緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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 ようやく幸姉の依頼が片付くかというところまでいっていたオレの仕事は、自らの注意力のなさが招いた事態で面倒なこととなり、お世話になっていた菜々美さんがマークしていた鏡高組に捕まってしまい、どうにか交渉によって菜々美さんは逃がせたものの、代わりにオレが捕まって現在、鏡高組の豪邸のリビングで拘束されて無様に床に転がされてしまっている。

 一応この状況は予想の1つとしてあったのでまだ想定内ではあるのだが、元武偵とかで意外と優秀な組長さんがオレへの警戒レベルを上げてしまったために動くタイミングが掴めない。

 今も変な挙動を見せようものなら、繋がってる香港のマフィアから仕入れただろうアサルトライフルが火を噴くこと間違いなし。

 仕方ないのでこれから来るというキンジ君が到着して、拉致されてる女子高生の扱いを見てから判断しよう。

 問題はキンジ君がオレを見て悪い方向のリアクションをしないかということだが、悪い流れなのでそこはもう諦めよう。

 そうして床に転がること数十分。

 さすがにあぐらくらいかかせてもらえるかと姿勢を変えたところ、その程度は問題ないと判断されたのでその動作で体に巻かれたケーブルから抜け出せる手順を整える。

 何事も備えあれば憂いなしだ。縛られる段階で仕掛けておいて良かった。

 それからまた数分ほどしてようやく外に出ていた組長さんが戻ってきてオレの近くまで来ると、遅れてこのリビングにいつもの武偵高の制服を着たキンジが姿を現す。

 やっぱりそっちの方がお似合いだぞ、人間やめちゃったキンジ君。

 そんな視線をキンジに向けていたら、オレに気付いたキンジは一瞬、何でお前がみたいな反応をしてくれやがったので、目ざとい組長さんはすぐに気付いてキンジに話しかけてしまう。

 

「遠山、もしかしてコイツと知り合い? じゃあコイツは武偵なんだ」

 

「…………そんな奴、俺は知らない」

 

 嘘下手すぎ。笑うことすらできねーよバカ野郎が。

 反応を見ていた組長さんに反射的に否定したキンジではあるが、この場合はオレを見た瞬間の反応を別の驚きに変えるべきところだ。

 例えば話に聞いてなかった見ず知らずの人質とか。

 

「ふーん、アンタ武偵だったんだ。てことはアタシらのこれが目当てってところかしら」

 

 そんなバカキンジの反応でオレの素性がバレて、ついでに目的まで部下の持つアサルトライフルを指しながらに問われてしまって、この場合は沈黙も肯定になるので舌打ちで返しておく。

 

「……裏銃(ウラチャカ)だな?」

 

 そのオレ達のやり取りを見たキンジも、改めて違法銃となるアサルトライフルについて問えば、組長はまだ登録してないだけと答えるが、別にそれで撃たないわけではない。誤魔化しなんていくらでも利くだろうしな。

 

「……遠山くんっ……!」

 

 そうこうしてたら別の部屋から人質にされている女子高生が拘束されたまま連れてこられてキンジのところへと駆け寄っていったが、こういう状況に慣れてないのか勢い余ってキンジにぶつかって尻餅をつく。

 その時キンジが「(もえ)」と呼んでいたので、その萌ちゃんの安否を確認したキンジは今度は組長さんの名前まで呼んでくれて助かる。

 

「――菊代(きくよ)。これは立派な未成年者略取・誘拐罪だぞ。ついでにそこの男も」

 

 オレはついでか。

 などとどうでもいい顔でキンジを見てやるが、何やら菊代と萌の間でやんややんやと女の口喧嘩を始めてしまったので、話を聞く限りキンジの取り合いでもしてたらしい。相変わらずモテる男は辛いねぇ。

 その喧嘩もすぐに終わって、今度はキンジと萌もオレ同様に縛り上げられて武器を奪われ背中合わせでまとめて拘束されてしまうが、3人一辺に拘束するのはあまりオススメしないな。少なくともオレは抜けられる。

 だがそれを悟られないように諦めたような表情を保ったまま背中越しにキンジに指信号(タッピング)で『逃げる』と伝えようとした。

 が、それより先にオレは視界にあるものを捉えて、次いで集中すると気配さえも捉え、1度だけその方向にジト目を向けてやりつつキンジへの指信号を中断。これは別のタイミングができるな。

 とかなんとか考えていたら、これからキンジと何かの交渉でもするつもりだった丸腰の菊代が部下の1人に髪を掴まれてそのまま何もできずに拘束されてオレ達の方に投げられてしまう。

 わかってはいたが展開が早いなまったく……

 

「あー、キンジ君。それから菊代元組長。こうなることは昨夜の段階でわかってたと言ったら信じるかい?」

 

「……言ったもん勝ちに聞こえるが……お前のことだ。信じるよ」

 

「なっ、どうして教えてくれなかったのよ!?」

 

「教えて信じたのか? それにオレの目的がお前らの身の上話なんて全く関係なかったからだボケ。なのにしつこくオレを追い回して人質取ったり、関係なさそうな一般人巻き込んだり面倒事にしやがって。泣きたいのはこっちの方だ」

 

「も、元はといえばアンタがアタシらの事を嗅ぎ回るから!」

 

 と、クーデターで盛り上がりかけた組員の皆さんを無視してこっちで盛り上がってたら、さすがに怒られて威嚇射撃される。

 もうやだ帰りたい。やることやってから帰らせてもらいます。

 

「そんなわけで君らは全員、これから香港のマフィアに売られちゃいまーす」

 

「……キンジ、1人くらいなら余裕だろ。オレは2人相手する」

 

「はっ? あと2人いるだろ。それは……」

 

 黙ったオレ達にこれからどうなるのかを告げてきた新しい組長さんはとりあえず無視して、勝手に打ち合わせを始めたオレにキンジの疑問が飛ぶが、それは「――おい兄貴」という姿なき声によって答えが返った。

 当然オレ達の会話よりも室内を反響した不気味な姿なき声に動揺した鏡高組の皆さんはキョロキョロと辺りを見回していたが、実はオレ達の目の前にいるので、意外とブラコンらしい弟君にタイミングを作ってもらう。

 

「き……気づかなかったぞ。ジーサード。また尾けてたのか」

 

「兄貴、かなめばっかり見てたろ。二重尾行くらい気付けよ。京夜はここに入ってちょっとしてから気づいたぜ」

 

 どうやらここまで本当に気づいてなかったらしいキンジは、ジーサードの救援に心の余裕ができたのか冷静さも取り戻していて、わざわざ名前を言ってくれやがったので後で殴っておこう。

 オレの名前を言ってくれやがったジーサードは、存在を知らせた段階でキンジと萌と菊代のケーブルを切っていたが、オレのは切らずにそのままで絢爛豪華な改造和服を着た菊代を例の姿の見えなくなる先端科学兵装を着けたままで持ち上げて窓際まで運んでいき、宙に浮く菊代という不思議な光景に皆が呆然とする中で「美しいからな。剥がして、いただくぜ」とかなんとか言いながら突然、和服の帯を解いてぶわっ!

 それを着ていた菊代を際どい下着姿にしてこっちに放り投げて、着ていた和服を奪ってしまう。そっちかよ、いただくのは……

 よくわからないジーサードの美的センスに苦笑しつつも、ようやく明滅する蛍光灯のような音と共に姿を現したジーサードは、かなめもしていた高性能ヴァイザーと各種プロテクターにこれまたセンスを疑う『天上天下唯牙独尊』とか誤字ってる刺繍の入った特攻服みたいなものを羽織っていた。

 そんなジーサードにもはやリアクションするのもバカらしいので、今の菊代のあられもない姿でHSSになっていたキンジと、こちらもいつの間にやら雰囲気的にHSSになってるジーサードに、思考が停止した鏡高組を好機と見たオレは、上着のジャケットを脱いでケーブルから両手を上から引き抜くと、そのまま飛び上がるようにしてケーブルから体を抜きジャケットも回収。

 襟に軽く巻いていた分銅付きのワイヤーを取り出してビュンっ。

 ジーサードがいる方向とは逆にある天井付近に設置された窓のやや下辺りに投げて、そこに垂らしていた分銅付きのワイヤーとを絡ませると、一気に引き戻してワイヤーをたぐり寄せると、窓がいきなり突き破られてそこからワイヤーと繋がった単分子振動刀が舞い降りてきてオレの手に収まる。

 

「なかなかかっけェな京夜ぁ。エンターテインメントとしちゃ上出来だ」

 

「黙っとけ。今はあっちが先だ」

 

 ジャケットを下着姿の菊代に渡しつつ、完全に切り替わったオレは余裕なジーサードと一緒に行動開始。キンジには2人を待避させる仕事を任せておく。

 

「このガキどもー!」

 

 そこでようやく我に返った鏡高組の方々は、一斉にその銃口をオレとジーサードに向けてきたが、その時にはもうオレはリビングの端に移動を開始してジーサードと完全に分かれて攻撃を分散。

 持っていた単分子振動刀で接近から撃たれる前に鋭い抜刀から振り上げる軌道でアサルトライフルの銃身を両断。

 半ばから先端にかけてをものの見事に切断したにも関わらず、ほとんど負荷がなかった単分子振動刀の切断力にちょっと感動しつつ、一瞬しか生み出せないその驚異の切断力を再び振るうためにそれを納刀。次なる標的のアサルトライフルを無力化しにかかった。

 ジーサードはジーサードで結構バシバシ撃たれていたが、高い防御力を誇るプロテクターが銃弾を弾いたり、その手で放たれた銃弾をUターンさせて銃口に返したりしてアサルトライフルを無力化していて、化け物兄弟が味方で良かったとか思いつつこっちも一応アサルトライフルの無力化は終わったので囲まれたりする前に一旦リビングを出て庭へと出ていたキンジ達と合流。

 

「こ、殺せ! たった3人だ!」

 

 そのまま門の方まで待避できれば良かったが、それをさせないようにまぁゾロゾロと火力の高いショットガンや短機関銃を持って50人は登場。

 オレは怖くて勝ち目がなさそうに見えるが、この2人のまだ余裕のある顔を見てるとなんとかなりそうとか思えちゃう辺り、オレも変な信頼をしてるのかね。

 

「おい京夜。とりあえず逃げ回っとけ。そうすりゃ俺が楽できるからよ」

 

「そんなことしなくてもお前なら問題ないだろうが。とはいえ黙ってたら蜂の巣だからやるけどな」

 

 まだキンジには戦力外の2人を逃がす役目があるので、隣り合っていたジーサードとそんな会話のあと左右に分かれて攻撃を分散。

 こんな庭で撃たれるなっていうのは無理な話なので速攻で塀の上に登ってそこを足場に機銃掃射から全力で逃げ、事前に見つけておいた塀から跳んで豪邸の外壁を登れる地点で一気に駆け上がり、そこにあらかじめ置いていた自分の携帯電話とミズチに残りのクナイを回収。

 捕まってから隙を見て逃げる前提だったからここには来る予定だったが、大混戦だなこりゃ。

 顔を下に出すと危ないので、騒がしい下は見ないでオレを追って瓦屋根の屋上へと来た数人を登ってきたそばから蹴り落としてやりつつ、反対側へと向かっている途中で、なんか知らないが腰周りに機械仕掛けの7枚の羽のような物が生えた飛行ユニットを装着したアリアが空からやって来て庭にいた物騒な武器類を片っ端から壊していきキンジのそばに着地。

 あー、なんかあややが誇らしげに言ってたな。人1人飛ばせる装着型の新兵器作ったって。あれがそうか。

 まさかのアリアの登場でさらにどうにかなりそうな気配を感じたオレは、屋上から降りて混戦模様の庭中央を避けて豪邸の正面入り口へと再度侵入。

 入ってすぐのところで菜々美さんに下品な真似をしていた男がおどおどしながらオレに拳銃を向けてきたが、気にせず歩いて接近し、額めがけて撃たれるも死の回避がそれを正確に躱して後ろへと流れる。

 

「ひぃ! ば、化け物!!」

 

「オレは世界中探せばゴロゴロいるくらい並みの武偵だ。化け物ってのは外で暴れてるあいつらみたいのを言うんだよ」

 

 完全に戦意を奪われつつある男だが、そんなことは関係ない。

 お前はやっちゃならないことをしたからな。

 そんな怒りを込めて壁にまで追い込んだ男に全力の拳を顔面に叩き込んだオレは、先ほど面白がってオレから奪った携帯電話とクナイ、ワイヤーを回収、したが、もう使うこともないかな。

 

「調子に乗って菜々美さんの髪の匂いとか嗅ぎやがって。言っただろ、只じゃおかないって」

 

「何故それを……それに俺だとわかって……」

 

「オレは『目が良い』からな。お前が何やってたかなんてお見通しだ」

 

 最後にそんなことを言ってはみたが、その時にはもう男の意識はなかったので無駄だった。

 外ではまだジーサードとアリアが暴れているようなので、オレはオレのやり残してる仕事を完遂してくるとするか。

 本来、オレの仕事は鏡高組と繋がってる中国、香港の組織がどこかを特定することであって、騒ぎ出したキンジ達に付き合ってやる事は全くない。

 やりたきゃ勝手にやれって感じなんだが、せっかくだし外で注意を引き付けてくれてる間に動かせてもらう。

 案の定、組の人間は全員出払ってくれてるようで中はスッカラカン。

 しかしオレはここに乗り込む直前に、裏門の方にポツンと停車する車を1台発見していて、中でも何やら客人をもてなすような動きをする組員の姿も見たので、おそらくいるのだ。この豪邸の中に、香港の組織の幹部が。

 それがわかっていたので豪邸の内部構造的に中の様子を見えなかった部屋のいくつかを調べていくと、中華風の部屋を見つけてそっと中を覗く。

 が、誰もいない。だが先ほどまで食事でもしていたのかテーブルの上には食べ散らかされた桃とバナナ、生レバーの刺身が残っている。食器の数的に3人はいそうだが。

 さらによく見ると、部屋には屋上へと上がれそうなハシゴがあって、天井も開けられている。

 さっきは屋上にいなかったから、入れ違いで上がられたか。

 居場所はわかったので部屋内に静かに侵入してハシゴを屋上に出る手前まで登ってから鏡を利用して屋上の様子を確認すると、いた。

 屋上からジーサード達のいる庭の方を見る3つの人影。しかし、そうですか。そういう感じですか。

 

「まさか鏡高組と繋がってるのがお前らだったとはな」

 

 屋上へと出ないまま、向こうに聞こえるように話しかけてやると、オレの存在は見てわかっていただろう向こうの1人も自然に返事をしてくる。

 

「私達もまさかこんなところであなたに会えるとは思いませんでしたよ、猿飛京夜さん」

 

 とても丁寧な上品さすら感じる男の余裕な言葉に、ちょっとイラッとくるものの、目的は達成できたので長居は無用。

 鏡高組と繋がっていたのは、藍幇。

 屋上にいるのは宣戦会議の時に姿を見せていた諸葛静幻と、どれかはわからないが、修学旅行Ⅰの時に遭遇したココ。眼鏡を掛けているがあのアリアの中国版を見間違いはしない。

 そしてあと1人は、同じく宣戦会議に来ていた未知の光る攻撃でオレの戦意と勝機を奪った武偵高のカットオフ・セーラーを着た少女。

 正直、アリアの殻金を持ってるかもしれない相手なので相対したいところだが、あのカットオフ・セーラーの少女には勝てる気がしない。

 ここで勝てない勝負はするべきじゃない。

 

「今回はどのような案件でこちらに?」

 

「……うちの姫様がスルッと監視網を抜けて武器の密輸なんてしやがったやつらが誰か調べろゴラァ! っておっしゃっていましてね。あちこち動いてましたとさ」

 

「真田の姫様がですか……それは怖いですね。帰ったら上海藍幇からうるさく言われてしまいそうです」

 

 オレが行こうとする気配を察してか、オレがここにいた理由について尋ねてきた静幻に、隠しても仕方ないので幸姉の怒りの声を代弁すると、本当に面倒臭いと思ってるのか落ち込み気味な雰囲気を出すが、いつの間にか庭の方から聞こえていた騒ぎの声が沈黙していたので、向こうも終わったっぽい。

 

「そっちも今回はオレ達とやり合うために来たわけじゃないだろ。だったら大人しく香港に帰っとけ。オレが言うのもなんだが、あれらを相手するのはオススメしない」

 

「ご心配には及びません。私達も簡単に倒されはしませんから」

 

 騒ぎが治まったなら堂々と正面から出られるなと思い、最後に静幻にそう言ってやってからハシゴを降りて最初のリビングに戻って、ソファーの近くに落ちていたバイクのキーとヘルメットを拾って庭へ。

 その時にいくつかの銃声が聞こえたが、それっきりで終わったので残党でもやっつけたかな。

 そうして玄関を出るところで丁度、中へと入ってきたキンジとジーサードと鉢合わせになると、どこ行ってたみたいな顔をされてしまうがそんなことはお前らに関係ないだろうに。

 

「ちょっと上にいたやつらと話をしてきただけだ。やり合うつもりなら逃げる算段も立てとけよ」

 

「ケッ、ハナから逃げ腰なんて俺も兄貴も性に合わねェんだよ。余計なお世話だ」

 

「一応、忠告として受け取っておくよ。猿飛は別件だろ。無事に解決することを祈ってるよ」

 

 もう解決はしたけどな。

 とか思うものの、口にするのも無駄なので会話もそれだけですれ違っていったキンジとジーサードを見送りつつ、オレも約束があるのでさっさと玄関を出て庭、正門へと足を運んで、門を潜ったところで携帯でどこかに連絡中のアリアとなんだかんだで元着ていた改造和服を着直した菊代と萌がいて、菊代からは渡していたジャケットを投げ返されたので受け取って、寒いのですぐに着ておく。

 

「チラッと見えてたけど、京夜もいたのね。丁度いいわ。こっちの菊代ってのはあたしで何とかするから、京夜はこっちの萌って子を家まで送ってあげて。そこのバイク、あんたのでしょ」

 

 それでスルーしてバイクに乗ろうとしたら、通話を中断してオレに絡んできたので仕方なく話を聞けば、萌を押し付けられてしまった。

 オレ、この子のこと全く知らないんですけどね。

 

「……ここで起きたことはアリアがなんとかしてくれるってことでいいのか?」

 

「ええ。今そう手配してるとこ。だからお願い」

 

「……了解しましたお姫様。では不肖の奴隷が言いつけ通りに仕事を全うしましょう」

 

 とはいえ、このままではこの騒動でオレの存在も明るみに出てしまう可能性はあったので、その辺を何とかしてくれるというアリアにはありがたいと思うのでちょっとふざけてそう言ってやると、知らない人間の前だからか顔を赤くして腹に蹴りを入れられてしまった。痛いっす……

 それから鏡高組のガレージからヘルメットを1つ拝借してきて萌に渡し、バイクに2人乗りして家の住所を聞いてからアリアに見送られて発車。

 何か言いたげだった萌だが、素性も何も聞く気もないので基本無視して意外と近かった自宅の付近まで送り、もう歩いて1分くらいで帰れるだろうところでバイクから降ろしてヘルメットは適当に捨てとけと言ってさっさと退散。

 お礼も何も言われないまま走り出したオレは、菜々美さんとした約束を守るためにその進路を十蔵さんの自宅のある蔵前に向けていったのだった。

 …………疲れた……本当に……


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