緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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Bullet107

 ワトソンとの密談から一夜明け、ブリュッセルにとりあえず身を置いて食事をしつつここからの具体的なアクションについてを考える。

 まずバチカンに捕まってしまっただろう羽鳥がスパイとしてでっち上げられて師団に差し出されるのはほぼ間違いない。

 バチカンとしてはその証拠をどうするかで悩みそうなところだが、遠からずそれは実行に移され、それはおそらく欧州戦線のキンジやワトソン、メーヤさんなどの代表戦士が揃ってる場で行われる。

 ならオレはそのタイミングを逃さないためにワトソン達をマークしておくのがベスト。

 だがそこにメーヤさんという不安要素が加わると厳しいわけだ。

 強化幸運がどういった形で師団に進展をもたらすかは本人にもわからないそんな感じの能力だけに、オレの存在が表に出てしまう可能性も十分にあり得てしまう。

 比較的に自由な身のはずが案外やれることが少ない不自由さを感じつつ食事を終えて車へと戻るが、携帯はGPSが働くから電源は落としてしまっている。

 これ以上誰かと接触するのは危険だし、日本にいるアリア達に知らせたところで連携は取りにくいしフットワークが悪すぎる。

 とにかく明確なアクションが起こせないうちはワトソン達を監視する方向で決めてホテルを張り込んでいたわけだが、ジャンヌとメーヤさんがいつ来るかもわからないのでちょっと車内を物色してみる。

 羽鳥なら電池の他にも何かを残してるかもと思っての行動だったが、さすがにこれまでの行動だけでも結構な出費だったので監視用の機材程度しか積まれていなかった。

 

「バチカンが動くのをただ待つしかない、か……」

 

 羽鳥への期待のし過ぎを反省しながら運転席に収まり、何も出来ない自分のいたらなさにうちひしがれて天を仰ぐ。

 しかしそこでふと、何気ないが思い出したことがあったので懐から携帯を取り出してそれを見る。

 オレのじゃない。羽鳥の携帯だ。

 そして昨夜、羽鳥はこの車に携帯の電池を2つとも置いていった。そこに意味があるかもしれないなら、この携帯が何かを切り開く可能性が。

 そんな思いと共に携帯に電池をはめ込んで起動させてみると、履歴に唯一あった『橘夫妻』という分かりやすい残し方のそれを見て即座にリダイヤルする。

 

『京夜さんですね?』

 

 それでほとんどノータイムで繋がった向こうからは全てをわかってそうな英理さんが開口一番でそう確認してきた。相変わらずの推理力。

 

「オレから羽鳥の携帯で連絡があるとわかってたんですね」

 

『いえ、私は推理などしてませんよ。ただ数日中にもしかしたら自分の携帯から京夜さんが連絡してくるかもとフローレンスちゃんが言っていたので。あとはフローレンスちゃんとの契約はこちらから後日連絡することで完了になりますし、貰った連絡先の番号からでしたから、フローレンスちゃんからという可能性は省いた結果です』

 

「ここも折り込み済みなのか……ホントどこまでオレと見えてる世界が違うのか……」

 

『誘導の上手い方なんですね、フローレンスちゃんは。お嫁さんにしたら尻に敷かれちゃいますよ?』

 

「それは御免被りたいですが、何気に羽鳥が女なのをわかってる英理さんも凄いんですけどね」

 

『フフッ。言ったでしょ、目は良いって』

 

 携帯の履歴の残し方からそんな気はしていたが、こうして橘夫妻と再び繋げたのは確かな進展だ。

 

「動かされてるってのは癪だが、やるしかないならやってやる。英理さん、今からご依頼をしても大丈夫でしょうか」

 

『ちょうど今、吉鷹さんが依頼を片付けてきてくれましたから問題ありませんよ。直接会える距離にいれば合流しましょうか』

 

「今はブリュッセルです」

 

『私達はリヨンにいますので、またパリで合流しましょうか。時間は今夜の6時。場所はシャン・ド・マルス公園でどうでしょう』

 

「問題ありません。ではよろしくお願いします」

 

 どこまで羽鳥が予想して橘夫妻と繋げたかはわからないが、オレがしたくても出来なさそうだったことを可能にしてくれる存在と引き合わせてくれたことには感謝しないといけないな。

 そこからワトソン達の監視という進展するかもわからないことをやめて車を走らせたオレは、無理矢理にでも状況を進展させる強行策を実行するために橘夫妻との合流をしていった。

 ブリュッセルには半日といることもなく離れて、元来た道を走ってパリへと辿り着くものの、約束の6時までは3時間程度余裕があったので、一度合流場所のシャン・ド・マルス公園を下見しておく。

 シャン・ド・マルス公園は北西にエッフェル塔。南東に陸軍の士官学校を見ることの出来る緑地公園だ。

 割と大きな公園ではあるが、中心部に分かりやすいジャック・リュフ広場があるので、そこにいれば合流は容易いだろう。

 あとは昨夜のバスティーユ広場での騒ぎもあるので羽鳥のことでも載ってないかと新聞を読もうとするが、やっぱりフランス語だから読めん。この辺の言語統制はフランスでは色々とあるとかなんとか聞いたことはあるが、英語くらいはどうにかしてくれ。

 それでもないよりはあった方が良いかもと思って新聞は購入しつつでちょっとした確認のために最初にチェックインしていたホテルの部屋へと戻ってみる。

 男と女が行き交う不思議な部屋でもはやフロントでは疑惑しかなかったが、そこには一応オレの荷物があるので戻ってはみたが、誰かが来た形跡はない。

 リバティー・メイソンもバチカンもオレの動きを監視していたわけでもないのかもだが、いつまでも私物を置きっぱはあれなのでさっさと畳んでチェックアウトし、ちょうど良い頃合いになりそうなので橘夫妻との合流場所であるシャン・ド・マルス公園へと車を走らせていった。

 広いパリを行ったり来たりして微妙に疲れてしまったが、そんなのはこの2人を相手取るよりよっぽど楽なもの。

 何の障害もなく合流した橘夫妻は、予想通りジャック・リュフ広場で仲良さそうに会話をしていて、そこにオレが近づけば英理さんは年甲斐もなくはしゃいで歓迎し、吉鷹さんは明らかに不機嫌オーラを放出する。

 

「昨日の今日ですし、挨拶はほどほどで食事をしながらお仕事の話をしましょうか」

 

「こいつと同席とか胸糞悪いが、仕事と割り切ってやる」

 

「それはどうも……」

 

 合流して早々に面倒な絡みがあるかと思ったが、依頼人としての立場を尊重してか2人とも真面目な感じが少しあり、おふざけもなしで移動を促してくるが、雰囲気自体はいつも通りだ。

 その辺はやっぱり大人な橘夫妻の移動に合わせて入ったお店は個室もある日本食のお店で、有名な料理評価で2つ星をいただいてる本格店のようだった。

 そこで適当な注文をしつつ個室ということもあるので周りを気にせずに会話をするが、何故かいきなり英理さんは英語での会話を促してきたので一応それに合わせてオレもつたない英語で応じる。

 

「それで依頼というのは?」

 

「実は羽……」

 

 何故か英語の英理さんという疑問を解決しないままに話を切り出したオレが羽鳥の名前を言いかけたところで口元に人差し指を持っていった英理さんによってようやく英語の意味を理解する。

 個室だからと油断は禁物。

 オレが誰か。依頼がどんなものかをほんの少しでも情報漏洩させないために万国共通の英語にし、人物名や地名を伏せた話をしなければならなかったのだ。

 その意図に早々に気付いてすみませんとアイコンタクトすると、笑顔で続きを促されたので改めて言葉を選んで依頼内容を話す。

 

「あるものを探してほしいんです。突然私のところから消えてしまったため、探そうにも手詰まりになっていて、どうしようかと思っていたところであなた方を頼りました」

 

 話しながら個室にあった紙とペンで「羽鳥を探してほしい」とダイレクトに書いてそれを渡し、どういった依頼かはすぐに伝わってホッとするも、英語はいまいちわかってなさそうな吉鷹さんにメモを渡しつつ夫婦で無言の意思疏通をすると、返事を待つオレに言葉を返してきた。

 

「依頼についてはもう少し手がかりがなければ私達としても行動を起こせません。何か少しでもいいですから手がかりを」

 

 そうして話しながら同じ紙に書いて渡された内容には「承りました」とあり、言葉とは裏腹の即決なためそこに意味があるとすれば、この場でのオレの返答は……

 

「…………すみません。何ぶん、本当に急であったため何ひとつ手がかりは……」

 

「そうですか。それでは私達でもどうすることも出来ないと思いますので、このご依頼はお引き受けできません。ですがもし、何か1つでも手がかりがあれば、私達はそこから必ずや依頼人の探し物を見つけて差し上げますことを断言します」

 

 会話の中では交渉決裂の形にしつつ、筆談で内容の確認をするオレと英理さんは、1枚の紙にびっしりとメモを書き記す。

 あまり何枚も紙を取ると筆談してましたの証拠になるからだが、もう書くスペースがないってくらい書いたな。

 一応メモには『昨夜』『バスティーユ広場』『騒動』などの手がかりと事前に買っていた新聞を渡しておく。

 オレは読めないが英理さんは確かマルチリンガルでフランス語も嗜んでるから買っておいて良かった。

 

「依頼はお引き受けできませんが、せっかくの食事の場ですし、お食事だけでもご一緒しましょう」

 

「はい。喜んで」

 

 それらの事を終えてから最後に橘夫妻のやり方なのか、後日の合流場所と時間を指定したメモを渡されて会話も終了。

 そこからは普通に食事をして、店を出てからは早速の別行動を開始。とはならず、今日はもう英気を養う方針とかで別れてから別々のルートで同じホテルへと宿泊。

 事前に部屋も2つ取ってあったとかでオレもすんなりチェックインできたのは良いのだが、数日ぶりのベッドとあって疲れは取れる時に取ろうとシャワーを浴びてさっさと寝ようとしたところ、完全にオフの状態の英理さんが持参してたのだろう薄手の浴衣で来訪。

 アホかってほど色気ムンムンの英理さんの浴衣姿は目に毒で、本当に一児の母親なのかと疑うが、そんなオレの動揺が伝わったのかクスクスと嬉しそうに笑った英理さんはベッドに腰かけて隣に座るように示すので、なんか逆らうと嘘泣きとかされそうだから素直にそこへ座る。

 

「京夜さんがくださった新聞の方はあらかた読みましたが、バスティーユ広場での煙幕騒動は犯人が見つかってないとありました」

 

「……オフだったんじゃ?」

 

「はい、オフですよ。オフでしたから貰った新聞に目を通して気になったニュースで京夜さんとお話ししたかったんです」

 

 物は言いようだと思うが、隣で悪びれることもなく上目遣いでダメですか? みたいな視線を向けてくる英理さんはズルい。人妻がそんな女を武器にしちゃダメでしょ。しかも強力だし。

 

「吉鷹さんは怒らないんですか? こんなガキの部屋に遊びに来て」

 

「吉鷹さんは今日最後のお仕事中ですから内緒です。なので5分くらいしか一緒にいられないので、大切にしてください。キャッ」

 

「何がキャッ、ですか。期待しても何もしませんからね。ですが騒動の犯人はまだ捕まってないですか。なら……」

 

「予測は確信に、といったところですか。他にも未成年者の検挙の記事も目を通しましたが、それらしい人物はいませんでしたから、私達も明日からの動きが固まりそうです。京夜さんはどうですか?」

 

 羽鳥がバスティーユ広場で騒動を起こして逃げたことを具体的には伝えていなかったのだが、今の会話だけで引き出された。

 まぁこの辺でバレた引き出されたと言っても仕方ないので、どういう経緯でそうなったかが伏せられればいいと諦めて明日には本当に別行動を開始する英理さんからどうするのかを尋ねられる。

 そりゃあ、英理さんと吉鷹さんに頼りきりで羽鳥を見つけようなんて怠慢な事をするつもりはない。

 

「オレもやれることはやってみるつもりです。それでも英理さんと吉鷹さんには遠く及ばない成果しか得られないでしょうけど」

 

「成果とかそういうのは別の話ですよ。大事なのは自分に出来ることをちゃんと理解して、それを実行しようとする意思と行動力。あれがしたいこれがしたいと頭でだけ処理していても現実では何も起きませんからね。フフッ。でも今の京夜さんを見てると、小鳥があんな風になったのが京夜さんのおかげだってわかって面白いです」

 

「そこまで小鳥に影響を与えた自覚はないですけど……」

 

「親の背中を見て子は育つと言いますけど、兄の背中を見ても妹は育つということでしょうね」

 

 感謝するような笑顔でそんな恥ずかしいことを言った英理さんは、娘の成長を本当に喜んでるのが見て取れるのだが、オレとしては小鳥にそこまでの影響力を与えるつもりがなかっただけに複雑な思い。

 オレと小鳥では目指す武偵の道がちょっと違う気が徒友契約をした時からしていたので、技術的なものは役に立ってほしいものを厳選して教えていたが、英理さんが言ってるのはそういう技術面ではなく、武偵としての在り方というか、そんなものだろうな。

 オレが周りからどういう見え方をするのかはよくわからないが、小鳥にプラスの効果がある変化を与えたならいいか。

 

「そういや小鳥との徒友契約もあと3ヶ月もないのか」

 

「契約解消を寂しく思ってくださいますか?」

 

「そりゃ戦妹の卒業、とは違いますけど、最も近しい後輩が離れるのは少しくらい寂しいものですよ」

 

「あの子は代々の能力に動物と人との境界線を引かずに育ったせいで周りとは少し距離を置かれて寂しい思いをしてきました。その小鳥が武偵高に通ってからは楽しい日々のことをメールや電話で話すようになって、本当に嬉しかったんです。特に京夜さんが出てくるお話はもう凄い凄いと頭の悪そうな連呼をしたりで」

 

 いやぁぁああ! こういうオレの知らないところでのオレの話は恥ずかしすぎる!

 小鳥がどんな風に英理さん達に話していたか詳しく聞きたくもないが、オレのそんな表情を察して切り上げてくれた英理さんは、話を戻してオレを優しい表情で見る。

 

「京夜さんがどのような人物か私もまだ分析しているところですが、小鳥が心から尊敬する人を、私も尊敬と敬意を持って接しています。ですから京夜さんはそのままの京夜さんで立派になってください。難しいことを言ってはいますが、私は今の京夜さんが大好きなので」

 

 フフッ。

 英理さんから尊敬とかそんなものはあまり感じてはいなかったが、1人の大人としてくれた言葉はありがたいので、恥ずかしく思いつつお礼を言おうとしたら、急に隣から抱きつかれてドキッとする。な、なんなんだよ!?

 

「ああん、やっぱり私、娘は娘として息子も欲しかったんです。京夜さんみたいな可愛い反応をしてくれる息子なら毎日頬擦りしたいくらい」

 

「だからってオレにしないでくださいよ?」

 

「あら残念。それじゃあ今から息子を作っちゃいますか? 私と京夜さんで」

 

 抱きつきながらに人妻としてもう完全にアウトな発言でオレの胸の辺りをクリックリッ、と指でなぞってくるのだが、そうしたおふざけも次に来た「英理! ここにいるんだろ!」という吉鷹さんの声によって中断される。

 きっと吉鷹さんの気配を敏感に察しておふざけモードで話を終わらせたかったのだろうが、心臓に悪い。マジでドキッとした自分も恥ずかしいし。

 

「それじゃあ京夜さん、次に会う時には吉報を待っていてくださいね」

 

「……よろしく、お願いします……」

 

「あらあら、私の色仕掛けもまだまだ捨てたものじゃなかったかしら」

 

「…………」

 

 吉鷹さんの泣きそうな声でオレからやれやれといった感じで離れた英理さんは、それがまた可愛いとでも思ってるのか嬉しそうに扉の方に歩を進めて本日の最後の言葉で別れとしたが、最後までオレも吉鷹さんさえ手玉に取られてしまったな。

 その後、英理さんのおふざけのせいで思った以上に疲れていたオレは柔らかいベッドですぐに眠りに就いてしまい、翌朝の早くにホテルを出ていったらしい橘夫妻から遅れて朝食を食べてからチェックアウトし、とにかく手がかりからオレもオレで羽鳥の捜索に乗り出す。

 

「捜査の基本は現場から、とか刑事モノとか探偵モノでは鉄板だな」

 

 そう思いつつも車を走らせて羽鳥と別れたバスティーユ広場に戻ってきてはみたが、さすがに日が経ってしまって得られるものは何もなく、早速の手詰まり。

 どうしたものかと1度ジャンヌが拠点にしていた住居の方にも行ってはみるが、手がかりを残すことに熟練度のある羽鳥が残しそうな手がかりもなかったのでここも空振り。

 次はガルニエ宮かルーヴル美術館でも行くかと車を走らせて赤信号に捕まってる間に、何気なく外の様子を見ていたオレは、なんとなく人の流れに不自然なところを見つけて疑問を抱く。

 次いで遠くからパトカーのサイレンがいくつか聞こえてきたので、何か事件性のあることが起きていそうな空気を敏感に感じて方向転換。人の不自然な流れやら何やらを汲み取って現場へと向かってみた。

 別に確信とかそんなものはなく、何か起きてるならこの目で見ておこうという野次馬根性みたいなもので現場近くまで来てはみたが、早くも交通規制がかかって現場の中心には車では行けそうになかったので、適当なところに停めて徒歩で現場の近くまで行って見てみると、銃撃戦、ではなさそうだが火薬の炸裂でもあったのかある1区画が爆発によって黒焦げてしまっていて、テロの線もあったがどうにも騒動としては規模があれだ。

 昼間で人の気配もまちまちで、その中で被害は最小にして騒ぎは最悪起きても仕方ないといった首謀者の思惑がなんとなく見えて、騒ぎを起こすのが目的ではなかったのではという突拍子もない推測をしてしまった。

 我ながらバカらしいのだが、眞弓さんや羽鳥がこういう勘みたいなもので時々ではあるが動く気配があったので、人集りを抜けて現場をちょっと見渡せる建物の屋上にスルリと登って周囲をうかがってみる。

 するとざわつく人達の中で明らかにこの騒ぎに注目していない動きを見せるやつらが数人、ポツポツと統率力のある感じで動いているのがなんとなくわかる。

 見れば女だけで構成されるその団体は、おそらく魔女連隊。

 逃げてるというよりは探して追っているといった挙動の彼女達から察するに、ここパリにいた師団を奇襲し追撃の最中といったところか。

 これはまだスパイであるバチカンが機能してしまってるから、師団の位置情報が筒抜けだからこその動きだな。

 そうなるとパリにいた師団は撤退の流れにでもなったっぽいのを察して、建物を降りて追撃中の魔女連隊の子の1人を尾行してみると、1度合流を始めてゾロゾロと少女達が集まって集会を始めてしまうが、その中に妙に偉そうな見覚えのある女がいた。パトラだ。

 英理さん達との再合流は3日後。今からこいつらを尾行して戻ってこれるか。

 そんな思考を巡らせながら、手がかりのなかった状態から羽鳥に繋がりそうもない別の重要そうな線をたぐり寄せてしまったオレは、メーヤさんの武運がまた変な方向に働いてしまったのかもとうなだれてしまうのだった。


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