ALO〈アルヴヘイム・オンライン〉~神々の黄昏~   作:剣の舞姫

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お待たせしました。
今回の最後に未来編3人目の主人公登場です。


第六話 「次世代の黒との出会い」

ALO《アルヴヘイム・オンライン》

~神々の黄昏~

 

第六話

「次世代の黒との出会い」

 

 アルヴヘイムの空を飛びながらカナは襲い掛かるMobを右手に握る片手剣ファントムフォースで片っ端から斬り裂いてポリゴンの粒子へと変えている。

 とにかくグランドクエストが発生してしまった今、カナが出来るのは頼れる父や、その仲間達の誰かと合流する事だと理解しているから。

 

「ええい!! 邪魔だってば!!」

 

 一番確実なのはアインクラッドへ向かい、はじまりの街の転移門から22層へ行く事だ。

 そこなら、父の友人達の誰かが居るかもしれないし、万が一居なくとも拠点にする事でリアルでの連絡次第では直ぐに合流出来る。

 

「チッ! しつこいなぁもう!!」

 

 グランドクエストが発生した影響か、Mobの出現率が倍増どころの騒ぎではない。このままではカナはあっという間に囲まれて、最悪の場合はリメインライトとなってカナのグランドクエストが終了してしまう。

 

「来て! ファントムレイン!!!」

 

 右手で剣を振るいながら、左手で装備ウインドウを開いたカナは、戦いながら空いている左手に新たな装備を追加した。

 それは、一本の槍だった。夜の闇よりも更に深い漆黒に染められた長槍、工匠リズベット最高傑作にして、ファントムフォースと同じ材料から作られた、所謂ファントムフォースの姉妹のようなもの。

 それを左手に構えたカナは、一気にMob達を振り切って上空へと飛翔すると、投擲の構えを取った。

 

「受けてみて!! これがお母さんから受け継いだオリジナルソードスキル!!!」

 

 渾身の力で投擲されたファントムレインは一直線にMobの群れへ突撃し、大量のMobが槍に貫かれて、群れの中央で発生した爆発によって大半のMobが霧散する。

 それは、カナの母にしてALOにおいては伝説のプレイヤーとして名高き串刺し女公ユリコのオリジナルソードスキル、クレーティネだった。

 

「ふぅ」

 

 その後、クイックチェンジでファントムレインを回収したカナは右手にファントムフォースを、左手にファントムレインという剣と槍の二刀流で残るMobを殲滅していく。

 カナのALOにおける戦闘スタイルは基本的に片手用直剣による一刀流がメインだが、切り札として片手剣と槍による変則二刀流を取り入れている。

 そして、この変則二刀流になったカナは、伝説のプレイヤーの一人、ブラッキーことキリトの二刀流並みに強いと噂されているのだ。

 

「これでぇ! ラストォ!!」

 

 残る一体のMobにファントムレインを突き刺し、ファントムフォースで脳天から真っ二つに斬り裂いてポリゴンの粒子へと変えたカナは背中の鞘にファントムフォースを収め、同じく背中の金具にファントムレインをファントムフォースとクロスさせる様に固定させる。

 

「はぁ、アインクラッドまでもう少しだっていうのに……」

 

 もうこれで何度目の戦闘だったのだろうか、と指折り数えてみたが、両手の指では足りなくなった為に数えるのを断念した。

 こんな時に限ってユイはまだリアルの方に居るらしく、カナは一人でアインクラッドに向かっている訳だが、いい加減にMobとの戦闘もウンザリする。

 

「残る剣の冬ってのがわからないけど……でも私一人じゃ駄目、だよね」

 

 フレンドリストを開いてみたが、どうやら父の友人達の内、現在ログインしているのは二人のみ、そしてその両方共がアインクラッドに居るらしい。

 ため息を零しながらリストを閉じると、再びファントムフォースを引き抜いて背後を振り返りながら一閃、再度出現したMobを一太刀の下に斬り捨てる。

 

「うん、もうMob無視して一気にアインクラッドまで飛ぼう」

 

 次々と出現するMobを見て、カナは決断する。決断して、そしてその場から一気にトップスピードで飛び出した。

 

「ってぇ! 追いかけて来るの!?」

 

 追いかけて来る飛行型Mobモンスターに驚き、意外にその速度が速い事に気づいたカナは飛びながら詠唱して、攻撃魔法を背後から追いかけて来るMobに射出した。

 何体かは避けてしまったが、直撃したMobがポリゴンの粒子になったのを確認すると、投擲用ピックを袖から3本掌を滑らせるように取り出し、ソードスキルを発動する。

 

「トライシューター!」

 

 投剣スキルは基本的に発動後に硬直しない。そのため、こういった高速飛行中に使用する分には中々便利なスキルなのだ。

 事実、トライシューターのスキルによって投擲されたピックは三体のMobに直撃し、HPを大きく削ったのだから。

 

「よし! 飛行速度が落ちた!!」

 

 HPが削られた事でMobの飛行速度が落ちた隙に、カナは更に速度を上げて一気に引き離しに掛かった。

 これで後は一直線にアインクラッドを目指すだけ、そう思ってカナは……油断してしまったのだ。

 

「え? きゃあ!?」

 

 油断してしまって、頭上にMobが現れた事に気づくのが遅れてしまった。しかも、そのMobは今までに見た事の無いタイプのMobだった。

 純白の全身鎧姿に、銀色に輝く両手剣を構えた騎士の様な姿をしたMobが、その羽を広げて五体、カナへその剣の切っ先を向けている。

 

「くぅっ! 何なのコイツら……」

 

 背中を斬られたらしく、HPが少し減ってしまった。

 カナは知らない事だが、このMobは11年前の、まだALOがレクトプログレスの運営で稼動していた頃のグランドクエストに登場したMobモンスター……世界樹のガーディアンだ。

 今回、ALOの存亡を賭けたグランドクエストに、嘗てのグランドクエストのガーディアンが再び登場するなど、何という皮肉か。

 

「こ、のぉ!! 舐めるな!!」

 

 一体が再度カナを攻撃しようと剣を振りかぶって急降下してきたのを、カナはファントムレインを投擲する事で迎え撃った。

 投擲されたファントムレインは急降下してきたガーディアンの胴体を貫き、動きを止めたガーディアンに急上昇したカナのファントムフォースによる一撃で首を落とされる。

 

「アインクラッドまでもう少しなのに……っ! 邪魔だよ!!」

 

 次々と襲い掛かるガーディアンの攻撃を回避し、弾き返しながら反撃とばかりにファントムフォースの斬撃とファントムレインによる突刺でガーディアン残る4体を何とか倒しきった。

 しかし、これで一安心と思っていたカナは、目の前の光景を見て表情が若干だが青褪める。何故なら再びガーディアンが今度は30体が出現していたのだから。

 

「ちょ、これは不味い……」

 

 先ほどの5体程度なら、カナでも十分対処出来たが、30体は不味い。明らかにカナ一人が対処出来る数ではない上、今度は半分が先ほどと同じ剣装備で、残る半分は弓矢を装備しているのだ。

 近接戦のガーディアンと戦いながら遠距離戦のガーディアンからの攻撃を捌くのは、物量的に不可能だろう。

 

「……っ」

 

 ここまでか、これで、自分のALOは終わるのか。この先、きっと戦うであろう両親や幼馴染、歴戦の戦士達と共にALOを救う為に戦う事が出来なくなるのか。

 両親達が戦っているのを、ALOを救ってくれるのを、リアルで黙って待っていろというのか……そんなの、カナには耐えられない。

 

「負け、るかぁああああああ!!!」

 

 完全に囲まれる前に、突破する。一気にトップスピードまで加速しながら、前方のガーディアンを斬り捨て、倒したかどうかの確認を完全無視したままその奥の弓矢装備のガーディアンへ斬り掛かり、そのまま脇を抜けて包囲を突破した。

 

「よし! このまま……ガッ!? はっ」

 

 一瞬、息が詰まって停止する。そして、見れば背中には一本の光る矢が突き刺さっており、二本目、三本目と突き刺さる矢が増えた。

 

「う、そ……」

 

 先ほどまで剣を装備していたガーディアンも、全て弓矢に装備を変えて、30体のガーディアン全てが、その矢をカナに向けている。

 

「っ!?」

 

 このまま、終わるのだろう。このとき、カナはそう確信して目を閉じた。

 だが、いつまで経っても矢が突き刺さる感触が無い事を怪訝に思って目を開けてみると……30体のガーディアンの内、半分が突然ポリゴンの粒子となって消え、残る半分が何事かと後ろを振り返っている姿がそこにあった。

 

「あれは……」

 

 カナもガーディアン達が見ている先へ視線を向けてみた。そして、そこで見てしまったのだ。虹色に輝く刃が美しい両手剣を構えた漆黒の衣装に身を包む一人の闇妖精族(インプ)の青年の姿を……。




次回は新たな世代の主人公3人集結。

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