「まずは移動しようか」
ここでは虚が邪魔に入るのか、場所を移動するようだ。
移動すると神殿のような場所に来た。
吹き抜けで邪魔等幾らでも入りそうだが、神殿に入った瞬間納得した。
この神殿…結界が張られている。
アジューカス級では入る事が出来ず、ギリアン級では認識する事も出来ないだろう。
神殿の結界に気づいた俺に期待をしているのか藍染惣右介の笑が深まった。
「それでは、始めよう」
藍染惣右介が懐から光る手のひらサイズの宝石のような物を取り出した。
あれが《崩玉》か……
崩玉の周りにいる者の心を崩玉の意思によって具現化する力をもっている。
制限はあるもののその無限に創造する力は原作を読んでいるときチートだと何度思ったことか。
最終的に愛染は破れたが不死になり、封印という方法をとるしかなかった原作。
その未完成品が今目の前にある。
正直にいえば今破面化はしたくない。
未完成の状態でしても今よりは強くは成れるだろうが、十刃最強には程遠いはずだ。
だが、今受け取らないという選択肢はない。
受け取らないは反逆だ。
愛染1人でも勝てないのに市丸ギンと東仙要もいる。
逃げられもしない。
ここは破面化して再破面に期待するか。
ここで崩玉の研究の糧にして完成に近づけてくれ。
「覚悟はいいかい。」
俺は無言で頷いた。
崩玉と融合を開始する。
虚と死神としての壁を取り払う。
そして俺は次のステージに昇華する。
「それでは自己紹介といこうか」
「俺の名前はアーロニーロ。アーロニーロ・アルルエリだ」
変化後直ぐに自己紹介したが、俺は内心自分の姿に驚愕していた。
変化前は人の姿と前に話しただろうが、他人から見れば蛸、若しくは蛸人間と呼ばれても遜色ない姿だった。
変化能力で人の顔真似をしていたが、あれは擬態に近く、眠っている時に自動で蛸のような姿、そして顔に戻っていた。
服は当然無かったが問題が無いような姿で、ウルトラマンの着ぐるみというのも近い表現の1つだったと思う。
原作のアーロニーロはカプセル状の頭部に赤色の液体が満たされ、二つの玉の様な頭が浮かび上がっているという人間から外れた姿をしていた筈だ。
それが今ではほぼ人間だ。
背丈は160cm位だろうか。
前髪が目に少しかかっている。色は白だと思われる。
身体も引き締まっている。
因みに、ほぼといったのは両腕だけが異形と化しているからだ。
原作のアーロニーロの左手にあった触手が両腕になっている。
何気なく声も出していたが蛸人間の時、俺は声が出せなかった。
いや、出せない訳では無い。言葉が話せなかった。
呻き声や切られた時の叫び声を上げる事は出来たが、言葉を喋るという行為が出来なかった。
知識も記憶もあるのに赤ん坊のように喋り方を知らないようだった。
これは原作ではアーロニーロはギリアン級だったが、俺は最上級であるヴァストローデであるためか。
あれ?
最上級のヴァストローデなら、完全に人の姿になるんじやなかったっけ?
崩玉が未完成なのがいけないのかな?
原作の時も五割しか解放してない的な事言ってた気がするし。
自分の姿を確認していると思案していた愛染が笑みを浮かべた。
どうやら、研究の糧になったようだ。
実験が成功し安堵している表情にも見える。
満足はしていないようだが。
東仙が自分の姿を隠せる大きな布を羽織らせると、
「では、帰ろうか」
三人が動き出した。
向かうのだろう。自身の居城へ。
《虚夜宮》こと《ラス・ノーチェス》に。