緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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Bullet82

 

 ジーサードとかなめ。

 意外な場所で遭遇した2人は、キンジの実家に滞在していたわけだが、仕返しと用件を済ませたオレには2人が何をしてようとあまり関係ないので華麗にスルーして菜々美さんのアパートへ戻って1日を終えた。

 その翌日。

 月曜日となったその日の昼頃、いつものようにシゲさんから連絡があってそれに応じると、どうやら有力な情報を仕入れてきたようで詳しく話してくれる。

 

『今まで調べた中では俺も手応えみたいなものを感じたんで、これで終わりにしたいところですね。そろそろ俺らも動きすぎで怪しまれるかもしれませんし。今までこんな頻繁に情報収集はしてこなかったもんで、引き際も勘になるんですがね』

 

「そうですか。となるとこれ以上は頼りにできませんね。早く終わらせたいのはこちらも同じですし、その情報とやらに賭けましょう」

 

『旦那のために動けるのは光栄なんですが、組も大事ですから難しいもんです。それじゃあ話します。怪しいのは「鏡高組(かがたかぐみ)」ってところで、ここは他とちょっと違って先代の組長が(タマ)取られてからその娘。しかもまだ成人すらしてねーのが頭をやってます。この世界で女ってのは何かと不利なもんで、先代から比べるとずいぶんナリを潜めていたんですがね。最近だと「日本国外」と連携してシノギで稼いでるらしいってのは耳にしていたんですが、それでも身振りが良くなったみたいなことはなくて』

 

 外国と連携……か。

 シゲさんには儲けているヤクザについての情報を探ってもらってたから、その辺の詳しいところは意思疏通が不十分だったが、これは確かに今までで一番怪しいな。

 

「そのシノギがどんなのかまではわかりませんか?」

 

『聞いた話だとマカオのカジノへの出資とかって。他にもいくつかあるみたいですが、漏れ聞いたのはそれだけですね』

 

 マカオ……中国か。それも香港。いよいよもって怪しくなってきた。

 ここは結構踏み込んで調べた方が良さそうだ。

 

「その鏡高組の拠点はどこに」

 

 オレの依頼の前情報と色々と重なった有力そうな情報を得て、シゲさんから鏡高組の事務所の場所を聞き出したオレは、一応もう少しだけ他の情報を集めてもらってシゲさんとの通話を切り、教えられた事務所に向けてバイクを走らせていった。

 辿り着いた事務所にはいかにもな男達がたむろしていたのが外からも見えて、今時のヤクザが十蔵さんのところのようにそれらしい風貌をあまりしないのに対して、こっちは「ヤクザです」という主張があるな。

 そんな男達の中に妙に偉そうな金色に近い茶髪の女の後ろ姿が見えて、派手な着物を着たそれが鏡高組の組長であるとなんとなくわかる。

 顔は位置的に見えないが、まだ成人してないってことはオレとそう歳は変わらないはずだ。

 そんな歳でヤクザの組長とか強心臓の持ち主だな。オレは絶対にやりたくない。

 ここでも例に漏れずにまずは事務所への侵入がセオリーかと思ったが、ここは頭がわかりやすかったので最初はこっちをマークした方が情報が得られそうと考えて、その組長の移動に合わせてオレも尾行することに決めて、待つこと2時間ほど。

 陽も暮れ始めた頃に事務所を出た組長はそのまま下に停めてあった黒のスモークシールドを貼ってる真っ黒な高級車、センチュリーに乗り込んで移動を開始。

 オレもすぐにその車に付けて走り始めた。これで今回は最低でも組長の自宅に案内してもらおうかな。

 組長の乗った車は明治通りへと入って道に沿って池袋の辺りまで来ると、その速度を微妙に遅くして車道脇へと寄っていき、なんてことはないこれといったものもない場所で一時停車。

 それに合わせてオレも手前の角を曲がってその角から車を見張ってみる。

 車は停車したにも関わらず誰1人として出てくることはなく、助手席からはガタイの良さそうな男の腕が窓から外に見えているが、そいつも動く気配はない。

 陽も完全に落ちて尾行には最適な環境にはなったが、ここに停まってることに何の意味があるのか。誰かを待ってる?

 その可能性を考慮してちょっと周りに注意を向けてみると、歩道には塾帰りか何かの学生が結構な数いて、実際に塾も入る建物がある。

 そして停まってる車のさらにその奥に、いかにもチンピラの筆頭みたいな不良少年2人がバイクに2人乗りして停車していたが、あれはヤクザとは無縁な小者だろうな。あんなの抱えたら面倒臭いし。

 そんな小者のチンピラ2人を見ていたら、丁度バイクから降りてガードレールを乗り越え歩道の方に入ったので、車を視界に捉えつつその様子を何気なく見ていた。

 見ていたら、なんかいた。知らない学校のブレザーの制服を着た遠山キンジさんが。

 しかもそのキンジに用があったのか、チンピラ2人はキンジに何やら怒鳴ってるのが見えたが、声までは雑音に紛れて聞こえなかったし、オレ同様にチンピラに目がいって道を塞いでしまった学生達によって姿も見えなくなってしまった。これじゃ何が起きてるかさっぱりわからん。

 まぁそっちはそっちで関係ないしいいかと潜入捜査でもしてそうなキンジのことも詮索せずに車の方に意識を向け直すと、なんか知らんが車はゆっくりと前へと進んでいきあの騒ぎのど真ん中で停車。

 かろうじて車道の方は見えるので、車から助手席に乗っていた男が降りたのを確認。

 街灯でわずかに見えたが日本人とは違う感じの褐色肌に良い筋肉のつき方だ。

 どうでも良い騒動の真ん中に行かれてしまったが、これだけ騒いでいれば問題ないかと思って道の角から出て明治通りに戻り、鏡高組の車の少し後ろにあたかも野次馬のように自然とバイクを停車させて覗くようにして騒ぎの方に目を向ければ、やってるやってる。

 さっきのチンピラ2人を押し退けて車から出てきた丸刈り金髪の褐色肌の男が、やたら機嫌の良さそうなキンジとガチンコだ。

 男はガタイも良いしそこら辺のチンピラなんて相手にならないくらいの実力者なのはひと目でわかったものの、相手がキンジ。

 それもどこでなってきたのかHSSを発動してるっぽいのでは喧嘩にもならない感じだ。

 事実、勇ましく吹っ掛けたみたいではあるが、キンジの標識の柱を使ったドロップキックをお見舞いされて盛大に道端へひっくり返って頭を打っていた。

 なんか喧嘩慣れしてない感じだな。格闘スポーツでもやってたタイプか。喧嘩にルールはないから勝手は違うだろうよ。

 キンジと褐色男の戦力の差は歴然でこれ以上は無意味な争いだなぁと思って、懲りずに立ち上がった褐色男にまだやるのかと内心で感心したのも一瞬。

 オレの視界からはバッチリと見えたが、褐色男はその腰の後ろに手を回して何かを取り出そうとしていて、武器の類い。おそらくは拳銃に手をかけたのがわかり、それはさすがにマズイだろ。

 ここにどれだけの野次馬、しかも学生がいると思ってる。

 発砲したら予期しない事態になることだってあり得るのに、そんなことにも頭が回らないのかあの男は。

 どうやら鏡高組でも下っ端レベルのようだった褐色男は、組長の前で無様な姿を晒したくなかったみたいで、オレの危惧を他所に叫びながらついにその拳銃を取り出してキンジへとその銃口を向け、拳銃の登場で野次馬が一斉に逃げ惑う。

 しかしキンジはその拳銃を撃たせるよりも早く接近しあっという間に男から拳銃を奪ってマガジンと薬室の弾を取り出して発砲できなくして予期せぬトラブルは未然に回避した。

 さすが元強襲科。蘭豹の指導が活きたな。

 それでも周りはまだ騒がしくて混雑していたが、その中に警官の姿を発見。

 キンジ達もそれに気付いたようで逃げるような素振りを見せたが、それより前にマークしてた車から例の組長が降りてきてキンジの前に立ってきて、それを改めて見ると確かにオレと歳は変わらないくらいの目つきこそ悪いが美少女。

 その組長は何やらキンジと話をしていたが、なんかキンジが初めて会った人に対する表情をしていなくて気になる。

 と思ったらキンジはその組長と一緒に車へと乗り込んでしまい、褐色男を置いて発進していってしまった。何がどうなってる?

 会話が全く聞こえなかったのが痛いが、ボヤいても仕方ないことなので再び車を追い始めたのだが、完全に失敗した。

 何がと言えば、些細なことではあったがその辺に目ざとい面倒な相手だったということなのだろう。オレの油断が招いた結果だ。

 車を追い始めたのは良かったが、少し走ってから急に車を制限速度より遅く走らせてわざわざ後ろを追い抜かせる挙動を見せたため、オレも速度を落とそうとしたのだが、あれが『オレの尾行に勘づいての確認』であることがわかって、仕方なくその車を1度抜いてやり過ごしたが、こうなると尾行は難しい。

 おそらくはさっきの騒ぎの時、拳銃が出たのにオレが全く逃げる素振りをしなかったのがやつらの目に止まったのだ。

 あの状況で呑気に喧嘩を見続けたオレを怪しんだってことか。不用意に近付きすぎた。一般人になるってのも大変だ。

 なってしまったものは仕方ないので、車を追い越してから道を外れて1度停車。

 最後に見た進行方向から事務所に向かったわけではなさそうだったので、ここはキンジ大好きなあれに頼ってみることにしよう。

 それでオレの携帯を取り出して今は何故か実家に帰省中のかなめに電話すると、やっぱり不機嫌な感じで応じた。

 

『サードから聞いたけど、この辺でコソコソしてるらしいな。で、何の用?』

 

「お前の大好きなお兄ちゃんが夜のデートしてるのを見かけたから、どこに行くのか気になってな。お兄ちゃんの現在地とかわかったりしないか?」

 

 オレに対する対応が悪いのは承知の上だったので、まともに取り合わないことも考慮してちょっとした脚色を加えた情報を流してやると、携帯越しでもかなめの雰囲気が変わったのがわかる。主に悪い方向にな。

 

『ふーん。それでそのお兄ちゃんはどんな女と一緒だったの?』

 

「ちょっと危ない感じの女だったな。あれはひょっとすると強引に……」

 

 ――ばぎんっ!

 煽るようなオレの言葉は最後まで言うことなく、携帯越しから聞こえた何かプラスチック性の物を握り潰した音によって遮られる。こ、怖い……

 

『それで? お前はお兄ちゃんの危機に助け船でも出してくれるのか?』

 

「お前が出ると面倒なことになりかねないだろ。だからオレがちょっと探ってきてやる。必要だったら助け船も出す」

 

『……ちょっと待ってろ。いま確認してみる』

 

 怖かったが、なるべく穏便に済ませるためにオレが現地に向かうことに成功。

 一旦通話を切ったかなめは、1分ちょっとの時間を費やしてまた電話を繋いできて場所を特定したと話すが、どうやったんだ。

 

『お兄ちゃんの携帯に電話して逆探しただけだよ。それで場所は仙石の……』

 

 オレの思考を読んだように場所を特定した方法を述べてからキンジがいるらしい付近の住所を話したかなめは、まだ通話に応じるだけの余裕があったキンジにひとまず安堵したようだが、帰ってから問いただすつもりなのか、その時には何か特別に聞いたりしなかったっぽくて、一応オレが告げ口したことは伏せるように言ってから通話を切って、教えられた住所の周辺目指して走り出した。

 辿り着いたその仙石の一角にある場所には、先ほどの車が駐車場に停めてあって、その駐車場を持ってる店は『紅寶玉(ルビー)』という一見さんお断りのレストラン。

 こういうところはヤクザが所有してたりするが、鏡高組の建物なのかね。

 1度怪しまれている手前、バイクは少し離れたところに停めて、顔を見られる可能性は排除したかったが、あえてヘルメットも外してその店をザッと見て回ってみたが、入るのは無理だな。今は組長もいるしでガードが固い。

 仕方ないので裏口の方へと回って、別の隣接する建物の塀を隔てて様子をうかがってみると、姿こそ見えないが裏口のところから男達の話し声がわずかに漏れ聞こえてきていて、集中するもちょっと聞き取れそうになかったので、ここも適切な人材を使ってみる。

 その人物は、我がチームで完璧なオペレーションを誇り、聴音弁別において他の追随を許さないほど優秀な、しかし実際に会うとそうは絶対に見えない中空知。

 キッチリ1度のコール音で通話に応じた中空知は、非常に聞き取りやすい滑らかな声で丁寧な挨拶の後、早速用件を尋ねてきたので、やりやすい相手にちょっと感動しつつ手早く用件を伝える。

 

「ちょっとこの携帯から聞こえる話し声を拾って欲しいんだが、オレでも聞き取れない声を拾えるか?」

 

『可能です。今も猿飛さんの声以外にも様々な声を聞き取れていますので』

 

 やっぱりこれもう、超能力の類いだろ。

 自信満々とは違うが、そう即答した中空知に迷いはなかったので、今は時間も惜しいので中空知が少しでも聞き取りやすくなるように塀の上に携帯を置いて、裏口の方向に向けてやり、極力静かにして男達の会話が途切れたタイミングで携帯を回収。

 だいたい2分程度は話してたが、果たして内容全てを覚えてくれているのか。

 

『会話については途中からになりますが、それでもよろしいでしょうか?』

 

 杞憂だった。やはり彼女は超優秀だ。

 これは後日、真剣に報酬をどうするか考えないとダメだな。ただでさえ赤字の依頼でこれはキツい……帰ったら食費を切り詰めるか。

 金銭的にまだ蓄えはあるのだが、贅沢をできるほどのものではないので凄い現実的なことを考えつつも、会話を聞き取った中空知からその内容を一字一句逃さずに復唱してもらう。

 

『では復唱します。「あのボウズを手土産にするのも良さそうだな」「そのためにはもう1度姐さんに釣ってもらう必要がある」「それができたらもう、姐さんはお役御免。あのボウズのオプションとしてつければいいか」「コウ先生も強い人間を欲しがってたから、きっと喜ぶだろうな」「ついでに姐さんには今までのお返しをタップリと」「おいおい、姐さんが美人だからってガキ相手にかよ」「売られる前にキズモノにするわけね」「香港ではあのボウズと一緒にどう使われるか楽しみだ」「ちょうど向こうの幹部も来てることだし、タイミングはここだな。決行は明日。姐さんがボウズを誘い出して拘束したら、油断してる姐さんも縛ってそのままコウ先生に引き渡す」。会話は以上ですが、ご理解はできましたか?』

 

「ああ、たぶん大体はわかった。助かったよ中空知」

 

 さすがに朗読のような会話の復唱で抑揚や緊迫感はなかったが、内容はなんとなくわかったので礼を言ってから、落ち着いたら報酬の方は払うと言って通話を切りバイクへと戻る。

 どうやら鏡高組も一枚岩とはいかなかったようだな。

 当然と言えば当然だが、シゲさんも言っていた。この世界は女は何かと不利なのだ。

 その煽りを受けるのは部下。それも年端もいかないガキが組長だと馬鹿にもされていたはず。

 まぁ、オレには関係のないことだからいいのだが、どうやら中国、香港のマフィアと繋がりがあるのは間違いないらしい。

 コウ先生とやらも今は日本に来てるみたいだし、このままマークしてれば顔を合わせるかもしれない。

 そこで組織の名前でも出てくれればオレの仕事も終わる、かもしれない。

 かもしれないばかりだが、実際そうだから仕方ない。

 あとは店にいるキンジが出てくるのを待って、かなめに無事な報告をして、出来れば組長の自宅も特定できればいいが、無理は禁物かな。

 そう考えながらに待つこと少し。

 特に中で何かしてきた様子もないキンジが店から出てきて歩いて帰路についたのを確認したので、早速かなめに連絡し「ただお茶しただけだったようだ」と報告。

 ついでにオレの告げ口があったことは伏せるようにと再度言ってから通話を切って、今夜は警戒されてるだろうと結論して素直に戻ることにした。

 どのみち明日には動きがありそうな話をしていたしな。焦る必要はない。

 鏡高組の内部事情など知ったことではないが、何やらキンジが巻き込まれてる感じはあったのでちょっとだけ心配だが、何かピンチになるようなら助け船くらいは出すか。その場にはオレも居合わせると思うし。

 とりあえずそういったことはしてやることだけ決めてバイクに乗っていたら、さっきの仕返しだろうか、尾行られている。

 おそらくは鏡高組の組員だろうが、1度離れたオレを再度見つけてマークしてきた辺り、オレがどこの誰なのかを突き止めて釘でも刺すつもりか。

 一応本気で仕事してるのにマークされたのはビックリだが、そういったことに特に目ざとい奴が組にいるんだろう。おそらくは元武偵か警察の誰かが。

 そんな状態でノコノコと菜々美さんのところへは戻れないので、とりあえず気付いてないと思わせたまま1度菜々美さんのアパートのある近くを通り過ぎて南下。

 新宿区を抜けて世田谷区まで侵入したところで、よく知らない手頃なホテルの駐車場へと入って顔を見られないようにギリギリまでヘルメットを被ったまま手慣れた感じでそのままそのホテルへと入り、外が見えるロビーのソファーで新聞を読むフリをしながらまだマークされてることを確認。

 これはちょっと面倒臭いな。どうやらオレが尾行に気付いてる前提でマークしてる。だからオレがこうしてフェイクをしていても離れてはくれないだろう。

 こんなのが明日以降も続いたら依頼に影響するので、何とか今夜のうちに振り払っておきたいが、どうしたものか……

 菜々美さんからの帰宅してもいいという履歴もすでに来ていたが、今夜は戻らない方が良さそうだと判断するも、誰かと連絡を取るようなところを見られたくはないし、こっちが目を離した隙にバイクに何かされても困るので何とかして追跡を振り切り、何かするにしてもその後だと判断してホテルのロビーから出て再びヘルメットを装着。

 もうこっちも気付いてないフリはやめて再びバイクを走らせて交通量の多い新宿で撒こうと右往左往する。信号に引っ掛かればこっちの勝ちだ。

 だが向こうもこっちがその気になったのを察したのかピタリとオレの後ろについて走ってきて、都合良くオレと車とが分断される展開にはならず、たとえそのチャンスでも向こうが強引に突っ切ってくるのでちょっとイラつく。しつこいっての。

 そんな感じで1時間近くも新宿を走り回ったわけだが、状況が好転しないのでもう強行策。

 新宿を出て杉並の方へと向かって大きな道路から外れ、車の通れない細い道がないかと走ってから、逆に袋小路へと追い詰められた。

 ように見せかけて向こうから仕掛けてくるタイミングを作ってやると、ここぞとばかりに止まったオレに対して車を降りた2人組の男達。

 スキンヘッドと刺青入りの顔の2人は手強そうだが、蘭豹や綴の方がよっぽど怖い。

 その差がちょっと面白くて笑ってしまうが、バイクを降りたオレはヘルメットを被ったままその2人と対峙。

 やることは簡単だ。ちょっとだけ眠ってもらうだけ。

 油断こそしてなかった2人組だったが、普段から『普通ではないが手強そうにも見えない雰囲気』を放つオレに正確な戦力分析ができなかったのか、一瞬だけ本気になったところ慌てて対応したので、その隙を突いて瞬殺。

 気絶した2人を車に乗せてやってから道を塞いでいるのでニュートラルにギアを入れて退かすと、その場を何事もなかったように離脱して新宿まで戻ってから1度停車して時間を確認すると、もう夜も11時30分を回ってしまっていて、もう寝てるかもと思いつつ菜々美さんに連絡をしてみたら、1コールさえ鳴り切る前に通話に応じられてビックリする。

 

『必ず夜は戻るって言ったのに、キョウ君の嘘つき!』

 

 そしてそこからオレが何かを言うより先に初めて菜々美さんに怒られてしまうのだった。


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