目が腐ったボーダー隊員 ー改稿版ー   作:職業病

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タイトルが思いつきませんでした。

初登場の人物
川崎沙希
さきさき。名前からしてさきさき。原作では八幡に川なんとかさんとか言われて名前すら覚えられてない若干かわいそうな人。怖いイメージがつけられてて、しかも声もやたらドスが効いてるというのに家ではブラコンシスコンの優しいお姉さん。そしてこれ以上何を書けばいいのかわからない。

川崎大志
さきさきブラザーズの1人。え?シスターもいるって?ほっとけそんなもん。多分小町の事が好き。そしてこちらもこれ以上何を書けばいいのかわからない。


14話 他者を理解しない者は、何も救えない。

「さて、まずは遅刻の言い訳を聞かせて貰おうか」

 

目の前にいる苛立たし気なアラサー独身残念系美人、平塚先生が尋問の体制に入る。ここでふざけたことを答えると殴られる未来しかない。俺のサイドエフェクトがそう言っている。もっとも、その鉄拳を馬鹿正直に受ける気はないが。

 

「防衛任務続きで疲れがたまってて寝坊しました」

「そんな遅刻するほど疲れがたまってたというのかね?君がそんなに防衛任務を入れるとは思えないのだが」

「家計を支えるためなので」

「別に君一人で家計を支えてるわけでは無いだろう。学校に支障が出るほど入れるのはどうかと思うが?」

 

ああそうか。この人は俺の両親の事を知らないのだった。未だに両親が健在であると思い込んでる。俺の個人資料をよく見てない証拠だ。まぁ俺は別に不幸自慢をしたいわけではないので言ったりはしないがな。

 

「じゃあそういうことで」

 

面倒だから早々に立ち去ろう。スピードワゴンはクールに去るぜ。

 

「話はまだ終わっていない!」

 

そう言いながら拳を振りかざしてくる。だが俺は振り返ることもせずに軽く躱し、平塚先生の手首を掴む。

 

「なっ!」

 

まぁ驚くだろうな。こんな芸当見聞色の覇気でも使えなきゃできないだろうし。

だが俺にはサイドエフェクトがある。こんなの当馬さんの狙撃に比べたら躱すのなんてお茶の子さいさいだ。とりあえず少ししめておこうかね。掴んだ手首を思いっきり握る。

 

「ぐうっ!ひ、比企谷!痛いから離せ!」

 

ふむ、なら離してやろう。

 

「一体何をするのだね君は」

「先にやったのはそちらです。例え教育の一環であろうと先に暴力を行使したのは先生なのでこのくらいの報いは当然かと」

「目上の人に暴力を行使するな」

「この事においては目上も目下も関係ないでしょう。どう考えても今回のは平塚先生の自業自得ですよ」

「……ふぅ。悪かった。だが、あまりこのような遅刻が続くならまた指導が入る。そのつもりでいたまえ」

 

面倒くせぇ。

と、そこで扉が開きポニテのちょっとガラが悪そうなやつが眠そうにしながら入ってきた。

 

「全く、このクラスは問題児が多いな。川崎、ちょっと来たまえ」

 

俺もその問題児なのだろうな。

 

 

放課後は予備校の資料集めをした。今はいろいろあるからな。KやらSやらTやらYやら。どこがいいかは人それぞれだ。だからこういうのは資料の他にも実際にそこの事務の人とかに説明を聞いたり説明会にいってみたりするといいと佐々木さんに言われた。たしか佐々木さんはKに行ってたな。なんでもいい講師がいたとか。

適当に資料をペラペラしてみるが、これだけだとよくわからない。やはり実際に話を聞くのがいいかもしれないな。

 

じっくり資料を見るために喫茶店に入る、まではよかったのだが、なんか見知った顔がいる。毒舌女にバカと天使だった。

なんでいるんだよ……。

見た所勉強会といったところか。呼ばれてないのに参加するのはアレだな。特にガハマあたりは絶対嫌な顔する。あ、雪ノ下もか。

だがここで天使と目があう。やはり俺と戸塚の周波数は合ってるのかもね!

 

「あ!八幡!」

 

見つかった……。

 

「よお戸塚」

「八幡も勉強会に呼ばれたの?」

 

呼ばれてないな。そしてやはりガハマは「うわー呼んでない人来ちゃったー」みたいな顔する。俺だってお前のいる勉強会なんて嫌だ。

 

「比企谷くんは呼ばれてないはずだけど?」

「その通りだ雪ノ下。呼ばれてないし参加する気もない。そこのバカのいる勉強会なんて俺にとってなんのプラスにならんし」

「ちょ!バカってなんだし!ヒッキーの方がバカじゃん!」

「では問題です。風が吹けば?」

「へ?京葉線が止まる?」

 

違う。なんでそうなる。ちなみに最近は止まるではなく徐行運転になるだ。

 

「桶屋がもうかる、ね」

「……正解」

 

小さくガッツポーズする雪ノ下。……おかしい、俺はガハマに問題を出したはずなのに。

 

「し、知ってたし?そのくらい常識じゃん?」

「京葉線が止まると答えたバカはどこのどいつだ」

「う、うるさいし!」

 

こいつなんで総武入れたの?マジで裏口入学?

 

「ゆきのん!ヒッキーが酷いよ!なんとか言ってよ!」

「あの、由比ヶ浜さん。今のはちょっと擁護できないわ……」

「酷い!」

 

うるせえな。というかゆりゆりするなら他でやれ。

 

「あれ?お兄ちゃんだ」

 

と、そこでなぜかいる愛しのマイシスターに声をかけられる。なぜこんなところに…?というかそれよりも

 

「よお小町、奇遇だな。そして隣の男は誰だ?」

「ちょいちょい待つし!大志くんはただの塾の友達だし。相談に乗ってあげてただけだから!」

 

……小町が言うならこの場は見逃してやろう。返答次第ではこいつの体はアステロイドによって蜂の巣になってただろうな。感謝するんだな、小町に。

横の男を見ると一礼してくる。ん?こいつどっかで見たか?いや、なんか違う気がする。

 

「なんかねー、最近大志くんのお姉さんが不良化したらしくてね。どうやったら元に戻るか相談受けてたの。大志くんが話してもあんたには関係ないで済まされちゃうみたいでね」

「お願いします。もうお兄さん達しか頼れないんです」

「お前に義兄さんと呼ばれる筋合いはねぇ」

 

若干そのニュアンスを含んでいるような言い方だったぞ。俺のサイドエフェクトをごまかせると思うな!(思い込み)

 

「なに頑固親父みたいな事言ってるのかしら?」

「なんで関係ないお前が入ってくんの?お前は相談された身でもないんだから入ってくんなよ」

 

というか相談された俺ですらこの件に関しちゃできることなんてたかが知れてる。お前なんてもっと何もできないだろうに。

 

「いやー兄がいつもお世話になってます。比企谷小町です」

「八幡の妹さん?初めまして、戸塚彩加です」

 

さすが天使。笑顔の破壊力はこうか は ばつくんだ!

 

「あ、これはご丁寧にどうも。可愛い人だね。お兄ちゃん、またフラグ建てたの?」

「またとはなんだまたとは。フラグなんて今まで建てた記憶はない。それと戸塚は男だ」

「いや、そう言うのいいから」

「あ、うん。僕、男です」

「……え、そうなの?」

「……多分」

 

多分。多分男。……あれ?男だよ、ね?そうだよね?自信無くなってきた。

 

「んで、そこのバカが由比ヶ浜で毒舌が雪ノ下だ」

「バカって言うなし!えっと、初めまして、ヒッキーのクラスメートの由比ヶ浜結衣です」

「ああ!これは、どうも?初めまして……?」

 

なんか怪訝な表情を浮かべる小町。……まぁ、大体理由はわかってる。勘だけど。

 

「じゃあ最後に。雪ノ下雪乃です。比企谷くんとは…クラスメートでもないし、友達でもない…。誠に遺憾ながら知り合い?」

 

面倒だからスルー。

 

「まぁなんとなくわかりましたから大丈夫ですよ。これからも兄をお願いします。で、さっきの相談の件なんですけど……」

「あ、俺は川崎大志っす。姉ちゃんが皆さんと同じ総武高校の2年で、その、なんというか、最近悪くなったというか、帰りが遅いんすよ」

「あー川崎さんね。あのポニテのちょっと怖い系の」

 

あー……、あのポニテか。なんとなくわかる。なんとなくな。

 

「それで、お姉さんが不良化したのはいつからかしら?」

「2年になってからっす」

「つまり比企谷くんと同じクラスになってから、ということね」

「人の事を病原菌のように言うのはやめろ」

「あら、そんなこと言ってないじゃない。被害妄想が過ぎるんじゃない?比企谷菌」

「懐かしいなそれ。小学生の頃周囲がよくやってたよ。しってるか?比企谷菌ってバリア効かないんだぜ?バリア無効化とかなかなかのチート性能だろ」

 

ボーダーでもシールド無効化とかされたら超きついし。あ、でも鉛弾はシールド無効化か。

 

「そんなゲーム誰も買わないわよ……」

「それと、被害妄想についてだが、普段から被害妄想されてもおかしくない言動を繰り返してるお前に問題があるからな。まるで自分は悪くないかのように言っているがそれは間違いだ。お前は自分の性格の悪さを少し自覚しろ。そんなんだから今まで敵しか作れなかったんだよ。それと、見た所大志は真面目に相談してるんだ。罵倒することしか能のない奴は帰れ。邪魔だ」

 

ぐっと押し黙る雪ノ下。ハッ!ざまぁねぇな!

 

「落ち着いて八幡。今は川崎さんの件をどうにかしなくちゃ」

 

ふむ、確かにそうだ。よかったな、雪ノ下。ここに天使がいなかったらお前は本当にただの負け犬になってたぜ。

 

「ていうか、帰りが遅いって言っても何時くらいなの?あたしも時々遅くなるし」

「それが、5時くらいなんすよ」

「遅!それもう朝じゃん!」

「親御さんは何も言わないの?」

「うちの両親共働きで、下にまだ小さいのが多いから姉ちゃんにはあんまりうるさく言わないんすよ。それに最近エンジェルなんとかって変なとこから電話もきますし」

「え?そんなに変?」

「だってエンジェルっすよ⁈なんかもう絶対やばいっすよ」

 

まぁ、大志の言わんとすることはなんとなくわかる。はたからみたらエンジェルとかってちょっと大人なイメージがあるからな。そう思っても仕方ない。

 

「家庭の事情ね。どこにでもあるものね…」

「……」

 

雪ノ下は雪ノ下でなにかしら家の事情があるのだろう。

だが、俺はそれすら羨ましいと思ってしまう。

こいつらの言う家庭の事情というのは両親と子供が揃って初めてできるものだ。もう両親のいない俺と小町にはどう足掻いても実現することのないものだからだ。

 

「とにかく、早くその店を突き止めて辞めさせる必要があるわね」

「でも、それだと別の店で働くと思うよ」

「なら根本的なとこを治す必要もあるわね」

 

俺から言わせりゃお前を先に治した方がいいと思うがな。

 

「とりあえず、まずは店の特定からだな」

 

 

調べた結果、エンジェルとついて朝5時までやってる店は「えんじぇるている」とかいうメイド喫茶と「エンジェル・ラダー 天使の階」とかいうラウンジバーだった。朝帰りしてまで働くということは相当金がいるということだ。なら給料の高い方で働くだろうということでバーの方に行くことにした。

 

ということで夜9時くらいに現地集合となった。ラウンジバーとなるとそれなりの格好をする必要があるので大人しめの格好でくるように言われた。

戸塚は残念ながらそういう服が無いらしく不参加だ。実に残念。

ロビーのソファーに座り待っていると雪ノ下と由比ヶ浜が来る。二人ともドレス姿だ。

 

「え、ヒッキースーツじゃん」

「これくらいしか無かったんでな。別に問題ないだろ」

 

このスーツ、実は佐々木さんに借りたのだ。大学の入学式の時に着たやつだからまだ新品感溢れる匂いがたちこめてるし、あのパリッとした感覚もまだある。事情を話したら即貸してくれた。さすが菩薩精神をもつ男。(ただし、別役は例外)

 

「ていうかゆきのん何者?おっきいマンションに一人暮らしでこういう服もいっぱいもってるなんて」

「大袈裟ね。たまに機会があるからもってるだけよ」

 

ああ、そういやこいつの父親県議会議員だったな。あとボーダーの大手スポンサーの一つ「雪ノ下建設」のご令嬢か。ブルジョアジーはちげぇな。

 

そしてそれをさも当然かのように言ってる姿が、やたらムカつく。

 

「じゃあとっとと行こうぜ」

 

ーーー

 

こういう高級ホテルはエレベーターまで気合い入ってる。登っていく音がやたら静か。

 

「由比ヶ浜、一応言っとくがバーに入ったらキョロキョロすんなよ。バカにみえるから」

「な!そ、そんなことしないし!ヒッキーキモい!」

 

忠告してやったのになぜかキモい呼ばわりされる。世の中って理不尽ね。

 

ーーー

 

最上階のバーにつく。すごい高級感があるな。初見なら多分俺も萎縮してたな。A級昇格祝いに二宮さんにつれてこられてたから少しは慣れたものだ。あの時はマジで胃が終わるかと思った。あ、思い出しただけで胃が……。

 

「シャキッとしなさい」

 

ヒールで俺の足を踏もうとするが、それをひらりと躱す。なにすんだよ、この革靴も佐々木さんの借り物なんだぞ。傷つけるわけにはいかねーんだよ。

 

「なに避けてるのよ」

「普通避けるだろ。なんでもいいからとっとと行くぞ」

 

青みがかかった髪をしている店員の元へ向かう。

こちらに気づいた川崎は、若干顔をしかめる。

 

「雪ノ下……?」

「こんばんは川崎さん、探したわよ」

 

なんで一触即発みたいになってんだよ。

 

「あと、由比ヶ浜か」

「ど、どもー……」

「じゃあそっちのも総武の人?」

「どうせ知らないだろうが、同じクラスの比企谷八幡だ」

「……そっか、バレちゃったか」

 

どこか諦めたような瞳をする川崎。

 

「なにか飲む?」

「じゃあペリエを」

「あ、あたしも同じものを!」

 

テンパり過ぎだろ。

メニューを見るが、

 

「マッカンがないだと?」

 

なんて店だ。こんどホットペッパーで二宮さんばりの酷評しといてやる。あれ、ホットペッパーって酷評とかできるっけ?

 

「じゃあジンジャエールで」

 

俺、二宮さんに影響され過ぎかな?ここでジンジャエール頼むとか。

 

「で、何しに来たの?」

「最近帰りが遅いらしいな。弟が心配してたぞ」

「ハッ、そんなこと言いに来たの?ごくろー様。あのさ、たかが同じクラスってだけのやつにそんなこと言われて辞めると思ってんの?」

 

予想通りの対応だ。

 

「やけに回りが小うるさいと思ったらあんた達か。大志が何言ったか知らないけど相手にしなくていいよ。だからもう大志と関わんないでね」

 

部外者は黙れ、とでもいいたいのかね。

強気な姿勢を崩さない川崎。だがその瞳はどこか弱々しい。こいつはわかっている。

今、自分がどれだけ無謀なことをしているか。

 

「止める理由ならあるわ」

 

はぁ、面倒なことになりそう。

 

「10時40分。シンデレラならあと1時間ちょっと時間があったけど、あなたの魔法はここで解けたみたいね」

「なら最後は王子様が迎えに来てくれてハッピーエンドが待ってるんじゃないの?」

「それはどうかしらね、人魚姫さん。あなたに待っているのはバッドエンドだと思うのだけれど」

 

見てて痛々しい。川崎は雪ノ下に言われないでもわかっているはずだ。自分にハッピーエンドなど来ないことを。

 

「ねぇヒッキー。この二人何言ってるの?」

「俺らの歳ではこの時間働けない。だから川崎が歳誤魔化してるってことだ」

「へーならそう言えばいいのに」

 

お前はバカだもんな。

 

「辞める気はないの?」

「ん?無いよ?ま、ここ辞めるにしても他で働けばいいし」

「あ、あのさ。なんでそこまでして働くの?あたしもお金無い時バイトするけど歳誤魔化してまで働かないし…」

「別に。お金がいるだけ」

 

由比ヶ浜はその金を何に使うのか聞きたいのだろう。そんなこと川崎もわかってるのだろうが、用途については意地でも言う気は無いらしい。まぁもう大体わかってるけど。

 

「お、お金がいるのはわかってるの。そうじゃなくて…」

「分かるわけ無いじゃん、所詮赤の他人なんだし。いや、由比ヶ浜だけじゃない。雪ノ下も、そこの、えっと、目が腐ってるのも。別に遊ぶ金欲しさに働いてるわけじゃない。そこらのバカと一緒にしないで」

 

さりげなくディスられ、名前を忘れられたことについては触れないでおこう。悲しくなっちゃう。

 

「やーでも話すことでもしかしたら力になれることがあるかもしれないし、楽になるかもしれないから……」

「そんなわけ無いじゃん。それともなに?あんたがその金肩代わりしてくれるの?うちの親が出せないものをあんたがだせるんだ?できもしないくせに綺麗事ばっか並べないでよ」

 

これで分かった。こいつがこんなバカなことしてる理由が。

 

学費だ。間違いない。

 

「そのあたりでやめなさい。それ以上吠えるなら…」

 

……お前はなんでまだ川崎を責める。確かにこいつの行為は違法だ。断罪されるべき行為だ。でも、こいつが好きでこんなことやってるわけじゃないことくらい見てりゃわかるだろ。

こいつは学費の為に働いている。大志の話だと今年になって変わったことは塾に通い始めたことくらい。つまり、川崎家において大志の学費に関してはそこで解決している。

だが、学費がかかるのは大志だけではない。川崎もかかるのだ。総武高校は進学校だ。早いやつは二年生の頃から受験を意識し始める。予備校は結構金がかかるため、それなりの資金が必要になるのだ。その金を、こいつは稼いでいるのだ。

俺はボーダーで働いているため防衛任務の報酬、それにA級部隊には月給が支給される。だから小町の塾費もだせるし、俺の予備校費も少しならだせる。だがこいつは違う。バイトで入る金だけで予備校費などとても出せない。

こいつは優しいお姉さんであった。そして、家族をとても大切にしていた。だから巻き込みたくなかった。できないとわかっていてもその道を選んだ。

 

俺は最初、こいつに数の力が強く一人でできることなどたかが知れてるといった。それは今も同じだ。こいつ1人でできることなどたかが知れてる。それは俺も同じではある。

だが雪ノ下はそれ以前の問題だ。

 

「自分は全て正しい」

 

そう思ってるだけのバカだ。そんなやつに世界が変えられるはずがない。

世界はお前の言葉に耳を貸さないからだ。なぜならお前は自分の中の正しさに当てはまらないものは全て「悪」だととらえてるからだ。そんな独善的な考えしかないやつに、世界が変えられるわけない。

 

だからお前には何もできない。お前には何も救えない。

 

この場は退場して貰おう。

 

「雪ノ下、少し黙れ」

 

普段よりドスのかかった声だと思う。少なくとも由比ヶ浜は軽くビビってるし。雪ノ下は横目で睨みつけてくる。

 

「邪魔しないでくれる?あなたの出る幕は……」

「聞こえなかったのか?少し黙れつったんだよ」

 

一気に視線がきつくなる。あまりこういうのは好きではないが、致し方無い。

 

「『雪ノ下建設』」

「ッ!」

「お前のとこの会社だろ?そんな大企業の会社のご令嬢が、金に困ってる川崎の気持ちがわかるか?それに、確かお前の父親は県議会議員だったな?加えて、由比ヶ浜がさっき言ってたな。高級マンションで一人暮らし。その家賃は一体誰が払ってるんだ?」

 

雪ノ下のグラスが倒れる。

 

「ちょ、ヒッキー!ゆきのんの家のことなんて今関係無いじゃん!」

「そうかもな。だが事実だ。こいつに川崎の気持ちなんぞ一欠片も理解できないし、そもそも理解しようとしてないんだからな。こいつは今、ただ弱いものいじめしてただけだ」

「そうかもしれないけど、でも!」

「でももへったくれもねぇよ。ここにいても雪ノ下は何もできないし、由比ヶ浜、お前も同じだ。訳は後で説明する。だから下のロビーで待ってろ」

「………わかった。でもちゃんと説明してよ」

 

そうして邪魔者二人を退場させることに成功。…ふむ、我ながら子供っぽいことしてしまったな……。

 

 




本当はさきさき編は一話で終わらせようと思ってたのですが、いざ書いてみたら結構長くなってしまい、このままいくと恐ろしい字数になってしまう事態になりかねず、いざかいてみたら長すぎて「長すぎてダルいっす」って脳内半崎がいってきたので二話構成になりました。

つまり次回もさきさき編です。

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