緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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Bullet76.5

 

「これでとりあえずは大丈夫かと」

 

 体育祭翌日の振り替え休日の夜。

 帰りが遅かった京夜先輩とフローレンスさんは、互いにボロボロの状態で部屋に帰ってきて、玄関に入るなり元から意識のなかった京夜先輩を運んだフローレンスさんもそこで力尽きて歩けなくなって倒れてしまい、何事かと思いながらもとりあえず意識のあるフローレンスさんに肩を貸してリビングのソファーまで運んで、意識のない京夜先輩はなんとかリビングまで運んで見える範囲の傷の治療をしつつ、援軍として幸帆さんを招集。

 まさかの超特急で駆けつけた幸帆さんは、テンパり気味の私とは違ってテキパキと行動し始めて、2人で京夜先輩を寝室へと運び、若干ドギマギしつつも京夜先輩からボロボロな制服を脱がせて怪我の具合を診て治療をし着替えさせた幸帆さん。

 そこからさらにベッドに運んで寝かせてようやく一段落したところで次はフローレンスさんと思ったら、その時にはもうソファーで静かに寝息を立てていたので、下手に動かして起こしてしまうと悪いと思って、そっと毛布をかけてあげました。

 正直あの2人があそこまでボロボロになって帰ってきたことに疑問しかなかったのですが、そちらの方は目を覚ました時にでも聞けばいいかと思って、その日は幸帆さんも泊まってくれて一夜を過ごしたのでした。

 翌朝、いつも通りに起床して幸帆さんと一緒に朝食の準備に取りかかろうとしたら、ソファーで寝ていたはずのフローレンスさんがいなくて、洗面室の方から気配がしたのでそちらにいると推測。京夜先輩はまだ寝てますしね。

 一応は今日は登校日なので登校時間ギリギリに京夜先輩を起こしてみるけど、起きなかったら仕方ないかな。結構な怪我してたし、休息は必要だと思う。

 そうやって京夜先輩の心配をしていたら、洗面室からシャワーを浴びて出てきたフローレンスさんが、私達への挨拶も一言に一直線で寝室へと向かって、ベッドで眠る京夜先輩の表情を見て少しだけ触診をすると、今まで見せたことのない穏やかな笑顔をしてから離れて、出入り口にいた私と幸帆さんに顔を向けてくる。

 

「まったく……あれだけやられて骨にも内臓にも異常なし。今日1日安静にしていれば問題ないだろうね。全快となるとまた別の話だけど」

 

 医療の知識があるフローレンスさんがそう言うのだから確かなんだと思うけど、それだけ言って朝食にしようかと私達を強引に寝室から追い出してダイニングテーブルに座らせてそのまま朝食タイムに。

 ど、どうしよう。やっぱり聞くべき、だよね?

 そんな視線を幸帆さんに向けたら、幸帆さんに意思は伝わったのか1度頷いたので私から口を開いてみた。

 

「あの、昨日はどうしてあんなにボロボロで帰ってきたんですか?」

 

「私と彼は仲が悪いからね。日頃の不平不満が爆発してついに喧嘩したのさ」

 

「で、では京様の怪我はフローレンスさんが?」

 

「……フフッ、そんな真に受けないでくれたまえ。いくら私と彼の仲が悪いと言っても、互いに限界を越えてやり合ったりはしないよ。昨日は緊急の依頼があって結構ハードな内容だった。それだけさ。彼は心配させないように内容を伏せるだろうから、私も詳しくは話さないけど、武偵ならあの程度の負傷は覚悟している。だから君達も過度な心配は無用。詮索もしないのが好ましい」

 

 私達がちょっと深刻な顔をしていたからなのか、そんな風に冗談を交えつつ真面目な話をしてくれたフローレンスさん。

 確かに京夜先輩があれほどの怪我をするのはちょっと珍しいから、私と幸帆さんも心配しすぎてたところはあったかもしれない。

 月の始めに入院したこともあったし、この頃は物騒なことに首を突っ込んでいそうなことも察しているけど、本来武偵は危険と隣り合わせの仕事。

 フローレンスさんの言うようにどうしたとか、何があったかとか、聞くべきことではないんだ。

 私達がかけるべき言葉は、無事で良かった。きっとそれだけで十分なんだよね。

 そんなフローレンスさんの言葉に頷いた私と幸帆さんは、今日は療養に努めると言うフローレンスさんと未だ眠ったままの京夜先輩を残して登校。

 お2人の昼食も作り置きしておいたし、帰る頃には目を覚ましているだろう京夜先輩とフローレンスさんのために夜は栄養のある物を作ろうかな。

 それで夕食の献立を考えながら授業に参加していたら、今日はかなめさんが欠席していることに気付いて、小言で陽菜ちゃんに聞いてみると、やんごとなき事情とかなんとかで休んでいることを知る。

 えっと……昨日は京夜先輩もフローレンスさんもボロボロになって帰ってきて、先日までかなめさんとはぶつかってたから……無関係じゃない、かな。

 ま、まぁ、私は前回のことで反省したのでこれ以上の詮索はやめておこうっと。

 休んでるってことはいずれ登校してくるだろうし、その時にやんわりと聞いてみればいいや。

 結局のところ臆病風に吹かれた私は、自分の実力のなさにちょっと落ち込みつつも日々精進をモットーに午後の授業を真剣に受けて、今日も修行に行ってしまった陽菜ちゃんを見送ってから帰宅。

 幸帆さんが今日も来るついでに食材の方を調達してくれると言っていたので、今夜は合作料理でいこうと男子寮の門を潜ると、ちょうど車を出す準備をしていたフローレンスさんと遭遇。

 もう出歩けるほどに回復したらしいフローレンスさんは、私を見つけるや否や爽やかな笑顔で手招きしてきて、それに応じて近寄ってみる。

 

「これから出かけるんだけど、良かったら小鳥ちゃんも行かないかい? きっと小鳥ちゃんの今後のためにもなると思うんだけど」

 

「私のため、ですか? でも京夜先輩は……」

 

「彼なら1時間ほど前に目を覚ましたよ。今は作り置きの昼食を食べて暇してるんじゃないかな。まぁ彼とは間が持たないから私が逃げてきたんだけどね」

 

 と、外出の誘いをしてきたフローレンスさんは、私のちょっとした心配事にウィンクしながら答えて、どうする? みたいな顔を向けてきて、フローレンスさんなりに私のためになると言ってくれた厚意を無下にはできなかった私はそれに了承。

 善は急げと車に乗って出発した私達は、あっという間に学園島を出て品川方面に向かい始める。

 その間に幸帆さんに今日の夕食は1人で作ってくれるように謝罪と共にお願いしておき、了解のメールをいただいてからようやくフローレンスさんとまともなお話に移っていった。

 

「それで、私達はどこへ向かってるのでしょうか」

 

「んー、小鳥ちゃんと行ったことがあるところ」

 

 それでまずは行き先でもと尋ねてみると、なんか凄くボヤッとした答えが返ってきて苦笑。

 頭に乗ってる昴さえ「こいつに聞いても無駄だと思う」なんて失礼なことを言うので、昴の言葉がフローレンスさんにわからなくて良かったと思いつつ、私がフローレンスさんと一緒に行ったところを思い出してみる。

 フローレンスさんとは意外に外出の回数は多かったりする。

 たまに学園島の外にお買い物へ行く際に車を出してもらったり、幸帆さんの東京案内の時にも一緒についてきてもらったり。

 でも今の進路は品川をさらに南下して東京を離れてる感じ。プライベート以外だと燐歌さんの護衛依頼の時と……あっ。

 と、そこまで考え至って思わず間抜けな声を口からも出してしまった私に、運転中のフローレンスさんがクスリと笑ってきて非常に恥ずかしい。

 

「横浜……ですか?」

 

「……小鳥ちゃんは、過去に解決した依頼の当事者と会ったことってある?」

 

「えっと、一般の方となるとたぶんないと思います。燐歌さんみたいな方は情報誌なんかで見かけたりはありますけど、そうではなくてですよね」

 

「うん、それはちょっと違うね。でも経験なしか。じゃあ着いたら小鳥ちゃんは何も喋らなくていいから。ただ私の少し後ろで事の成り行きを見届けていてほしい」

 

「はい……わかり……ました」

 

 どうやら横浜に行くのは合っていたようだけど、注意するようなフローレンスさんの指示にはちょっと意図が見えなくて微妙な返事をしてしまう。

 黙って見届けるだけで、それが私の今後のためになるのかな……

 その後はフローレンスさんが沈黙を嫌ってかずっとトークを続けてくれて、それに応対していたらいつの間にか横浜市内に突入。

 空は暗くなって夕食時かなと思われる頃に、私にとっては決して忘れてはいけないことがあった場所に到着。

 9月の半ばにフローレンスさんがリーダーの下で解決した事件。

 その犯人を逮捕した高級マンションの前に来て、私は当時の出来事を思い出すように、敷地内の外付け倉庫へと目を向けて、そこに供えられている献花に心が痛む。

 そんな私を見てそっと肩に触れたフローレンスさんは、少しだけ笑って私の足を前に進めてくれて、マンションのオートロック玄関の前まで来てから、呼び出し口で応対して玄関を開けてもらって、今回用がある人の部屋へと向かった。

 ここまで来ると私でももう誰に会うのかはわかる。

 正直なところ、今ここまで来たことをちょっと後悔もしてる。だって、あの人にはどんな顔をして会えばいいかわからないよ……

 しかし私の心の準備が整うよりも早く、その人がいる部屋の前までやって来た私達は、フローレンスさんが押したチャイムによって出てきたその人とすぐに対面を果たしてしまう。

 先の事件で犯人の手にかかってしまった旦那さんの奥さん。

 事件当時はとても綺麗で笑顔がとっても似合う美人な方だったのに、玄関の扉を開けて見せた今の顔は、ちゃんと食べていないのか痩せ細ってしまい、満足に寝られていないのか目にもうっすらと隈ができていた。

 まるで別人。生気もだいぶ抜け落ちたようなその奥さんに動揺してしまった私だったけど、フローレンスさんはそんな奥さんに一礼してからお話を始める。

 

「会ってくれないことも覚悟していたのですが、通してもらえて感謝します」

 

「……ご用件はなんです?」

 

「その後の奥様の経過がよろしくないとうかがったもので、心配になり様子を見に来てしまいました。ですが予想以上に気を病んでらっしゃるようで。私が言えたことではありませんが、あなたがちゃんと立って前を向かないと、旦那さんもきっと悲しみま……」

 

 私では言葉さえ見つからない中で、奥さんと正面から向き合って話すフローレンスさんに、急に眼光鋭くした奥さんはフローレンスさんの言葉を切って「あなたに何がわかるの!」と怒鳴り、扉を全開させてフローレンスさんを睨み付け、私はそのフローレンスさんの背中に隠れることしかできない。

 

「わかりません。あなたの悲しみの深さも、旦那さんがどう思っているかも、私にはわかりません。ですがあなたは私達が必死に助けた尊い命です。それをないがしろにされるのはとても悲しい……」

 

「だったら……どうしてあの人を助けてくれなかったのよ! どうして私だけ助けたのよ!」

 

 ――ズキンッ。

 とてもよくわかるフローレンスさんの気持ちに対して、奥さんがぶつけた言葉は、私の胸の中心で大きな痛みを伴う。

 結果だけ見れば、あの事件は犯人逮捕で解決できた。だけどその過程で私達はこの人の旦那さんを守れなかった。

 もっと上手くできていれば、助けられたかもしれない命。被害こそ拡大は阻止できたけど、その助けられた人からぶつけられた今の言葉は、私の心を迷わせる。

 この人を助けられたのがせめてもの救いだった私にとって、死にたいとでも言うような叫びが、助けてはいけなかったのかと心に影を落とす。

 

「…………引っ越しされると聞きました。それであなたの気持ちが少しでも安らぎを持てるなら、とても良い選択……」

 

「どこに行ったって私が心安らかに眠れる場所なんてないわ。一緒にいるのが当たり前だったあの人がいなくなったあの日から、私にはもう……世界が色褪せて見えてるのよ……」

 

「人には生きる義務があります。その命を精一杯生きる義務が。それを放棄することを、旦那さんが喜ぶとでも……」

 

「……帰って……お願い……帰ってください……」

 

 それでも優しい言葉をかけるフローレンスさんに、最後は拒絶を示した奥さんは泣きながら扉を閉めてしまい、廊下に残された私とフローレンスさんは少しの沈黙の後に一切の会話もなしにマンションから出て車へと戻っていった。

 

「……良かったよ。あの人がまだ、私に怒鳴るだけの感情を持っていたことが」

 

 車に戻ってからエンジンをかける前に、少しだけ笑いながらそう言ったフローレンスさん。

 良かった? 何が良かったんですか……

 

「しかしカウンセリングはやってもらえてるはずなんだが、成果が芳しくなかったな。武偵庁には後日もう少し良質なカウンセリングを打診して……」

 

「…………冷静なんですね、フローレンスさんは……」

 

 あんなに心ないことを言われたのに、気にもしてないような感じで奥さんのことを尚も心配するフローレンスさんに、突っかかるような言葉を言ってしまった私は、その顔をフローレンスさんに向けられない。

 こんなこと言うつもりじゃなかったのに……

 

「私は慣れてるからね。今回だけじゃないのさ、こんなことは」

 

 そんな少し冷たい私の言葉に声色を変えることなく答えたフローレンスさんに、私もゆっくりと顔を向けたら、ニコッと優しい笑顔を返されてちょっとドキッとしてしまう。

 うぅ……そんな顔されたら謝るのが難しくなるよぉ……

 

「国によって依頼の危険度はまちまちだけど、日本はまだ安全な部類に入る国だからね。連続殺人とかそういうのはまだまだ現実味を帯びていない人達が多い。私はそんな犯罪者と関わることが多いから、被害者遺族とも顔を合わせることがある。中には今回のあの人のように精神的に参ってしまったり、最悪自殺する人もいて、こっちも気が滅入ることがある。だけど私達が至らなかったせいで起きた悲劇を、私達まで悲観して俯いたら負の連鎖さ。だから私は被害者遺族へのアフターケアの重要性を問う論文と共に、カウンセラーの育成とセラピー関係のイベントに尽力している。それに加えて『加害者側のアフターケア』も、時と場合によっては必要だと、最近気付かされてね。そちらも同時進行させていくつもりだ。そのためには何にしても資金は必要だから、万年金欠ではあるんだけど」

 

 それから今日のようなことがこれまで何度もあったことを話したフローレンスさん。

 それはきっと慣れてるなんてことはないはずで、私に気を遣ってくれたのだとわかって、凄く自分が小さく感じてしまう。

 

「それにあの人は、私の言葉をただ拒絶していたわけじゃないよ。ぶつけようのない言葉を私にぶつけて、きっと彼女も心が痛んでいたはずで、だからあれ以上私を傷つけないように帰らせた。お願いと、謝罪の意味を込めてね」

 

 そして極めつけにそう語られた時、私はあの奥さんの本当の声を聞くことをせずに耳を塞いでしまった自分がさらに小さいと感じて、もうここから消え去りたいくらいの気持ちになる。

 私は何でこんなにも子供なんだろう……自分のことばかりで周りを全く見ていない……

 そんな風な考えが浮かぶ中で、膝を抱えてしまった私を見かねたフローレンスさんは、そっと私の頭に触れて軽く撫でると、優しい笑顔のまま語りかけてくる。

 

「これから先、武偵である以上、こういう経験はまたするかもしれない。だから忘れないでほしいんだ。負の連鎖を止めるのが私達の仕事で、そのために自分に何ができるのかを常に考える。それができれば、きっと小鳥ちゃんは今よりずっと素敵な武偵になれるって信じてる。彼ではこんなことを戦妹に教えはしないだろうからね、私がそれを補ってあげたが、余計なお世話だったかな?」

 

「……いえ、とても貴重な経験をさせてもらいました。フローレンスさんはやっぱり立派な人です。以前はよくわからないことを言って否定してましたけど、私はフローレンスさんのことを尊敬しています」

 

 今日、どうして私なんかにこんなことをしてくれたのかわからないけど、そんな正直な気持ちを言ったら珍しく驚くような表情をしたフローレンスさんは、少しだけ照れ臭そうに「参ったな……」なんて言ってからエンジンをかけて車を走らせ始めて、京夜先輩と幸帆さんの待つ男子寮へと帰るための帰路についた。

 

「でもどうして私を連れて行こうなんて思ったんです? 私はフローレンスさんにそこまで良くしてもらうことなんてしてませんし」

 

 それでも気になってしまったので、道中で今回の行動の理由について尋ねてみたら、ちょっとだけ言葉を選ぶような沈黙から運転しながら口を開いてくれた。

 

「小鳥ちゃんが彼の戦妹だから、かな。彼には昨日、ちょっとした借りができてしまってね。彼は気にもしないようなことだが、私が気にしてしまったから、彼の知らぬところで勝手に返そうと思ってね。それに小鳥ちゃんには『何かを残したかった』のかもしれないな」

 

 どうやら私の何かに対する何かをしてくれたというわけではなく、京夜先輩が原因らしいことはわかったけど、最後に言った言葉は理解しづらいな。

 何かを残したかったなんて、まるで私の前からいなくなるみたいで嫌な感じ。

 

「それよりも時間も時間だし、どこかの店に寄ってディナーの後に帰るというのはどうかな? 小鳥ちゃんとのデートなんて久しぶりだし」

 

「幸帆さんがもう作って待っててくれてるでしょうし、デートもしたことはない気がするんですけど……」

 

「えっ……ちょっとショックだよ。私は今までの小鳥ちゃんとのショッピングなんかは全部デートにカウントしていたのに……」

 

 そんな思考が頭をよぎったところで、唐突に上機嫌になったフローレンスさんに釣られて私もちょっと乗せられてしまうけど、あからさまな嘘泣きをしながら運転するフローレンスさんに苦笑。

 この人は本当に時々反応に困るんだよね。

 

「というより、カッコ良いフローレンスさんなら、もっと可愛い女の子とデートしているんじゃないですか。私なんて男の人に免疫がなくて一緒にいてもつまらないでしょうし」

 

 あちらが泣き落としできたので、こちらもふて腐れ気味で応戦してみることにしたら、赤信号で止まったフローレンスさんは不思議そうに私を見てきて、どうしたのかと思えば、急にその腕を私の後ろに回して肩を寄せてきてドキリ。

 えっ、まさか何かのスイッチが入っちゃったの!?

 と思って耳元に顔を近付けたフローレンスさんは、右手で武偵手帳を取り出してあるページを開いてから、耳元でそっと衝撃の事実をささやいた。

 

「私は小鳥ちゃんと同じ女の子だよ」

 

「…………へっ?」

 

 そんなフローレンスさんのささやきに、今日一番の間抜けな声を出した私は、開かれた武偵手帳の身分証明のページをよく見て、そこにしっかり性別が女であることを確認。

 ちょっと信じられなかったので2度見したけど、やっぱりそこには女という証明があって……

 

「えええええぇぇぇぇええええええええっ!!」

 

 おそらく私の人生の中で1、2を争うほどの驚きの声を張り上げてしまったのだった。


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