第9十刃に転生したが最強だった   作:飛翔するシカバネ

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観戦、そして怒り

今日は刃の座をかけて俺ことアーロニーロ・アルルエリ対ルペルぺ・チャピンとの戦いだ。

 

俺はあまり人の前では戦わない。

大体は単独行動か、ルドとの任務しかないからだが。

 

そのためか俺の戦いを見ようと前の戦いより多い破面が見に来ている。

刃同士の戦いは見る価値があるがそれにしても多い。

 

他にも葬討部隊の隊長をやっているルドが入れ込む程の実力者といわれたり筋金入りのインテリ、ザエルアポロが見に来ている事があり、いろいろな期待があるのだろう。

 

ルドとエルが観客席に見える。

 

エルが見に来たのは珍しい。

 

 

 

俺は暇だったため早めに来ていたがなかなか対戦者であるルペルぺが来ない。

 

勝負を仕掛けた方が遅れるのはどうかと思うがルペルぺの司る死が怠惰なのも納得する。

 

 

少ししたらルドの量産破面が四人入ってきた。

布団を持って。

量産破面が四方を持っているところを見るとルペルぺが中で寝ているのだろう。

 

量産破面が地面に布団を置き、去っていく。

 

布団の中からルペルぺが顔だけを出した。

 

「おはよう~今日はよろしく~お面さ~ん」

 

俺は白い仮面をつけている。

天蓋があるせいで能力が使えないからな。

 

挨拶されたので返そうとしたら、

 

「挨拶は~返さないで~いいよ~さよなら~は~聞くけどね~」

 

怠惰ということもあり殆ど働かず、戦わないルペルぺがどんな能力を持っているかは愛染しかしらない。

この自信が慢心ではなく真実なら気を抜かず戦わなければ。

 

 

 

 

観客席を確認すると愛染は来ていないようだ。

 

理由は置いとくが見る価値が無いのだろう。

それだけ、勝利が決まっている戦いなのだろう。

 

 

俺は斬魄刀を構える。

開放はまだ見せる必要は無いので、始解すらしていない浅打の状態だ。

 

ルペルぺは相変わらず顔だけを出している。

眠そうにしているが俺のことはしっかりと捉えている。

 

俺は切りかかろうと踏み出す。

 

そして戦闘が開始する。

 

 

俺は吹き飛ばされ壁に激突する。

闘技場の壁がへこむ。

壁は紅葉の様な後がつく。

 

殆どの破面は何が起きたか把握していない。

 

だが、俺は能力が大体予想できた。

 

 

ルペルぺの能力は霊力で出来た巨大な手を操る力だと予想する。

しかも効果範囲が限られたタイプの。

霊力の塊ではない場合は霊力で操った空気の塊だ。

だが、空気の塊なら別に手の形出なくてもいい。

そうしないといけない条件なら分からないが。

 

距離があるという予想は背中を打ち付けた闘技場の壁は手ごと俺を打ち付けたならもう少し壁に埋まってもいいはず。

俺の身体を除いた部分の衝撃波でへこんだだけのはずだ。

 

 

「あはは~頑丈だね~」

 

手の形になるなら手を出して衝撃波が来た可能性もあったがルペルぺは布団から手は出していない。

 

あと、一番の理由だが司る死が怠惰だからという理由。

 

多分布団に入ったまま遠くのものが取れるから便利とか

そんな能力なのだろう。

 

「じゃあ、もう一回」

 

壁に押し込まれる。

今度は当たっている感覚がある。

 

「このまま潰れちゃえ!」

 

圧迫されていく。

このままじゃ超速再生は発動出来ない。

 

俺は右手だけ霊力の手(仮)から逃れる。

 

そして、手の平をルペルぺに向け虚閃を放つ。

 

 

ズドンっ!

 

 

煙が舞い、圧迫感がなくなる。

ハメ技されてイライラしてたから少し力込めすぎた。

 

死体残らなかったらどうしよう。

エルに怒られそうだな。

まあ、エルも俺の戦闘中にデータとって次の日の朝には俺にくれたから問題はないけど。

 

 

煙が収まるとそこには1つの布団があった。

そして中からルペルぺが顔をだした。

 

「なかなかの威力の虚閃だったね~けど~僕にはきかないよ~」

 

ルペルぺが無事なのも驚きだが、煙が舞う瞬間俺はおかしいものを見た気がする。

 

俺の虚閃を布団が弾いて天蓋の方に飛んでいった気がする。

 

「驚いてるね~説明してあげるよ~僕の~能力を~」

 

だんだんしゃべり方にもイラついてきた。

 

「僕の能力は~霊力を使った巨大な手『霊力大手(マノ・ヒガンテスコ)』とこのお布団なんだ~」

 

 

「このお布団はね~僕の斬魄刀なんだ~」

 

 

それは予想外!

 

 

「このお布団の名前はね~『絶対防御(アセポタール)』。このお布団に当たったエネルギーは全て弾いて逸らす力があるんだよ~」

 

おい、ちょっとまて。

ゆっくり話したけどおかしくないかその性能。

虚閃等の攻撃を逸らすのもすごいが運動エネルギーや物理エネルギーも逸らすということは全ての攻撃が事実上効かないことになるぞ。

 

これはひどいチートだな。

 

自分は安全な場所に包まり、遠距離攻撃で相手を嫐る。

絶対性格悪い。

 

「降参する~?」

 

ルペルぺが負けを促す。

 

「君は殺さないからさ~」

 

「何故、俺を殺さない」

 

「だって殺したらお菓子がなくなるじゃないか~」

 

そうか怠惰なら好きだよな。

ca●b●eのポテトチップス、美味しいもんな。

 

「あと、君のとこの従属官は僕が貰うからさ~あの能力僕の代わりに使えそうだから」

 

「君はあの偏屈研究者と宮の端っこで馬鹿やってなよ」

 

 

 

 

 

「エルごめん」

 

俺はエルに謝る。

ルペルぺがが勝ちを確信する。

 

エルから構わないと聞こえた気がする。

 

 

 

 

「!?」

 

霊力大手が弾き飛ばされる。

 

 

別に俺は悪口や挑発に乗るつもりは無かったが友人を貶されるのは流石にムカついた。

 

エルに謝ったのは死体が残らないから、実験に使えないという事を誤ったのだ。

 

 

「初めてだ…ここまで怒ったのは…」

 

 

そして俺は能力を使う。

 

「『黒雨雲雀(アロンドラ)』」

 

顔の口から雲が出てくる。

仮面を被ってるせいか仮面の隙間から滲み出てくる。

 

雲は天蓋に向かっていき、闘技場を覆う。

 

この能力はルドが規律を破ったもの等を葬討部隊によって処断したあと死体を持って帰ってきて俺に献上してきたものだ。

他にも大量にあるが大体は使えない。

これはそんな中で使える能力の一つだ。

 

 

これで準備は整った。

 

俺は仮面と右手の手袋を外す。

 

俺の幼い顔と異形の右手が出てきて破面達がざわつく。

 

黒雲雨雀の能力は他にあるが今回は日光を浴びなくなるためのただの遮断材だ。

 

 

 

そして俺は霊力大手を食らう。

 

 

霊力大手が使えなくなったのかルペルぺが不思議な顔をしている。

 

霊力大手は目に見えないが俺は反膜の糸がある。

見つけることは容易い。

俺は持ち主ではないから情報を解析しても使えて十割程の力しか使えない。

ロカが使いこなせれば十全に力を使う事が出来るだろう。

 

そして俺は『霊力大手』を使う。

布団ごとルペルぺの身が浮く。

 

自分の能力だ。

自分で感知することなど簡単だろう。

どうして俺が使えるかは分からないだろうが。

 

ルペルぺの布団を引っ張りルペルぺを外に出す。

体は一応出たが意地でも布団から手は離さない。

 

だが、充分だ。

そして俺は三つ目の能力を使う。

 

 

「写せ、『霊力美鏡』」

 

ルペルぺの周りを8枚の鏡が舞う。

 

「これは…ナルシスの…」

 

語尾が伸びなくなったな。

 

ナルシスは1枚だったようだが俺はその8倍だ。

 

 

因みにナルシスだけじゃなくイザークも食べている。

 

エルが1日で解析出来たからと言って死体をくれたからだ。

 

右手の喰虚の口から虚閃を放ち、鏡で分散させ、ルペルぺに照射する。

 

 

 

「あぁぁあああああああああああああぁぁぁ!!!!」

 

 

 

ルペルぺの肌が焼かれる。

 

分散させていて威力が弱まっているとはいえかなりの痛みだろう。

 

 

 

 

ルペルぺの肌が茶色になってきた。

 

 

さて気がすんだし終わりにするか。

 

霊力大手を使い、ルペルぺを真上に放り投げる。

 

 

飛んでいったルペルぺは重量に従い落下してくる。

 

落下の衝撃を逸らすためかルペルぺは全身を布団で包まる。

万が一の為に顔もしっかりと布団で覆っている。

 

 

覆ったのを確認すると俺は『肥大化(グローボ)』を使う。

体の部位を1つだけ一時的に肥大化する力。

これを使ったやつは腕を肥大化して殴ってきた。

が、肥大化しても重さは変わらないため威力は出ない。

しかも風の抵抗は受けるためスピードは遅いとあまり使えない能力だった。

 

が、今は食っておいて良かったと思っている。

 

 

 

俺は右手の喰虚を肥大化させる。

 

 

 

そして喰虚の口を大きく開く。

 

後は待つだけだ。

標的が落ちてくるのを。

 

 

そして、ルペルぺは喰虚の中に落ちていった。

 

そして喰虚の口はゆっくり閉じていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ルペルぺが布団をとり膝立ちする。

 

「あれ~暗い~ここどこ~」

 

”俺の胃の中だ“

 

ルペルぺは振り返るが何も無く、暗闇が続くだけ。

 

「ア~ロニ~ロ~出てきなよ~」

 

ルペルぺは呟くが姿を見せない。

 

ルペルぺは周りを見渡そうとして立ち上がろうとしたが立ち上がれない。

 

「あれ~?」

 

おかしいと思い、ルペルぺは自分の足を確認する。

 

 

そこには膝しか無かった。

 

 

「えっ?」

 

 

しかもその膝もどんどん溶けていく。

肉がなくなり、血が流れ、骨さえも溶けていく。

 

”だから言ったろう。俺の胃の中だと。”

 

アーロニーロの声が聞こえる。

 

“この声は俺の認識同期で伝えているだけだからお前は俺の姿を確認できない。いや、違うな。周りの壁全てが俺そのものだ。“

 

「こんなの僕のお布団があれば…」

 

ルペルぺは布団に包まるが意味がない。

所詮は布団。

結界のように隙間がないわけではない。

少しずつ隙間から胃酸が入り込み、ルペルぺを溶かしていく。

布団はただ死ぬスピードを遅めただけに過ぎない。

 

しかも、1度胃酸が入るとその胃酸は凄まじいスピードで布団を内側から溶かす。

 

“やはりお前の布団は外側は絶対防御なのだろうが内側からはてんで弱いみたいだな。お前の布団はエネルギーを逸らすなら内側のお前の霊力大手の操作する為のエネルギーも逸らすはずだ。しかしならないという事は内側に逸らす力はないという訳になる”

 

アーロニーロが説明しているがルペルぺは聞いていない。

何故か痛みがないのも相成って恐怖が心を覆っているのだ。

 

”最後の慈悲だ。お前の痛みを反膜の糸で干渉して痛みを無痛に転換してやったぞ。感謝してさっさと逝け“

 

 

「僕は死ぬの?」

 

ルペルぺが聞く。

 

”お前の記憶も心も肉体も魂も全て消えていく。安心しろ。外には声が聞こえるようにしてある。お前は生き続ける事ができる。俺達の心の中でな“

 

アーロニーロの声が聞こえる。

これがルペルぺの聞いた最期の他の生物の声だった。

 

 

 

 

 

 

 

「いやだ!きえたくないきえたくない!」

 

 

 

「ここからだしてよ!謝るから!訂正するから!」

 

 

 

 

「だから!おねがいだから!ここからだしてよ!!!」

 

 

 

 

 

「キエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクナイキエタクっ……あぁぁ、ァ」

 

 

 

そしてルペルぺという物体は髪の毛1本たりとも残さず消えた。

 

 

 

そして、闘技場に静寂が訪れた。

 


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