目が腐ったボーダー隊員 ー改稿版ー   作:職業病

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風邪ひいて寝込んでました。すいません。皆さんも体調管理には気をつけましょう。

今回タイトルがマジで思いつきませんでした。


17話 こうして、彼と彼女はすれ違う。

「私と模擬戦しなさい」

 

凛とした雰囲気を醸し出しながら発せられた言葉を理解するのに多大なる時間を要し、さらにこんなことを思った俺を責められる人間はいないはずだ。

 

何言ってんのこいつ。

 

うちの隊をバカにした縦ロールを処刑した。

そしたらなぜか雪ノ下に模擬戦申し込まれた。

意味がわからない。マジで意味がわからない。大事なことなので二回言いました。

 

「………なんで?」

「あなたが本当にA級になり得るだけの実力があるのか見てみたくなったのよ」

 

意味がわからん。なぜそうなる。というかなんでそんなことお前に見せにゃならんのだ。それ以前になぜ上から目線?

 

「やだよ面倒くさい」

「あら、私に負けるのが怖いの?」

「まさか。お前に負けるほどヤワな鍛え方してねぇよ」

「じゃあいいでしょう?」

「いやなんでそうなるの?俺これ以上好き勝手やって嵐山隊に迷惑かけたくないんだけど」

「さっきので十分かけてるじゃない」

「だからってこれ以上かけていいわけじゃねぇだろ」

 

なんでこいつこんな頑ななの?俺に記録負けたのそんなに嫌だった?

 

「せめてやるなら嵐山さんの許可がいる」

「そう。なら嵐山さん、これからそこのそれと模擬戦したいのですがよろしいでしょうか?」

 

モノ扱いは変わらずかよ……ってか嵐山さんいつ戻ってきたの?いつの間にか後ろにいた。

 

「うーん、まぁ構わないが比企谷の了承がいる。あとやるにしても時間的に一本だけしかできないが構わないか?」

「え、じゃあやらな……」

「構いません。じゃあやるわよ。訓練室に入りなさい」

 

なんで……。俺『やる』なんて一言も言ってないんだけど……。何勝手に決めてんの……。

 

「そうか。じゃあ比企谷、A級の実力を見せてやれ」

 

嵐山さん?俺許可出した覚えありませんよ?でもこの人悪気ないしいろいろ世話になってるから何も言えない……。え?あっさり陥落し過ぎって?なら問うぞ。葉山の3倍爽やか+いろいろ世話になってる+超有名人の人に俺みたいなぼっちが逆らえると思うか?無理だ。

 

結論、やるしかない。

 

ーーー

 

訓練室

 

やりたくないよー……。おうち帰りたいよー……。

そんな風に思いながら目を腐らせる俺。ボーダーでは珍しい槍の孤月をシュンシュン振りながら調子を確かめる雪ノ下。こいつ、槍術とかならってたのかな……。

 

「……あのさ、どうしてもやんなきゃダメ?」

「ダメよ。あなたみたいなぬぼーっとした人が本当にA級に実力でなったのか確かめる必要があるわ。それに、あなたの記録が私の記録を上回っていたという事実がたまらなく不愉快。だからここであなたを倒して私があなたより上であることを証明するの」

 

………こいつ、本当にバカなのだろうか。ボーダーで3年近く鍛えた俺にこいつが敵うわけないだろう。というかよくよく考えたら理由があまりにも理不尽。

 

「……わかったよ。ハンデは?」

「ハンデなんていらないわ。全力のあなたを倒さないと意味ないでしょう?」

「あのな、俺はお前と違って使えるトリガーの種類が多いんだよ。ハンデつけないと戦闘にすらならないぞ」

「そうなの?でもいいわ、必要ない」

 

重症だな、こいつ……。

 

「私が体力ないのは知ってるわよね?」

「ん?」

「私が体力ない理由は、今までやってきたスポーツ、武道、何にしても3日で教えてくれた人を超えたわ。だから何かを継続してやるということがなかったの」

 

じゃあ次はマラソン3日で極めろ。

 

「もちろんマスターした中でも多少得手不得手はあったわ。でもね、槍術に至っては私は初日で教えてくれた人を超え、3日で有段者を倒したわ。だからあなたがどんなトリガーを使おうと超える自信があるということよ」

 

なるほど、こいつが槍を選んだ理由は槍術の心得があったからか。しかし3日で有段者倒すとかなかなか化け物だな。

 

「そうかよ。まぁでも、最初は使うトリガーはメインだけにする」

「……私のこと、なめてるわね?」

「ああ。使って欲しかったら使わせてみろ」

 

『訓練、開始』

 

恐らく綾辻であろう声が発せられ、やる意味のない訓練が始まった。

 

ーーー

 

「フッ!」

 

雪ノ下の鋭い突きが俺の顔を狙う。それを躱すとすかさず今度は薙ぎ払い、そして上段突きを放つ。

なるほど、確かに有段者を倒すだけあり攻撃一つ一つは鋭くなかなか的確だ。攻撃を出すタイミングも悪くない。それに体重の移動もサマになってる。だが

 

「それだけだな」

「ッ!」

 

雪ノ下の放った突きを軽く躱し、腹に蹴りを入れる。もちろんこの程度じゃトリオン体はどうもならない。

面倒だしさっさと終わらせたいな。でもあんま軽く捻ると突っかかってきそうだからなー。少し遊ぶかな。

 

雪ノ下の攻撃はとても素人とは思えないほど鋭く、早い。有段者を倒したということも頷けるくらいだ。雪ノ下本人もそのことを自覚しているのだろう。俺が軽く躱したり捌いたりするのが信じられないようだ。残念ながら雪ノ下の腕は確かだが米屋の方が数段上だ。所詮こいつは井の中の蛙だ。

雪ノ下の放った突きを再び躱し、腹に蹴りを入れる。間合いが空くと雪ノ下は険しい目つきで言ってくる。

 

「なぜトリガーを使おうとしないの?」

「必要ないから」

「あら、トリガーを使わないと私は倒せないのでしょう?」

「そうだ、だが使わない理由はいくつかある」

「理由?」

「そうだ。まず一つ目、単純に使わなくてもお前程度なら軽く捌けるから。ちなみに言っておくけど俺は本来中距離メインの射手というポジションだ。つまり、体術は本業じゃねぇってこと。お前の腕はその程度だ。槍でももっと強いのボーダーにはいるぞ」

 

ぶっちゃけ米屋だけだけど。そしてこんだけ言うとプライド高い雪ノ下は睨んでくる。

 

「もう一つの理由は、仕込みをするためだ」

「仕込み?」

「気づいてないのか?この訓練室には既に俺が放ったトリオンキューブが漂ってるんだよ」

「⁈」

 

雪ノ下の攻撃を避けながら少しづつばら撒いたバイパーが既に設置されている。そして、弾道設定もすませてある。

 

「終わりだ」

 

全方位から放たれるバイパー。

 

「甘いわね」

 

雪ノ下はそれを跳んで躱す。だがその程度、読めないとでも思った?

 

「お前がな」

 

雪ノ下は躱したと思ったのだろうが、俺のメインのバイパーは弾道設定ができるのが売りだ。プラス俺のサイドエフェクトを加えればその程度の動きは簡単に捉えられる。

跳んだ雪ノ下の真下まで来たバイパーは急に弾道が変わり、螺旋の柱を描きながら雪ノ下に突っ込んでいった。

 

「なっ!」

 

槍でどうにか心臓部と頭部を守ったが、他は被弾した。ほっといても俺の勝ちになるだろう。

つってもそんなことしないが。

バイパーを放つ。その軌道は先程の螺旋の柱の小さい版だ。そしてその無数の柱が全て雪ノ下に被弾。

そしてトドメだ。

上空に設置してあったメテオラを爆撃のように放つ。落ちてきたメテオラを空中にいる雪ノ下が躱す術はない。

普段ならこんな曲芸やんないけど、まぁこいつ相手ならいいだろ。

爆散する雪ノ下のトリオン体。

 

そしてやる意味がない訓練は終わった。

 

 

「今日もお疲れ様でしたー!」

 

この時間帯はあまり人のいない本部に3つの人影があった。

 

「今日はあんまりネイバーでなかったわね」

「そうね。もうちょいでてきてもよかったのに。ちょっと動き足りない」

「熊谷先輩、それはちょっとそれ不謹慎じゃないですか?」

「だってB級はネイバー倒さないと給料入らないじゃない」

「そうですけどー」

「でもくまちゃんの言う通りちょっと動き足りない感じはあるかな」

 

ボーダーでも珍しいガールズチーム、B級10位那須隊だ。

 

「じゃあ、ブースでもよってく?」

「うーん、訓練室の方が近くない?」

「そうね、じゃあ訓練室いこっか」

 

那須隊のメンバーはエレベーターに乗り訓練室へと向かった。

 

ーーー

 

訓練室のあるフロアへ辿り着いた那須隊。だがなぜか付近には総武高校の制服に身を包む人がちらほらいた。

 

「なんか、やたら視線を感じるんだけど。てか総武の人なんでこんなにいるの?」

 

那須隊の隊服は、なんというか、いろいろと『視線を引く』隊服だ。特に男性から。しかもそれを着る那須隊のメンバーも全員美少女ということもあり視線を引くのは仕方のないことである。

 

「あ、そういえば今日は総武高校が職場見学とか連絡来てたかも」

「玲、なんでそれを早く言わないの?」

「じゃあやめた方がいいですかね」

「まぁ、せっかく来たんだしちょっと覗いていかない?比企谷とかいるかもよ?」

「比企谷くん、わざわざ自分の職場に職場見学しにくるかなぁ?」

「……確かに。比企谷先輩ですしね」

「あ、でも夏希ちゃんは来るって言ってたよ」

「じゃあちょっと覗いてこ。もしなんかやってたら何もせずとっとと退散すればいいしさ」

 

そう言って訓練室へ向かう3人。

そして訓練室の入り口に到着した。訓練室の入り口は観覧席の上にある。そのためちょっと覗く程度なら誰にもバレないだろう。

だがそこには入り口の手すりに寄りかかる意外な人物がいた。

 

「佐々木さん」

「あれ、友子ちゃん。あ、玲ちゃんと茜ちゃんもいるんだ。どうしたの?防衛任務あがり?」

「はい。ちょっと動き足りなくて訓練室よってこうかってなったんですけどどうやら職場見学中みたいなのでちょっと覗いていこうかなって。佐々木さんは?」

「僕はうちの隊長の勇姿を見てただけだよ」

「え、比企谷くん来てるんですか?」

「うん、あそこ」

 

琲世が指差しさ先には訓練室に入っていく比企谷と長い黒髪の少女の姿だだった。

 

「え、比企谷何やるんですか?」

「さぁね。なんか話してたみたいだけど、よくわかんない」

「見た所、模擬戦ですよね」

「でもあの隊服C級じゃない?」

「まぁわかんないけど、やってるの見てればわかるんじゃない?」

 

そうこうしてるうちに模擬戦が始まる。やはり比企谷が優勢であり、なおかつ彼がトリガーを使わないように見せかけてるところを見ると本気でやる気は無いらしい。

 

(あの子、どっかで見たような……)

 

誰かの妹か何かだろうか、と思いながら琲世は見ていた。

黒髪の少女は槍の扱いがなかなかの腕前であるところを見るとどこかで槍術を習っていたのだろう。しかし、それでは

 

「うちの隊長には届かないけどね」

 

その言葉と同時に配置されたバイパーが一斉に少女に向かって放たれる。それをジャンプして躱すが、バイパーは螺旋の柱を描きながら少女にむかっていき、被弾した。そして続けざまにバイパーを放ち、その軌道は無数の螺旋の柱を描きながら向かっていく。それらが当たるとすぐ様上空に設置していたメテオラを落とす。そして訓練は終了した。

 

「うわ、さすが比企谷」

「すごいですね、比企谷先輩」

「そうだね」

 

思い思いの感想を述べていると、一人だけ異質な感想を述べる者がいた。

 

「綺麗……」

 

比企谷八幡の弟子、那須玲だけは他の人とは全く違う感想を述べた。同じバイパー使いとしても、あの軌道は特別に思えたのだろう。恐らくA級の出水公平もあのような軌道を描くのは難しいはずだ。それが実践であれば、であるが。それにあの軌道もまだまだ手を抜いてるのだろう。彼が本気で曲芸すると空中に絵ができる。琲世は過去にそれを目の当たりにしてる。

 

琲世が軽く自隊の隊長にドン引きしてると、噂の隊長が訓練室から出てくる。そしてそこに数名駆け寄る。隣にいた那須も知らぬ間にそこへ向かっていた。

 

 

「疲れた……」

 

体は全く動かしてないが、精神的ヒットポイントがほぼ0になった。だって周囲からの視線がすごいんだもん……。もうやだ、おうち帰りたい。

 

「すごいね!比企谷くん!」

「八幡くんあんなこともできるんだね!」

「比企谷くん!どうやったらあんな風にバイパー使えるの⁈」

 

上から三上、綾辻、那須だ。……あれ?なんか普通に来たけどなんで那須いるの?隊服だから防衛任務あがりか?というか綾辻いつの間に下りてきたし。

そこでこの現状に気づく。美少女×3。

わー、お花畑だなー……。なんとなく周囲から嫉妬の視線が来てる気がする。

横山、宇佐美。お前ら何ニヤニヤしてんだ。助けろ。

奈良坂、そんな目で俺を見るな。俺は悪くない。

 

「……いや、大したことねーよ。相手素人だし、ちょっと曲芸チックなことする余裕があっただけだ」

「でもすごいよ!ボーダーでもあんな風に弾道引ける人いないし」

「八幡くん、他にもすごいのできるの?」

「……まぁ、できる」

「比企谷くん、今度教えてね」

 

とりあえずお嬢さん方、離れよう。近いからみんな。俺のライフポイントはもうすぐ0よ。

と、そこで雪ノ下が近づいてくる。

 

「比企谷くん」

「……んだよ。まだなんかあるのか?」

 

これ以上はマジ勘弁して。

だが次に発せられた言葉は俺の予想してたものとは全く違った。

 

 

「ごめんなさい」

 

 

 

……………………はい?

 

「what?」

 

思わず英語で答えちまったよ。だってアレだぜ?天上天下唯我独尊女の雪ノ下が謝ったんだぜ?

 

「私、あなたのような目が腐ってて性根も捻くれてて何事にもやる気を示さずぬぼーっとしてる人だからどうせ卑怯な手でも使っているのだろうと勝手に決めつけてたわ。でもあなたはちゃんとした腕があってA級に昇格したみたいね。だから勝手に決めつけて、失礼な態度をとったお詫びよ。ごめんなさい」

「お、おお…」

 

この現状へのツッコミがなくて心底安堵した。

 

「よかったわね。私に謝罪させるなんてあなたの一生のうちにこの一度だけでしょうね。これからもこの思い出を糧に生きていきなさい」

 

そうして雪ノ下は去っていった。

 

「今の人誰?」

「ああ、那須は知らんか。同じ部活のやつ」

「雪ノ下さんだよね。というか比企谷くん部活入ってたんだ」

「あれ、三上は知らんかった?」

「うん」

「私も」

「私は知ってたな〜」

 

綾辻の言葉を聞くと他2人がなんかムスッとする。……なんで?

そして時間になったようで、嵐山さんは生徒たちを呼び戻して、次の場所へと移動させる。

 

うん、いろいろ言いたいけどまずこれを言わせろ。

 

 

 

なんでお前そんな偉そうなの?

 

 

その後もボーダー内をいろいろ回った。ブースでは実践を見せるということで木虎と時枝が軽くランク戦した。佐々木さんと熊谷が見えた気がしたが全力で気のせいだと思う。そして他にも開発室やらなんやらいろいろ回った。最後には始めにいた大広間に戻り、そこで職場見学は終了となった。

 

ーーー

 

本部からでると由比ヶ浜がいた。見た所一人だ。

 

「あ、ヒッキー…」

「よぉ。他は?」

「サイゼ行っちゃった」

「おめーは行かないのか?」

「い、いやー仲間外れは可哀想かなーって」

 

いや、たった今処刑したやつとサイゼなんて行くわけないだろ。

 

「あ!そういえばヒッキーなんでボーダーなの黙ってたし!」

「別にいいだろ。そもそも聞かれなかったし」

「言ってくれてもいいじゃん!」

「うるせー。俺は目立つのやなんだよ」

「むー」

 

全く、俺が今までどれだけぼっちライフ満喫してたと思ってんだ。まるでぼっち=不幸みたいな認識はやめてもらいたいもんだぜ。あ、ボーダーではぼっちじゃないよ?ホントだよ?

 

「じゃあ行こ」

「行かない」

「えーなんで」

「なんでは寧ろこっちのセリフだ。なんで俺をそこまでして誘うんだよ」

「それは……だから……」

 

ああ、分かった。あのことか。

 

「お前のとこの犬、別にお前の犬だから助けたとかそういうのじゃねぇから。そもそも俺は事故ってないし、怪我したのは俺の不注意だし、治療費もあのリムジンの人が出してくれた。怪我してる間も防衛任務は出てたからお前が気にすることは何もない」

「えっ……。ヒッキー、知ってたの?」

「小町が知ってた」

「そっか……」

「いろいろ気ィ使わせたな。もう気にしなくていいぞ。俺に構わず好きにやればいい。気を使って俺に優しくしてんなら、そんなのはやめろ。不愉快だ」

 

こいつは多分、あのこと気にして俺にいろいろ構ってたのだろう。だがそんなことされても俺はちっとも嬉しくないし、向こうだって気を使う。だから俺はその蟠りを取り除いてやろうとしているだけだ。というかこいつとの関連性など、初めからあって無いようなもんだ。そんな偽物の関係なんぞぶった切るに限る。

 

「あ、あはは……。あたし、そんな風に見えてたのかな……。別に、そんなんじゃないのに、違うのに、違うのに……」

 

こいつは優しい。それはわかる。だが、どうでもいいことまでその優しさを使うのは違う。本来、こいつと俺は学校においても一切関わらないような立場だ。だがあの一件で『俺』という存在に負い目を感じ、俺にまで気を使うようになってしまったのだろう。

そこまで考えて由比ヶ浜を見ると、口を引き締め、涙を目にためていた。

 

「バカ」

 

そう言って由比ヶ浜は駆け出した。

 

「バカにバカって言われたくねーよ」

 

それだけ呟き、俺は欠伸をした。

夜の防衛任務のために作戦室戻って寝よう。

 

 

時は少し遡る。

比企谷が雪ノ下を圧倒し、訓練室から出てきてそこに那須らが駆け寄って行ったあとの那須隊と琲世はその場に佇んでいた。

 

「那須先輩、行っちゃいましたね」

「あはは」

「あーあ、玲目立ってるじゃん」

「那須先輩美人ですもんねー」

 

恐らく、彼女の美貌だけが原因ではないだろうが。

 

「比企谷は美人を引きつける効果でもあんのかね」

「あはは、あながち間違いでもないかな……」

 

琲世が指差す先には、三上、綾辻も加わり比企谷に詰め寄っているとこだった。

 

「うーん、さすが比企谷」

「あのモテっぷりはすごいです」

「ほーんと、一体何人の女の子たぶらかせば気がすむのかね」

「しかもそれが無自覚だからなおタチが悪い……」

 

琲世は自隊の隊長を散々悪くいう二人に軽く苦笑する。

 

「あ、そうだ!熊谷先輩!佐々木さんにもあのこと手伝って貰いません?」

「あのこと?」

「ほら、今度那須先輩……」

「ああ、アレね!うん、いいじゃん」

 

頭に疑問符を浮かべる琲世。

 

「今度那須先輩が誕生日なんですよ。それで今年は先輩にケーキでも作ってみようかなーってなりまして。佐々木さんにそのお手伝いをしてもらえないかと……」

「ああ、そういうこと。うんいいよ、僕でよければ」

「ありがとうございます!」

「比企谷くんはどうする?」

「あ、誕生日パーティーを那須先輩の家でやる予定なので、サプライズみたいにするために那須先輩がいない間に先輩の部屋とか飾り付けたりするので、那須先輩を連れ出してデートしててもらいます」

 

そう言いながらニヤリと笑う日浦と熊谷。

 

「(これは、半分面白がってるね……)そっか、分かった。じゃあ僕はケーキ作りの手伝いをすればいいんだね」

「そうです。あ、作る時は小町ちゃんも来ますよ」

「そっか、分かった」

「日程はラインで送りますね」

「了解。お、そろそろ移動するみたいだね。二人はどうする?」

「あ、じゃあ折角なのでランク戦しません?」

「うん、いいよ。茜ちゃんは?」

「私は作戦室戻ります。小夜子先輩待ってるので」

「分かった。じゃあまたね」

「はい!」

「じゃあ僕達も行こっか」

「お願いします!」

 

那須が戻り、その後3人でランク戦10本勝負総当たり戦をやった。そしてやってる最中に職場見学組が来て軽く晒し者にされたのはまた別の話。

 

***

 

おまけ

八幡に挑んだのが雪ノ下でなく材木座だったら

 

どうしてこうなった。

 

「ふっ、八幡よ。とうとう我らの因縁にも終止符が打たれるのだな」

 

目の前にいるのは白いジャージに身を包む厨二。別名材木座義輝。

その手には孤月。不敵に笑う顔がやたらうざったい。

 

「思えばここまで長かった……。あの地獄(体育)を共に駆け抜けたり、氷の刃(雪ノ下の酷評)の餌食になったりしたものだ」

 

やたら気取ったポーズ決めながらツラツラと話すハムの姿は、とても残念だった。何よりこいつジャージ似合わなさすぎる。

 

「我らは相棒でありながら、ライバルでもある」

 

俺のライバルは出水だけで充分だ。

 

「今こそ我の実力、示す時!」

 

もう帰っていい?

 

「行くぞ!八幡!」

 

構えだけは様になってんなー。……あの、本当に帰っていい?

もう面倒くせぇからさっさと終わらせよう。

 

「くらえ!ブラッディナイトm」

「アステロイド」

 

一瞬で蜂の巣になるハム。たいして早くないクセに真正面から突っ込んでくるとか『的にしてくれ』って言ってるようなもんだぜ。

 

「ひでぶ!」

 

バラバラになると情け無い悲鳴が聞こえた。トリオン体が再生すると立ち上がり再び突っ込んでくる。

 

「さすが我がライバル……。だが我はこんなとこでは終わらn」

「アステロイド」

「ぴぎゃあ!」

 

うん、もう帰っていい?

 

「次とったら終わりな。時間無いし」

 

ぶっちゃけ早く終わらせたい。マジで。

 

「ふっ、いいだろう。ならば、我の最終奥義を見せてやろう!」

 

高々と孤月を掲げ、全速力で突っ込んでくる。

 

「くらえ!超極武神h」

「メテオラ」

 

無様に爆散する材木座。もはや悲鳴すら聞こえなかった。本当、なんだったのだろう。時間の無駄とはまさにこのこと。

それと超極武神覇斬やるならせめてバスターソード使え。でないと雰囲気でないし、そもそもお前は限界を超える前に別のものを超えろ。でないといろいろとやばいぞ。

 

その後、更に絡んでこようとする材木座を殺気で黙らせた後に木虎にいろいろ言われたのはまた別の話。




次回は多分ランク戦かな。

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