緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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Bullet104

「……いたよ。ジャンヌだ」

 

 魔女連隊の武器庫と師団内部のスパイ探しのためにジャンヌとキンジの監視をしていたオレと羽鳥はガルニエ宮にて行われていた仮面舞踏会に参加してメーヤさんとの合流を図るジャンヌ達を探していて、周囲を見ていた羽鳥がジャンヌを発見。

 示された女性を見れば、何の冗談か藍色のタイトなドレスにハイヒールを履いたジャンヌは、猫のような目の回りを隠す仮面にカチューシャか何かの猫耳をつけて馬のヌイグルミを両手で抱えて周囲を見て回っていた。あれで違和感ない仮面舞踏会が凄いよな。

 

「羽鳥、ジャンヌとコンタクトを取っていいか?」

 

「会話はなしだよ。何か伝えたいなら紙か何かに……」

 

「もう用意してあるし会話もしないが、自然を装いたいからフランス語を教えろ」

 

 とにかくジャンヌが1人でいるこのタイミングならと思い、羽鳥にそんな申し出をしつつ一言だけフランス語を習って行動を開始。

 もちろんジャンヌに伝えられる情報は限られてしまうし、事前に用意したメッセージも羽鳥のチェックを受けてからになったが、元々大したことを伝えるつもりではなかった。

 ただオレが何をしてるのかを知らせるだけ。協力者である羽鳥の名前も何も書いてないそのメッセージを渡してうちのリーダーを安心させたいのだ。オレはちゃんとお前のそばにいると。

 そんな思いの中でジャンヌへと近づいたオレは、少し注意が散漫になっていたジャンヌの進路上にスルリと割り込んで向こうからぶつかるようにすると、胸に軽くぶつかったジャンヌは申し訳なさそうに1歩下がってオレの顔を見てきた。

 

Je suis désolé(すみません)

 

 そんなジャンヌに即興で習ったフランス語で謝ったオレは、さりげなくジャンヌの手に触れてその甲に唇を近づけるが、確かこれがフランスではちょっとキザな挨拶になったはず。

 その証拠にジャンヌも特に動揺してる様子もなく落ち着いていて、その手を放す時にジャンヌの手へと持っていた紙を渡してすぐに離れていった。

 ジャンヌも最初はメアドか何かと思ったのか迷惑そうに紙を見たのだが、そこには日本語でメッセージを書いたのですぐにオレだとわかったのかオレを探し始めたが、もうオレはジャンヌに正面を向けずに羽鳥に間に入ってもらって隠れ通したのだった。

 

「では今度はメーヤだ。この階にはいないようだから、1階の方に移動しよう」

 

「ジャンヌを張ってりゃ合流するだろ」

 

「君がそうしたように、私もメーヤにだけ知らせることがあるんだよ。そのためには合流する前に済ませる必要がある」

 

 ジャンヌの目を逃れつつ再び移動を始めた羽鳥は、自分もメーヤさんに何かメッセージがあると言って階段を上がっていくので、一応事前に用意していたと言うメモも見てみるが、イタリア語なんだよな……

 内容がわからないからダメ元で聞いてはみるが「デートの誘いさ」と意味不明の供述をするのでもうどうでもいいや。これで師団の形勢に影響を及ぼしたらスパイ認定してやる。

 それはまぁさすがに私情が入ってあれな判断だが、確か修道女みたいな人は嘘をついたり人を騙したりといった行為が敬遠される。

 その辺から考えてメーヤさんより立場が上の人に知られてもいいメッセージになってるはず。その上で何を伝えたいかなど見当もつかないが。

 そんな基本的に何を考えてるかわからない羽鳥と上がった1階でも、同様に様々な仮面を付けた男女が密談やらなにやらをしていて、こっちも談笑してる体で歩きつつメーヤさんを探していたら、バーカウンターの方がちょっと賑やかだったので近くまで寄ってみると、乳牛みたいな巨乳の女性が出されるカクテルを次々と飲み干して楽しんでいた。

 

「なんか見たことあるなあれ……」

 

「勘が良いね。メーヤは酒を水のように飲める女性だ。あの飲みっぷりはまず間違いないだろう」

 

 姿こそほとんど後ろ姿でわからないながら、宣戦会議の後にあれ以上のレベルの酒飲みを見てるオレも情報として知ってた羽鳥もほぼ間違いなくそれがメーヤさんだと確信する。あの大きな胸も決め手か。

 相手がバーカウンターにいるなら近づくのは容易だと意気揚々と踏み出した羽鳥だったのだが、それより早くそのメーヤさんの隣に来て顔でも覗き込もうとしていた男が、後ろの人達に振り向いたメーヤさんの巨乳に当てられて尻餅をつくという珍事件が発生。

 どうやったら胸で人を倒せるのかと思わせる現象だったが、そんなことがあれば羽鳥もさりげなく近寄ることも出来ず足踏みし、事の成り行きを遠目に見ていたら、なんか尻餅をついた男がキンジだったみたいで合流されてしまった。

 やいややいやと話す中でえいえいおー、と拳を振り上げた拍子にどうやってしまっていたのか背中から例の大剣をゴトリと床に落としたメーヤさん。異次元の背中……ギャグかよ。

 やたら目立つメーヤさんとキンジだったが、場が場なので大剣が出ようとコスプレ程度にしか思われてない中、キンジが落ちた大剣を拾おうとするも相当に重たいのか、持ち上げるところでバランスを崩してメーヤさんに倒れかかってその大きな胸の谷間に顔を埋めるというラッキースケベ。それには周りもはやし立てる。

 そこでまぁタイミング悪くジャンヌも合流してきて、なんか痴話喧嘩が始まってしまったが、ジャンヌの反応がどうにも今までのキンジへの態度と違う。

 なんというか、メーヤさんに対してヤキモチを妬いている、みたいな、そんな感じに見えなくもない。疎いから確信はないが。

 それから明らかに不機嫌になったジャンヌがどこからともなく鞭なんてものを取り出して、それを見たキンジが逃走。それを追ってジャンヌもその場からいなくなり、2人を笑って送り出したメーヤさんが再び1人に。

 これはチャンスと思って隣の羽鳥を見たら、もういない。早ぇよ。

 そういった判断力と行動力がずば抜けてる羽鳥は大剣を異次元の背中へとしまったメーヤさんがまた合流しやすいようにバーカウンターに居座って酒を飲み直そうとしたところにスッと隣に立ってカクテルを1つ頼むと、出てきたグラスの下にメモを挟んでそのままメーヤさんにスライドさせて席を離れて戻ってくる。

 

「撤収だ。私達はもうジャンヌとメーヤに姿格好をおぼろ気に記憶された。バレて包囲される前に出るよ」

 

「了解。にしても昨日今日でキンジとジャンヌの仲がずいぶんと親密になったもんだ」

 

「案外、昨夜に進展する何かがあったのかもね。私達のように」

 

「まるでオレがお前に手を出したような言い回しはやめろ」

 

「ははっ、こちらも反吐が出るからそういう反応は嬉しい限りだ」

 

 ガルニエ宮から出たオレと羽鳥は、今夜も2人がジャンヌの住居で過ごすことを事前に判明させていたので、監視も一時的に放棄してタキシードに着替えたホテルに戻ってチェックアウトし、ジャンヌ宅の近くでまたも車内で一夜を過ごす。

 さすがに連日で変なことはしてこなかった羽鳥だが、オレの警戒をあざ笑うように眠りに就かれたのでそれはそれで悔しかった。

 翌朝。

 この日にまずしたのは、昨日からカツェ捜索の依頼に駆り出していた橘夫妻の成果を聞くための合流。

 とは言ってもオレ達は連絡手段を断っているので、向こうがオレ達を発見し近づいてくれるのを待つだけ。

 その目印となるバツ印の白テープを車の屋根に貼った羽鳥は、おそらく空を飛ぶ小町への目印であろうことを確信しつつ一応は周囲を警戒。

 オレ達の気づかないところで師団に居場所を特定されていたら面倒だしな。

 それをまぁ杞憂で終わってくれて、数十分後に無事に合流してきた英理さんは、それぞれオレ達にらしい挨拶をしてから捜査報告をしてくれた。

 

「羽鳥さんに渡された写真とはずいぶんと印象が違いましたが、この子で間違いないか確認お願いできますか?」

 

 そう言いながらデジカメを取り出して撮ってきた画像をオレと羽鳥に見せた英理さんに、2人してその画像を凝視するが、顔が近づいたので羽鳥に押し返されてしまう。別に確認は同時じゃなくていいしな。だがまず口頭で済ませろ。

 不満はあるもののとりあえず羽鳥の判断を待つと、画像を見た羽鳥は「間違いない、カツェだよ」と報告しながらオレにデジカメを渡すのでオレも自分の目で確認。

 その画像にはどこかの学校の可愛らしい制服を着て、右目にしていた眼帯もハーケンクロイツではなく花柄に変えている、なんか等身大の中学生みたいなカツェが市内を1人で歩いているところだった。

 羽鳥が渡したというカツェの写真とどのくらい違うか比べるために英理さんからそちらも拝借して見れば、そっちはそっちで香港で見た時の魔女スタイルで魔女連隊を率いてドヤッてる偉そうなやつ。

 

「昼が普通の中学生。夜は危ないコスプレパーティー、くらい違うが、まぁカツェだな」

 

 一応は英理さんはカツェが誰かを知らないのでそれなりに言葉を選んでつまらない表現をしてみると、羽鳥は「はぁ?」とマジでムカつく顔をして、英理さんは「可愛い例えですね」と悪ノリしてきて恥ずかしくなる。

 

「今は吉鷹氏が追跡を?」

 

「『目』は吉鷹さんの方が良いですからね。役割分担はきっちりするのが私達のやり方です」

 

「では案内をお願いします。君は後ろに乗りたまえ」

 

「言われなくてもわかってるよ」

 

 とにかく、橘夫妻のおかげでカツェの捕捉に成功したオレ達は、ここでジャンヌ達の監視からカツェの尾行へと切り替えて車へと乗り込むと、携帯で連絡を取りながらの英理さんの指示でパリ市内を走っていく。

 

「あの制服はどこの学校のものなんだ?」

 

「さてね。私はそこまで博識ではない」

 

「ふふっ。あの制服は確かストラスブールの有名女子校のものだったと思いますよ。この子はおそらく社会科見学か何かでパリに滞在しているのでしょうね。昨日も他の生徒の方々とノートルダム大聖堂に出入りしていましたから」

 

 その車内でカツェが年相応にちゃんと通っているのだろう学校がどこか特定しようとすると、珍しく羽鳥はちゃんとした答えを持たずにイラッとしたのだが、それをフォローするように助手席に座る英理さんが欧州諸国を渡り歩いてるだけに口を開いて情報を提供してくれる。

 ついでに何故カツェがパリにいるのかの謎まで解けたが、しれっとオレ達以上の活躍をする橘夫妻に羽鳥と一緒にこれも珍しく空笑いをするのだった。

 それで無事に吉鷹さんと合流した先で辿り着いたのは、高そうなホテルの向かい側。

 英理さんの情報では相当なお嬢様学校ということなので、安全面を考慮した宿泊先を確保しているのだろうが、贅沢な。こっちは2日連続で寒い車内で寝て過ごしたんだぞ。

 と、中で不自由なく過ごしていたのだろうカツェに勝手に恨みの念を送りつつ、ここでお役御免なのだろう橘夫妻に向き合って羽鳥とお礼を言っておく。

 

「お噂通りの実力、しかと見させていただきました。報酬の方は言い値で後日請求下さい」

 

「あら、じゃあ京夜さんを小鳥のお婿さんにお願いします」

 

「冗談でもそういうのやめてください」

 

「そうだぞ英理。こんなへなちょこに小鳥をやれるか」

 

 羽鳥はそうやって連絡先のメモを英理さんに渡しつつキザな笑みを浮かべて太っ腹なことを言っていたが、英理さんがまたあれな発言をしたせいで吉鷹さんがマジ睨みしてきて困る。

 その吉鷹さんをなだめつつ英理さんは吉鷹さんを先に車に乗るように言ってから改めてオレ達と向き合って口を開く。

 

「お2人は今、きっと大変で面倒なことを解決に導いているのでしょう。その手助けができたのならば私達も自分の仕事に誇りを持てます。ですからあなた達も自分のすることに自信と誇りを持ってくださいね。でなければあなた達のために動いた色々な人達の努力も一緒に捨てることになりますから」

 

「ご助言、大変痛み入ります」

 

「ありがとうございました、英理さん」

 

 その言葉からは察するに、きっと英理さんはオレ達の置かれている状況をなんとなく推理できているのだろう。

 でもオレ達が巻き込んでしまったという罪悪感や後ろめたさを感じないようにこれ以上踏み込んでこなかった。

 そうした意味も込めての感謝にいつもの笑顔で返した英理さんは、忙しい身なのだろうから次の仕事をしに吉鷹さんの運転する車に乗り込んで、最後は窓から手を振って行ってしまった。

 

「自信と誇りか。こりゃもう弱音は吐けないな」

 

「はっ? 君は弱音を吐く気でいたのか? これだから日本人は」

 

「日本人の括り方は国に悪いからやめろ」

 

 その橘夫妻を見送ってからボソッと言ったことにまたも過剰反応してリアクションする羽鳥にはもううんざりだ。死んでも弱音は吐かない。

 そのあとはいつも通り、大した会話もなくカツェがホテルから出てくるのをのんびり待つついでにエネルギー補給。

 食べ物1つでもどちらか一方が買いに出るということさえできないので不便この上ないが、ホテルをギリギリ見えるテイクアウトもある店で適当に買って車内でありつくが、本場のパンうめぇ。世界三大料理を輩出する国の凄さがパンにも表れてる。羽鳥へのストレスも……さすがに吹っ飛びはしないが。

 そうしてフランスの食文化を少し楽しんで8時頃から開始した張り込みは実に2時間ほど音沙汰なく過ぎ去り、根気が必要とはいえジャンヌとキンジを監視していた方がハプニングが起きる確率が高いのでやり甲斐という意味ではまだあっちの方が良かった。

 あくびも出そうなほど待ちぼうけをしていたら、ようやくカツェの学校の制服を着た女子がホテルからポツポツとグループで出てきては目的地があるのかバスやら何やらで移動していく。

 オレと羽鳥は見逃しのないように注意してそれらを観察するが、一向にカツェは姿を見せず女子の集団も途切れてしまった。

 橘夫妻がここをマークしてくれていたのだからいないということはないと思うが、ちょっと心配になってきたその時。

 ようやくカツェが1人でホテルから出てきてまっすぐに駐車場へと足を運んだのでそれを追うと、なんか凄い派手な物に乗って出てきてあの羽鳥でさえ「わおっ」と少し感嘆する。

 前輪がバイク、後輪が2つのキャタピラというカッコ良いデザインのそれは確かケッテンクラートとかいうドイツの半装軌車だ。

 そんなものを堂々パリで走らせるカツェは異常に目立つが、これで今まで発見されなかったのはもはや奇跡だろ。

 案外リバティー・メイソンもバチカンも節穴だなとか思いつつ、律儀に学校の授業に参加するカツェを追って車を走らせ辿り着いたのは、パリではド定番の3本指に入るだろう世界最大級の美術館。ルーヴル美術館だった。

 そこの地下駐車場へと入ってケッテンクラートを停めると、学生カツェはあまり乗り気ではない表情でルーヴル美術館へと向かっていき、それを見送ったオレと羽鳥は行き先が確定し足がある以上はまたここに戻ってくることはほぼ間違いないので尾行は一旦やめてひと息。

 

「さて、カツェが学生をやってる間に仕掛けておくかな」

 

「何をだよ」

 

「こ・れ」

 

 神経を使う尾行から一時解放されてから、抜け目のない羽鳥は500円硬貨くらいの大きさの機械を取り出してオレに見せると、車から降りてカツェが乗ってきたケッテンクラートへと近付いて車体の見えない部分にそれを取り付けて満足気に戻ってくる。

 今の動きでわかったが、あれは発信器だろう。それがあればどこに行こうと目視で追えなくても最悪の事態は避けられる。

 

「凄く奮発した物だから発見されて取り外されると泣くけどね。でもこれであのケッテンクラートが地球の裏側にあろうと見つけられる」

 

「そんな高性能かよ。じゃあ尾行もこれで終わりでいいか」

 

「冗談だろうけど、手抜きは橘夫妻に失礼だよ」

 

「わかってる。だがこの時間はどうする?」

 

 思った以上に高性能な発信器に驚きつつ、少し緊張を和ませる会話をして空白になってしまった時間をどうするかと尋ねると、少し考えを巡らせた羽鳥は折角なんだしとルーヴル美術館を見て回るかと提案してきた。

 別に美術品にはこれといった興味もないのだが、ずっと羽鳥と2人で車内でいるよりはマシなので学生カツェちゃんのさりげない監視も込みでオレ達もルーヴル美術館へと足を運んでいった。

 

「うお……生のモナ・リザ……」

 

「美術品には興味ないって顔してたのに、いざ見たらその反応はギャグかい?」

 

「うるせぇよ」

 

 あまり乗り気ではなかったのは本音だが、いざ入って目の前でモナ・リザを見ると何かこう、迫力というものを感じて声を漏らしてしまうが、それがおかしかったのか羽鳥は笑いながらにからかってくる。

 やはり本物の芸術品というのは人の心に訴える何かがあるんだなぁとうんうん唸っていたら、羽鳥が突然オレの腕を引いて無理矢理の移動を促したので、あまり抵抗せずについていき別の作品の前に移動を完了してから、カメラを取り出した羽鳥が記念撮影するからとオレを作品と並ばせて、その時に羽鳥の後方に目を凝らせば、なんということでしょう。

 監視をやめてあげたジャンヌとキンジに、メーヤさんまでいらっしゃいました。

 それなりの変装というか服装は変えていたが、特徴のあるグループですぐにわかった。あんな巨乳と銀髪を腕に引っ付けてる男がいたらそりゃな。

 そのジャンヌ達ご一行の存在にいち早く気づいた羽鳥が本当にシャッターを押すのでとりあえずピースくらいはして観光客を装って隣に戻ると、作品を歩き見しながらその一行をやり過ごして距離を離し会議する。

 

「メーヤの幸運はこちらの努力を無に帰すレベルで嫌になるね」

 

「ってことは観光でたまたまやって来たとかではないってことか。確かに嫌になる」

 

「とりあえずジャンヌ達とのエンカウント率もバカにできない。メーヤがいる限り私達もいつ何の偶然で見つかるとも限らないからね。ここは素直に美術品の鑑賞はやめて戻ろうか」

 

 メーヤさんの幸運スキルがどの程度ヤバいか実感はあまりないが、それでカツェのいるここに来れているのだから羽鳥の言うようにオレ達を発見する何らかの力が働く可能性はある。

 その可能性を下げるための戦略的撤退を決めた羽鳥は、カツェの学校の先生の話でも聞いていたのだろうが、夕方頃までルーヴル美術館を見て回ることが確定しているみたいなので、その間に食料の調達をしてゆっくりと陽の傾き始めた頃に地下駐車場に戻ってきて、まだケッテンクラートがあることを確認してから車に戻り監視を再開。

 30分ほどしてカツェが戻ってきたので、ケッテンクラートに股がったカツェを、おそらく同じように尾行するだろうジャンヌ達のことも考慮して、カツェを尾行するジャンヌ達をいち早く発見しそのジャンヌ達を尾行するという尾行を開始した。

 さて、次はどこに行くんだ?


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