かなめと間宮達の決闘が終わってからまっすぐに男子寮へと帰ってきたオレは、ちゃんとキンジの部屋に戻ったかなめを見届けてから部屋に戻ってそのまま就寝。
なんだかんだで気を張りっぱなしの1日だったこともあってすぐに寝つけたが、やはり染み付いた習慣には逆らえずいつも通りの時間に目が覚めて、ここ最近何かと奮闘していたらしく疲れていたのか小鳥も幸帆もまだ寝ていたので、たまには朝食くらい作ってやるかと静かに寝室を出てからズボンとYシャツだけ着てキッチンに向かおうとしたが、昇りきってない朝日の照らすベランダの景色に妙にカモメが飛んでいたので、ベランダに出て周りを見てみるが、何もない、よな。
「昨日の今日で早起きって、ジジ臭いね」
そう思って引っ込もうとしたら、いきなり下の階のベランダから声がしてビクッとしてしまうが、失礼な言葉と声からしてかなめだ。
気を抜いてたのもあるが、覇気みたいなものを出さないかなめは初めてだったから気付けなかったな。
「ジジ臭いはやめろ。日本には『早起きは三文の得』って諺があるくらい良いもんなんだからな」
驚きはしたが、かなめから声をかけてきたことにもの珍しさがあったのでベランダに腰かけて少しだけ会話を試みてみることにしてその返事を待ってみる。
「それは知ってる。アメリカにも同じような諺があるしね」
「そうなのか。で、ひと晩置いて気持ちの整理はついたのか?」
「…………落ち着きはしたよ。でも、それでもあたしの運命は変わらない。兵器としての価値を見出だせなかったあたしは、サードにとってもアメリカにとっても『不良品』だから、きっと近くに破棄される」
昨夜はもうどうでもいいと自棄になってたかなめからすれば、今はずいぶん良い状態にあるが、それでも自分が抱える問題が解決したわけではないことを再確認したようで気持ち的には落ち込んでいるみたいだな。
「誰にも必要とされない。役立たずは居場所がないってか。じゃあ今、かなめは迷子の迷子の子猫ちゃん状態なわけだ」
「笑いたいなら笑えばいいだろ。自分の居場所があるやつにあたしの気持ちなんてわかるわけないんだから」
「……わかるよ。必要とされないことの辛さや痛みも、居場所を失う悲しみも。オレも昔、同じように自分を否定されたことがあるからな」
そんなかなめの今が、東京に来る前のオレとどこか被って、思わず共感するようなことを言ってしまったが、その反応が意外だったのか、かなめは「なんだよそれ」と言ったきり黙ってしまうので、続けろということなのか?
「ん、あんまり偉そうに言うのも変だけど、そういうことを体験した人生の先輩からの言葉だ。自分の居場所なんてのはさ、いくらでもあると思うんだよ。大切なのは自分がそこにいるために、その居場所を守るために、精一杯のことをやれるかどうか。それができないなら、そこは自分にとってその程度だったってだけ。そこにいなきゃとか使命感に駆られるのは、そこしか居場所がないと狭い視野で見て思うから。だからもっと視野を広くしてみろよ。お前は誰かに言われないとその目をどこかに向けることもできないわけじゃないだろ」
かなめの心に響くとかはどうでもいい。
だが今のかなめを見て、幸姉がいなくなった当時、オレを心配し励ましてくれた月華美迅の皆さんがどんな気持ちでオレに前を向かせようとしてくれたのか、なんとなくわかった気がした。
きっとこんな風に、何かに気付いてくれと願いを込めて、たくさんの言葉をかけてくれたのだろう。
「あとこれはオレのさらに人生の先輩のありがたい言葉な。かなめは自分を不良品って言ったけど……まぁ、かなめにとっての意味は兵器としての不良品ってことだろうけど、人間ってのはみんな等しく『欠陥品』なんだと。その欠陥品が互いの欠陥を埋め合ってようやく機能するのが人間なんだってさ。つまりかなめは誰かいないとちゃんと機能できなくて、逆にかなめがいないと機能しないやつもこの世の中にはいるってことだ」
「…………そんなやつ、いるわけないじゃん……」
「そうか? オレはいると思うぞ。お前がお兄ちゃんと慕うやつは、これで実は面倒見が良くて優しいやつでな。可愛い妹のお前がいなくなると意外と機能不全を起こす。これは確実だ」
それでこれ以上は本当にジジ臭いお説教みたいになりそうなので、昔に眞弓さんが言っていたありがたい言葉を聞かせてやって、返ってきた言葉にさらに返してやってから立ち上がってちょっとだけ下のベランダを覗くと、ベランダに止まったカモメと「お兄ちゃんが……」とか呟いてるかなめの姿を確認。
「だからかなめがキンジのそばにこれからもいたいって本気で思うなら、自分じゃどうにもできないって思うなら、もっとキンジを信じて頼れ。お前のお兄ちゃんはきっとお前を守ってくれる」
で、結局最後はキンジに丸投げしてる辺り他人任せだが、オレも丸投げした手前、頼られたら何かしてやらんでもない。死なない程度ならな。
それで話を終えて朝食の準備にとりかかろうとリビングに引っ込むタイミングで、急にかなめからストップがかけられて何かと思えば、下からニュッと現れた磁気推進繊盾が昨夜貸していたオレの制服の上着を引っ掛けて運んできたので受け取ると、スルスルとまた下へと戻っていった。
「ちゃんと洗うか消臭しろよ。あとであたしの匂いで興奮したりとかされてもキモいから」
「何でここ最近オレは変態みたいな扱いが多いのか……ちゃんと消臭するから安心しろ」
そうしてわずかにだが明るい感じになったかなめの言葉に落ち込みつつリビングに引っ込むと、上着の胸ポケットに紙切れが入っていたのでそれを取ってみると、殴り書きの「ありがとう」が書かれていて、ついつい笑ってしまうのだった。
その後しばらくして朝食もだいたい出来上がってきた頃に、いつも日曜は昼頃まで寝ているのに、珍しく早起きしてきた羽鳥が姿を現してダイニングテーブルに着くので、朝からつまらなそうな顔をする羽鳥に仕方なくご飯を出しつつ話しかける。
「なんだよ。昨夜は自分が説得したかったみたいな顔しやがって」
「そんな顔はしていない。ただ、あかりちゃん達に私のカッコ良い登場シーンを見せるチャンスがなかったのが残念なんだよ」
「そりゃ良かった。お前のキザな登場シーンを見なくて済んでな。それに今のかなめの説得もキンジがなんとかしてくれそうな感じがするし、お前の最終手段も……」
使わずに済みそうだ。
と続けようとしたオレだったが、それより前にオレの耳が昨夜も聞いたあの無視できない連射音を捉えて言葉を途切れさせる。
音の発信源は下の階。誰がやったかはもう特定。
「私の最終手段も、何だい?」
「…………使うことになるのか……」
その音のせいで平和的に終わりそうだった件が、また面倒臭いことになることを理解させられてうなだれるのだった。
かなめの問題が一段落したと思った日曜日の朝からもう2日。
火曜日となった今日は気持ちの整理がついたかなめが登校し、まずは女子生徒にかけた洗脳を解き、昼休みには屋上で間宮と友達になって握手したのを影から見届けて本当に間宮の件が解決したのを確認。
それでかなめの徹底監視は必要なさそうと判断してオレも久々に自由な時間を作れたのだが、それをことごとく奪ってくるのがここ最近のオレの不運。
その不運で呼び出されたSSRの白雪の自室には、すでにアリア、白雪、理子、レキ、ジャンヌ、羽鳥と揃い踏み。集まってるメンバーがもう嫌だ。
「もうオレの仕事は終わったろ。それにオレは穏健派だっての。これ以上巻き込むな」
「これで終わらせるつもりなんだから最後まで付き合いなさい。それともあんたもかなめに情でも沸いたのかしら?」
呼び出された時は一方的に言われて通話を切られ文句も言えなかったので、とりあえずこの囲いに入る前に自分の意思を主張しておくが、なんともな感じでアリアが返してくる。
正直もうかなめに何か仕掛けるのは無意味に感じてるだけなのだが、後々のことを考えてここでそれを言うと面倒なだけと思って、渋々その囲いに入って隣を空けてきた理子を無視してレキと白雪の間に腰を下ろす。
「……んで、白雪の宣戦布告は一昨日の朝に嫌な音で理解したが、まさか全員で囲んでかなめをボコるとかはないよな」
仕方ないのでここに呼ばれた本題に入り、日曜日の朝に白雪が機銃掃射をしてかなめに宣戦布告したことを察して、その具体的な仕返し方法について問う。
「放課後にキンちゃんが話し合いの場を設けてくれたから、そこでかなめにも伝えるけど、決闘の方法は『ランバージャック』です」
「……羽鳥、お前が後押ししたな?」
「さて、なんのことかな?」
その答えとして返ってきたのがランバージャックとあって、この決闘方法に納得がいくように仕向けていそうな羽鳥に顔を向けるもはぐらかされる。
これはしっかり提案してるな。間違いない。
「…………代表と
「代表は白雪。幇助者は私だ」
「勝算あっての采配ならオレは何も言わん。ランバージャックにも参加する。それでお前らが納得するならもう行くぞ。というか決定事項述べるだけの集会にオレを呼ぶな」
「キョーやんが来るのが遅いからだよぉ。決まったのだって10分前くらいだし」
その時間がオレを呼び出したくらいの時間なんだが、遅いも糞もあるのかコラ。
そんな風に理子を睨んでやると、わざとらしくえんえん泣くので軽くスルーして「確かにそうね」とかなんとか言い出しやがったアリアにも同様の視線を送ってやってから、決闘に出る白雪・ジャンヌの超能力者ペアが何やら打ち合わせをしてるのを見つつ決闘の時間と場所だけ聞いて物騒な集会から抜けたのだった。
ランバージャック。
ルールとしてはいたってシンプルであるが、袋叩きも辞さないみたいな雰囲気だったアリア達がこれに納得して採用した理由がオレにも理解はできてしまう。
まず決闘者を囲むリングを他の武偵が点々と円を描くように作って、その逃げ場のないリングで戦い片方が敗北を認めるか動けなくなったら終了。
これだけなのだが、問題はリングの方。リング役は基本、リングから出ようとする決闘者を中に押し戻す役目があるが、その際は決闘者への攻撃あり。
しかも決闘者に対して中立でなくてもいいというバカみたいなルールがある。
だからかなめがリング外に出ようとすれば、リングになるだろうアリア達でも容赦なくかなめを攻撃できて、逆に白雪が出ようとしたら軽く押し返すだけでもオッケー。人望がものを言う決闘方法だということだ。
そういう乱暴な部分があるランバージャックだから、ちょっとした救済措置としてあるのが、ジャンヌの務める幇助者。
幇助者は『1手だけ手助けできる助太刀』で、決闘の膠着状態に介入したり、勝敗が明らかになって過剰攻撃するのを止めて降参したりするための役目を持つが、始まってみるといてもいなくてもいい感じになることが大抵。
今回に限ってはアリア達が何か企んでるのでジャンヌの出てくるタイミングが肝かもしれない。
そしてこのランバージャックへと導いたのはおそらく羽鳥。
当初の予定としてかなめ屈服のための手段としてアリア達を使おうと言っていた羽鳥は、あの会議の時からこうなることを予測してた節がある。
よくよく考えればアリア達が止まるわけもないから、オレがかなめの洗脳とかその辺が終わったと報告したら仕掛けていた可能性もあるし、時間の問題だったのだが、それはまぁ気付いてないことにしよう。
そうして迎えた翌日の夜。
元から依頼の予定があるからランバージャックは不参加とか言い出した羽鳥に出かける直前に「くそったれ」の一言を残してから決闘場所の第2グラウンドに行ってみると、そこではもうアリア達とかなめが顔をつき合わせて今にもドンパチやりそうな雰囲気を醸し出していた。
レキの姿は見えないが、どこかでもうリング役としてスタンバイしてるはず。
「猿飛……お前も参加するのかよ……」
バチバチやってるアリア達に近付きつつ、そっといびつに形成されてるリングの円――円というか人数が少ないから三角形でよく見たら近くにハイマキも隠れてた――に加わったオレに、かなめのそばにいたキンジが勘弁してくれというような顔で声をかけてきたが、オレもこんなこと早く終わってほしいんだよ。
「安心しろ。オレは参加を強制されただけだ。立場としては中立でいてやる」
「あー! やっぱりキョーやんもかなめぇに肩入れするんだー。こうなったら理子りんもヤンデレ化しちゃうもんねー! ぷんぷんがおー!」
気苦労多そうなキンジに参加してるだけだと告げてやって、味方でも敵でもないと示してみたら、ヒルダ戦の時の散弾銃を持った理子がウザい絡み方をしてきて何故か不機嫌モードに突入。
中立だって言ってんだろバカなのかあいつは。しかもかなめぇとかまた微妙なあだ名付けおって。
そんな理子にため息を吐いていたら、かなめが足で直径10メートルくらいの円を描いてここから出たら負けでいいと自ら宣言したりしたので、それならリング関係ないし帰ろうと思ったが、こんな場所に1人にするなとキンジに目で訴えられたので仕方なく結末くらいは見届けてやることにする。早く始めて終わってくれ。
とにかくこの場に来るべき人間が全員来て、話し合いでどうこうできないとキンジも腹を括ったのか、イジメは嫌いだみたいな感じでかなめの幇助者になると宣言してから強引にルールの確認をして、両サイドの間に相違がないことを確かめてすぐにランバージャックは開始された。
ランバージャックは決闘者である両者が開始を決めるため、侍の立ち合いのような静けさが場を支配する。
その中で白雪が持っていたイロカネアヤメをゆっくりと持ち上げて八相の構えを取ると、かなめもそれに合わせて先日の間宮達との決闘で見せた超攻撃姿勢で科学剣を構える。
両者が今にも仕掛けそうな空気を醸し出し、2人の闘気のようなものが間で揺らぐ錯覚を覚えるが、そこに落ち葉が1枚ヒラリと舞った瞬間、かなめが一気に飛び出す。
おそらく落ち葉をブラインドに接近したのだろうが、その一瞬で仕掛ける技術は流石だ。
そんなかなめに対して守勢に回らざるを得なかった白雪は、右手をイロカネアヤメから離して横へ振るう動作をすると、目の前に両者を隔てる炎の壁が出現。
伝わる熱気は離れていたオレでさえ熱いと感じるほどなので、接近していたかなめが体感している温度は相当なものだろう。
その炎の壁を科学剣で貫いたかなめだが、体ごと突っ込むことはせずに左へスライド移動。
炎の壁を薙いだ先からは同じように移動した白雪がいつかのジャンヌ戦で見せた右片手持ちの上段から、すでに業火の炎を纏ったイロカネアヤメを振るう。
「星伽候天流――ヒノカガビ・胡蝶!」
振るわれたイロカネアヤメは、打ち下ろしと切り上げのV字ラインを描いてかなめの科学剣を炙る軌道を辿る。
これはかなめの科学剣に触れるのは危険だと判断してのことだろうが、この時点で繰り出した技としてはちょっと違和感が。
傍目には効果的には見えなかっ……いや、直接の攻撃ではないのか。
などと白雪の攻撃に1人考察していたら、かなめが笑いながら白雪の胴と胸を狙った2連突きを放つとほぼ同時にバック宙で一旦距離を開くが、その動作の全てを肉眼では追えなかった――断片的な映像として捉えた――ほどの高速ながら、白雪はしっかり致命傷を避けて胴は帯の一部を、胸は左腋の衣を切られたのみに留めた。
素直に凄いと思うが、これが決闘に賭ける白雪の本気ということか……
とかなんとか思いつつ白雪の回避に感心するかなめが『赤熱した科学剣』を平然と持ち再び独特な構えになったことに衝撃を受ける。
白雪の攻撃はおそらく、かなめの科学剣を高温にして持てなくしてしまうことにあったのだろうが、見るからに持ってるのも無理そうなその科学剣を持ち続けるかなめは自ら耐熱訓練も受けていたと豪語し平気だと述べる。
しかしそれを聞いても白雪は動揺を見せることもなく、静かにイロカネアヤメを鞘に収めて姿勢を低くし居合いの構えへと移行。
「火焔の魔女――自分の火で、火傷しなッ!」
それを見て、たとえ抜刀からの一撃が来ても科学剣で丸ごと斬り裂けると確信しているかなめは、言った後に砲弾のように飛び出して白雪へと接近するが、
「――かなめ、終わったね」
それが失策だったとでも言うような白雪の一言が出てきて、それとほぼ同時に白雪の背後からデュランダルを構えたジャンヌが華麗に現れて白雪を飛び越え前へ。
構えたデュランダルは刀身を青白く光らせてすぐにかなめへと振るわれる。
「――オルレアンの氷花――」
その威力はすでに知っているが、初見のかなめも危険だと悟ったのか、突進を科学剣を地面に突き立てて強引に止めて直撃を避けると、放たれた極低温の冷気は一瞬にして周囲を凍てつかせ、地面に刺さった科学剣もパキパキとその刀身を凍らされていき、地面と縫い付けられるのを嫌ったかなめは突き立てた科学剣を握ったままその上で逆立ちするという曲芸のような避け方でオルレアンの氷花を回避。
元々白雪によって赤熱化していたこともあって、科学剣も鍔の辺りでその凍結を終わらせていた。
「ひゅう――幇助者を使ってきたかぁ。ごめんごめん、ザコすぎるんで忘れてたよ。でも残念でした! ムダだったね!」
ここにきてもまだ余裕を見せるかなめは、逆立ちの状態から体をバネのように跳ね上げて地面から科学剣を抜きつつ目の前のジャンヌを飛び越えると、そのままの勢いで白雪へと迫り科学剣を打ち下ろす。
「星伽候天流……奥義――緋緋星伽神ッ!」
その一撃に溜めに溜めた力を込めた一撃でぶつかった白雪。
正面衝突は避けてきたのにここで打ち合うのかと思ったのも一瞬。
次に訪れたのはキキンッ! と音を立ててその刀身にひびを入れて粉々に砕けたかなめの科学剣の敗北だった。
科学剣の破壊に驚くかなめに交錯の瞬間、峰打ちを腹へと見舞った白雪に、それを受けて地面に転がったかなめ。
すぐに体を起こしたかなめだったが、その目は白雪ではなく破壊された科学剣の残骸を向いていて、完全にショックを受けている。
そして今のかなめを見て自らが引いた円の外に足が出ているのが見え、それで決着したのを確認したオレは、思いの外あっさりと終わったことに少し安堵の息を吐いて制服の上着を脱ぎながら幇助者として間に入ったキンジに続いてかなめ達に近寄った。
「う……うぇ……うぇえええええええん……!」
そうしたらまだ続けようとしたかなめをキンジが負けを認めろとキツめに言ったのを最後に、かなめがえんえん泣き出してしまい、すっかりいつもの調子に戻った理子が空気を読んでふざけて微妙な雰囲気を払拭。
こういうところは本当に気が利くから扱いに困る。終わったら怒らせてもらうつもりだったんだが。
「これでもう終わりだよな。まさかまだ足りないとか言うなら、お前らを軽蔑するんだが」
泣き止まないかなめに隠れていたハイマキがなだめるような擦り寄り方をするのと、近くの桜の木からレキが下りてきたのを確認しつつ、脱いだ上着を先ほどのかなめとの交錯の時に制服の背をばっさり斬られてあれな感じになってたジャンヌに投げて渡しながらそんな投げかけをすると、聞いたアリア達は満足気に笑って自らの武器を各々収めたのだった。
これで本当にやっと一段落ってところか。