目が腐ったボーダー隊員 ー改稿版ー   作:職業病

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すいません、レポートの山を処分するのに手間取りました。最近自分の学科に入ったのを後悔し始めた今日この頃。

とりあえず遅れたことをお詫び申し上げます。
申し訳ありません。


25話 やはりゲームというのは、楽しいものである。

「はい終了」

「お、終わった……」

「終わった〜……」

「お疲れ様」

 

現在、俺は横山と共に佐々木さん特製の数学のテストを解いていた。俺も横山も文系であるため数学は得意ではない。横山は特進クラスであるため俺よりは酷くないとはいえ得意とは言い難い。俺に至ってはテストで平均点は取れるとはいえ、とてもこの点では心許ない。なのでこの夏休みを利用し、少しでも数学を解けるようにしようといったところだ。

ちなみに、佐々木さんも文系ではあるが、数学は割と得意だとか。

 

「もーなんでセンター問題で三角関数の微分が出てくるのー……」

「数Ⅲの範囲だけど、解けて損はないでしょ?少し難しめの問題も解いておくと実際の試験でも問題なく解けるよ」

「時間足んねー……」

「センターの数学は時間との戦いだからね」

 

いやでもきついっすよ……。もう今日は数学見たくない。ちなみに言うと数学は四六時中見たくない。

と、そこでスマホが振動する。誰だ?

 

『国近柚宇

比企谷くん、明日言ってたゲーム発売日だから付き合ってねー。9時にTSUTAY◯の前でねー』

 

………………ああ、決定ですかそうですか。確かに前にそんな約束したな。

 

「ん?どうしたの比企谷くん?」

「ああいや、国近さんがちょっと……」

「お、デートか?」

「どこの世界に新作ゲーム買いにいくだけの色気ないデートがあるんだよ」

「ほう、なら遥と玲のデートには色気があったのか」

「………………………」

 

揚げ足をとるようなことしやがって……。あれもデートではない。ただ出かけただけだ。

 

「まあ比企谷くん、今日頑張ったし明日は休んでいいんじゃない?ちょうど防衛任務もないし」

「……そっすか」

「ハッチは相変わらず朴念仁ねー」

 

解せぬ。

 

 

さて、現在の時刻は8時59分、TSUTAY◯の前だ。しかし国近さんは未だに現れない。まぁ、あの人いろいろとルーズだし、そもそもまだ時間じゃないし。

 

「お、比企谷くん〜」

 

噂はしてないが、噂をすれば国近さん。

今日はなんか普段とは違う服装だ。なんか、その、おめかししてる。

 

「あ、ども……」

「お?どうした?普段と違うお姉さんにドキドキしちゃったかね?」

 

近い近い近い近い近い近い近い近い近い。近いがゲシュタルト崩壊。豊満なマウント富士が腕に当たってますよ。俺が鋼の理性じゃなければ国近さん襲われてますよ。国近さんまで魔王にならないでくださいよ?

 

「んじゃ〜早速いこ〜」

「うす……」

 

引きづられるようにしてつれていかれる。そういや結局何買うんだ?

 

 

「で、結局何買うんすか?」

「ん〜?FFだよ?」

 

ほう、FFか。あれは一人でもできるから俺はよくやった。なんなら今も時々やるし。

 

「最新作だし最新機器のやつだしかなり話題になってたから大分前から予約してたんだよね〜。予約してるから売り切れとかはないよ〜」

「ああ、あれですか」

 

あのトレーラーでてからしばらく全然音沙汰なかったやつな。やってみたいけど機器ねーし。

 

「今日は徹ゲーだな〜」

 

そういや徹ゲーやるって前出水が言ってたな。あれ嘘かもとか思ってたけどガチなのね。というか徹夜でゲームとかどんだけガチ勢なんだよ。

 

「比企谷くんもやろっか」

「ファッ⁈」

 

なんで⁈

 

「お姉さんは比企谷くんとFFやりたいのだ〜」

「いや、それは……」

「よし決定」

 

な ん だ と

これは、今日本部でトリオン体解除できないかも……。

 

ーーー

 

「よーし買えた買えた〜」

 

無事ゲームを買えてホクホク顔になってる国近さん。俺は人ごみにあてられて既にグロッキー。さすがFFと言うべきか、新作買いに来た人でごった返してる。

 

「じゃあこれからデートしよっか〜」

「はい?」

「ん?」

 

何言ってんのこの人。

 

「あの、デートなんて聞いてませんよ?」

「そうだよ。言ってないもん」

 

マジか。

 

「いや、あのそういうのは始めにいってくれないと……」

 

いってくれれば無理やり予定ねじ込んでキャンセルするとか、適当に理由つけて逃げ出すとかしたのに。

 

「だって最初から言ってたら比企谷くん逃げるでしょ〜?」

 

よまれてるだと⁈なんだこの人、エスパーか⁈

 

「それに最初から言ってたら面白くないじゃーん。お姉さんは比企谷くんの慌てる顔がみたいのだ〜」

 

解せぬ。俺の慌て顏なんてロクなもんじゃねーだろ。目が腐ってるし。

 

「ほらいくよ〜」

 

マジかよ……。この時の俺は死んだ魚みたいな目をしてただろう。なんなら四六時中そんな目をしてるまである。

 

 

で、つれてこられたのは映画館。

 

「映画観るんすか?」

「そーだよー。デートの定番でしょ〜?」

「いや、デートしたことないから知りませんよ……」

「お?お姉さんが初デートかい?」

「いや、これもデートだとは思ってません」

 

断じて認めん。そんなリア充みたいなこと誰がするか!

 

「むーつれなーい」

「………」

「まあいいや〜。じゃああれみよっか」

 

あれは………最近公開したアクション映画か。外国の有名な俳優が主人公やってるやつだ。アカデミー賞受賞とか言ってたな。

 

「比企谷くんアクション平気?」

「ええまぁ。映画ならアクション一番見ますかね」

 

出水とか米屋とか好きだし、あと荒船さんとか大好きだから。数回荒船隊のメンバーと見に行ったし。

 

「ふむふむほうほう。それはよかった」

 

そしてそのままチケットを購入。割と並ばずに買えてよかった。

 

「飲み物でも買って来ましょうか?」

「お?いいの?」

「ええまぁ」

「そっかそっか。ならアイスティーで〜」

「うす」

 

アイスティーとコーヒーを購入。非常に遺憾なのがマッカンがなかったことだ。なんて映画館だ。ホットペッパーで酷評しといてやる。つってもあれは映画館のこと書けないけど。

 

「どうぞ」

「お〜ありがとう」

「いえ」

「………そういうさりげなく優しいところもずるいな〜」

「はい?」

「なーんでもなーい」

 

うん、最近反抗期の人が増えてる気がする。

 

 

「うわ、寒っ……」

「わー確かにこれはちょっと寒いね〜」

 

外が暑かったから余計寒く感じる。でもこれはちょっときつい。俺はまだ重ね着してるけど国近さんはほとんど重ね着してない。下手したら風邪ひいてしまう。

 

「これどーぞ」

「おろ?」

 

来てた上着を貸す。さすがにこんなとこで風邪ひかれたらこちらも寝覚めが悪い。

 

「………」

 

無言。もしかして汗臭かった?そんなに汗かいてないんだけど……。

 

「あの、もしかして汗臭かったですか?」

「え⁈ああいや違う違う。嬉しいよ、ありがとう〜」

 

………?心なしか顔が赤いような……。気のせいか?

 

「………やっぱりずるいよ、比企谷くん」

 

なにがだよ。

 

 

映画は無事終わり、周囲が明るくなる。

そして俺の精神的ヒットポイントも限界になる。理由は国近さんが映画観てる時にビックリしたりすると俺の手を掴んでくるからだ。その度にビクッとしてしまいそうになるのを必死に堪えた俺を寧ろ褒めてほしい。俺は褒めて伸びるタイプだ。だが酷評され過ぎると逆に伸びるタイプでもある。

 

「いやー面白かったね〜」

「そっすね……」

 

面白かったのは認めるが、あなたのせいで精神的にグロッキーです。なんならすぐに帰りたいレベルで。そしてそこで無防備に伸びをしないで下さい。そのマウント富士に目がいっちゃうから。

 

「よし、じゃあごはんいこっか」

「うす……」

 

 

来たのは、サイゼ。超無難だな、うん。

 

「うーんどれにしよっかな〜」

「俺は、ミラノ風ドリアで」

「安定だね」

「安定です」

 

何も迷うことはない。格安の値段に加えてそこそこの味と量。

 

「じゃー私は〜カルボナーラで」

 

これまた安定だな。ついでに言うとサイゼは全てのメニューにハズレがない安定とまで言える。ただ、佐々木さん曰くハンバーグ系は量の割に高いとか。俺はそうは思わないけど。

 

「ほい、ポチッと」

 

ピンポーンと例のごとくの音がする。来たのはなんか少し髪がもさっとした店員だったが、どうでもいいので外を眺めてぼーっとする。

 

「御注文は?」

「ミラノ風ドリアとカルボナーラ、あとドリンクバー二つで〜」

「かしこまりました。ドリンクバーはあちらです。ご自由にどうぞ」

 

そう言って店員は去って行った。………誰かに似てるような。

 

「さっき飲み物買ってきてもらったから、ドリンクバーはお姉さんのおごりなのだ〜」

「え、なんかすんません」

「いいんだよ〜。ついでにとってきてあげるよ〜」

 

そう言って国近さんは席を立った。ふむ、なんか先輩に行かせるのは少し気後れするな。まぁ向こうが行くつったからいいか。

 

「ほいどーぞ〜」

「あ、ども」

 

オレンジジュースもってきてくれた。ちなみに国近さんはメロンソーダ。さっそくいただこう。うん、オレンジジュースってやっぱり安定だわ。

 

「比企谷くんは〜」

「はい?」

「好きな人とかいるの〜?」

「ブフッ」

 

飲んでたオレンジジュースを吹き出す。

………なに言ってんのこの人。

 

「なに言ってんすか?」

「言葉の通りだよ〜好きな人いないの〜?」

「いません」

「ブー!そっけない〜」

 

豚ですかあなたは。

しかし、好きな人か。

いるわけない。正直そんなこと考えたことないし、そもそもそんな余裕ない。大分慣れて楽になったとはいえ、未だに自分と小町のことにかかりっきりだし。というかあなたそういうのに興味あったんですね。

 

「そんなこと考えたこともないっすよ」

「じゃあ今考えてよ〜」

「…………」

 

………ああ、この人相手だと本当調子狂うな。

しかし、最近こんなこと言われるの増えてる気がするのは気のせいだろうか。

 

「よくわかんないです。今まで『好き』だと思ったことがなかったので」

「ふ〜ん、そっか」

 

過去にそう思えたことはないのだ。勘違いならあるけど。

中学のころそんなことがあった。勘違いで好きになったやつがいたから告白しようと教室に呼び出したまではいい。ただその時俺のサイドエフェクトが全力で警告してきたから結局なにもせず終わった。

 

「じゃあそのうちわかるといいね〜」

「はぁ……」

 

はたしてわかるようになる日はくるのだろうか。

 

「というか国近さんそういうの興味あるんですね」

「まーねー。これでも年頃の女の子だからね〜。それとも、比企谷くんはお姉さんがゲームにしか興味ないとでも思ったのかね?」

 

思ってたなんて口が裂けても言えねぇ。だって徹ゲーする人だぜ?そう思われても仕方ねぇだろ。

 

「比企谷くんは興味ないの?」

「興味ないね」

「クラウ◯だね〜」

 

FFやってるからわかるか、さすがに。

 

 

サイゼを出て辿り着いたのは大型ショッピングモールのなかの本屋。言っちゃ悪いが、国近さんはあまり本読むイメージないから意外ではある。攻略本とかかな?

 

「本屋なんてくるんすね」

「おや?お姉さんのイメージにはなかったかな?」

「いや、その……」

「イメージ通り文庫本とかはあんまり読まないよ〜」

 

やはりか。

 

「じゃあなにしにきたんすか?」

「漫画でも買おうかな〜って。比企谷くんはどんな漫画読むの〜?」

「まぁ、いろいろ読みますよ。作戦室にもいくつかあるので」

 

横山が持ってきたスラムダンクとかナルトとか佐々木さんが持ってきたドラゴンボールとか。あと諏訪隊の作戦室にある漫画とかも読むし結構漫画は読む。

 

「ほ〜夏希ちゃんがスラムダンク読むとは」

「あいつが読むのは大体少年漫画っすよ。少女漫画とか絶対読みませんし」

 

なんなら少女漫画を「ハッ!」って鼻で笑うまである。でも別に嫌いというわけではなさそうで「面白いのは面白いでしょ。でもあたしは読まない。そんだけ」とか言ってたな。さすが核兵器。

 

「国近さんは何読むんすか?」

「アクションものも読むしコナンとか好きかな〜。少女漫画も割と読むよ〜」

「ほー……」

 

少女漫画読むんだ。ちょっと意外だ。

 

「佐々木さんドラゴンボール読むんだね〜」

「あの人大好きっすよ、古い漫画。スラムダンクも大好きだし」

 

むしろ最近の漫画は読まないまである。

 

「で、なに買うすんか?」

「これ〜」

 

そう言って見せて来たのは最近映画化した漫画だ。週刊誌でやってるやつだ。俺も少し読んだことある。割と面白かった。

 

「最新刊でたんだ〜」

「はぁ……」

「じゃあ買ってくるね〜」

 

そう言って国近さんはパタパタ走っていった。

………今のうちに逃げちゃダメ…………ですよねそうですよね。いや別に国近さんが嫌というわけではなくてですね、周囲からの視線がアレなんですよ……。

 

 

続いて来たのはゲームセンター。まぁ予想通りだ。この人といてゲーセン行かないはずがない。

 

「なーにやろっかな〜」

 

実は俺はあまりゲーセンに来たことがない。やることないしできないしそもそも金がない。国近さん以外にゲーセン行きたがるやつもせいぜい米屋くらいだ。その米屋もそんなよくいくってわけでもない。加えて佐々木さんがこういうずっとうるさいとこにいると頭痛がしてくる人だ。だからあまり行く機会がない。

 

「比企谷くんはなにやりたい〜?」

「いや、俺よくわかんないんすけど……」

「格ゲーとか?」

「ちょっと勘弁っすわ」

 

この人と一回ストファやったらフルコンボでボコられたからもうやりたくない。せめてやるならコンボ続かないやつにしてくれ。

 

「じゃああれは?戦略ゲーム」

 

戦略ゲーム………その名の通り戦略のゲームなのだろう。俺のサイドエフェクトがそう言っている。

 

「まぁ、それなら」

「よしやろ〜!」

 

ーーー

 

「…………」

「………あの」

「…………」

「……国近さん?」

 

戦略ゲームで相手が嫌がることばっかやってたらまさかの大勝利。それに対抗して嫌な戦法をしてきたが、更に嫌がられることやったらこのザマ。………嫌な予感。

 

「うわーーーん!」

「ぐふっ!」

 

出たよ禁断症状。『ゲームで負け続けると相手の首を絞める』という症状。迷惑極まりないからマジでやめてほしい。あ、やばい。意識が………。

 

「ちょ………国近さん……意識が………」

「はっ!ごめんごめん」

 

ようやく解放される。ふぅ………肺に空気が満ち溢れる。なんで俺ゲーセンで殺されかけてるんだ?

 

「いやーごめんね〜」

「いや、問題ないです」

 

実際問題しかないけどな!

 

「じゃあ次はなにやろっか〜」

 

ですよね!わかってましたよ!そうだろうって思ってたよ!だって目がやばかったもん!

 

「じゃあ……レースゲームとか?」

「お、いいね〜。やろっか〜」

 

ボコられる予感しかしねぇ。

 

ーーー

 

結果、惨敗。

 

「ふっふっふ、いくら戦略ゲームで無双できてもさすがに他のゲームではお姉さんには敵わないようだね〜」

 

勝てるか!なんだよあのドライビングテクニックは!車間をドリフトしながら進む車があってたまるか!どうしろってんだよ!むしろ素人ながら善戦した方だと思うよ?

 

「じゃあ次は〜」

「え、まだやるんすか?」

「当たり前だよ〜」

 

当たり前なんだ……。

でも、なんだかんだでゲームはやはり楽しいものだな。

 

 

 

結局、日が暮れるまでゲーセンでゲームやってた。

そして国近さんはUFOキャッチャーもうまいという事実に戦慄していたのだった。

 

 

「今日は楽しかったー。ありがとうね、比企谷くん」

「いえ」

「よし!じゃあこれからうちの作戦室で徹ゲーやろっか!」

「………………」

 

なぜそうなる。徹ゲーとかいやだ。

現在、すっかり暗くなった道を俺たちは歩いている。そして国近さん、いつも思うけどそうやって無防備に伸びするのやめましょう?視線がそっちに行っちゃうから。

 

「いや、俺は帰らないと小町が心配するんで……」

「あー小町ちゃんか〜。じゃあ小町ちゃんも連れて来ちゃいなよ!」

「さすがに無理です」

 

玉狛ならともかくさすがに本部に入れることは俺でも不可能だ。小町はあくまで一般人。ボーダー隊員ではないのだから。

 

「そっか〜じゃあしょうがないね〜」

 

ありがとう小町よ。お前のおかげでお兄ちゃん徹ゲーせずに済むよ。

 

「小町ちゃんはボーダー入らないの〜?」

「受験終わったら入るそうです」

「ほ〜。ポジションは?」

「確か日浦と同じ狙撃手だそうです」

「ほーほー、茜ちゃんと仲良かったねそういえば〜」

 

そんな他愛のない話をしながら、俺と国近さんは夕焼けの街を歩いていた。

そんなこんなでボーダーへの連絡通路に到着。

 

「いや〜今日は楽しかったよ〜。ありがとうね比企谷くん」

「いえ、俺もそこそこ楽しかったので」

「お?お姉さんとのデートは楽しかったのか」

「いや、デートじゃないです」

「むー……つれない〜……」

 

デートではない。これは譲らない。

 

「じゃあ俺はそろそろ帰ります」

「うん。今日はありがとうね〜。また行こうね」

 

マジすか。

 

「また今度徹ゲーもしようね〜」

「それは勘弁してほしいっす」

「あっはっは〜」

 

本当徹ゲーは勘弁だ。普通の徹夜でもかなりきついのにそれでゲームとか死ねる。

 

「じゃあまたね!」

「はい、また」

 

そう言って国近さんは連絡通路に入って行った。

 

「さて、俺も帰るかな」

 

夕焼けの中、俺は1人呟き帰路についた。

 

 

 

 

***

 

おまけ

 

サイゼにて

 

「烏丸くん、これ3番テーブルで!」

「了解です」

 

もさもさした髪のイケメンの店員、烏丸京介は今日もバイトに勤しんでいる。無表情ながらバイトに勤しむ彼の姿はまさにイケメン。暗殺教室の磯貝といい勝負である。

そして本人は知らないが、彼がバイトのシフトにいると女性客が増加しているという噂がある。真偽のほどは定かではないが、概ね間違っていないだろう。

と、そこで注文の呼び出しがかかる。今いけるのは烏丸のみ。烏丸は伝票を手に呼び出しのあったテーブルへ向かう。

 

しかし、そこにいたのは予想外の人物だった。

 

太刀川隊オペレーターの国近柚宇と、比企谷隊隊長比企谷八幡だ。

傍目からはカップルに見えなくもない。だが比企谷の人格と鈍感さを知っている烏丸はそのような関係でないことをすぐに悟った。

 

(なぜいるんだろう)

 

そう思った烏丸を責められる人間はいない。誰だって自分のバイトしてる所に知人が来たらそう思うだろう。

しかし今は勤務中。そんなこと言えるはずもない。

 

(今は仕事優先だな)

 

さすが烏丸、バイトとしての心得を習得している。

 

「お待たせ致しました。ご注文は?」

 

普段通りの対応。さすがである。

比企谷はぼーっと外を眺めているので烏丸に気づかないが、国近は気づいて手をあげようとしたが彼がバイト中であることを思い出し控えめに手を振る。いくらほんわかしてるとはいえ、最低限のマナーは弁えてるようだ。

 

「ミラノ風ドリアとカルボナーラ、あとドリンクバー2つで〜」

「かしこまりました」

 

注文を慣れた手つきでとり、裏に戻る。その時国近がヒラヒラと手を振ってるのが見えたので会釈で返す。最後まで比企谷は烏丸に気づかなかった。

そして注文を伝えると、次の仕事に入る前に二人の写真を撮ってネタにしようと思い、そして写真を撮ったのだが、タイミングよくその写真は比企谷が国近の話にオレンジジュースを吹き出した瞬間だった。

 

 

バイトが終わると、同じショッピングモール内にある本屋へ向かう。なにかしら小説でも買おうかと立ち寄ったのだ。するとそこには意外な人物がいた。

 

「佐々木さん」

「あれ、烏丸くん。珍しいね」

 

佐々木琲世。比企谷隊屈指の苦労人だ。そしてその手には小説が数冊あった。相変わらず本好きのようだ。

 

「バイトあがり?」

「はい」

「そっか、お疲れ様」

「いえ。あ、そういえば比企谷先輩が来ましたよ」

「え、そうなの?烏丸くんどこでバイトしてるの?」

「サイゼです」

「あーサイゼね。じゃあ今日は柚宇ちゃんと一緒だった?」

「あ、知ってたんすか」

「うん、昨日そんなこと言ってたし」

 

少し琲世は呆れ顔している。どうやら彼も比企谷の鈍感さに苦労しているようだ。

 

「あ、そうそう。比企谷先輩の面白い写真撮れましたよ」

「え?どれどれ見せて」

 

そう言って琲世に写真を見せる。

 

「あはは!オレンジジュース吹き出してる!」

「いいタイミングで撮れました」

「そうだね、これは凄くいいタイミングだね。それ送ってよ」

「いいですよ」

 

なんだかんだで二人の仲はいいようだ。

 

そしてこの写真をネタに比企谷が自分の隊と3バカにいじられるのはまた別の話。

 




作者の一番好きな漫画はスラムダンクです。次にワールドトリガーと東京喰種。

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