俺は今ザエルアポロの部屋にいる。
来賓ようの部屋のようだがな。
「歓迎はしたからな。一応茶を出してあげるよ」
喋る時に一言多いな。
目の前にいるザエルアポロ後ろにいる女破面に指示を出す。
本当に道具は雑に扱うな。最高の研究者なら道具は丁寧に扱えばいいのに。
椅子に座り机を挟んでザエルアポロがいる。
女破面がお茶を汲みに行っているからいないがルドは俺の右斜め後ろに立っている。
従属官が主人と同じ席には座れないと言って聞かない。
女破面が戻ってきてお茶を注がれる。
ルドが毒味をしようとしたのかカップを取ろうとする。
だが俺は、ルドに取られる前にカップを取り、
「では、頂くよ」
お茶を飲んだ。
このお茶も俺が再現したものの一つだな味が微妙に違うから毒でも盛ったのかな。
「よく警戒しないね。後ろの従属官は殺意が止まない程警戒しているというのに」
「これは友好の会談でもあるからな。友好を示して欲しいならこちらから示さなければね」
まあ、俺に毒は通用しないという理由もあるがな。
言わなければバレやしない。
毒が効かなかったのが嫌だったのか知らないが、一瞬不機嫌な顔になった。
「それで僕の研究の為になると言っていたけど」
おーい、不機嫌さが言葉に出てますよー。
「ああ、お前の『完全な生命』を作る研究のな」
ザエルアポロの眉が動いた。
「どこで聞いた」
「雰囲気」
ザエルアポロが溜息をつく。
「話してはくれないようだね」
「話す必要性がないからな。あと1つ質問があるんだが」
「なにかな?」
「お前の研究は完全を求めているのか」
「そうだよ。僕は完全な生命を作り、僕がそれになるんだ」
「じゃあ、その研究失敗するな」
「!?何故だ」
「研究者にとって完全とは死だからだ」
激情したザエルアポロをヴァストローデ級の霊圧で黙らせる。
ザエルアポロもヴァストローデ級だが、霊力の量は俺が食ってきた虚のお陰でこちらが圧倒的だ。
「研究者は今迄存在したものより素晴らしいものを作ろうとするが決して完全ではならない」
「完全であればそれ以上はない。そこに創造は無く、天才も立ち入る事は出来ない」
「完全に何の意味がある?研究者にとって完全に意味など無く、それを発言した今…」
「君は研究者として死んでいる」
「すまんな。ひとりで喋ってしまって。霊圧も元に戻すよ」
そういって俺は霊圧をギリアン級に戻す。
「君はギリアン級じゃ無かったのか」
「ああ、普段は隠しているが俺はヴァストローデ級だ。こうしている方が敵が勝手に見くびるから戦闘が楽なんだよ」
よく見るとザエルアポロの女破面は気絶しているし、ルドは地に伏せている。
少しやり過ぎたか。
「どうだったかな俺の意見は」
俺の話に納得するところが合ったのか、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
少し考えたかと思うと、
「その通りだとしたら僕は何を目指せばいいのかな」
と、聞いてきた。
「完全に近い生命を目指せばいいんじゃないかな」
少しザエルアポロは考え、
「えらく適当だね」
「俺は研究者じゃない。それを考えるのも研究の1つじゃないのか」
「確かに……そうだね」
ザエルアポロやザエルアポロの女破面やルドも落ち着いたみたいなので仕切り直す。
「それじゃあ始めようか」
「完全に近い生命の研究の為に有意義な会談になるといいね」