目が腐ったボーダー隊員 ー改稿版ー   作:職業病

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今回から初登場の人物

二宮匡貴
八幡に土下座され弟子入りをやむなく了承した全てにおいてスタイリッシュな人。そのせいで彼に弟子入りするには土下座が必要という謎の固定観念をつけられた不運なソロランク2位。でも別に本人は気にしておらずそして才能のある八幡のこともそれなりに気に入ってる。酷評は相変わらず。
ワールドトリガー原作ではネタに満ち溢れた人。もはや何を書けばいいのかわからないくらいネタな存在。しまいには作者の葦原先生にまでネタにされる始末。

綾辻遥
ボーダー内だけでなく総武高校にも数多くのファンを持つマドンナ的存在。ワールドトリガー原作通り絵と歌に関しては城戸司令を瞠目させ唐沢さんに冷や汗をかかせ、加えて八幡を絶望させたという伝説の持ち主。この作品では八幡と幼なじみであり八幡が大好きだが超直感のサイドエフェクトをもつ八幡に全く気づいて貰えないという結構本気でかわいそうな立ち位置。No.1ヒロイン。がんばれ、超がんばれ。

今回は前作のとほとんど変わってないです。コピペです。前作読んだ人はぶっちゃけ読まなくてもOKかもです。コピペの理由はどんなに頭ひねっても内容が浮かばなかったからです。ごめんなさい、本当にごめんなさい。
すぐに次出ます。


3話 ようやく、彼は師匠から認められる。

暴力教師によって半強制的によくわからん部活にいれられて、よくわからんまま解散になった後、おれは防衛任務があったので本部に直行。そのまま防衛任務につき適当に任務をこなした。

佐々木さんは太刀川さんに引っ張っていかれ、横山は作戦室で課題をやりながらお菓子をもさもさしてた。

おれはとくにやることもないので緑川と米屋の戦いをぼんやり眺めていた。

そこで後ろから声がかけられる。

 

「比企谷か、珍しいなこっちにいるのは。」

 

声がかけられるた方を見るとそこには整った顔立ちの男がたっていた。

No. 1シューター二宮匡貴。二宮隊隊長だ。

 

「どうも二宮さん。二宮さんも珍しいっすね、個人ランク戦ブースいるなんて。」

 

「大学の方でいろいろ立て込んでな。チームランク戦と防衛任務以外でこっちくる時間がなかった。今月のランク戦ももう始まる。少し肩慣らししておきたくてな。」

 

やばい。これはおれが生贄になるパターンだ。この人に勝ち越せたこと一回もないし。一位と二位の差がでかすぎるんだよな…。

 

「そ、そっすか。じゃあおれはアレがアレでアレなんでそろそろ…」

 

「相手しろ、比企谷。10本でいい。」

 

ほらやっぱり…。ぶっちゃけ暇だけどさ、この人相手だと疲れるんだよ…。

 

「いや、だから、その、えっと…。」

 

「やるのか死ぬのかどっちだ「やりますすいません。」」

 

なんでやらなかったら死ぬんだよおれ…。どんだけ鬱憤溜まってんだよ生贄だろ完全にこれ…。

 

「じゃあさっさとブース入れ。ステージはお前が好きに決めろ。おれは152にいる。」

 

「…了解っす…。」

 

面倒くせぇ…

 

 

ブースに入りトリガーを起動。152の数字をタッチし、ステージをランダム設定にする。重い気持ちを無理やり飲み込み、気合をいれる。でないと本気でただ蜂の巣にされて終わるだけになってしまう。まだおれでは二宮さんにはかてない。ならせめてやれるだけやろう。

 

そう思ったところで転送が始まった。

 

 

『ランク戦 二宮対比企谷 10本勝負 開始』

 

機械音声と共に転送が完了。市街地Aが今回のステージだ。

少し離れたところに二宮さんが隊服であるスーツ姿にポケットに手を突っ込んだ状態でいる。いつ見ても威圧感が…。

だがそうも言ってられない。先手取らないとあっという間にやられる。

 

「バイパー」

 

トリオンキューブを生成し、一瞬で弾道を設定、そして放つ。バイパーで大体全方位攻撃。

だがこの程度では二宮さんはどうにもならない。シールドとアステロイドでバイパーを打ち消す。しっかしこの人シールド堅いよな。

おれは近くの路地へ入り、一旦アステロイドの射線を切り、レーダー頼りでバイパーを放つ。多分、かすり傷すら付いていないだろう。走りながらも思考を止めない。考えることをやめたら二宮さんには勝てない。

再びアステロイドが襲ってくる。建物を壁にし、何とか回避する。グラスホッパーで建物の上にあがり、二宮さんの姿を認識した瞬間に次の攻撃を放つ。

 

「メテオラ」

 

放たれた無数のメテオラが周囲を爆撃する。二宮さん相手でなかったら頭のなかで「爆撃ィ!」とかラグ◯みたいなこと叫んでたんだろうが生憎あの人相手にそんなこと考えてる暇はない。

レーダーを見る限り二宮さんは動いていない。だがベイルアウトもしていない。一旦様子を見るか、と思ったところで背筋に悪寒が走る。

グラスホッパーを使い、横に大きくかわすと先ほどまでおれがいた場所にハウンドの雨が降ってくる。どうやらおれがかわして、姿が見えなくなった一瞬に放ったらしい。

 

「ほぉ、今のをかわすとはな。「超直感」とはよく言ったもんだ。」

 

「褒められてる気がしませんよ、全然っ!」

 

そう言いながらもアステロイドが襲ってくるので回避しながらこちらもアステロイドをはなつ。

 

おれのサイドエフェクト、「超直感」

ボーダーの基準でいったら最高のSランク

一言で言えば「カンがいい」。どう見ても地味であり、迅悠一のもつ「未来視」と影浦雅人のもつ「感情受信体質」を足して二で割った感じである。だが予感したことはほぼ百発百中。

効能としては自分に向けられた意識外からの攻撃を本能的に感知したりできる。選択問題等で「なんとなく」という理由で選ぶ時の「なんとなく」が限りなく高い精度になっていると思ってくれればいい。加えて場合によっちゃ相手の行動を先読みすることも可能だ。ぶっちゃけ地味ではあるがそこそこ使い勝手がいいサイドエフェクトだ。わかんない選択問題とかはこれあればほとんどあってるしね!

ただ、嫌な予感は今まで外れたことがないということにちょっと悲しくなっていたり。たまには外れて欲しいものだが…。

だがこのサイドエフェクト、時と場合によって予感の的中率と危険察知速度や直感的中率が変動する。場合によっちゃ察知できずに攻撃くらうこともある。それに迅さんみたいに映像が頭に浮かんでくるわけではないから予感しても体がついていかないこともある結構不安定なサイドエフェクトだ。昔はぼっち特有の視線感知やら危機回避本能なのかと思ってたらサイドエフェクトだということがボーダー入って分かった。まぁでもいかんせん地味なんだよな…。

 

視界の外からくるハウンドをサイドエフェクトで避けながら二宮さんの射線をきり、牽制としてバイパーを放つ。

その場でトマホークと生成しようとバイパーとメテオラを出すが再び背筋に悪寒が走る。

直感で左に転がるようにして避けると、先ほどのようにハウンドの雨が降ってくる。危機一髪かと思ったが、また直ぐに悪寒がくる。

しかし気付いた時にはもう遅かった。すでにアステロイドを放っている二宮さんが視界に入る。

グラスホッパーを起動させるが遅すぎた。

 

あ、詰んだ。

 

そう思った時にはおれの体は蜂の巣になっていた。

『戦闘体活動限界。ベイルアウト』

そのままおれはベイルアウトした。

 

 

僅かな浮遊感のあと、ベッドに叩きつけられる。今思うとこのベッドモッフモフだな。うちのベッドに欲しい。

 

『まずは一本だな。』

 

二宮さんから通信が入る。

 

『お前はバカか。お前の戦闘スタイルの強みはグラスホッパーによる高い機動力からのバイパーによる全方位攻撃だろうが。立ち止まったらお前の強みがなくなるだろう。そんなんだから目が腐ってるとか言われんだよ。』

 

終わって早々酷評だな。でも全部その通りだからな。甘んじて受け入れるしかない。でも二宮さん?目が腐ってるの関係ないよね?

 

『自分の強みを生かし、不利な部分では勝負しない。それが勝負の鉄則だって教えただろうがバカが。No.2になって浮かれてんじゃねぇだろうな。』

 

怖い、怖いよ。てか褒めて伸ばすタイプのおれに酷評しまくると逆効果ですよ?わかってます?

おれの師匠である二宮さんにはいろいろ教わった(というかただボコボコにされてその後酷評を受けてただけ)が、おれもそれなりに実力がついてきたからか最初と比べるとかなり酷評があまくなった。最初のころとかマジでボーダーやめようかと思うくらい酷評されたからな。

 

『とにかく次だ。さっさと始めるぞ。』

 

「…うっす。」

 

強みを生かす、ね。初心忘るべからずだ。

 

 

 

 

再びモッフモフのベッドに叩きつけられる。これで9本終わった。

結果は2-7。マグレで二本取れたのは奇跡だが、二宮さんはかなり調子戻してきてるのか、さっきはほとんどなにもさせてもらえなかった。ハウンドとアステロイドだけでここまでやられるとは正直思ってなかった。まだまだあの人にはかなわないようだ。

さっきまでで考えた手は全部通じなかった。なら新しい手を使うしかない。単純な実力で負けてるなら頭使うしかないが、それでもさっきはダメだった。

ならどうする?どうすれば勝てる?

ここは、発想を逆転させて考えてみよう。一矢報いるくらいはできるかもしれない。最近考えたとっておきを使ってみようか。

手は思いついた。ならそれをどのタイミングで使うか。一度見せれば同じ手はしばらく同じ相手には使えない。

あとは時と場合によるか。

 

『最後、始めるぞ。』

 

「了解っす…。」

 

さて、どこまでいけるかね。

 

 

 

 

最後の一本は工業地帯、夜だった。

正直ありがたい。このマップは障害物が多く、アステロイドやハウンドといった直線的な弾道の弾丸は通り辛く、バイパーの自由に弾道を引けるという特性が活かせる。

夜で視界が悪いがそれは二宮さんも同じ。サイドエフェクトの効能を低く見積もって計算に入れてもこちらの方が有利だ。

このとっておきは一回勝負だ。決めるとしたら最初の会合で決めるしかない。それ凌がれたら多分トリオン切れで嬲られておわる。

よし、やるか。

 

ーーー

 

二宮さんの姿をぼんやりとだが視認する。ハウンドが飛んでくる前にメテオラで爆撃。これで視界を奪う。爆撃により障害物が少し吹っ飛ぶがこれにより二宮さんの視界はほぼゼロになる。

そして二宮さんの周囲にグラスホッパーを展開。そしてそのグラスホッパーを踏み高速で移動しながらアステロイドを放つ。

「ピンボール」と呼ばれる緑川のような軽量級アタッカーが使うグラスホッパーの連続使用だ。シューターが本来使うものではない。そもそもシューターがグラスホッパー入れてること自体少々異質なのだ。

弾速重視で放ったため、少しづつだが二宮さんの手足を削る。

そこでハウンドが襲ってくるが想定内。グラスホッパーで一気に下がる。メテオラの爆煙が未だにもうもうと立ち込めているがそこにむかってカンでバイパーを放つ。

準備は整った。あとはどう誘うかだ。

 

メテオラによる爆煙が晴れる。二宮さんを取り囲むようにしてそこには無数の弾丸が設置されていた。

超低速散弾。

非常にゆっくりであるが二宮さんに弾丸たちは距離を詰める。最初のメテオラは視界を悪くし、そしてピンボールでメテオラを低速でばら撒き、ばら撒き終えたらアステロイドで攻撃し、そちらに意識を持っていかせメテオラの設置をばれないようにする。

一見簡単に見えるがピンボールの速度でこの作業を行うのは相当神経を使う。まずピンボールの間に設置したメテオラが自分に触れたらアウト。自分がくらってさらに相手に策がばれて終わる。それにより同じピンボールの軌道は設置後二度は使えない。しかも意識を散らすためのアステロイドも設置したメテオラに当てないようにする必要がある。ぶっちゃけかなりリスクが高い。でも今のおれではこれくらいしなければこの人には勝てない。

設置されてるのがアステロイドであれば二宮さんはシールド使って強行突破もできるだろう。だが今回設置したのはメテオラ。下手に手を出すと威力重視にしてあるためどっかしら持ってかれるだろう。だがこの距離だとおれも被害に遭いかねない。あたりの障害物はほとんど爆撃によりなくなってるが、マップそのものが今回は障害物みたいなものだ。マップの障害物を縦横無尽に駆け回り、設置したメテオラを避けつつバイパーを放つ。

この状況だと不利だと思ったのか、傷覚悟でシールドをはり弾丸の包囲網を無理やり脱出する二宮さん。だがすでにおれが駆け回ったところにはメテオラが配置されている。

 

だがここまでやってもこの人は崩れない。ハウンドを使って遠くのメテオラから撃ち落としていく。誘爆もいくつかあるが、それでも二宮さんにダメージが入らないようなものしかない。

だが、これも予想どおり。

メテオラによりまた爆煙が立ち込め、視界を奪う。それでもハウンドをレーダーを利用し放ってくる。レーダー頼りのクセにかなり正確に撃ってくるので内心冷や汗ダラダラだ。さらにマップを移動し二宮さんをある場所に誘い込む。おれのスタート地点だった場所だ。そこは袋小路のようになっている。二宮さんがくる直前にメテオラで再び視界を奪う。二宮さんが袋小路に降り立つ。視界が悪いがはっきり見えるはずだ。最初の会合の前におれが仕掛けたメテオラの弾幕。さっき仕掛けたのよりはるかに濃い密度だ。シールド使っても突破は厳しい。

ここまで来れば、おれの勝ちだ。グラスホッパーで既に二宮さんの上空へ飛び、そしてそこに向かってバイパーを放つ。少しバイパーが設置したメテオラにふれ爆発するが、何発かはシールドにあたった音がする。そこで再びハウンドが飛んでくるがグラスホッパーで回避。近くの障害物を盾にする。ハウンドの弾数からしてサブの方はシールドをはっているのだろう。そして両手にトリオンキューブを生成する。

 

「アステロイド+アステロイド」

 

おれは出水ほど合成弾を早く作れる訳ではないがそこそこ早く作れる。それでもできてしまえば

 

「ギムレット」

 

チェックメイトだ

 

ようやく晴れてきた爆煙から現れた二宮さんに向かってギムレットを放つ。周囲はメテオラの壁。後ろは袋小路。先ほどのアステロイドで足を少し削ったから回避は不可能。防ぐ手段は展開しているシールドのみだが、ギムレット相手にシールド、しかも片方のみでは防ぎきれない。

ギムレットが二宮さんのシールドにあたり砕け、二宮さんのトリオン体を貫く。二宮さんは驚愕の表情を浮かべ、ベイルアウトしていった。

 

 

 

 

「はー疲れた…。」

 

とっておきをなんとか決められたが正直かなりギリギリだった。なによりステージの運が良かったとういのがあるだろう。あのステージでなかったら決められてたかどうかはかなり怪しい。

溜息をつきながらブースを出るとちょうど二宮さんも出てきたところだった。

 

「最後はしてやられた。なかなか嫌な戦法だった。」

 

これは褒められてるのかかなり怪しいところだな…。てかこの人褒めるの?まずそこからだ。

 

「いや、あれはとっておきだったし、しかもあのステージだったからできたことっすよ。他だったら正直できてたか怪しいです。」

 

「それでもだ。やられたことは事実だ。自分の強みを活かしたいいやり方だったな。正直かなりむかつくが。」

 

まあそうですよね、おれもあれやられたらイラつくし。

 

「強くなったな。まぁ何にせよ付き合ってくれた礼はする。今度なんか奢ってやる。じゃあな。」

 

「え、あ、はい。お疲れっす…。」

 

初めてまともに褒められた気がする…。

 

 

二宮さんとの10本勝負のあと、佐々木さんを待とうかと思ったがスマホをみると「先に帰ってていい」とメールが来てたので荷物の置いてある作戦室へと向かっている。

そこで見知った顔に出会った。

 

「あれ、八幡くん?」

 

「綾辻…。」

 

「ふふっ、今朝ぶりね。」

 

「そうだな、今朝ぶりだな。」

 

綾辻遥。A級5位嵐山隊オペレーターだ。そしておれの幼なじみでもある。親同士が交流があり幼稚園の頃に親に連れられていった先で出会った。昔のおれは純粋だったためお互いすぐに打ち解けよく遊ぶようになった。家は自転車で15分くらいのとこで近くはなかったが、それでもよく遊んだ。小中ではおれはぼっちになりいじめも受けていたためできるだけ関わらないようにしていたが、高校ではおれはただのぼっちのため普通に交流はもとに戻った。

 

「珍しいね、こんな時間に本部いるなんて。防衛任務帰り?」

 

「そうだな、その通りだ。」

 

二宮さんの生贄になったことは言わんでいいだろう。同情されたら悲しくなっちゃう。

よく見ると綾辻はファイルを何冊か抱えている。背表紙に広報だのなんだの書いてあるため広報系の仕事の資料だろうか。

 

「ん。」

 

綾辻の抱えているファイルをひょいと奪う。小町に躾けられたためこういう事には無意識に手が出る。しかし妹に躾けられる兄ってどうなんだろうか。

 

「え、あ…。」

 

「持ってやる。嵐山隊の作戦室まで運べばいいか?」

 

「う、うん。」

 

若干戸惑いを見せているがおれはさっさと歩き始めてしまう。

すぐに再起動した綾辻はおれの隣に追いつき肩を並べてあるく。

 

「やっぱり、八幡くんは優しいね。」

 

「小町に躾けられたからな。」

 

「ああ、小町ちゃんか。元気にしてる?」

 

「おお、元気だ。超元気で超かわいい。」

 

「八幡くん相変わらずなのね。」

 

上機嫌に笑顔を向けながら顔を近づけてくる綾辻。

近い近い近い近い。お前もうちょい自分の容姿に自覚持とう?美人なんだからいくら幼なじみとはいえ、この距離はおれでもきょどるぞ。

しかもこれを天然でやっているなんて。綾辻、恐ろしい子…!

若干体をのけぞらせ距離をとる。そうすると綾辻も元に戻る。僅かに顔が赤いような気がするが多分気のせい。

そのまま他愛もない話をしながら嵐山隊の作戦室を目指す。

たまには、こんなのも悪くない。

 

 

嵐山隊の作戦室には誰もいなかった。

 

「今日はみんなもう帰っちゃったよ。珍しくみんなの予定がかぶったみたいでね。」

 

「ほぉ。で、なに、これから残ってその仕事すんのか?」

 

「ううん、今日はこの資料貰って終わり。また明日に資料の読み合わせとかするの。」

 

「大変だな。」

 

「やってみると、そうでもないよ?」

 

「そりゃお前らはそうかもだけどおれはそういうわけにはいかねぇよ…。」

 

なにせおれはコミュ障予備軍。テレビなんて出れるはずがない。

 

「まぁ、そうかもね。」

 

肯定されたらされたでなんか悲しい。

 

「そういえば佐々木さんは?防衛任務後だし一緒じゃないの?」

 

「あの人はいま太刀川さんに捕まってるよ。先帰ってろってメール来てた。」

 

「ああ、なるほど。」

 

納得する綾辻。

と、そこで2人同時に腹の虫がなる。時計をみると既に7時半回っている。さっきまでトリオン体だったせいで気づかなかったが、意識すると急に空腹を感じる。

 

「あ、い、いや、そのさっきまで仕事だったから、えっと、ご飯まだ食べてなくて…。」

 

顔を真っ赤にしながら綾辻は弁明する。こんな時間まで飯も食わずに仕事してたとか、綾辻が既に社畜になってきているようだ。実はボーダーもブラックだったという事実に戦慄…!

 

「飯、うちで食ってくか?」

 

とりあえず提案してみる。現在住んでるマンションにも綾辻は何度かきたことがある。というかおれの話せるボーダー隊員はなぜか大半うちにきたことがある。理由はまちまちだが。

それに確かこいつの両親は共働きで、家にあまりいないらしい。だから食事を自分で作ることもよくあるとか。しかしこんな時間から料理をはじめたら食い始めるのはかなり遅い時間になってしまうだろう。

多分この時間なら小町は家にいる。飯も作ってくれてるだろう。多少量足りなくてもそこはチャチャッとなんか作れば問題ないだろうし。

 

「え、でもいいの?」

 

「まぁ一応小町に確認してみるけどあいつなら二つ返事で了承すると思うぞ。」

 

そういいながらスマホをとりだし電話をかける。

 

『ほいほーい?どしたのお兄ちゃん?』

 

「おお小町、今から帰るんだが飯あるか?」

 

『あるよー。今から帰るのね、じゃあ温めとくね。あ!今の旦那さんの帰りを待つ献身的な奥さんみたいで小町的にポイント高い!』

 

「はいはい高い高い。」

 

『うわテキトー…』

 

「そんでだな、おれの分除いてもう一人分くらいの飯あるか?」

 

『ん?多分あるよ?なに、誰かくるの?佐々木さん?』

 

「いや、綾辻だ。」

 

『おお!遥さんか!おお?これはもしや…?』

 

小町がなんかブツブツ言ってるが何言ってるかはわからない。

 

「さっきからなに言ってんだ?」

 

『いやーなんでもなーい!まぁでもご飯は多めに作ったから大丈夫だよ!』

 

「そか、わかった。」

 

そこで電話をきる。

 

「小町ちゃん、なんだって?」

 

「ああ、多めに作ったから量も特に問題ないとさ。」

 

「そっか、じゃあお言葉に甘えさせてもらうね。」

 

そういうと綾辻は荷物をまとめ始めた。帰り支度ができるとおれの荷物をとるためにこんどはうちの隊の作戦室へ向かった。

 

 

作戦室にはまだ横山がいたが、ちょうど帰るとこだったらしい。

 

「おーっす、ハッチか。あたしはもう帰る…て、遥もいんのか。ほほう、これはこれは…」

 

横山はおれと綾辻をニヤニヤしながらなんか呟いてる。何かこいつがニヤつく要素がこの場にあるだろうか?わからん…。こういう時おれのサイドエフェクトは全く役に立たない。

なぜかニヤついてる横山に顔を真っ赤にしながら綾辻はなんかいってる。それにしても君たち仲良いですね…。まぁクラス一緒だしよく話してるみたいだからあんなもんか。

 

「ふふ、まぁ遥いじるのは今度でいいや!この状況だけでかなりいいネタになったしね!」

 

「も、もう!夏希!やめてよ!」

 

「ふふ、まぁがーんばってね、遥!じゃーね、遥、ハッチ!」

 

そう言って横山は帰っていった。なんだったのだろう。まぁなんでもいい。とりあえずとっとと帰ろう。さすがに腹へった。

行くぞ、と未だに顔を赤くしている綾辻に一声かけ、おれは作戦室を後にした。

 

 

ボーダー本部からおれのマンションまで歩いて15分くらいだ。これくらい近いといろいろと便利でいい。

 

「そういえば八幡くん、今日平塚先生に呼び出されてたみたいだけどなにやらかしたの?」

 

「なんで知ってんだよ…。いやあれだ、現国の課題の作文で少しふざけたら呼び出しくらった。それに加えてへんな部活いれさせられたし。」

 

「変な部活?」

 

「確か、奉仕部?だったかな?」

 

「奉仕部、雪ノ下さんがいる部活だよね?」

 

「ああ、そうだな。」

 

「ふーん。でもそれ、防衛任務どうするの?基本八幡くん放課後に入れてるでしょ?」

 

「ばっか、お前、誰も入るなんて一言も言ってないんだ。明日から行くつもりは一切ない。あんなよくわからん部活動よりおれの給料の方が大事だ。」

 

最悪ガチでバックレるし。

そこで一旦会話が途切れるが、しばらくするとくすりと綾辻が笑う。なぜ笑ったのだろうと綾辻の方をみて首を傾げるとその視線に気づいた綾辻が答える。

 

「ううん、なんでも。ただやっぱり八幡くんは優しいなって。」

 

「はぁ?」

 

「あれ、気づかない?じゃあ一旦止まって。」

 

言われたまま立ち止まる。

 

「そのまま一歩普通に踏み出して。」

 

意図がわからないが言われた通りにする。

そうすると綾辻も一歩踏み出す。その一歩はおれの約三分の二くらいの歩幅だった。

 

「ほら、私と八幡くんだと歩幅に差があるから普通に歩いてたら私はあっという間に置いてかれちゃうの。でも今一緒に歩いてても私は置いてかれない。私は普通に歩いてるだけだから、これって八幡くんが私の歩幅に合わせてくれてるってことでしょ?」

 

…全く意識してなかった。確かにおれと綾辻は男と女ということもあり身長差がある。それゆえ歩幅にも差が出てくるのだ。

綾辻の言う通りおれが合わせてたのだろうが、恐らく小町と歩く時のクセがそのまま出たのだろう。

 

「いや、これくらいみんな普通じゃねぇの?」

 

「ううん、結構みんな自分のペースで歩くの。私、歩くの遅いからついていくのきついときとかあるからね。男子もみんな自分のペースで歩くんだよ。でも八幡くんは私がペース上げても下げても合わせてくれるの。だから優しいなって。」

 

そういうものなのだろうか。よく、わからない。そもそもおれは一人で歩くことが多いから他人のペースとか気にしないのだろう。佐々木さんとはあまり身長差もないから合わせる必要もないのだろうし。

 

「まぁ、小町と歩くときとか小町に合わせてるからな。多分、そのせいだろう。」

 

「いい妹だね。私、一人っ子だからちょっと羨ましい。」

 

「たとえ綾辻でも小町はやらんぞ。」

 

「えー、そう言われると欲しくなっちゃうなー。」

 

いつの日か、こんな風に話しながら帰ったこともあったな、とそんな事を考えながらの久々の2人での帰路だった。

 

 

「お久しぶりです!遥さん!」

 

「うん、久しぶり小町ちゃん。」

 

「ごはんの準備はもうできてますよ!とりあえず手洗ってきて下さいね!」

 

「うん、わかった。」

 

うちのマンションにつくと小町が満面の笑みかつハイテンションで出迎えてきた。さすが我が妹、兄の帰りを心待ちにしていたのだろう!え、綾辻しか歓迎されてない?気のせいだ!

そのまま綾辻は靴を脱ぎ洗面所へと向かう。

 

「お兄ちゃんお兄ちゃん。」

 

「ん?」

 

「遥さんお兄ちゃんが誘ったの?」

 

「ああ、そうだが。」

 

「いやーお兄ちゃん。小町はお義姉ちゃん候補が増えるのはいいけどね、フラグ建てすぎないようにね?」

 

「何言ってんだお前、おれは基本ぼっちだぞ?フラグ建てるどころか地雷踏み抜いちゃうよ?」

 

「いやーだって遥さんの他にも那須さんとか国近さんとか小南さんとか三上さんとか加古さんとかいろいろフラグ建ててるじゃん?」

 

「だから何言ってんだ。ぼっちのおれがフラグ建てるわけないというか建て方がそもそもわからん。」

 

「はー…、ごみいちゃんにわかれって方が無理か…。」

 

本当何言ってんだこいつは。というか早く飯食いたい。腹減った。

 

「やっぱり遥さんが正妻か…。いやでもここは国近さんのほんわかオーラで…。いやでもでもここで…」

 

「なんでもいいから早く飯食いたいんだけど…。」

 

「…はいはいもう準備できてるよ。じゃ、行こっかお兄ちゃん。」

 

そう言って小町はダイニングの方へパタパタ駆けていく。いやしかしほんと腹減った。二宮さんとのバトルのせいだな、間違いない。

そこで綾辻が洗面所から出てくる。

 

「八幡くん、次いいよ。」

 

「おお、先ダイニングいってろ。」

 

「わかった。」

 

そう言いながら洗面所へ入ると、ふとカレンダーが目に入る。ボーダーに入隊してから既に3年近く経っている。やることが多いと時が経つのは早く感じるものだ。

 

そうしてその日は一人多い食事になった。小町が喜んでいた事がなにより。




大学生の設定

国立組 琲世、風間さん、レイジさん、加古さん、二宮さん、嵐山さん、月見さん
私立組 太刀川さん、迅さん、諏訪さん、堤さん、来馬さん、柿崎さん
院生 東さん

一応言っておきますが私立だからといって全員頭悪いとかではないです。大学生組で頭悪いのは多分太刀川さんくらい。他はみんなそこそこ優秀ということで。というか迅さんが大学にいるイメージが浮かばないのは作者だけでしょうか。

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