緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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Bullet109

 魔女連隊とコントのような攻防をして拉致されそうになっていたジャンヌを拾って、眷属の起こした騒ぎによって混沌としたブリュッセルに潜んで一時避難した師団のワトソン達を尾行して張り込みしていたところ、逃げるように隠れ家から出ていったキンジと、それを追うように出てきたワトソン達を見て方針を決定。

 ワトソン、メーヤさんと一緒に出てきた人の中に羽鳥とコンタクトしたバチカンの祓魔司教、ローレッタさんがいて、各々で携帯を取り出して逃げたっぽいキンジを捕捉するための包囲網を張ってるだろうワトソン達をただ見守るように十字を切って天に祈りを捧げている。

 

「京夜、運転を代わってくれ」

 

 このあとどう動くかを注視していたオレを余所に車を物色していたジャンヌは、何か見つけたのか被っていたカツラを別のものに被り直してそんなことを言うので首を傾げる。

 

「あまりツッコむことではないとは思ったが、お前は免許を持ってないだろ」

 

「今さらだなそれ……もう何十キロ走ったと思ってる」

 

「走行距離などさして問題ではない。だが代わった方が良いぞ。それともお前がこうなるか?」

 

 何を今さら無免許を指摘するのかと思ったのだが、言いながらにオレに免許証を見せてきたジャンヌが持つそれには、明らかに女性の顔写真で登録――おそらくは偽物だろう――がされていたので苦い顔をする。

 

「代わるのはいいが、何でこのタイミングなんだよ」

 

「見るに遠山が悪い方向で逃走してしまっている。さらに先刻の眷属による襲撃によって街の警戒は引き上げられてしまってるだろう。この2つが重なればまず間違いなく検問が敷かれる。その時になって身元不明のお前が検問に引っかかるのは目に見えている」

 

 ぐっ……こういう時にジャンヌに遅れを取ると悔しい。

 だが天然ジャンヌさんがリーダーに相応しい能力を持ってることを改めて確認できてちょっと安心。最近はポンコツ具合が目立ってたから仕方ないんだ。

 

「了解。緊急時だと頼りになる」

 

「それでは私が普段は頼りにならないように聞こえるのだが?」

 

「そう言ったつもりだが?」

 

 そんなジャンヌでも先を見越して動けているのに、オレがそれを出来ていなかったのは失敗だったので、妙に張り切りすぎていた緊張の糸を緩めて冗談っぽくジャンヌに余計なことを言ってシートを倒し後部座席にスライドすると、頬を膨らませて運転席から抜け切る前のオレの足を持ち上げてバランスを崩して後部座席に雪崩れ込む形にされ、空いた運転席にジャンヌはシートを戻しつつスライド移動を完了させる。

 こういう反応も、有りかもしれん。可愛い。

 

「……一応の確認なんだが、ジャンヌの荷物とかは回収しなくていいのか」

 

 からかったのはちょっと反省しつつ、ジャンヌの空けた助手席に座り直したオレは、可哀想だが洗濯物しかないジャンヌの貧相な装備を危惧してそんな質問をすると、うむと少し思考したジャンヌは判断に迷いを生じさせる。

 

「回収、とは言うが、あのホテルは今は騒ぎの中心。誰にも悟られずに中に入るのはまず無理だろう。せめてデュランダルは懐に収めておきたいところだが……」

 

「……ならオレが回収してくる。部屋の番号教えろ。あと羽鳥の携帯持っておけ」

 

「それはいいのだが……そばにいると言っていきなり離れようとするのは私に対する嫌がらせか?」

 

「さっきの仕返しみたいなことするなよ。すぐ戻ってくるから。約束する」

 

 その迷いは至極当然のものだったので、自分では出来ないと判断していたジャンヌに代わってオレがやると言えば、オレなら出来ると思ったのか反論もなく可愛い仕返しがきたので、ちょっと困った顔をしつつ指切りしてから車を降りて元来た道を戻ってさっきのホテルへと足を運ぶ。

 当たり前ながら時間が経過したとはいえ、まだ人や警察や消防で落ち着きのない現場は相当に賑やかで多少変な行動をしていても意識が散漫になってる今ならすり抜けられそうだ。

 その現場の雰囲気を感じてからジャンヌに教えられた部屋の位置を外から確認。今なら客も避難済みだろうし、壁もぶっ壊されてるから窓の1つや2つぶっ壊れてても誰も気にしないだろ。

 というわけで中からは100%無理なので、壁をよじ登ってジャンヌのいた部屋の窓までさっさと到達。

 ミズチがないのでちょっと面倒だったが、便利さに慣れると人間ダメになるって言うし、ありがたさを噛み締める良い機会と割り切ってそこから便利品その2の単分子振動刀で窓の枠を壊して枠ごと中へと侵入。

 下手に音を立てると目撃者が出る可能性が上がるしな。ガラスの割れる音ってのは想像するよりうるさい。

 

「さて、デュランダルと……適当に持っていけるもの……」

 

 とりあえず中には入れたのですぐに見つかったデュランダルをまず回収しつつ、置きっぱなしだったジャンヌの荷物らしきものを発見したので一応、中身を確認。

 よし、この下着のサイズはジャンヌだろう。相部屋はメーヤさんだって言ってたし間違いない!

 とかなんとか失礼なことを思いつつも確認のために、確認のために! やむなく取り出した下着を戻しつつ、パスポートやらもあったのでそれらをバッグに詰めて撤収。デュランダルが非常に邪魔だが、持って帰らないと人間樹氷にされるので外で持っても怪しまれないようにシーツでくるんで肩に担き、それにバッグを引っかけてホテルを脱出。

 十分な警戒はしつつで携帯を取り出して歩きながらジャンヌに連絡すると、向こうも移動をしそうな雰囲気らしいので通話を切って全力で車まで戻る。割と重労働だなこれ……

 そうして全力でジャンヌの乗る車に戻ったオレがちょっと乱れた呼吸を整えつつ、持ってきたデュランダルとバッグを後部座席に放ると、中を見たかと恥ずかしそうに問うジャンヌにグーサインをして頭を殴られるコントをやったら、丁度よく隠れ家の前に車が停まり、それを待っていたっぽいローレッタさんがメーヤさんやワトソンに見送られて発進。

 

「では行くとするか、京夜」

 

「怪しまれないようにな」

 

 どうにかローレッタさんの移動前にやれることはやって車を発進させたオレ達は、夜中ということもあってかなり警戒して遠巻きにローレッタさんの乗る車を追跡。

 ブリュッセルを北に抜けるような道のりを行く車は、やはりジャンヌが睨んだ通りにいくつも敷かれていた検問の1つで一時停止。

 向こうは別に引っかかるようなこともないだろうが、こっちはヒヤヒヤ。何か1つでも不審な物や行動があれば足止め。最悪検挙の流れもあり得る。

 

「そう緊張するな。ここを抜ければ楽なのだ」

 

「そりゃ理屈ではな」

 

 その検問を待つ間に表情が強張っていたのか、オレにリラックスした状態のジャンヌが話しかけてくれたので、ありがたく思いつつ深呼吸をして力を抜く。

 だがこれも言うは易しである。

 ここが日本ならオレもここまで緊張はしない。だが右も左もわからない海外でとなると不安は尽きない。

 一応は検問をスムーズに抜けるための打ち合わせはしておいたので、オレ達の番になる少し前に毛布を羽織ってオレは眠ってる体を装い、そのまま検問に突入。

 ベルギーの常用語はフランス語かオランダ語なのだが、地区などによってどちら一方とか、一部ではドイツ語が使われるが、首都ブリュッセルでは問題はないらしく、フランス語で流暢に話すジャンヌは打ち合わせ通りに寝ているオレの説明を「不眠症なので睡眠導入剤で寝ている」と話して深い言及を避ける形で切り抜けようとする。

 一応は武偵という旨もあえて伝えることで積んでいるデュランダルなどの武器も怪しまれないようにはできたが、偽造免許各種を積んでた羽鳥に感謝だぞこれ。

 それらの偽造された身分を見せながら余裕の表情をしてるだろうジャンヌは、少し先を行ってしまったローレッタさん達を見失う可能性がある中でよくやってくれてる。

 そのジャンヌの度胸が実を結び、検問もすんなりオレ達を通してくれて大助かり。拘束時間にして3分もかかってないから上出来すぎる。

 

「ロスした時間を取り戻す。少し荒くなるが許せ」

 

「飛ばしすぎると変なところで捕まるから、気を付けろよ」

 

 検問を抜けてブリュッセルを北に走って抜けるとすぐにジャンヌはギアを上げて了承もなしにスピードを上げて離された車に追い付こうとするのだが、夜にこのスピードはちょっと怖い。まぁ香港でしたあのカーチェイスよりは全然マシだがな。

 そんな荒さのあるジャンヌの運転でものの数分でローレッタさんの乗る車に追い付き、視界に捉えたところで尾行に切り替えたが、どうやらこのままベルギーを越えてその北にあるオランダに入るような気配がある。

 この進路から到達場所が本土に当たるイタリア国内のバチカンはないので、もしもバチカンに羽鳥がいた場合は大きなロスになるが、戦役においてバチカンから一任されてそうなローレッタさんの目の届く範囲に羽鳥がいる可能性は高い。

 まぁそう信じるしか今はないのだが、そこに辿り着くと楽観しつつも、橘夫妻との合流の時間も逆算してパリに戻れる算段もしておく。と言ってももうオランダくらいまでしか行けないな。頼むからオランダより北に行かないでくれ。

 そんな願いが通じたかはわからないが、ベルギーからオランダ国内に入ってからは東に進路を取ることもなく――そっち方面に行くとドイツとかに行く可能性があった――北上を続けて、3時間ほどノンストップで辿り着いたのはオランダで3本指くらいに入るらしい都市、デン・ハーグ。

 なんでも首都とされるアムステルダムよりも重要な機関があるとかで事実上はここがオランダの首都と言っても差し支えないとかなんとかのジャンヌのウンチクが入ったが、そのデン・ハーグの中にあった教会の1つに入っていったローレッタさんは、その夜はそのまま出てくることもなかったので、オレ達も交代で睡眠を取って夜通しで張り込みをするのだった。

 いやぁ、羽鳥といた時はこんな睡眠が出来なかったから非常に、非常に楽だね。

 

「…………人の寝顔をまじまじ見る趣味はないが、これはこれで独占欲みたいのが湧く気持ちもわからんでもない……」

 

 翌朝。

 前日にキンジの救出作戦とかで昼夜が逆転して深夜帯に起きていたジャンヌと交代して数時間。

 動きもこれといってないので何気なく静かな寝息をたてるジャンヌの顔を見ていたら、なんだか変なことを考えてしまって雑念を払うように頭を振る。これもそれもジャンヌが美人で可愛いのが悪いんだ。こういう時は羽鳥が隣の方が余計なことを考えなくて良い。

 などとジャンヌと羽鳥を比較して意識を別のところへ持っていきつつで買い込んでいた食料に手をつけようとしたところで、ふとバックミラーに目が行きそれが示す後方に直接で目を向けると、なんかいた。

 

「…………すっげぇ……」

 

 その人はパートナーであるドーベルマンを隣に座らせて、その首から繋がったリードを持ったままオレが気づいたのに気づいて笑顔で手を振っていたが、それよりも何よりもいくつかの幸運でここまで来たオレ達とは違い、完全なる自力でここまで来ただろう英理さん達の実力を肌で感じて鳥肌が立ってしまった。

 

「まぁまぁ、京夜さんったらまたこんな綺麗な女の子を連れて、悪い人ねぇ」

 

「またそうやってからかうんですか……」

 

「嘘だ……この人が橘の母親だと!? 若いにもほどがある……」

 

 とりあえず合流の時を待たずして会えた英理さんが、こっちよりも大きい自分達の車に来るように示したので、寝ぼけたジャンヌを連れてそちらに移動しての第一声からのやり取りがこれである。

 そういえばジャンヌが小鳥の両親に会うのは初めてだったな、と他人事のように思いつつ現実にうちひしがれるジャンヌを放っておき、ここに2人が来ているという事実からの本題へと切り出す。

 

「英理さんと吉鷹さんがこちらにいるということは、ここ、デン・ハーグに羽鳥はいるんですか?」

 

「それはどうでしょうか。私達もこれからそちらの方を確認するところでしたので」

 

「……ん? 京夜、お前もしかしてこの2人にフローレンスを探させていたのか」

 

「ああ、言ってなかったっけ」

 

「そうならそうとちゃんと報告をだな……と言っても今さらか……お前はそういうやつだしな……」

 

「そういう諦められ方は嫌なんだが」

 

 オレとジャンヌがそんなくだらない言い合いをしていたら、それが面白かったのか英理さんがクスクスと笑うので2人して子供みたいなことをしたことを恥ずかしく思ってやめ、話を羽鳥捜索の件に戻す。

 

「これからってことは、英理さんと吉鷹さんがこちらに来たのは……」

 

「ついさっきですよ。ですから手がかりを追った先に京夜さんがいたので私達が驚いたくらいです。これでは私達はお役御免でしょうか?」

 

「いえそんなことは。オレ達もまだあそこに羽鳥がいるかどうか確かめられていないですから」

 

 どうやら英理さん達もデン・ハーグに来たのはついさっきのようで、捜査状況はオレ達と大差ないことがわかるが、お役御免とか冗談ではない。

 オレ達では正直なところ、ここからどうやって内部を探るか綿密に計画を練る段階にあったが、橘の能力を鑑みればそうしたオレ達の段階を吹っ飛ばせるだけの成果が得られるのは確実だ。

 

「ではここからは私達が頑張っちゃいましょうか。吉鷹さん、出番ですよ」

 

「わかってる。お前らは車で待ってろ。余計なことされると気が散る」

 

「まぁ。じゃあ私もお留守番してますね。ジャンヌちゃんと京夜さんの取り合いをして遊びたいので」

 

「フッ、残念だな橘母。すでに京夜は私の所有物だ。なので取り合うも何も京夜に手を出すのは略奪以外の何物でもな……って話を聞いてくれ!」

 

 なのでさっそく吉鷹さんが始動したのだが、吉鷹さんの言葉がオレとジャンヌだけを指したのは明白なのに英理さんはふざけてオレの腕に抱きつき自分の方に寄せ、天然さんは真に受けで酷い有り様。

 

「はぁ……英理、頼むからそいつといる時に生き生きと悪ノリするのはやめてくれ……」

 

「あら、吉鷹さんも段々と反応が薄く。なんだか寂しいです」

 

 おふざけが過ぎる英理さんにいい加減リアクションが薄くなって冷静にツッコむ吉鷹さんにオレも賛同するようにやんわり腕から英理さんを離すと、英理さんも本当に寂しそうな表情をしてから切り替えるようにスケッチブックなんかを取り出してオレ達と一緒に車を降りると、吉鷹さんと一緒に例の教会へと入っていってしまい、取り残されたオレとジャンヌは自分達の車に戻って2人の成果を待つことになる。

 

「お前は人妻好みなのか」

 

「羽鳥にも言われたが、断固として否定させてもらう。英理さんは素敵だとは思うが」

 

 その待機中にちょっと機嫌が悪くなったジャンヌが爆弾を投下してきたので、冷静に否定しつつも人として嫌いではないと言ってはおくのだが、それが余計だったのか「京夜はやはり年上が好きか」とぶすぅ。頬を膨らませてそっぽを向いて呟かれてしまった。それは否定しないが色々と違う。

 それからオレがジャンヌのご機嫌取りに勤しみ、日本に帰ったらデート第2弾の決行を約束させられてようやく終息し、たっぷり1時間ほどかけて教会から出てきた英理さんと吉鷹さんは、オレ達の車の横に来て窓から持っていたスケッチブックに何かを描いた1枚を渡してくれる。

 

「これは……凄いな」

 

 その描かれたものを横から顔を寄せて覗いてきたジャンヌは感嘆し、オレも距離感を失ったジャンヌの密着に半分ほど意識がいったがその絵には驚く。

 そのスケッチブックには教会の間取りの詳細を記した図があって、羽鳥を示すのだろう星マークまでしっかりと記してあったのだ。

 

「怪しまれませんでしたか?」

 

「フフッ。これでも絵は得意なんですよ?」

 

 しかしこんな堂々と間取りを調べて怪しまれなかったのかと思うものの、英理さんはスケッチブックに残していた絵を開いて見せて、そこに描いた礼拝堂の見事な風景画に2人して目が飛び出す。う、上手ぇ……鉛筆のみだが、上手すぎて涙が出てくる……

 

「それでは京夜さん。予定とは違いましたが、これにて私達はお役御免ということでよろしいですか?」

 

「……はい。これ以上ないくらいに。報酬の方は羽鳥と一緒に後日必ず」

 

「で・す・か・ら。報酬は小鳥のお婿さ……」

 

「言い値で構いませんので! ありがとうございました!」

 

 特技のありすぎな英理さんにはもう何が出来ても驚かないことを心に誓いつつ、パリでの合流を省いて依頼完了でいいかの確認をしてきた英理さんに、これ以上の成果があるかといった言葉で返しつつ、まだ未支払いの羽鳥と一緒に報酬を払う約束をするも、またそんな冗談を言いかけるので顔を寄せてきた英理さんを押し返して窓を閉めるが、最後に投げキッスをして吉鷹さんの待つ車に戻っていった。

 

「婿? なんだ京夜。お前は橘と結婚するのか。理子が泣くぞ?」

 

「…………英理さんが勝手に言ってることだから……真に受けるなド天然……」

 

 その車が走り去るのをバックミラー越しに見送ってから、またも天然さんが言葉をそのまま受け取るので殴りたくなるが、なんとか毒を吐く程度に留めてやった。

 それでも天然さんは自分が天然さんなのを認めずにプンスカ怒るので必殺、話題逸らしで超強引に話を羽鳥奪還の方に切り替えてやる。

 

「とにかく、これで羽鳥があそこにいることは判明したんだ。あとはどうやって羽鳥を奪還するかだが」

 

「ん、天然かどうかはあとでたっぷり議論する必要はあるが、それは任せておけ。私の本領といったところだ。ここまで内部の詳細があり、ご丁寧に扉の施錠の有無まで調べてあるのだから、成功率はかなり上げられるだろう。少し集中するから、京夜は装備を整えておけ」

 

「ジャンヌはサポートだけか?」

 

「残念ながらな。私では超能力者に悟られる可能性が高い。超能力者同士はある程度で互いに存在を感知できるものだからな。瑠瑠粒子が濃いのもあるし、私が乗り込むリスクは負うべきではない」

 

 完全に話題逸らしが成功したとは言えなかったが、とにかく話を進めはしたのでやる気モードに入ったジャンヌの指示でオレも準備を開始。

 超能力に関しては確かにそういうものなんだろうと思うので、それを考慮して作戦を考え始めたジャンヌを邪魔しないように、一応は教会の張り込みも再開させておく。これで侵入して入れ違いになってたとかだと笑い話にもならないからな。

 

「…………以上だ。全部頭に入ったな?」

 

「不確定要素がいくつかあるが、それ以外は問題ない。期待には応えるよ」

 

「応えてもらわねば困る。これは京夜、お前の実力を過大評価して作成したのだからな。もしかしたら実力以上のものが必要かもしれん」

 

 それからたっぷり2時間もかけて練られた作戦を伝えられたオレは、インカムを装備しつつ決行前に会話をするが、過大評価前提ってどうなんだよ……

 とは考えたが、作戦を聞いてやれそうと思わされてる辺りでもうジャンヌにノセられてるなオレ。

 それに期待の眼差しを向けるジャンヌの笑顔にもう、オレはこう返すしかないのだ。

 

「やるさ。リーダーの期待に応えるのがオレの役目だろ」

 

 そうやってカッコつけて車を降りたオレは、自己暗示に近いそれを自身にかけてこの作戦の成功のイメージを固めて教会へと歩み出した。

 待ってろよ、羽鳥。いま助けてやるから。


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