オリヴィエ:「何処に行くの?」
サラマンダー:「プリキュアパレス。私達に会わせたい奴等がいるらしい」
とある日の休日、俺はオリヴィエとサラマンダーを連れてパレスのあの場所に来ていた。
「…ねぇ明?」
「ん?どうしたオリヴィエ?」
「…今日、僕達をここに連れてきたのは父さんとキュアアンジェと初代ブレイドナイトのミラージュ達と話をさせる為だよね?」
「あぁ、裏俺と裏ゆりがオリヴィエとサラマンダーがこの町に引っ越してきた事を二人に話したら是非ともサラマンダーと会って話をしたいって言ったんだとさ」
「そうなんだ……」
おそらく…いんや、確実に話の内容はサラマンダーを封印した事についてだろうな。
一応、念の為に裏俺と裏ゆりを立会人として話の場であるアンジェミラージュの心象世界に行かせたが……まぁ、無用な心配だな。
封印直後なら未だしも、今のサラマンダーはフランスでの一件やオリヴィエの存在(特にこれが一番の影響だな)のお蔭でかーなーり柔らかく丸くなってる。
これぞまさに牙を抜かれたなんとやらってヤツだな。ケッケッケ……。
「…でもさ、明」
「ん?」
「…父さんがその二人と話し合いをするのはわかったけど……」 (チラッ
『フフフ……♪』
「…この状況は何?」
「何って、ミラージュ達に完全包囲されてる俺とオリヴィエの図だな」
んでもって、俺達を包囲してる奴等はマリンミラージュを筆頭にひぃ、ふぅ、みぃ、よ、いつ、むつ、なの……なんでい、いつもの半分以下じゃねぇか。
「…いや、何で包囲されてるのさ」
「多分、初めてこの場に来たオリヴィエを歓迎する為だろうぜ。そうだろ?ミラージュさん方?」
『えぇ♪』 (ニコッ
おーおー、揃いも揃ってこりゃまた随分と良い笑顔だこと。
そんな顔で見られたら明さんは恥ずかしくて照れちまうぜ。
「…かなり手厚い歓迎だけど、それがここのやり方?後、何でみんなそんなに好戦的なの?」
「あぁ、俺も前にこの歓迎方で祝われた事がある。んで、好戦的な理由はドンパチする事がコイツらにとっての数少ねぇ楽しみだからだ」
他の楽しみとしてパレス内の散歩と各々の表が経験した思出話があるが、やっぱ適度に楽しく運動する方が健康的だよな。
あ?
今更ミラージュ達には健康の概念なんてのは無いだろって?
まぁ、確かにその通りだがコイツらはミラージュとしてこの場で“生きてる存在”。
だったら俺達がそうである様にコイツらも健康を気にするのは当然ってもじゃねぇか?
「明?」
「…ん?あ、悪い悪い。ちょっくら考え事してた」
てか、今こうしてる間も包囲してるだけで攻めて来ねぇとは相変わらず変な所で律儀な奴等だな。
「とりあえず、彼女達の相手をしなきゃ駄目だよね?」
「お?オリヴィエ君は意外とヤル気満々だな」
「まぁね。たまには僕もそうゆう気分になったりするからさ。相手をしてくれるなら応えなきゃ失礼だよ」
おーおー、中々頼りになる事を言ってくれるな。
その勇敢な顔をつぼみに見せてやりたかったぜ。
「んじゃま、やるとしますか。現れろブ…」
「おっと、悪いがオリヴィエを借りてくぜ?」
「え!?」
「うふふ♪ついでだから貴方も来なさい♪」
「なんてこった……」
折角ヤル気満々だった俺とオリヴィエはいきなり現れた裏俺と裏ゆりの手によってアンジェミラージュの心象世界へとドナドナされた。
「あ〜れ〜〜」
「…明はブレないね」
…………
……
…
んで、その後は到着したと同時に裏俺と裏ゆりはミラージュ達の元へさよならバイバイ。
俺とオリヴィエはアンジェミラージュの心象世界……アンジェと初代ブレイドナイトの思出の地であるどこかの花畑の中で腰を下ろしていたサラマンダー達と合流した。
「よぉ、さっき振りだなサラマンダー」
「おや?何故お前も一緒なんだ?」
「裏ゆりにドナドナされた」
「フッ、それはまた災難だったな」
「いんや、そうでもねぇよ。俺は結構この場の雰囲気が好きだからな」
青い空、白い雲、心地好い風、程好い温度、上手い空気(?)、割りと高い丘、見渡す限りの花畑、仄かに甘い花の香り……
ここはピクニックや昼寝するにはうってつけの場だな。
「それで?何で僕はこの場所に来る事になったの?」
「いやなに、お前の話をしたら二人が会いたいと言ったから御剣と月影のミラージュに連れてくるように頼んだのだ」
「ふふふ、貴方との出会いがサラマンダーが柔らかくなったきっかけですからね」
「それに、まだ君には感謝を伝えていなかったからな」
「そ、そう……」
ケッケッケ、オリヴィエめ。
さっきの勇敢な顔から一転して気恥ずかしそうな顔してやんの。
けど、そうなると俺は完全にこの和解の場にはお邪魔虫だな。
「んじゃま、俺は引っ込むとしますかな」
ついでに裏ゆりに俺を連れてきた理由を聞くとすっか。
「あれ?明は外に行くの?」
「あぁ、外でミラージュ達とドンパチしてくるからお前達はとことん話し合って無事に和解してくれや」
んじゃま、アデュ〜。
………
……
…
「あら、もう戻ってきたのね」
「あぁ、俺があの場にいる必要がねぇからな。てか、そもそも何で俺を連れてったんだよ」
「ん〜…なんとなくかしら?」
「なんてこった、そいつはまた随分とテキトーな理由だな。後、口元に指を当ててこてんと首を傾げんのは裏俺の前でやってやれ」
クール系がその仕草をやると見た目とのギャップが相まって中々の破壊力になるからな。
「うふふ、そうするわ♪ところで、明はこれからどうするのかしら?」
「オリヴィエ達が話終わるまでこっちでドンパチするつもりだったんだが……誰もいねぇのな」
さっきまで全員ヤル気満々だったってのにこりゃ驚きだぜ。
「えぇ、前にドンパチした時に騒音がアンジェミラージュの心象世界まで響いた事があったでしょ?」
「あー…そーいえばあったな」
あん時はアンジェミラージュと初代ミラージュのダブル説教を食らってかなり参ったぜ。
「今回サラマンダー達を呼んだのはアンジェミラージュ達と和解する為。そんな時に騒音を響かせたら折角の和解の場が台無しになってしまうわ」
「成程、オリヴィエと一緒に俺を連れてったのはその為か」
確かにあの場に俺が残ってたら間違いなくドンパチしてたもんな。
なんてこった、俺としたことが危うくやらかすところだったぜ。
「因みに、ドンパチしようとしてたマリンミラージュ達は裏明の心象世界でお説教中よ」
「ん?裏俺が説教してんのか?」
「いいえ、説教しているのはブロッサムミラージュとサンシャインミラージュよ。ナイトミラージュは場所を貸しているのと付き添いで行ってるだけよ」
「成程」
今回の裏俺は基本的に傍観してんだな。
「うふふ、ドンパチが出来ないだけじゃなく裏明もいないとなれば明はいよいよやる事が無いわね」
「だな。何か良い案ねぇか?」
「そうね…、私の心象世界でお昼寝するのはどうかしら?程好く暗いからお昼寝するにはうってつけよ?」
「昼寝か……」
さっきアンジェミラージュの心象世界でピクニックとか昼寝云々思ってたせいか若干眠気が小動物よろしくトテトテトテッっとやって来てるから丁度良いな。
「そりゃ悪くねぇ提案だな」
「決まりね♪それじゃあ早速行きましょうか?」
「あぁ。…あ、昼寝してる間に変な事すんなよ?」
「うふふ、安心して。そうゆう事はナイトミラージュにしかしないわ♪知っての通り、私とナイトミラージュはアンジェミラージュや初代ミラージュと同じ関係ですもの♪」
「成程、俺達以上に毎日イチャイチャしてるって訳だな」
「えぇ♪時に甘く時に激しく愛し合ってるわ♪」
「なんてこった、少しは言葉を選べっての」
「うふふ♪私達はミラージュだから常にオープン・マイ・ハートしているのよ♪」
「へーへー、さいですか」
こりゃ早いとこ寝ねぇと惚気話を聞かされそうだな。
他のミラージュ達の惚気なら兎も角、自分のミラージュの惚気を聞くとか新手の精神攻撃かっての。
「裏ゆり、悪いが早く寝かせてくれや」
「あらごめんなさい♪私はここでサラマンダー達が来るのを待っているからゆっくり寝てくると良いわ♪」
そう言って裏ゆりがチョチョイのチョイ、と指を振って自身の心象世界への入口を出してくれたんで俺はとっとと中に入ることにした。
「りょーかい。…あ、悪いが二人が戻ってきたら起こしに来てくれ」
「えぇ、わかったわ♪」
「んじゃま、おやすみ裏ゆり」
「おやすみなさい明♪」
結局、今回の俺は裏ゆりの心象世界で昼寝するだけしかする事が無かったな。
けどまぁ、サラマンダーがアンジェミラージュや初代ミラージュと無事に和解出来たのは心の底から嬉しいぜ。
「良かったな、サラマンダー男爵……」
【終わり】
オマケ1
〜その後・植物園にて〜
明:「ほれ、和解の祝いに明さん特製ドラゴンクッキーを召し上がれ」
オリヴィエ:「わ…、本当にドラゴン化した時の父さんの形してる……」
サラマンダー:「相変わらず器用な奴だな……」
オマケ2
〜明達帰宅後・ムーンライト影の心象世界にて〜
ムーンライト影:「ねぇ♪もっと撫でて?」
ナイト影:「フッ、甘えん坊だな」
ムーンライト影:「あら、甘えん坊な私は嫌い?」
ナイト影:「ケッケッケ、大好きだぜ」 (なでなで
ムーンライト影:「んんっ♪私も貴方の事が大好きよ♪」
オマケ3
〜後日・アンジェ影の心象世界にて〜
サラマンダー:「フッ、まさかこうしてお前達と酒を飲む日が来るとはな」
初代影:「あぁ、私達も驚いている」
アンジェ影:「でも、こうゆうのって凄く素敵よね」