緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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 体育祭の翌日は振り替え休日だったため、遠からず来るであろうジーサードの出現に備えて英気を養うかと朝から部屋でまったりとしていたら、糞テンションの高い理子が「図書館でエロ本探ししよーよ!」とかアホらしい提案を持ってきて速攻で却下すると、意外にもあっさり退いた理子は「じゃあキーくん弄りは理子だけでやってくるか」とかなんとか言いながら玄関を出ていってしまうが、その時に妙に理子の影が濃いのに気付いたオレは階段へと向かい背中を見せていた理子の影をじっと睨んでやると、理子が階段を降りていった後に角から何故か偉そうなヒルダが姿を見せて扇子で口元を隠しながら話しかけてきた。

 

「理子にではなく私に熱い視線を向けるなんて、お前は女の好みが変わったのかしらね、サルトビ」

 

「…………お前が理子に影としてくっついてるのは何度か見てるが、堂々と隣にいないのは、自分が理子にしてきたことへの罪の意識があるからか?」

 

 オレの視線だけで用があることを悟って出てきたヒルダの挨拶代わりの言葉を無視して、ここ最近のヒルダの行動の真意を問う。

 ヒルダは理子の血の提供のおかげで一命を取り留め、ジーサード襲撃の辺りから理子の周りをウロチョロしてるのを見かけていて、先日のランバージャックの時も理子の影として足元に潜んでいた。

 そんな問いかけに対してヒルダは感情のコントロールが下手なのか、物凄く分かりやすい顔をしたので思わずクスリとすると、それが気に食わなかったのか「ぶ、無礼者っ!」と噛みつかれてしまう。

 

「私の行動をお前にとやかく言われる筋合いはないでしょう。それとも私が理子のそばにいて、お前に不都合でもあるのかしら?」

 

「不都合はないが、理子に危害を加えるつもりでいるなら無視できないだろ。まぁ、今の反応でその可能性もないとわかったけどな」

 

 なんとか平静を装おうとするヒルダの返しに、オレがちょっと意地悪な返しをしてやれば、図星を突かれたヒルダは顔を真っ赤にして「お黙りなさい!」と怒ってくるが、防音・防弾性の壁とはいえ他の部屋の住人に迷惑になってるかもしれんな。

 これ以上いじめるのはやめとくか。というか普通に話せば吸血鬼なんて関係なく女の子なんだな、こいつ。

 

「なんにせよ、理子に対して友好的な関係を築きたいってことなら、今後は協力してやってもいいとは思ってる。ただその代わり、1つお願いを聞いてくれないか?」

 

 それでオレが理子との仲を取り持ってもいいと言えば、一瞬パアッと明るい顔をして、すぐに仏頂面に戻るも悪い話ではないと思ってはくれたようなので1つのお願いを持ちかけると、上から目線で「言ってみなさい」と返されたので話だけでもと口を開く。

 

「あいつは……理子は別に1人にしてても大丈夫なくらい強い。でも、それでも弱い部分はある。だからオレや他の誰かがあいつのそばにいてやれない時は、お前があいつのそばにいてやってくれ。それであいつの助けになってくれるとありがたい」

 

 我ながら理子に対しておせっかいなお願いだと思うが、1度は助けた命を簡単に捨てられてもオレが嫌なのだ。

 だからこそ1人寂しく死んでいくような、そんな末路を辿らせないためにオレはヒルダにこんなお願いをしている。

 そのお願いがヒルダにとっては予想外だったのか、驚いたように目を見開いている表情で固まっていたのだが、真剣な内容と理解したのか向こうもキリッとした表情へと変わって扇子をパチンと閉じる。

 

「ついこの間まで敵だった、お前達を殺そうとまでした私に、お前がそんなお願いをするなんてね」

 

「昨日の敵はなんとやら。お前の実力は理解してるつもりだし、完全に信用してるわけでもない。だが、こう言っておけばお前もいざって時にウダウダせず理子を助けられるだろ。まぁ、オレからお願いされたとは言わずに『理子のことが放っておけなかったから』とでも言えればお前自身の好感度が上がるかもしれないがな」

 

 真剣なお願いではあったが、別にヒルダに強制力や義務感を持たせたかったわけではなく、あくまで理子の助けに遠慮はいらないと背中を押してやったに過ぎない。

 だから理子に真意を問われた際の逃げ道としてオレのお願いを入れてやったが、自らが理子に好かれることを想像したのか照れまくってるヒルダは、おそらく本当にそんな場面になった時にテンパって自分の意思じゃないことを言ってしまうだろうことが容易に予想できてしまう。

 ツンデレってのも難儀な生き物だな。

 

「話はそれだけだ。理子のこと、これからもちゃんと見てやってくれ」

 

「ふ、ふんっ。お前に言われずとも、理子に危害を加える輩には私がその行いを後悔するほどの罰を与えてやるわ。あーあ、サルトビとこんな長話をしたなんて理子に知られたら嫌われてしまうかもしれないわね。それだけは避けたいから、このことは他言無用よ、サルトビ。ではごきげんよう」

 

 そうしてツンデレなヒルダは最後にガッツリ理子が好きだみたいな言葉を連ねてデレデレなまま去っていき、武偵としては圧倒的に向いてない性格のヒルダにちょっとした不安を抱えつつも、実力は確かだからとプラマイゼロ、よりは少しだけプラスで自分を安心させるのだった。

 朝から厄介なやつを追っ払うのとヒルダとの対話を終えてから、リビングでニュース番組を見ながらミズチの整備やらを始めたオレは、幸帆のところでお菓子作りに行って小鳥がいないことを思い出して、ぼんやりと昼食をどうするか考えていた。

 羽鳥のやつは昼過ぎまで寝てるだろうし、外食でもいいかもなぁ。

 そんなことを思っていたら、その羽鳥が何故か寝ていたはずの自室から出てきて、何やら誰かと通話中。

 まだ11時くらいだが、あいつの睡眠より優先される重要な案件なのか。

 

「うんうん。それはこっちで何とかしてみるよ。……ん? 彼を? んー、どうだろうねぇ……」

 

 そう思ってチラッと羽鳥のやつを見てみたら、女に対して使う言葉と表情で、あからさまにオレを見ながら歯切れの悪い会話をするので、さして重要な案件でもなさそうだなと勝手に予想。

 これはあれだな、無視が最良の選択だ。

 実に嫌な視線を羽鳥から浴びせられながら黙々と作業をしていたのだが、ウンウン唸りながら何か決心したのか、1度通話を保留にした羽鳥は近くのソファーに座って嫌々話しかけてくる。嫌なら話しかけるな。

 

「これからCVRのⅠ種の子達と親睦を深める会を行うんだけど、男の方は私が声かけしないといけなくてね。しかし向こうから君を推薦する声があったから、一応尋ねるけど、行く気はあるかい?」

 

「誰が行くかアホ」

 

 やっぱり大した案件ではなかった羽鳥の話に、視線すら向けずに即答してやる。

 というかCVRのⅠ種って言えば、どノーマルな男を相手にする美人の中の美人な子達だろ。そんなのと親睦を深めるとか色々怖いっての。

 

「そうだよねぇ。君ならそう言うだろうとは思ったけど、向こうがどうしてもって言うから今回は粘らせてもらうよ。というわけで第1の手。これから幸帆ちゃんに『猿飛京夜が女を泣かせようとしているんだけど、君からそれを止めてくれないか』とメールを送る」

 

「オレに確認のメールか電話が来るから、そこで合コンに誘われただけだと説明する。お前よりオレの方が信用度は高いからそれだけで問題ない」

 

「ふむ、幸帆ちゃんでは無理か。それなら第2の手」

 

 しかし今日はなかなか食い下がってくるので、こちらの弱味をつついてくるやり方に若干イラつきながらも動じずに迎撃するが、まだ手があるのか。

 

「この前見つけた月華美迅のPRサイトに京奈の綺麗に撮れた画像を投稿してみるか」

 

「画像の流出は東京湾に沈む覚悟をしろって言ったよな?」

 

「私はそんな話は聞いていないね。それにたとえ聞いていてもこの状況を作っただろうし、意味のない抑止力だよ。しかしまぁ、これは脅しになってしまうしね、参加してくれさえすれば、今回君にかかる経費は私の負担で構わないよ。タダでご飯にありつけると考えれば安いものだろ?」

 

「……世の中にはタダより高いものはないって言葉があるんだよバカが」

 

 その第2の手とやらが物凄く嫌なところを抉ってきたため、こちらから先手で脅しをかけるも、そんなのなんのその。

 そんなことしてもされる前に事を終えてしまうと暗に示した上で逆に脅しをかけられてしまう。

 実際、羽鳥をここで一時的に行動不能にできても、腹いせにオレの目の届かないところで京奈の画像を流出させることもできるため、無意味な脅し合いはやめて譲歩し妥協点を作った羽鳥はやはり頭が回る。

 最初からここに落ち着けるのが目的だったなら上手く乗せられたなこれ。

 そして望まぬ合コン紛いの集いに参加することになったオレは、女が3人で男をあと1人誘わないとと言う羽鳥に不知火を推薦してやり、オレから誘ってみると「猿飛君と羽鳥君の引き立て役にしかならないけど」などと先日の美男子コンテストで準優勝したやつが言うので、どの顔で言うかと思いつつも参加してくれるのでツッコまず、現地合流として時間と場所を伝えた。

 そこからは羽鳥の迅速な行動により、あっという間に新宿まで車で出向いて合コン向きな食べ放題付きのちょっとリッチなカラオケ店を押さえ、さすがの行動力を見せる不知火と女子が来る前に合流。

 平日とあってまだ学生などの姿が見えずにほとんど貸し切りのカラオケ店にCVRの女子達が来てから全員で個室に入ると、自己紹介も特になし――というか顔と名前くらいは全員知ってる――で各々自由に席に着いたのだが、オレにはその自由はなく、あれよあれよと一番奥に詰められて両隣を女子に座られ、もう1人の女子も男女で交互になるような座り方をせずに、端に羽鳥と不知火が座る特殊な感じになってしまう。

 今回来たCVRの女子3人は、3人ともがもれなく美人なのだが、そのタイプはハッキリと違って、右隣を占拠する子は典型的なモデルスタイルの大人の魅力を前面に出すタイプで、確か読者モデルの仕事もやってるとか聞いたことがあり、左隣の子は白雪も顔負けのメリハリのある抜群のプロポーションを誇りながら、理子のような可愛さを前面に出している、アイドルとでもいう感じ。

 残りの1人はその2人の良いところを上手く組み合わせたような、日本男子が理想とするスタイルを地で行くおしとやかな子。

 注文した料理を取り分けたり、周囲への気配りなどが完璧なので、母性を前面に出しているタイプといったところか。

 そんな三者三様な魅力溢れる女子3人に囲まれる形になってると当然、悪い気はしないのが男という生き物だが、全員がCVRという現実がオレを完全には良い気分にはしない。

 さすが色仕掛けの専門とあって、3人ともが自分の長所をよく理解してる上で自分の魅せ方を知っている。

 オレからは見えるように胸の谷間を強調したり、くっつくように腕に絡んできたり、足の組み方1つ取ってもそこを注視してしまうくらい動きが計算されていて、CVRの怖さを思い知らされる。

 こうやってオレとの距離感を確かめながら、効果的な色仕掛けは何かを探って色々と仕掛けてきてるのだ。

 そんなあれやこれやな女の武器が際限なくオレを攻撃してきて、羽鳥と不知火はほとんど盛り上げ役に徹してる状況が不思議でならない。

 不知火はともかく、あの羽鳥が自分より人気のオレを放っておくわけがないのだから。

 しかもただ親睦を深めるって目的なら、オレだけが攻撃されるのは納得がいかない。

 そう思って不知火と羽鳥にも話題振りをしてみたりと慣れないことをするのだが、2、3言葉を交わしたかと思えばすぐにオレへと話が戻ってきてしまって、それを3度繰り返してからようやくこの親睦会の女子3人の目的がわかった。

 繰り返される色仕掛けの連続で精神的にだいぶ弱っていたオレだったが、1度トイレに立って個室を出る際に羽鳥も一緒に道連れで外へと出ると、何食わぬ顔で何か用かみたいに首を傾げるので大きなため息を吐いて言いたいことを言っておく。

 

「発端はどっちからだ? お前か? あの子達か?」

 

「ふむ、やはり気付くか。これはCVRって正直に言ったのが仇になったかな。君も疑り深いねぇ」

 

「顔見りゃ誰かくらいわかるからどのみちCVRなのはバレるだろ。で、オレをオトしたら何か報酬でもあるのか?」

 

「まさか。報酬なんてありはしないよ。これは彼女達が己の技術とプライドを賭けて望んでやっていること。強いて挙げるなら、君と過ごす時間が彼女達にとってのかけがえのない報酬なんじゃないかな」

 

 と、オレの問いに対して正直に話しつつも、キザな台詞で返してきた羽鳥だったが、また面倒なことに巻き込んでくれたものだ。

 要するにどういう選定基準かはわからないが、選ばれたオレから好印象を貰えるようにあれこれして、自分達がCVRとしてどれほど優秀かを競っていると、そんな感じなんだと思われる。

 おそらくはオレのデータを元に今回、好まれるであろう自分の『顔』を設定したはずの彼女達だが、やはり今までランク的にもパッとしなかったオレだけにデータも不十分だったのかここに来てからの探り方が半端なかったな。

 今頃は1人残った不知火を相手にしながらまた思考していると思うと戻るのがちょっと怖いが、タダ飯にありついてしまった手前で途中退場は気が引けてしまうのも事実。

 

「そんなあからさまに嫌な顔をすると、全力でやっている彼女達に失礼だと思うがね。それに君は少し、CVRという学科に偏見や距離を置いているところはないか? 色仕掛けなんて、とかそんな認識で彼女達を見てるなら、君は自らを恥ずべきだ」

 

「オレの心を読むなよ。それとCVRをバカにするようなことは1度も思ったことはない。自分から仲良くなろうと思ってないのは合ってるが……」

 

「だとしたら今回は君にとって貴重な経験になるはずだ。それを無下にするかどうかは、彼女達と真剣に向き合うかどうかにかかっていることを理解した上で戻りたまえ」

 

 そんな思惑を理解したところで個室に戻るのをためらっていると、珍しく真剣な顔になった羽鳥は、オレに何かに気付かせるような意味のある言葉を残して先に個室へと戻っていき、どのみちここで退場しても京奈の画像が愛菜さんと千雨さんの目に触れてしまうだけなので、トイレで1度落ち着いてから個室へと戻り、また彼女達の囲いの中心へと誘われていった。

 羽鳥の言うようにオレはその性質上、CVRに若干の苦手意識を持っていたため、学科間でのコミュニケーションでもCVRだけは極端に交流がなかった。

 理子の元戦妹の麒麟もCVRだから嫌われてる認識が強かったのもあるが、やはり心のどこかで『CVRなんて』と思うところがあったのかもしれない。

 しかしCVRはどこで依頼をこなすにしても、大抵は敵地のど真ん中に放り込まれて情報収集することが多いため、ある意味で強襲科や諜報科よりもその危険度は高いのだ。

 だからこそ彼女達は生死に関わる自らを常に磨き、誇りとしている。

 そんな彼女達と正面から真剣に向き合って改めて彼女達の色仕掛けに応じてみると、やはりその凄さを思い知らされる。

 こちらの意識的にやった行動――視線を太ももに向けたり、腕に絡んでくるのも軽く振り払ってみたり――に対してはあまり修正をしてこなく、オレが不意にやってしまった行動――顔を近付けられて少し離れたり――に対してはすぐさま微修正をしてくるのだ。

 つまり彼女達はオレの本心を正確に見抜いて、的確な判断と距離感を保ちながら徐々に詰めてきていることを示している。

 おそらくその手の観察眼ではオレは彼女達に全く歯が立たないことを理解させられてしまった。

 カラオケ店ではおよそ2時間ほど満喫したオレ達は、続けて近くのゲーセンも併設するボウリング場でボウリングを楽しんだ後、ゲーセンでエアホッケーをしたりプリクラを撮ったりと普通の学生みたいなことをして遊び、施設を出た頃にはもう空がうっすらと赤く染まり始めていた。

 そこからさらにどこかへ行くのかと思ったのだが、どうやら今日はこれでお開きとなって羽鳥が車を取りに行き、不知火もこれから用事があるとかで行ってしまって彼女達と1人で待ちぼうけを食らっていたら、その彼女達が今日の自分達がどうだったかを具体的に評価してと言ってきてマジかと思うが、それが本来の目的だったのだからここであやふやな評価をするのは彼女達に失礼。

 だからまずは総評として『CVRの凄さを再認識できた』と言えば、意外な言葉だったのか3人ともが少し驚くような表情をして、次には素直に嬉しかったのか感謝の言葉を返されてしまい、その時の笑顔が自然でちょっとドキッとしてしまう。

 なんかCVRが見せる正直な顔は見せられると照れくさい。

 そんな彼女達の反応に困りつつも、気を取り直して3人の今日の序列と個別の評価へと移り、自分なりの良し悪しを述べてみると、てっきりそれで3人が言い合いでも始めてしまうかと思ったが、その予想に反して「やっぱりね」とか「あれがダメだったか」とか3人が真面目に反省会みたいなことをしていたので、ここでもまたオレは彼女達を見誤っていたことを反省。

 この子達はオレなんかよりもずっと武偵として立派なプライドを持ってる。見習うべきはオレの方、か。

 それから最後にどうして今日オレを選んだのかと尋ねてみると、答えは単純なもので『依頼では何かと不透明な男性をオトさないといけない場合もあるから、そのための練習』と説明されて納得してしまう。

 他にも適任者はいそうなものだが、まぁ羽鳥経由でセッティングしやすかったってところか。

 そう予想しつつ、呼んでいたタクシーが来たっぽいことを確認し、ようやく終わりかと肩の力をちょっとだけ抜いたら、不意に彼女達から今日のオレの分析結果を練習台に使った謝礼にと述べられる。

 それによるとオレは生足。特に太ももに弱いらしく、グイグイ来られるのには強いが、距離感を保ったところからの気配りに困ってたとか。

 こういうのは周りの環境に影響されるのかもしれないが、彼女達がそう分析したからには今後は気を付けておいて損はないな。

 そんな分析に一応の礼は言っておくと、横につけてきたタクシーに乗り込む際に言い忘れていたかのように口を揃えて「それから猿飛君には意中の女の子がいるっぽい」と笑いながら言われてしまい、はて、誰だろうな? と真剣に考えてそれをまた笑われたところで3人ともがタクシーに乗ってしまい、そのまま学園島へと帰っていってしまった。

 確かに気にかけてるやつはいるが、あれはちょっと違う気がする……んだがなぁ……

 最後の最後でモヤッとするものを投下されて唸ってしまったが、その思考を止めるようにオレの携帯が着信を知らせてきて、見れば知らない番号からだが、何か不吉なものを感じてそれに応じてみると、電話の相手は玉藻様だった。

 

『猿飛のか? 至急具足を付けて出よ。ジーサードが東京に戻ってきよった』

 

 この危険予知的な勘が当たるのはいい加減うんざりだが、玉藻様の言葉で完全に切り替わったオレは、タイミング良く来た羽鳥の車に急いで乗り込んで、玉藻様が知らせた場所へと向かい始めた。

 そういやあいつには1発仕返しするって決めてたっけな。かなめの時は穏便にやったが、今回はそうはいかないかもしれん。私怨って怖いよな。


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