ファンブック出ましたね。未知のトリガーの存在も明かされこれからの展開に期待できます。あと今回若干ファンブックのネタバレがあります。
初登場の人物
影浦雅人
狂犬。サイドエフェクトにより結構不遇そうな人生を送ってそうなやつ。いろいろと素行に問題があるらしいが実力は確かでありスコーピオンを鞭みたいに使えるし、ポイントも高い。結構八幡と仲がよく時々無理やり嫌がる八幡を琲世が相手してくれないときはランク戦に付き合わせることも。なぜかいつもマスクをつけているがそのマスクは口を塞いでない。なぜつけているのだと疑問にいつも八幡は思っている。ちなみに琲世のあだ名のサッサンの生みの親。
絵馬ユズル
思春期ブラックホールというよくわからない二つ名をつけられた天才肌スナイパー。干された鳩原の弟子。なぜ当真がユズルの師匠を名乗っているのか作者は気になる。ソロポイントはかなり高いらしく同年代ではトップクラスらしい。八幡をたらしと思ってるらしいが見方によっちゃこいつもたらしかもしれない。
北添尋
走って踊れる肉体派お肉。来馬さん、琲世と並ぶ菩薩精神をもつお肉らしいが、影浦とは8度に渡るタイマンを繰り広げているからもともと菩薩精神を持っていたわけではなさそう。グレネードランチャーから放たれるメテオラはなかなかの威力であり犬飼に「これはうざい」と言わせるだけのうざさがある。もし千佳がこれやったら多分街全体が焼土と化す。
三輪秀次
シリアスシスコン。原作だと最年少A級部隊隊長を務めるかなりデキるやつ。八幡の入隊理由が「金。ネイバー駆除とか二の次」と聞いた瞬間に八幡のことを超絶毛嫌いするようになったが、それがなければ多分仲良くできたはず。いつか仲直りすることを作者は願う。原作では唯一といってもいいかもしれない鉛弾の使い手。孤月の腕もかなりのものでオールラウンダーの中でも実力は多分トップクラス。
古寺章平
デキるメガネ。原作で解説の東さんの言うことを全部かっさらっていった伝説の持ち主。修同様に冷や汗をかいてる描写がやたら多いのは気のせいだろうか。狙撃手としての腕もあり、日浦同様奈良坂の弟子らしい。見た所、宇佐美に惚れてるっぽい。だが古寺よ、その気持ちはよくわかるぞ。
6月15日金曜日。
この日はうちの隊のランク戦復帰の日だ。佐々木さんの受験により休隊していたが漸く今日で復帰となる。そんで今日の夜の部が試合だ。
作戦室へと向かう廊下を歩いていると、綾辻に会う。
「あ、八幡くん」
「よお」
「今日からランク戦復帰だね」
「そうだな。えらく久々な気がする」
「半年くらい休隊してたからね」
「そうだな。まぁ俺と横山が受験の時も休隊するらしいけどな」
「そっか」
「んで、綾辻は何してんの?」
「これから作戦室戻るの。あ、あと今日のランク戦実況私だからよろしくね!」
「あ、そうなの」
「うん!だから頑張ってね!」
「お、おう」
ちょっと近いよ。ゼロ距離とはいかないが顔との距離が10センチくらいしかないよ。あ、なんかいい匂い。
「じゃ、じゃあ俺行くわ。実況よろしく」
「うん!任せて!あ、夏希と佐々木さんにもよろしくね」
「おう」
そうして俺はその場を後にした。
*
比企谷隊作戦室
「おし、全員揃ってんな」
「なーにが全員揃ってんな、よ。ハッチが一番遅かったクセに」
「いいんだよ隊長だから」
「いや隊長関係ないでしょ」
え、寧ろ隊長だからこそ遅れてくるもんじゃね?ほら、ヒーローは遅れてやってくるってのと同じで。え、違う?
「まぁまぁ。別に遅刻したわけじゃないからさ」
「サッサンが甘やかすからハッチがつけあがるんじゃん」
「んなことより横山、お前は自分の仕事ちゃんとやれよ」
「わかってるよ」
全く、うちの隊は纏まりがあるのかないのか。こんな個性的なメンバーの隊長を務めるやつには同情するぜ。………あ、俺か。
で、そんなこんなしてると実況が始まる。
「時間となりました。A級ランク戦を始めたいと思います。本日のランク戦の実況を務めるのは嵐山隊の綾辻。解説には東隊隊長東さんと、風間隊隊長風間さんにおこしいただきました」
『どうぞよろしく』
今回は東さんと風間さんか。俺がディスられないことを願う。時々俺解説でネタにされるんだよなぁ……。特に東さんから。
「さて、今回はA級ランク戦初参戦の影浦隊と今回からランク戦復帰の比企谷隊、そして三輪隊という対戦カードになりましたがこのことについてはどう思われますか?」
「そうですね、狙撃手のいない比企谷隊が若干不利なのではないでしょうか。比企谷には狙撃はほぼ効果ないですけど佐々木は別ですからね。加えて影浦隊には北添もいますし、三輪隊には狙撃手二人もいますからさらに不利な状況になるのは間違いないでしょうね」
「しかも今回は影浦隊にステージ選択権がある。そこも含めると比企谷隊はかなりきついだろうな」
おおっといきなりうちに死亡フラグたてまくりですかそうですか。うーん、でも言ってること間違ってないし……。え、今回勝てないの決定?え、違うよね?嘘だと言ってよマイエンジェル(戸塚)
「さて、今回影浦隊が選んだステージは…『都心部』!高層ビルが立ち並び場所によっては木々が密集しているなかなか癖のあるステージです」
「これは多分北添のメテオラを活かすためでしょうね」
「それか影浦が適当に選んだか、だな」
ああ……。ありえる。
「では間も無く時間となります。全部隊転送開始です!」
そろそろか。
「じゃあ佐々木さん、定石どおりに」
「うん」
「ファイト!二人とも!」
さて、やるか。
*
転送されたのは高層ビルの屋上だった。天候は雨。そこそこ強い雨が降り注いでいる。
「さて、どうすっかな」
レーダーを見るとスナイパー及びゾエさんはバッグワームでレーダーステルス状態になっている。
ざっと街を見てみる。このステージは比較的狙撃ポイントが多い。まずは場所を絞るか。
「横山、視覚支援。あと狙撃ポイントを洗い出すのを1分でやれ」
『ハッチいきなり人使い荒いね。りょーかい』
雨により若干悪くなってた視界がクリアになる。そしてマップに表示された狙撃ポイントと自負の位置を照らし合わせる。一番近いのは、あのビルか。多分あそこに誰かいる。なんでかって?俺のサイドエフェクトがそう言っている。
「佐々木さん、今から横山に表示させる座標に行ってください。多分そこにスナイパーの誰かいます」
『了解。ちなみに根拠は?』
「勘です」
『あはは、いつも通りだね。わかった』
さて、とりあえず最低でもビルの何階にいるかくらいは探っといてやらないとな。
「バイパー」
おそらく誰かいるであろう場所に向かってバイパーを放つ。するとやはり誰かがビルから飛び降りるのが見える。多分アレは古寺だな。
「古寺みっけ」
絶対今の俺はゲス顔してるだろうな、とかクソどうでもいいことを考えながら古寺の追撃のために俺は飛んだ。
*
古寺の転送された場所は幸運にもビルの中であり狙撃するにもそこそこいい位置だった。
バッグワームを起動し、レーダーから最も近い敵の位置を探る。するとスコープ越しに見えたのは黒い隊服にアホ毛、腐った目だった。
自隊の隊長が毛嫌いしている比企谷隊の隊長、比企谷八幡だ。
(比企谷先輩は米屋先輩か三輪先輩が相手してる時だけ狙撃する、だったな)
そんなことを思いながらチームメイトに比企谷の位置を知らせようとした時、比企谷がこちらを見てスコープ越しに目が合ったような気がした。(実際は合ってない)
驚きにより言葉を失っていると、バイパーが飛んでくる。
(まさかそんな!何もしてないのにバレるはずがない!)
しかし、ここで彼のサイドエフェクトを思い出す。
超直感。
本当に恐ろしいサイドエフェクトであり、なおかつ正確無比に自分を狙ってくるその腕に内心古寺は舌を巻いた。敵ながら天晴れとはまさにこのこと。
とりあえずバイパーは回避、移動の為にビルから飛び降りる。だがバイパーの追撃は全く止まずひたすら逃げるしかできない。建物や木々を盾にしながら逃げる。
『古寺くん、もう少ししたら米屋くんと合流できるわ。そこまで頑張って逃げて』
「了解!」
オペレーターの月見から逃げ道を指示されながら逃げるが、雨により視覚支援があるとはいえ悪くなった視界もあり徐々に距離を詰められている。
(このままじゃ……)
『古寺くん、すぐ近くのビル群の裏路地に入って。そこならバイパーもあまり入ってこれないはずよ』
「了解!」
言われた通り路地裏に入る。するとバイパーが飛んでこなくなった。一先ず巻けたと思い、安堵したその時
視界が回転していた。
そして回転する視界の中、見たのはバッグワームを身につけスコーピオンを左手にもつ青年だった。
(なんで?さっきまでいなかったのに)
「悪いね。一点もらうよ」
その言葉を聞くと古寺はベイルアウトした。
*
古寺がベイルアウトするのを見届ける。うまく佐々木さんがやってくれたようだ。
古寺は多分気づいてないだろうが、俺は最初からあの裏路地に誘導していた。なぜならそこが一番佐々木さんに近かったからだ。
射手トリガーはブレードより威力が低い。だからより効率よく点をとるためには攻撃手に任せた方がいいのだ。
訓練生時代、二宮さんに射手としての心得を叩き込まれた時にこう言われた。
『射手は基本点を取りにくいポジションだ。俺やお前ほどのトリオンがあれば自分で点を取ることもできるが基本的には味方のサポートに回るとことが多い。だが点をとるにしろとらないにしろ相手に弾を当てる技術だけでなく、弾で相手を動かす技術も必要だ。相手をどう動かせば効率よく点を取れるか。それを常に考えろ』
今回古寺は少し距離があり、しかもイーグレット捨ててシールド展開してたから俺一人で点を取るのには時間がかかる。ならどうするか。味方のとこまで相手を動かせばいい。
バイパーを使いわざと逃げ道を残しながら誘導した。そうすればあとは勝手に佐々木さんがやってくれる。俺も無駄な仕事をせず点も取れる。まさに一石二鳥。さすが二宮さん。マジリスペクト。
と、そんなクソどうでもいいことを考えいると、何かが落ちてくる音がする。
そしてその音を発するものは放物線を描きながら俺に向かって落ちてくる。
「やっぱこうくるよね…」
シールドを展開しながらその場から全力で離れる。するとさっきまで俺がいた場所にメテオラが落ちてきて大爆発。俺がいた車道のど真ん中に大きなクレーターができた。
出たよゾエさんの適当メテオラ。犬飼先輩に「これはうざい」と言わせるだけのことはあるほどのうざさをもっている。
「ゾエさんはあそこか……」
そんなに遠くないビルの屋上から撃ったようだ。佐々木さんのいた辺りにも落ちたがあの人はその程度でやられるタマではない。というかレーダーみたらカゲさんと米屋近くまできてるし。
と、そこでサイドエフェクトが反応する。
咄嗟にシールドを展開。当たったのはイーグレットの弾だった。恐らく絵馬だろう。走りながら通信を入れる。
「佐々木さん、ゾエさんと絵馬が近いので俺が取りにいきます。佐々木さんは付近まで来てる米屋とカゲさんの足止めをしておいてください」
『オッケー。三輪くんはどうする?』
「三輪の位置は絵馬が近いので多分三輪はそっちいきます」
多分三輪は絵馬を取ったら次俺に来る。あいつの性格考えたら多分間違いなく。あいつ俺のこと嫌いだし。
『了解。じゃあゾエくんとっととやっちゃって。メテオラ、来られるとキツイから』
「うす」
そう言って通信を切る。さて、まずはゾエさんからだな。
*
通信が切れると琲世は裏路地から出た。するとそこにはバサバサの髪で目つきの悪い黒い隊服を着た青年が立っていた。
「よぉサッサン。遊ぼうぜ」
影浦雅人。影浦隊隊長であり、独特なスコーピオンの使い方をする強豪攻撃手。
「この前はやられたからな。あの借りはきっちり返すぜ」
「僕も君の足止めを頼まれてるからね。ちょうどいいや」
そういって琲世は孤月を抜き、影浦はスコーピオンを展開した。そして孤月とスコーピオンがぶつかりあおうとした瞬間
「旋空孤月」
その二人の間に斬撃が繰り出される。
「俺も混ぜてくださいよ」
三輪隊攻撃手、米屋陽介だった。
「ケッ、サッサンとタイマンしたかったのによ」
「攻撃手トップクラスの2人を同時に相手する機会なんてそうないっすからね。それに足止め命令されてるし」
「あー、バトルバカ二人揃っちゃったか……」
『誰がバトルバカだ』
バトルバカ二人の好戦的な笑みに苦笑する。
そして全員のブレードが同時にぶつかり、甲高い音を立てた。
*
現在、俺はゾエさんを追っている。この人見た目は太いけど動けるから追いつくのには意外と時間がかかる。面倒だしとっととやるか。
「グラスホッパー」
グラスホッパーを駆使しショートカットしながらゾエさんを追う。するとあっという間に追いついた。
「うわわ、ハチくん来ちゃった」
北添尋。影浦隊ガンナー。佐々木さん同様の菩薩精神をもち、その見た目から大型マスコット的な扱いになっている。チームメイトからの扱いは雑。
ゾエさんはグレネードランチャーからアサルトライフルに切り替え、アステロイドを放ってくる。
「シールド」
シールドでアステロイドを防ぎつつバイパーで反撃。射手は銃手みたいに連射できないからこのまま撃ち合うのはちょっときついかな。それにバイパーは威力があまり高くない。だからシールド展開されたらシールドよけて当てるのが効率的。
「うわわわ」
さすがにシールド一枚で俺のバイパーを防ぎきるのは難しいか。他のが来ても面倒だしとっとと決めよう。
「バイパー+アステロイド」
合成弾を使うか。
「コブラ」
コブラは威力の高いバイパーって感じだからシールド展開されてても貫通できるし、シールドよけて当てればなおよし。コブラによってシールドを削りシールドよけて当てたやつがさらにゾエさんの足を削る。そして機動力が無くなったところを
「アステロイド」
アステロイドで集中砲火だ。
「ハチくんひどい……」
そう言ってゾエさんはベイルアウトした。……なんだかとても心が痛んだ。ごめんよゾエさん。
と、そこで銃声。アステロイドだ。
「三輪…」
「殺しに来たぞ、比企谷」
えー……なにその物語シリーズで妹の友人が怪異化しちゃったから仕方なく殺しに来たアホ毛のリア充主人公みたいなセリフ。そんなに俺のこと嫌いなの?
「北添さんを難なく倒すその腕は落ちてないようだな」
「あたりめーだ。休隊してた間にも鍛錬は怠ってないからな」
「ふん」
「まぁこちらとしても奈良坂あたりが来られると面倒だからな。さっさと始めようぜ」
「金の亡者が粋がるな」
金の亡者、ね。否定はしない。生活していくには金がいる。俺がボーダーに入った最たる理由は金だし。
理由さえ知られなけりゃ、もしくは俺の事情を知れば、仲良くなれたかもな。
そんなことを思いながら俺たちはバイパーとアステロイドを同時に放った。
ーーー
「うおっ」
三輪が放った鉛弾が体の横を通る。これ食らったらいろいろとやばい。そしてその隙に孤月を振り下ろしてくる。孤月の刃の側面を掌で押して軌道をそらす。そして顔面を殴りつける。
「っ」
俺はレイジさんみたいにパンチでトリオン体を破壊したりなんてできない。そのため殴ったところで距離をとるだけだ。
「バイパー」
シールドを避けるような軌道で放つ。多分三輪相手なら普通に避けるけど。
「当たるか」
「やっぱりね」
まぁ牽制程度にはなっただろう。あの距離で戦うとなると俺が圧倒的に不利だ。さて、どうするかな。
『横山、この付近のマップ送ってくれ』
『あいよー』
マップが視界に表示される。ふむ、この辺りはあまり入り組んでないようだ。近くには駅とロータリー。あと地下への入り口か。地下はとうやら大した広さはないから多分入ったらあっという間に落とされるな。なら作戦は決まった。
「メテオラ」
近くの地面に向かってメテオラを放ち、視界を眩ませる。そしてそのまま下がり距離をとる。三輪はすぐには追ってこない。
よし、このまま作戦の位置まで……
その瞬間、サイドエフェクトが反応する。
後ろか!
シールドを咄嗟に展開すると、そこに恐らくイーグレットであろう弾が当たる。
「奈良坂か」
あの野郎、いい仕事しやがる。やっぱ簡単にはやらせてくんねーか。状況が悪くなった。挟み撃ちされてるこの状況は非常にまずい。絵馬まで来られたらマジでやばい。
「クソ面倒くせぇなおい……」
憎まれ口をたたきつつ、俺は走り出した。
*
一方、攻撃手達は均衡を保ったままだった。
影浦が少し距離をとり、スコーピオンを鞭状にして狩りにくると、琲世はそれを避け、影浦と米屋に旋空で反撃。さらにそれを避けた米屋が幻踊で琲世を攻撃。その隙に影浦が米屋に斬りかかるが槍を駆使してそれを防ぐ。このような状況がずっと続いている。
そのことに琲世は少し焦っていた。
(影浦くんはサイドエフェクトで狙撃が効かない。だから奈良坂くんがこっちの援護に来たとしても対処できる。それに絵馬くんもまだ残っている。奈良坂くんが来てるかわからないけどこの現状からして一番不利なのは、多分僕だ。下手したらこのままジリ貧になる。そうなる前に何かしないと)
そう考えつつも琲世は孤月を振るう手は休めない。
「つっ」
米屋の槍が頬を掠める。ポイントはこの中で一番低いとはいえ彼もA級まで上がってきた実力者だ。油断したらあっという間にやられる。
(こうなったら奥の手しかなさそうだね)
そう考えると、琲世はフードを被る。
『夏希ちゃん、視覚支援よろしく』
『あいよー』
フードで隠れた分の視界が元に戻る。
「お、サッサンガチモードか?」
「マジかー、俺も気合いれねーとな」
「早急に終わらせるよ」
そう言うと、琲世は施空を使い二人に斬撃を加える。だがその程度で崩れるほど彼らは甘くない。それは琲世が一番わかっている。
「オラッ!」
少し下がったことにより適切な距離になった米屋が施空を放つ。
だがそこで琲世の姿が消えた。
「ッ!後ろか!」
咄嗟に槍で背中をガードするが、防ぎきれずに右腕が切り裂かれる。かなり深く切られたためもう右腕は使い物にならないだろう。
「もう一撃!」
琲世が施空を使い米屋を切ろうとした。しかしそれより早く米屋の首が飛んだ。影浦がスコーピオンを駆使して飛ばしたのだ。
「マジかー」
米屋はベイルアウトした。
「ようやくタイマンできるな、サッサン」
「首飛ばすの、最早お家芸だね」
「サッサンのテレポーターもな」
琲世が米屋の背後に一瞬で回ったのはテレポーターだ。
テレポーターはその名の通り瞬間移動のトリガーだ。背後に一瞬で回り不意打ちしたり、攻撃を受けそうな時に逃れたりと使い勝手がいいトリガーだ。しかし移動先は視線の先数十メートル以内なので熟練の腕をもつ相手にはその先を読まれ反撃されたりするし、長い距離移動するとインターバルがあるという弱点が存在する。
だが琲世は隊服を使いその視線を読まれるという弱点を克服した。フードを深く被ることにより視線の先を読ませないようにするのだ。フードで隠れた視界は視覚支援により補える。それに移動先がバレて反撃されそうでも琲世は攻撃手であるため移動する距離はかなり短い。そのため移動先がバレてもインターバルがとても短いためすぐに回避移動ができるのだ。仮に使えなくても琲世の腕なら防御も可能だ。
「じゃあサッサン、今度こそ遊ぼうぜ!」
「行くよ、影浦くん」
二人のブレードがぶつかり合った。
*
「クソが」
悪態をつきたくなるような現状だった。前は三輪、後ろは奈良坂。逃げるにも下手に飛べば奈良坂の餌食。かといって射線切るにも三輪がそれをさせない。本当にいい連携だよまったく。
「どうした、もう終わりか?」
「うるせー」
やろうにもできねーんだよチクショー。でもこのままだとジリ貧だ。ならもう傷覚悟でやるしかなさそうだな。
「メテオラ」
まずは目くらまし。
「グラスホッパー」
からのグラスホッパーで飛び上がる。これで三輪からは距離がとれた。だがここで狙撃がくる。
間に合うか?
「フルガード」
シールドを展開。サイドエフェクトの恩恵でどこにくるかはなんとなくわかるが間に合わなかったら意味ない。それでもどうにか間に合ったか。
「そこか。グラスホッパー」
グラスホッパーで空中を走るようにして近づく。狙撃手だから多少距離があるが、俺と奈良坂の機動力にはかなり差がある。暗殺教室みて仮想空間のステージでフリーランニングの練習をした黒歴史をもつ俺をなめるな。
三輪が後ろから追ってくるが、グラスホッパー使えるから機動力は俺の方が上。追いつけるはずない。一度包囲を抜けちまえばどうにかなる。抜けるまでが大変だったけど。
「みっけた。メテオラ」
爆撃で退路を塞ぐ。よし、とどめのアステロイド……を放とうとした瞬間、奈良坂の頭が撃ち抜かれる。
絵馬か。
奈良坂はベイルアウトした。
「あの野郎、これ狙ってたな」
最初の狙撃から今まで何もしてこなかったのは俺が誰かしら追い詰めるのを待ってたからか。さすが鳩原さんの弟子なだけあるわ。
さて、なら追ってくる三輪の相手しなきゃだけど…、来てないね。むしろ絵馬の方いってるね。奈良坂をエサに絵馬を釣ったのか。
絵馬がベイルアウトする。とりあえずこれで狙撃手は全滅。こちらとしてはやりやすくなった。佐々木さんもまだ残ってる。位置は、あの交差点のあたりか。
カゲさんには効かないかもだけど、
「バイパー」
バイパーで雨を降らせよう。
『佐々木さん、その場から10メートル下がって』
『了、解!』
戦闘中か。まぁそうだよな。でも遠慮なくぶちこませてもらおう。バイパーを佐々木さんのいるあたりに降らせる。多分シールドでガードされてるだろうけど効果はあるはずだ。なにせ弾数フルアタックで200くらいあるから。
レーダーを見ると、三輪も攻撃手の方にいってる。まぁ俺も向かってるんだけどね。ならこっからは混戦になるな。
気を引き締めていくか。
ーーー
攻撃手組のとこに到着すると、なんか佐々木さんがいじめられてる。三輪→鉛弾撃ちながら孤月で攻撃
カゲさん→お得意のスコーピオン乱舞
佐々木さん→必死にガード
このままいくとあっという間に落とされる。
「バイパー」
佐々木さんに当たらない弾道を引き攻撃する。
「八幡!てめぇは後でちゃんと八つ裂きにしてやっから今はすっこんでろ!」
えー……そんなこと言われても……。
「チッ」
そんな憎しみのこもった舌打ちしなくても……。こちらとしても佐々木さんの援護しなきゃだし……。
というかよく俺のバイパー避けながら攻撃できんな。すごいわこいつら。
と、そこでカゲさんのスコーピオンが佐々木さんの足を斬りとばす。
「やばっ」
「余所見をするな」
動揺した隙に三輪が佐々木さんに鉛弾を撃ち込み、そして袈裟斬りを放つ。
「ごめん、落ちるね」
佐々木さんはベイルアウトした。
そして三輪は直ぐにカゲさんに鉛弾を放つが、カゲさんのスピード相手に鉛弾を当てるのは例え三輪でも至難の技だ。それを三輪は冷静に判断し、アステロイドに切り替えるが距離的にカゲさんの間合いなので
「くらえや」
三輪がカゲさんが投げたスコーピオンを躱すと直ぐにカゲさんはサブの方の鞭状スコーピオンで首を飛ばす。
「くそ…」
三輪はベイルアウトした。
んで、俺とカゲさんはタイマン状態。やだよー……。
「よっしゃ、やるぞ八幡」
「マジっすか」
「くらえや!」
「アステロイド」
アステロイドを放つが、避けられる。続け様にメテオラとバイパーを放つがどれもかわされスコーピオンで反撃される。
この人のレベル相手となると、二宮さん戦法で行くのがいいか。
一旦建物の陰に隠れ、バイパーを放つ。そしてメテオラで建物の上部を破壊して距離をとる。
そしてまたバイパーの雨を降らせる。多分シールドでガードされるが、今回はそれが目的だ。
「クソが!」
そう言いながら雨と土煙の中から脱出してスコーピオンを構える。そして多分そのまま凄まじいスピードのスコーピオンを繰り出すのだろうなー。でも
「予想通り」
どっかのデスノートの主人公みたいな超絶ゲス顔して待ち構える。ギョッとしたカゲさんの顔が見えた。
「アステロイド」
俺のアステロイドがカゲさんのトリオン体を撃ち抜いた。そしてカゲさんはベイルアウト。
「ふー……。なんとか勝てたか」
復帰戦はとりあえず、うちの勝利だ。
比企谷隊 3点+生存点2点
三輪隊 2点
影浦隊 3点
勝者 比企谷隊
*
「ふぅ」
「さすがハッチ。2点もとった」
「ギリだったけどな」
今回は佐々木さんがカゲさんとかを足止めしてくれてたから取れただけだ。あれなかったら多分死んでた。
そこで総評が始まる。
「一見不利に思えた比企谷隊。しかしその逆境を跳ね除け勝利を掴んだ今回の試合。振り返ってみていかがでしたか?」
「結構予想を裏切られましたね。転送運もあったと思われますが比企谷隊は総合的にかなりいい動きをしたと思います」
「三輪隊と影浦隊もメンバー全員の動きは悪くなかったが、運と相性があっただろうな」
「今回の試合の決め手となったのはどこでしょうか?」
「今回のポイントは狙撃手でした。チーム編成により比企谷隊は不利に見えましたが、比企谷の機転によって3点とることができたように思えます。全体的に見て、転送場所から見ても他の三輪隊や影浦隊が勝ってもおかしくなかったでしょうね」
「メンバーだけをみたら間違いなく比企谷隊が不利だったからな」
「比企谷が下手に攻撃手達にあたりに行かずに取れる点からとりに行った行動が3点に繋がったのだと思います」
取れる点からとる。当たり前のことだ。場合によっては味方にとらせたりもするのがうちのやり方だ。
「まぁでも今回のMVPは佐々木でしょうね」
「え?2得点に加えて誘導をした比企谷隊長ではなく?」
「そうだろうな。今回、比企谷が2得点できたのは間違いなく佐々木の足止めがあったからだ。佐々木が影浦と米屋を止めてたから比企谷も不自由なく仕事ができたのだろう。いくら比企谷といえども影浦に来られたらさすがに2得点はできなかったはずた」
「ま、比企谷がどんなに頑張っても比企谷がMVPってのはないでしょう。比企谷、隙さえあればサボりますから」
「はっはっは」と笑いながら俺を弄る東さん。なんか会場も笑ってるし。ひでぇ……。俺でもやるときはやるよ?……い、いや本当だよ?
「比企谷隊は佐々木隊員の足止めがあってこその今回の勝利、ということですか?」
「まぁざっくりとはそうですね。あとは比企谷のサイドエフェクトですかね」
「なるほど。影浦隊についてはどうでしょう」
「影浦隊のステージ選択はなかなかよかったのですが、北添が比企谷に落とされたのが痛かったですね。普段ならメテオラで戦場を撹乱させてそこを影浦が狩る、というスタンスであり、北添が逃げるのを絵馬がサポートしたりする戦法ですからね」
「まぁ、影浦は自分が戦いたい相手にいくからあまり戦法を気にしないから戦法についてはその場その場で違うこともあるだろう。だがそれが影浦隊の強みでもあるといえる」
その場その場で違う戦法を使う、つまりは対策が立てられないということだ。場合によってはそれが脅威になることもあるしな。
「あとは絵馬が最後にいい仕事をしましたね。当てられる確率の低い比企谷を無闇に狙わなかったのはとてもいい選択だったと思います。あそこで我慢できたから影浦隊も結果的に3得点を挙げられたのだと思います」
「最初に撃った後にずっと息を潜めていたのも、比企谷が追い詰めた獲物をかっさらうためだっだのだろう。あれはなかなかいい動きだった」
ふむ、絵馬が褒められてる。さすが鳩原さんの弟子だ。
「続いて三輪隊についてお願いします」
「三輪隊は今回一番有利な編成だったんですけどね。始めに比企谷に古寺を落とされたのが痛かったですね。今回の編成を見ると狙撃手が活躍するような編成でしたから。比企谷のサイドエフェクトに捕まってしまったのが運がなかったですね」
「三輪隊は米屋の動かし方を少し間違えたな」
「と、いいますと?」
「今回、佐々木と影浦がサシでやってる所に米屋を動かすのではなく三輪と組んで比企谷なり絵馬なりを落としていくことをするのがよかっただろう。佐々木と影浦は実力差はあまり無いからな。ほっといても暫くは2人で斬り合ってただろう。米屋と三輪が組めば比企谷ももしかしたら落とせたかもしれん」
それはある。2人で組まれたらかなり面倒。米屋は近接だし三輪は鉛弾あるし。
「三輪隊は今回運がなかったのが一番でかいですね。狙撃手使って佐々木を落とせたら多分比企谷隊が勝つことはなかったでしょう」
「だろうな。比企谷は佐々木がいなければなにもできない」
ひでぇ!なんで俺唯我みたいにお荷物みたいな扱いになってんだよ!仮にも個人ランク5位だぞ!
「まーハッチだしね」
「おいコラ横山、どういう意味だそりゃ」
「べっつにー」
この野郎……。
「三輪隊は今回味方の動かし方の差でやられたのだと思いますが、でも米屋を佐々木、影浦が斬り合ってる所にいれるというのも悪手ではないです。米屋の実力なら2人のうちどちらかを倒せる可能性だって十二分にあったでしょうし」
「ありがとうございました。今回は敗れましたが、A級ランク戦初参戦でありながら十分な実力を影浦隊は発揮しました。これからの結果に期待がかかります。三輪隊も敗れはしましたが、実力は確かなものなので再び上に上がってくるでしょう。そして復帰早々で3得点の快挙を挙げた比企谷隊、A級中位相手にどのような戦いを見せるのか。これからの戦いに目が離せません。そして今回の結果により順位が変動します。比企谷隊は6位、影浦隊は8位、三輪隊は9位となりました。では、これを持ちましてA級ランク戦夜の部を終了します。お疲れ様でした。東さん、風間さん、解説ありがとうございました」
『ありがとうございました』
ふー……終わった……。
*
「あー……疲れた」
「お疲れ様」
「おつー」
しばらくランク戦やりたくない。いや本当マジで。
作戦室に転送され、解説を聞いた。そして全て終わるとどっと疲れがでた。もうこのまま眠ってしまいたいくらい。
今回のランク戦でうちの順位は6位になった。三輪隊が9位、影浦隊8位。他には草壁隊が調子悪かったのか7位転落。嵐山隊は変化せず5位、加古隊が4位となった。
次やる時は多分嵐山隊、加古隊かなー。まぁ当分ないしいいか。しかも明日は休みだ。防衛任務もないし寝坊しても問題なし。
「あ、そうだ比企谷くん」
「なんすか?」
「明日、6月16日でしょ?比企谷くん何か予定ある?」
「いや、無いですけど」
「そっか。よかった。じゃあさ、明日玲ちゃんとデートしてきて」
……………………………は?
「は?なんで?」
「実はね、那須隊のみんなが玲ちゃんの誕生日パーティーをやる気でいるみたいなんだけど、サプライズ的にしたいんだって。それでいろいろ準備するためには玲ちゃんがどこかにいってて貰えないと準備できないらしいんだよね。だから比企谷くんがデートして連れ出してくれれば」
「いやよくないでしょ。なんでそうなるんすか」
「いや、だってそうしておいてって友子ちゃんから指令を受けたから」
「佐々木さんはどうするんすか」
「僕は友子ちゃん達とケーキを作るんだよ。あと小町ちゃんも」
小町、いつの間にそんなことを約束していたんだ。
「あ、サッサン。あたしも行くよ。くまにはもう言ってある」
「あ、そうなの。了解」
なんか、勝手に話が進んでる……。
「あの……」
「ん?」
「俺に拒否権は?」
「あるわけないじゃん」
デスヨネー……。
「嫌なの?」
「嫌じゃないですよ。でも、ほら、那須って綾辻くらい美人でなおかつ隠れファンが多いらしいじゃないですか。加えてなんか俺は見てないけどテレビで特集されたとかいう話じゃないですか。そんなやつの隣に俺みたいな腐った目をしてるやつがいたら那須のイメージダウンに繋がりかねませんよ」
「全くハッチは…」
「あ?」
「ホンットに女心がわかってない」
わかるわけないだろ。俺男だぞ。
「いいからハッチは玲と出かけてきて」
「いや、だから」
「行けつってんだろ」
怖い、怖いよ。そんな拳握りしめなくてもいいじゃん……。
こうして、俺の明日の予定が決まった。
日曜もなんかあるのに……。しかも雪ノ下と……。今週は休めないか……。
ファンブックにあった加古さんの「タイマー」とか黒江の「魔光」ってなんだろう。超気になる。というか那須さんお嬢様学校なのかよ。
ちなみに今回の都心部のマップはイメージ的には錦糸町か海浜幕張をイメージしてください。
比企谷八幡パラメーター
トリオン12
攻撃10
防御・援護9
機動8
技術8
射程5
指揮6
特殊戦術4
total63
佐々木琲世パラメーター
トリオン9
攻撃10
防御・援護10
機動9
技術10
射程2
指揮3
特殊戦術4
total57
横山夏希パラメーター
トリオン1
機器操作11
情報分析10
並列処理9
戦術6
指揮7
total44
*ただし、気分により上下する。上記のパラメーターはあくまで最高値です。
次回は那須さん編です。