるからな。

 それでもロケットランチャーなんてぶっ放される可能性は避けたいので静かに廊下を進んで、奥の部屋に入れる扉のある廊下を端から覗き見ると、いた。見張りのシスターが1人だ。

 パッと見たところ戦闘能力は計りきれないが、超能力は今、瑠瑠粒子の濃度が濃いから極力使いたくないとジャンヌは言っていたので、あれが超能力者でもそこまで脅威ではない。

 

「まぁ、念には念をってな……」

 

 それでも遭遇戦の可能性はなくしたいし下手に騒がれるのも嫌な展開だ。

 だからオレは一旦引っ込んで履いていた靴を脱ぎ、石壁の隙間にクナイを挟んで、そのクナイに靴を引っかける。

 簡易の時限式トラップ? というか自重でクナイが外れるようにしただけだが、それが外れる前に急いで反対側へと移動し廊下の様子をうかがう。

 そうして数十秒くらい経ってからクナイが外れて靴が石畳に落ちれば、当然だが無駄に音が鳴る。不審な音に気付いたシスターはまぁここも当然ながら音のした方向を向いて警戒する。

 そこに間髪入れずにオレが強襲。靴も脱いでるので音もなく接近したオレはシスターが気付くより早く背後を取ってその口を押さえた上でその意識を刈り取る。

 

「第2段階クリア……っと……」

 

 意識のないシスターを壁に寄りかからせて座らせてから、ひと息つこうと思ったら、何やら羽鳥のいるはずの部屋から話し声が聞こえてきて、羽鳥の他にも誰かいることがわかり気配を殺しまずは靴を回収。戻ってきて扉に耳を澄ませると、どうやら中にはローレッタさんがいるようだった。

 イタリア語なので何の話をしてるかはわからないが、扉の形状から鍵が必要なのはわかり寝ているシスターの懐を探るとビンゴしたので、その鍵を開けて割と堂々と中へと入る。ローレッタさんは目が見えないからな。コソコソしても無言を通せば誰か知られることもない。

 それで鍵を開けて入った部屋には、木製の椅子に座らされて両足に鉄枷。背もたれの後ろで親指を同時に繋いで拘束するクッソ面倒臭いものをつけられた羽鳥が何故かシスターの格好でいて、その手前に背中を向けるローレッタさんがいるが、オレをシスターだと思ったのかイタリア語で話しかけてくるが無視する。わからんし。

 そんなローレッタさんを見てから羽鳥と目が合うと、だいぶ余裕そうな羽鳥はクスッと小さく笑うと英語を使ってローレッタさんへと話しかける。

 

「残念ながらシスターローレッタ。あなたとのおしゃべりもここまでのようです。地獄からの使者が来たので、一足先に行かせてもらいますよ。あなた方もいずれ来ることになる、地獄にね」

 

 誰が地獄からの使者だボケ。ここで帰ってやろうかおおう?

 マジで置いていこうかと考えたが、それをすると師団の今後に関わるのでキャンセルするも、それがわかってるだろう羽鳥の早く助けろという生意気な表情に腹が立つ。

 腹を立たせながら「誰ですかあなたは!?」と羽鳥の変化で察して英語で話しかけてきたローレッタさんだが、それにも応えずに横を抜けて羽鳥の足の拘束を単分子振動刀で壊すが、指の拘束は小さくて単分子振動刀では怖いのでピッキングで開ける。小さいから複雑な構造は出来ないのが欠点だな。

 それらの行動を1分たらずでやって自由になった羽鳥は、どうすることも出来ないローレッタさんの頬に優しく触れて耳元で「Arrivederci(さようなら)」とささやき部屋を出るが、その間にローレッタさんがしていたことも見逃していない。

 

「ずいぶん早かったね。あと3日はかかると思っていたんだけど」

 

「そうかよ……って、何してんだ。時間ないぞ」

 

 部屋を出てすぐに階段を目指していたのだが、余計なことを言いつつ途中の別の部屋の前で立ち止まった羽鳥は、シスターの格好にあるまじき豪快な蹴りで扉を蹴破ると、物置っぽいその部屋に入っていってしまい、それを出入り口から見ていると、拘束された時に没収された武器類を回収したかったらしい。

 

「愛着でもあるのか?」

 

「銃や衣服には特に拘りはないよ。ただ君にも見せたあれ。メスを腕から取り出すあれはサードに特注で作ってもらった先端科学兵装の1つでね。替えが利かないんだ……っと、あったあった」

 

 言いながらオレの質問に珍しくまともに答えた羽鳥は、本当にそれだけを見つけると物色をやめて出てくるので、状況をわかってはいるっぽい羽鳥にそれ以上は何も言わずに再び階段へと向かったのだが、やはりというかなんというか、ローレッタさんも異変に気付いてから懐に隠してた通信機能のある何かで事態を知らせていたため、シスター達が階段から降りてきてオレ達を見つけるや戦闘体勢に。

 

「ここより出してはなりませんよ!」

 

 そのシスター達の登場で足を止めたオレ達の後方から、壁伝いにローレッタさんもやって来て前方のシスター達に激を飛ばすので、もうやるしかない雰囲気。

 

「ジャンヌ、教会前で待機しててくれ」

 

『見つかったな? 了解した。そちらの音で勝手に判断するが構わんな』

 

「任せる」

 

 なので小声でジャンヌに報告をしたところで羽鳥が横から武器を求めてきて、仕方なくクナイを1本貸してやって、オレは徒手空拳で構える。

 

「相変わらず甘い」

 

「……女は苦手だ」

 

「なに、まともに相手してやることもないさ。私達はあの楽園を突破して外に出ればいいだけだ」

 

 オレの徒手空拳の構えを見てやはりツッコんできた羽鳥だが、わかってたから流しつつスカートをクナイで破き動きやすくした羽鳥と一緒にシスター達に突撃。

 狭い廊下での戦闘となるとまず怖いのは弓だが、幸い距離もないしでその弓兵はいなくて、しかし盾と剣のみで階段への道を塞ぐ陣形を取られる。

 これは厄介と思うのも一瞬でやることが何故か以心伝心したっぽい羽鳥とそれぞれで違うが同じ意図の動きをする。

 華奢なシスター達ならば盾があろうとそこまで堅い防御ということもないので、男のゴリ押しを実行に移すオレと、やっぱりそこは女の子な羽鳥は力は技術でカバーと言わんばかりの超低空タックルで仕掛けていく。

 当然そこにはシスターの剣が襲い来るが、オレはそれをあえて当たりに行って死の回避を発動。

 羽鳥はクナイを投げて上手い具合に剣の突き出せない姿勢を誘発し繰り出される前に対処していた。

 そんなオレ達のタックルを踏ん張って受けてはいたシスターだったが、タックルと同時にシスターの足をすくい上げる裏技まで使えばもう踏ん張れない。

 ドミノ倒しのように倒れたシスター達を避けて、なんとか残った2人も巧みな体捌きで廊下の方へ放って階段を突破。

 

「まさか保険を使うことになるとはな」

 

 しかし階段を突破しても第1関門に過ぎないため、見つかった時に使う予定だったものを階段を上り切る前に起動してその上の廊下でひと騒動を起こす。

 地下に行く前に仕掛けたのは煙玉をちょっと改良して噴射型にした花火みたいなやつだが、それをブラインドに人の目をすり抜ける算段。

 その思惑は……成功した、のだが、ちょっと分量を間違えたかな。煙すぎて見えない……

 

「君はバカなのか。そういえばバカだったねありがとうバカでサンキューバカ」

 

「貶し方がバカ一直線だなバカは。頭にルートは入ってるから問題ない……ってお前は話をしたいのかしたくないのか……」

 

 階段を上がって煙に咳ごむシスター達の声を聞きながら、周囲が見えずとも礼拝堂へは戻れるためバカバカ言う羽鳥の手を取って抜けようとしたら、こいつもこいつで連れてこられた時に把握していたのか迷うことなく礼拝堂への扉へ進んでいくので、抜け目ないなと思いつつそのあとに続く。

 逃げるように扉を開けて煙と共に礼拝堂へと躍り出たオレと羽鳥は、一直線に教会を走り出て、すでにちょっとした騒ぎが外に漏れてたっぽい人だかりを無視してパッパー! 盛大にクラクションを鳴らすジャンヌの車へと乗り込み、続々と教会から出てきたシスター達の追撃を免れる。

 

「やぁジャンヌ。こうして顔を合わせて話すのは久しぶりだね」

 

「お前と話すことなどない。それより口を開いていると舌を噛むぞ!」

 

 オレ達が乗り込んでからすぐに車を発進させて急加速するジャンヌの荒い運転で挨拶もろくにできなかった羽鳥は後部座席に慣性で座らされ、前に集中するジャンヌの代わりにオレ達が後ろの視界をカバーする。

 だいぶ法規制とか無視な運転で街を疾走するジャンヌだが、バチカンもバチカンでオレ達がリバティー・メイソンとの合流をする前に捕まえられればなんとかなると思ってるらしく割とすぐに追いついてきて、いくら信号やらを無視しても他の車を無視してまっすぐ街を抜けることはできないため、ジグザグと曲がってるうちに数で上回るバチカンが肉薄。

 

「ところで君達、街を抜けられたとしてどうするつもりだい? 彼女らは街を抜けても追いかけてくるだろうけど」

 

 そんな切羽詰まった状況で結構な嫌々具合でオレの制服に着替えていた羽鳥が聞きたくない事実を突きつけてくるので、オレもジャンヌも羽鳥を見はしないが苦い顔をする。

 

「別に考えなしじゃない。ただちょっとタイミングがあれなだけだ」

 

「街にいる間ならばバチカンも下手に手は加えてこない。一般人に危害が及ぶのは善良な市民に対する悪行だからな」

 

「ふむ、何かあるのはわかるけどね。しかしそれも時間の問題だよ。バチカンの追跡が街中ならばそれほど脅威ではないのは同意だが、我々はいま堂々と道交法違反をしている。当然……」

 

 と、オレ達の考えをちょっと理解したっぽい羽鳥が着替え終わってサイズの大きさを折って調整しながらに言い切ろうとしたその時。街の至るところからパトカーのサイレンが聞こえてくる。

 まぁそうなんですけどね。そうなるのはわかってたんですけど。

 こうして警察にまで追われるとなるとしんどいわけだ。

 下手に止まって身柄を押さえられてもバチカンが色々と手を加えてくるのは目に見えてるしな。

 

「京夜、これを頼む。運転しながらは無理だ」

 

 ジャンヌもどうにか止まらざるを得ない状況にならないように道をランダムに走ってはくれているが、そのジャンヌがこっちを見ずに羽鳥の携帯を渡してくるので、その意図がわかってるオレも何も言わずに携帯を開き着信していたメールを見て判断。

 

「羽鳥、降りるぞ。ジャンヌ、20分後にフェルウェ広場の橋の上だ」

 

「了解した。その前に捕まるな」

 

「おや、ジャンヌが私の心配をしてくれるなんてね」

 

「お前の心配などしていない。京夜の心配をしている」

 

「信頼ないなオレ……」

 

 そのメールを鑑みるに、1つにまとまって動いて取り囲まれるより分散した方が良いと思っての言葉だったが、返しがキツい。

 だが有無を言わせずにジャンヌが豪快なドリフトターンをして速度を1度殺して、そのターンの途中でオレと羽鳥は車を降りて走り去ったジャンヌを見送ることもなく路地裏へと入り込み現在地から目的地であるフェルウェ広場とやらの場所を特定。

 

「捕まってる間、暇だったので君の救出方法について色々考えてみたんだが」

 

「あっ?」

 

 路地裏に入ってすぐにワイヤーを使って建物の上に乗り移ったオレと羽鳥は、その屋根伝いに割と目立つようにして走ってバチカンの目を引く。

 その間に不思議と楽しそうな羽鳥が口を開くので、周囲への警戒をオレ任せなそれにはイラッとしつつ反応してしまう。

 

「まず最初に君が私を見つけられない可能性が40%あったことは許せ。悪気はない」

 

「悪気がないなら笑顔で言うな」

 

「ハハッ。まぁその確率を抜けて助けに来ても、まず間違いなくこの街を出る前に捕まってたと思ってもいた」

 

「それは同意してやる。ジャンヌの頭がなきゃ微妙だった」

 

「だからあのまま裏切り者として師団に差し出される方が生存率は高かったわけなんだけど、今日になってシスターローレッタが私を戦役が終わるまで監禁すると言い出すから困った困った」

 

「ああ、その話をさっきしてたのか」

 

 この話に何か意味があるのかは不明だが、羽鳥なりにテンションの上がった自分をクールダウンしてる節があったので適当に付き合いつつ、行き止まりから下に降りて1度大通りに入って人に紛れて路地裏へ。

 

「そこにまぁタイミング良く君が来るものだから笑ってしまったよ。笑うしかないだろ。絶望を知らせに来たシスターローレッタの後ろから、わずかながらの希望を持ってきた君が来たらさ」

 

「そこは素直に喜べよ。ズレてるぞ」

 

「それはそうなんだろうけどね。私はなにぶん、そういうのは苦手なんだ」

 

 ああ、つまり理解しろバカってことか。こいつなりに感謝の言葉を言いたかったわけね。

 そういえば羽鳥が人に感謝したりするところはあんまり見なかったな。あの時を除いて。

 そんな羽鳥の一面にちょっと笑うと、あからさまな舌打ちをした羽鳥だがそれ以上は何も言わずに走り続ける。

 そうして路地裏から再び開けた通りに出る瞬間に羽鳥を見ていたオレは、ピリッ、と肌を打つ感覚を覚えて、考えるより先に羽鳥の腕を引いて路地裏に引っ込む。死の予感。ここで来るのかよ。

 するとその羽鳥の進む軌道を横から刺すような弾丸が地面に弾痕を残して着弾。狙撃だ。

 

「あっぶな……」

 

「君は本当に不思議な男だね……」

 

 その狙撃に2人して気付いていなかったために少し思考が停止してしまったが、危機的状況なほど冷静になるオレと羽鳥はすぐにそれを処理して弾道から狙撃手のいる場所をおおかた把握し、羽鳥の制服の上着を盾に並んで通りを一気に通過。

 そこからはノンストップで通りと路地裏を行ったり来たりして目的地であるフェルウェ広場のある橋の近くまでなんとか辿り着くと、別のルートからジャンヌがデュランダルを差して合流。

 途中で車は破棄せざるを得なかったとかで足を失ったが、約束の20分まであと3分。

 時間通りになるわけもないと悲観論で備えつつもフェルウェ広場の橋の上にまで来たオレ達は、その向こう側から来た警察に道を阻まれ、後ろからはバチカンのシスター達が退路を塞ぎ年貢の納め時といったところ。

 

「ここまでですね」

 

 逃走劇の終結と共にシスター達の中からローレッタさんが姿を現してそんなことを言ってくるが、誰もそれには応えない。

 何故なら、もう終わったのだ。この勝負、オレ達の勝ちだ。

 それを確信するように警察の側でガヤガヤとちょっとした混乱が見られて、続いてその奥から派手なポルシェが橋にまで侵入してきてオレ達の前でドリフトしながら止まって、そこから2人の人物が降りてバチカンの人達を正面に捉えて口を開いた。

 

「そこまでだ、バチカンよ」

 

「君達のやり方はお見通しだよ。そしてチェックメイトだ」

 

 その人物達は宣戦会議の時のリバティー・メイソンの使者とワトソン。

 つまりオレ達が呼んでいた最後の切り札。頼りになる味方だったわけだ。


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