第9十刃に転生したが最強だった   作:飛翔するシカバネ

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学習、そして不可視

「あっちは終ったみたいだね」

 

ザエルアポロはルドボーンがいる方を見てそういった。

 

 

ザエルアポロの言葉にロン毛と坊主が反応した。

 

「あの2人がやられるとは(クイッ。流石に葬討部隊隊長の名は伊達では無かったようですね」

 

「あの二人は、油断した、だけ。俺なら、勝てた」

 

 

「油断しなかったとしても遅いか早いかの違いだよ。君らと僕らにはそれだけの違いがある」

 

ザエルアポロが余裕そうに言う。

 

 

「何を言い出すかと思えば…あなたも一応元十刃の名前がありますが刃から落ちたあなたでは私にはかなわない」

 

「そうかい。でもおかしいな、君らの攻撃が僕に当たった覚えがないけど」

 

「くっ…」

 

そうなのだ。

最初にザエルアポロが帰刃したと思ったら一瞬で間合いを詰められた。

そのあと羽で自分たち2人を覆ったかと思えば何も無かったのように距離が詰める前の位置まで空いていた。

まるでその動作が無かったかのように。

 

ザエルアポロはこちらの攻撃を一切見ずに避ける。

偶に当たったかと思えば障壁がありダメージが入らない。

それどころかザエルアポロは、何もない空中を見ている。

ザエルアポロには俺達には見えない何かが見えているようだった。

 

「正解だよ」

 

ザエルアポロがいきなり答える。

 

「君たちにはこの窓が見えていないのだよ。それが君達が知能が低い馬鹿ともよべるわけだから仕方ないけどね」

 

探査回路(ペスキス)』の力が足りないとでもいうのか。

しかし、坊主はともかくロン毛は自身の探査回路に自信があった。

 

「またもや、正解だよ。そう!君達は探査回路が低すぎる。それで君達はこれが見えていない」

 

そう言ってザエルアポロは空中を叩く。

 

コンコンッ

 

確かに叩く音は聞こえた。

しかし、以前として大きさどころかどんな形かも分からない。

 

 

ここでロン毛は一つの事に気づく。

自分たちが一言も喋って無いことを。

それなのにザエルアポロはこちらの考えを聞いているように会話している。

まさか…

 

「あなたの能力は!!「違うよ」

 

「!?」

 

「僕の能力を心を読む能力だと思ったみたいだけど。それならこの僕の窓の説明がつかないじゃないか。別の能力っていうのも出来るけど生憎同じ能力なんだよね」

 

また、こちらが答える前に答えられてしまった。

 

「ああ、でも」

 

「君達の考えは分かっているよ。書いてあるのをただ読んでいるだけだしね」

 

やはり、考えを読まれていたか。

しかし書いてある、読んだ、というのが分からない。

そんな時、

 

「もう、めんどくさい。霊力も、回復、した。俺が、決める」

 

坊主がいつの間にか潜行し、ザエルアポロの真後ろに来ていた。

そのスピードは凄まじくザエルアポロの体を貫く…かと思えば寸前のところで止まっている。

 

見えない障壁でザエルアポロは坊主の攻撃を守ったのだ。

最高出力ともいえるあの攻撃を防御したのは驚きだが、ここで守ったのは失敗だった。

 

「お前はそのまま攻撃してろ!私は障壁が無い今、前から攻撃する!」

 

前からの攻撃だと手足でガードされてしまうかも知れない。

だがロン毛の強みは手数。

数発は防御されるだろうが、数発は当たる。

それで勝負を決めればいい。

 

 

ロン毛は今ある力全てを込め、数十の鞭を振るった。

 

 

バシィッ

 

 

数十の鞭全てが見えない障壁に防がれた。

 

 

「言ったろ全て書いてあると。そして、

 

 

 

 

いつから障壁が一つしかないと錯覚していた?」

 

 

「!!!」

 

 

 

確に障壁が一つしかないとザエルアポロは言っていなかった。

だが、坊主の攻撃を防御する程の硬度をもつ障壁を複数もつとは考えられなかったのだ。

 

「最後の鞭には驚いたがこれ以上は無さそうだ。次で終わりにしようか」

 

そう言ってザエルアポロは人差し指で何かをタッチした。

その瞬間ルーレットの様な音が鳴る。

 

 

 

音が鳴りやんだ時何かが変わった。

 

 

何が変わったかは分からない。

しかし、恐ろしい事が起きた事は分かった。

 

「なにも、起きない。ハッタリ、だったか」

 

坊主は砂に潜行して今度こそザエルアポロを仕留めようと自分の限界を超えたところまで潜り、助走して更なるスピードで突撃しようとした。

 

 

 

 

砂の中から空気の泡の様なものが出てきた。

 

ロン毛はそれを見た事があった。

力を貰い、最初に能力を試した時坊主には肺活量が少なかった。

特訓してなんとか肺活量が上がり、今では砂の中で自由に過ごせる程だった。

万が一息が続かなくなった時、坊主は空気を大きく吐いて近くにいる仲間に知らせるという方法をとったのだ。

 

まさに今の状況がそれだった。

 

ロン毛は助けようとしたが余りに深い場所まで潜ったのか、草の鞭に引っかからない。

それどころかあんなにも自由に操れていた鞭の動きがぎこちない。

 

 

「残念だけど、彼はもう死んだよ。自分の肺活量が分からず潜ったせいで窒息してね」

 

ただでさえ坊主はザエルアポロを倒そうと自分の限界量を超えたところまで潜ったのだ。

地上に戻るのも、仲間に助けてもらうにしても、その距離は余りに遠すぎた。

 

「君達は何故さっきまで出来ていた事ができなくなったと思う」

 

それは先ほどの音だろう。

 

「正解!あれが原因だよ」

 

やはり、あれで何かが変わったのだろう。

しかしロン毛には何が起きたのかまではわからなかった。

 

「君達は僕より頭がいいのだろう。だったらどんな能力か分かっただろう。答え合わせをしよう」

 

ザエルアポロが笑う。

 

 

 

 

「来世でね」

 

 

ロン毛の首が落ちた。

 

 

草の鞭の強烈な一撃が喉に当たったのだ。

ザエルアポロが不気味に見え、鞭を振るったのだが、操作が誤り、自身の首に当たったのだった。

 

 

 

ザエルアポロはそれを眺め、1度不気味に笑うと困った顔をしていた。

 

「それにしても面倒だな。砂を掘り返すのは」

 

既にザエルアポロの関心は実験材料に移っていた。

 

 

 


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