ついでに「小南の誕生日は7月28日じゃね?」という声もあるとは思いますが、展開の都合上誕生日デートはさせられないかもしれません。申し訳ありません。
初登場の人物
沢村響子
恋する突撃攻撃手。忍田本部長にぞっこんで大規模侵攻の後に本部長に告白するつもりだったらしいが、忍田本部長が男前すぎて機会を失う。かなりぞっこんであるのに忍田本部長がそれに全く気づいてないところを見ると、凄まじく奥手なのか、それとも本部長が八幡並みに鈍感なのか、あるいはその両方なのかはわからない。がんばれ、超がんばれ。迅のセクハラ被害者No. 1。
今回も遅い更新です。今回はもっと早く更新できる予定だったのですが、せっかく全部書き終わった最新話のデータがふっとんで「ああああ!!!」と絶叫してしまったということがあり、更新が遅くなってしまいました。申し訳ありません。今回初っ端から謝ってばっかり……。今回のはちょっと無理やり感あるかもです。
21話 どんな時でも、彼は金を求めて行動する。
「ふぅ」
炎天下の中、俺は民家の屋根に乗っかりため息をついた。
現在は防衛任務中だ。そして夏休みに入ったばかりである。俺は夏休みはとにかく防衛任務入れまくってる。せっかく学校がないのだ。ここでがっつり稼ぐに越したことはない。
「ふー、トリオン体だとほとんど暑さを感じないけど今日も暑いね」
「そっすね。こんな炎天下の中で俺らみたいな隊服だと暑苦しさMAXでしょうね」
「そうだね。衣替えとかしてみる?多分鬼怒田さんならやってくれるよ」
「どっちでもよくないすか?あんまり重要には思えませんけど」
「まぁ、僕たち自身は暑くないもんね」
そんな他愛のない話をしながら防衛任務をこなす。横山はともかくわざわざこちらの都合に合わせて防衛任務を入れてくれる佐々木さんには感謝だ。
『ハッチ、ケータイ鳴ってるけどどーする?』
横山からの唐突な声。ケータイ?誰だ?隊員なら横山通して通信飛ばしてくるはずだが……。学校のやつ?学校で俺の番号知ってるやつなんてみんなボーダー隊員だ。由比ヶ浜に教えたのはメアドだけだし雪ノ下にはメアドすら教えてないというか教えたくない。教えたとこでロクなことにはならないだろうし。
「ケータイ?誰から?」
『んーと、平塚先生から』
平塚先生?なんでだ?あ、あれか?夏休み中の奉仕部についてか?
「まぁいいや。繋いでくれ」
『ほいよー』
僅かな合間が空き、電話が繋がれる。
『ああやっと出た。比企谷か?』
「どーも平塚先生。なんか用ですか?」
『ああ、夏休み中の奉仕部についてだが……というかメール見てないのか?』
「ええ、防衛任務中なので」
『何?そうなのか。仕事中だったとは思わなかった。すまんな』
「いっすよ。今は特別何も出てきてないので。ああ、ちょうどいいから言っときますけど、夏休み中は俺部活には出ません。防衛任務入れまくってるので」
『そうか……。まぁ仕方ないな。わかったそれでいい』
「ども」
『じゃあ切るな。任務、頑張りたまえ』
「うす」
そう言って電話は切られた。
「今の、平塚先生?」
「ええ、まぁ」
「平塚先生か。僕が三年の時に現国の担当だったよ」
「あ、そうなんすか」
「うん。わかりやすい授業だったけど、授業中時折自分が結婚できないことをネタにしてて、そのネタを続けていくうちに鬱になってきて授業が進まなかったなんて時もあったけどね」
あの人、どこでもそんなことやってるのな。うちのクラスでもそうじゃねぇか。そんなんだから川なんとかにも舐められるんだよ。
と、そこで警報。
『来るよー。2人の後方にちょっと大きめのゲート』
「じゃ、やろっか」
「うす」
がっつり稼がせてもらうぜ。
*
任務が終わり作戦室へと戻る。その道中に佐々木さんは開発室に連れていかれた。なので今はぼっちである。いつもぼっちとは言ってはいけない。
「あ、比企谷くん」
「ん?ああ、沢村さん」
沢村響子。本部長補佐であり、いわば俺の上司の一人だ。ついでにいうと本部長にぞっこん。
「ちょうど良かった。この資料の整理、やってくれる?」
えーこの資料って沢村さんが今持ってるそのダンボールに入ったやつじゃないですよねー?
「えー……」
「ちゃんとバイト代でるよ」
「喜んでやらせていただきます」
「相変わらずね……」
いやだって防衛任務入れまくってるのも結局は金のためだし。金もらえるならある程度はなんでもやるぜ。
「佐々木くんは?」
「佐々木さんは開発室に連れていかれましたよ」
「そっか。まぁでも夏希ちゃんいるし大丈夫かな。あ、そうだ。あとこれも」
なにか紙っぺらを渡される。そこにはそこには「夏休みの林間学校」と書かれている。なにこれ。
「なんすかこれ」
「なんかね、歌歩ちゃんの弟や妹が参加するみたいでね。その補佐を学校で内申をエサに人を集めてたみたいなんだけど、ちょっと人手不足みたいでね。それでボーダーの方で集められないかどうか交渉に来たのよ」
なるほど、林間学校か。しかし、これ見た感じ金もらえないじゃん。そんなのに参加する意義はない。
「これ、バイト代でないっすよね?」
「唐沢さんに聞いたら『このイベントに人を集めたいならそれなりのバイト代くらいはださないと人来ないかもしれませんね。まぁ、そんなに大人数じゃないでしょうし、一人一万くらいなら経費として出せますよ。広報の一環にもなるでしょう』って言ってたから多分一、二万くらいでるわよ。防衛任務についてもこちらが融通利かせてあげるし」
マジでか。しかもそれに行けば二泊三日分の食費も浮くということになる。それなら参加してもいいかも。あ、でもそうなると小町どーすっかな。
「あの、小町はきちゃだめっすよね?」
「いいんじゃない?小町ちゃん、確か唐沢さんとも面識あったと思うし他の隊員とも交流あるでしょう?なら多分問題ないわ。さすがに小町ちゃんのバイト代は出せないだろうけどね」
え?小町、唐沢さんとも面識あるの?いつの間に⁈え、マジで?
「参加する?」
「まぁ、いいんじゃないすか?」
「じゃあこの名簿に名前書いといて。他にも参加する人いるならそこに名前書かせてね。じゃ、資料よろしくね」
そう言って沢村さんは去っていった。さて、誰かでたいやつ探すかー。
*
「と、いうことなんだが」
「あたし出よっかな〜」
横山は速攻で参加した。こいつ、面白そうなこと好きだもんな。あと意外と子供に好かれる。なんならうちで子供に好かれないのは俺だけなまでである。
「あーでも学校の男くるのかなー」
「お前の覇王色の覇気で近寄らせないようにすればいいだろ」
「それもそうかなー。まぁ楽しそうだしいっか」
それでいいのか。そもそも覇王色の覇気を使えるこいつがおかしい。
「うーん、僕はまだわからないな〜」
なに?家事全般をこなす女子力だけでなくサバイバルでも生きていけるだけの応用力と圧倒的菩薩精神により子供からの絶大な人気を誇り子供寄せ能力をもつ佐々木さんが、わからないだと?俺の中ではもう行くことが決定していたのだが。
「僕、休みの間に開発室の手伝いをするように言われててね。それが意外とキツそうだからちょっとわかんないかな。とうとう鬼怒田さん僕にエンジニアIDまで作っちゃったし」
「えー、サッサンならできるでしょ」
「だからまだわからないって」
「いやまて横山。この人、よくよく考えたらやばいぞ。防衛任務、ランク戦、開発室補佐、太刀川さんの手伝い、家事全般、加えて学校にその勉強。確かにこれ以上増やしたら本当に佐々木さんが死ぬ。そこらへんはこの人の采配に任せよう」
現に今も目の下にクマができてる。最近ずっと作戦室に泊まってるし。鬼怒田さん、あなたが大変なのは分かるけど、うちの隊員はいつでも使っていい雑用要員じゃないからね?
「とういわけで僕はまだ未定。他の人も誘ってみたら?」
「そーですね」
さて、参加してくれそうなやつは……
*
結局、集まったのは綾辻、出水、米屋、小南、那須、熊谷、奈良坂、佐々木さん、横山、小町だ。結局、佐々木さんは来ることになり、三上はもとより参加する予定だったというより、話もってきたの三上だったな……。他のは適当に同年代のやつを誘ったら参加すると割と即答。キャンプでもしたかったのかね。とは言っても宇佐美とか辻は家族でなんかあるから不参加だが。ちなみに送迎は東さんと免許とりたての佐々木さん。
「割と集まったな」
「比企谷がまさかこんなイベントに参加するとはな」
「うるせーぞ奈良坂」
全ては金のためだ。出なけりゃこんなことはしない。
「確かに意外ではあるよなー」
「うるせー弾バカ」
「誰が弾バカだ」
「おめーだよ」
「んだと槍バカ」
「はいはいそこまで。子供かあんたらは」
熊谷の仲裁によりどうでもいい小競り合い?が終わる。俺は悪くない。米屋が悪い。もっといえば奈良坂が悪い。
「全員揃ったな。じゃあ移動するぞ」
東さんがそう声をかける。さて、俺はどちらの車に乗ろうか。と、そこでなぜかサイドエフェクトが反応する。なぜに?なんでこんなとこで反応するの?なにかやばいことでも起こるの?
「八幡くん、隣いい?」
「私も隣がいいなー」
「あー玲ちゃんも遙ちゃんもずるいよ。私も比企谷くんの隣がいい」
「あたしが隣になってあげてもいいわよ比企谷!」
上から綾辻、那須、三上、小南だ。
………ねぇ、なんで君たち俺の隣になりたがるの?アレか?リア充どもが時々やってる漢気じゃんけんの前のフリみたいなやつか?あれ?そうなるとみんな俺の隣になるの嫌ってことになるよね?あれ、目から汗が……。
「じゃあここは八幡くんに決めてもらおう」
「それなら……」
「そうだね、それなら」
「誰がいいかハッキリするわね!」
なんでだ。
おかしい。どうしてそうなった。みんなそんなに俺の隣嫌?
しかし………なんだこれ。凄まじい殺気(?)みたいなのを感じる。なんだよこれ本当に……。他の連中も助けてくれよ……。東さんは奈良坂と話してるし米屋と出水はなんかふざけてるし佐々木さんと横山は熊谷と小町と雑談してる。まさに孤立無援。四面楚歌。あ、そういや四面楚歌ってクエストモンハンにあったよね。……はいすいません現実逃避してました。
なるほど、さっきのサイドエフェクトはこれのことだったのか……。全然嬉しくねぇ……。でもこれ、誰か選ばないと話進まないパターンだよな……。誰選んでも角が立ちそう……。選ばれたやつは俺と隣で嫌な思い。他のはどうにか逃れたが逃れたことへの罪悪感により空気が悪くなる。こんな時に俺が取るべき一手は……?
あ、いい手あるやん。
「じゃ、じゃあ……」
『じゃあ?』
「さ、……」
『さ?』
「佐々木さんで」
*
「あそこはビシッと誰かに決めるべきだと僕は思うなー」
「ああするのが一番だったんすよ。俺のサイドエフェクトがそう言ってました」
「君のサイドエフェクトはもう少し仕事するべきだね」
「社畜並みに働いてますけど?」
結局俺は佐々木さんの車の助手席に座っている。だって!だってこうするのが一番だって俺のサイドエフェクトが言ってたんだもん!
ちなみにこの車はレンタカーで、他にいるメンツは小町、横山、綾辻、米屋、出水だ。
「佐々木さん、免許取れたんですね」
「うん、大学と防衛任務の合間に行ってたから他の子よりちょっと時間が多くかかっちゃったけどね」
「高速とかのっても大丈夫なんすか?」
「大丈夫だよ」
ほう、ここまで言い切るとは、よほど運転に自信があるのだろう。なんか、マリオカートやってた人は運転がうまいって話をどっかで聞いたような……。
「いざとなったらトリガーオンでどうにかなるから」
「どうにもなってねぇ‼」
確かに事故りそうになってもトリガーオンすればみんな無傷ですむけど車が終わるから!
「これから行くの千葉村だよね」
「ええ、俺はそう聞きてます」
「中学のころ来たよね〜。懐かしいな〜」
「ああ、そういえば……」
そんなこともあったな。俺その時ぼっちだからあんま記憶に残ってないけどな。
「僕の班の料理全部僕がやっちゃって先生に微妙な顔されたな〜」
この人、昔から女子力高いのかよ。でもその先生の気持ちはわかる。別に料理得意なことは悪くないというか、むしろいいが、1人で全部やっちゃったら他のメンバーが料理をできない。でも、できた料理の完成度が高いとなるとなんか怒りづらいし。
「でも比企谷くんがこういうの参加するのはやっぱりちょっと意外だったかな。例えお金のためでも」
「そうですかね」
「うん、そうだよ。少なくとも昔の君ならやらなかった」
……確かにそうかも。昔なら絶対こんなのやらなかった。いくら金のためでも昔の俺にそんな余裕は、多分なかった。
「僕はいい変化だと思うよ」
「……そっすか」
その変化を佐々木さんは「いい変化」といってくれているが、俺には本当にいい変化なのかはわからない。でも、この人がそう言ってくれてるのだからきっといい変化なのだと俺は思う。
*
千葉村到着。
「うっ…く……はぁ」
盛大に伸びをする。途中休憩したが、結構長い時間走っていたから体が少し痛い。他のメンバーも似たような感じだ。那須以外。那須はすでにトリオン体だからそういうのはあまりない。
「いやー懐かしいな。ここ中学の時に来たなー」
「お前らもやっぱり来たのか」
「まーな。俺と米屋は中学一緒だったから来た時期も同じだ。つっても中学のころからこいつと知り合いだったわけじゃねーけど」
「ほー」
中学同じなのか。知らなかった。ちなみに俺と同じ中学のやつは綾辻と熊谷くらいだ。つっても熊谷は同じなこと知らなかったけど。
「じゃあ俺は戻るよ。佐々木、あとは頼む」
「はい、お疲れ様でした」
そう言って東さんは去っていった。
すると入れ違いで別の車が到着する。ああ、学校の連中か。………なんでだろう、嫌な予感しかしない。
その車から降りてきたのは……
「比企谷くん?」
「あれ、ヒッキーだ」
奉仕部のメンバーだった。……うん、嫌な予感はこれだったのね。やっぱり俺のサイドエフェクトバリバリ働いてるわ。寧ろ働きすぎなまである。俺のサイドエフェクト、嫌なことばっかり予知するからな。
「あ!八幡!」
前言撤回。俺のサイドエフェクト仕事してない。なぜ戸塚の存在を予知しない。本当に働いてる?
「戸塚!」
「あたし達無視⁈」
「ん?雪ノ下と由比ヶ浜か。いたのか、気づかなかった」
「さいちゃんとの扱いが違いすぎ⁈」
うるさいな全く。お前らと戸塚の扱いに差があるなんて当たり前のことだろ?戸塚だぜ?大天使戸塚。戸塚がいれば全て良し。
と、そこで殺気。………なんでだろう。なんでこんな肌に刺さるような感覚があるんだろう。とうとう俺もカゲさんと同じサイドエフェクトに目覚めちゃった?
その時、彼は知る由もなかった。綾辻、那須、三上、小南の四人が全員揃って八幡をジト目で見ていたことを。
ーーー
「比企谷くんも来ていたのね。夏休みの間の部活には参加しないと聞いていたのだけれど」
「まぁボーダーの方でちょっとな」
「そういうことね。じゃあ私たちとやる事は同じになるのね」
「そういうことになるな」
まさか来ているのがこいつらだとは思わなかった。しかしよくよく考えれば当たり前かもしれない。もとより奉仕部はボランティア部みたいなもんだ。加えて平塚先生からの電話もあったし。
「じゃあ自己紹介しておいた方がいいわね。ボーダーのみなさん、はじめまして。雪ノ下雪乃といいます。今回のイベントには総武高校奉仕部として参加しました。そこのそれの上司ということになるわ。よろしく」
俺の上司というとこ以外は別段おかしくない。物扱いについてはもう面倒だからスルー。残念ながら俺の上司は忍田さんとか嵐山さんだけだ。……あれ?嵐山さんって上司だっけ?
「あ、あたしもしとくね。あたし、由比ヶ浜結衣。ヒッキーとはクラスメートで奉仕部のメンバーなの。よろしくね」
うむ、さすがリア充グループに属する由比ヶ浜だ。初対面の連中が多くいる中でも臆することなく自己紹介できる。
「あ、僕は戸塚彩加です。八幡とはクラスメートです。よろしくお願いします」
さすが戸塚。戸塚最高。戸塚マジ天使。
「雪ノ下さんは前にあったけど由比ヶ浜さんははじめましてだね。綾辻遥です。よろしくね」
「私も雪ノ下には前にあったね。那須玲です。よろしくね」
「三上歌歩です。雪ノ下さん、由比ヶ浜さん、戸塚くん、よろしくね」
「小南桐絵よ。よろしくね」
若干綾辻と那須の雰囲気が悪い気がするが多分気のせい。
「結衣は知ってるだろうけど、横山夏希よ。よろしくさん」
「熊谷友子よ。よろしくね」
「出水公平だ。よろしくな」
「米屋陽介だ。ま、短い間だけどよろしくな」
「奈良坂透だ。よろしく頼む」
「僕は佐々木琲世。よろしくね」
各々が自己紹介を終えると、もう一台の車が到着する。あれ、まだいるの?
「やぁ、ヒキタニくん」
そして降りてきたのは葉山を筆頭とするリア充グループだった。
*
「では、この林間学校でお世話になるお兄さんお姉さんに挨拶しましょう」
時は進み、今は開会式的な何か。小学生とはやはり純粋(?)だ。そしていつも疑問に思うのだがなぜ小学生とかは挨拶の時とかなぞのアクセントがあるんだろうな。
佐々木さんが拡声器を渡される。最年長ということで挨拶係りを頼まれたのだろう。この人だけ大学生だし。
「これからみんなの林間学校をサポートしていきます。何かあったらすぐに僕たちに言ってください。この林間学校で楽しい思い出を作ってくださいね」
人畜無害スマイル全開だな。さすがだぜ。
「あの、なぜ葉山くんやボーダーの方までいるのですか」
まぁ、雪ノ下の疑問は尤もだろう。そもそも奉仕部のメンバーよりボーダーのメンバーの方が多いという謎現象な。全くだれのせいだよ。……俺だよね、誰彼構わず声かけた俺が悪いね。
「人出が足りなかったから内申をエサに募集をかけていたのだが、それでも人出不足でな。三上がボーダーのメンバーも誘ってみてもいいかと言ってきたから許可を出した。そしたら、こうなったといったところだ。思いの外大人数になったが、いい機会だ。君たちは他のグループの人間ともうまくやる手段を身につけたまえ」
「ムリっすね」
「そうそうに諦めるな……。それに仲良くしろとは言ってない。うまくやれと言っているのだ。そういう能力は社会に出ても役にたつぞ」
「ほとんど社会に出てるんですけど、俺」
「学校ではまるでできてないじゃないか。そういうのも含めてだよ比企谷」
そういうもんかね……。面倒事の予感。
*
「さて、君達の最初の仕事はオリエンテーリングのサポートだ。トラブルのないよう、きちんと見回ってくれたまえ。人数が割と多いから二組に分かれて見回るといい」
うん、オリエンテーリングのサポートの仕事そのものはいい。二組に分かれるのもいい。でもなんでグループごとの立ち位置が三つ巴の戦いが始まるみたいな配置なの?バトルなの?
「おっと、佐々木。君は別だ」
「え?僕だけハブですか?」
「君はオリエンテーリングの後にあるカレー作りの食材の振り分けをやってもらう。料理関連は君を頼りにしているからな」
「わかりました」
そうして佐々木さんは平塚先生にドナドナされていった。
ーーー
グループ分けは適当にされた。ちなみに俺のグループは小町、戸塚、雪ノ下、葉山、三浦、小南、奈良坂だ。
「いやぁ、小学生達と関わるなんて高校入って初めてかもな。みんな若く、いや、この場合幼いっていうのかな」
「ちょ、やめてよ隼人。あーしらが老けてるみたいじゃん」
別に老けてるとはいってないだろ。なんでもいいから静かにしてくれると八幡的にポイント高い。
と、そこで小南が隣にくる。
「ねぇ比企谷」
「なんだよ」
なんだよ本当に。というか近いから本当に。なんでみんなこんなパーソナルスペース狭いの?無防備すぎよ?
「あの葉山っての、なんか准にちょっと似てない?」
「そうか?俺から見りゃ劣化版みたいに見えるぞ」
「劣化版、とは言わないけどさ。でも似た感じのはあると思うわ」
俺から見たら葉山は嵐山さんの劣化版みたいな感じだ。似てる、というのはまぁあながち間違ってはいないのかも。とりあえずもう少し離れよう。小声ならやつらにも聞こえないしなにより近い。いや本当マジで。
「でも、僕が小学生の頃は高校生ってすごく大人に見えたなー」
「小町からみても高校生って大人ーって感じしますよ。兄を除いて」
「おい、俺超大人っぽいだろ。常に金を効率よく稼ぐことばっか考えてるんだから」
「比企谷の大人のイメージ荒みすぎよ……」
いや小南、大人なんてそんなもんだ。みんな金欲しいんだよ。俺は生活かかってるからだけどね!
「ねぇ、あの子達何してるのかしら」
雪ノ下の視線の先には、小学生数名がなんか溜まってる。
「ちょっと見てくる」
葉山は走って小学生達に向かった。そこで雪ノ下がため息をつく。……こいつ、なんで葉山にはこんな当たり強いんだ?なんか葉山来てからずっと雰囲気トゲトゲしてるし。いつもトゲトゲしてるとかはいってはいけない。
「お兄さん!チェックポイントってどこにあるの?」
「うーんどこだろう」
「じゃあお兄さん手伝ってよ!」
「仕方ないな、ここだけ手伝うけどみんなには秘密な」
さすがリア充。コミュ力あるわ。だがそういう対応なら佐々木さんの方が上だぞ。あの人、菩薩精神によって相手との距離も葉山以上に一気に縮めるからな。女子小学生相手なら無自覚に落とすまである。どこの潮田渚くんだよ。
と、そこで一つおかしなことに気づく。基本このオリエンテーリングは5人一組の班で行動する。しかし葉山に群がるのは4人。もう一人は、少し離れてデジカメを握っている。……なるほどな。
葉山がそのぼっち気味になってる小学生に声をかけ、グループのメンバーの方に連れて行く。そしてその連れてこられたほんの一瞬だけグループの空気が張り詰める。そしてその一瞬が過ぎ去ると他の4人は何事も無かったように談笑を続けながら進む。もちろんその一人を除いて。
「あまりいい手には思えないが」
「同感だ奈良坂。……しかし、小学生にもああいうのやっぱあるのな」
「小学生も高校生も関係ないと思うわ。等しく同じ人間なのだから」
珍しくお前の意見に賛成だよ、雪ノ下。
やれやれ、楽な仕事だとは思っていたが、ちょっと面倒事に巻き込まれる予感がするな。
俺のサイドエフェクトがそう言っている。
お気に入り1500突破しました。ありがとうございます。ついでに今回の千葉村編に参加するボーダーのメンバー多くね?と思う方もいると思います。作者もちょっと思いますけど、作者が小学生の頃参加したキャンプは20人くらいいたからいいかなって思いこうなりました。
しかし読み返すとテンプレ感すごいですね、今回。
ちなみに今後の予定ですが
千葉村編
↓
夏休み編(ボーダーのメンバーとかで遊んだりとか)
↓
外伝(訓練生時代)
↓
文化祭編
といった感じです。
次回は料理のとこから。サッサンが無双する予感。