目が腐ったボーダー隊員 ー改稿版ー   作:職業病

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いろいろと忙しくて遅れました。申し訳ありません。
タイトル詐欺回です。

今回初登場の人物

木崎レイジ
お菓子作りから狙撃までなんでもこなすマジでパーフェクトなオールラウンダーな筋肉。彼の作る「木崎メシ」は「佐々木メシ」を上回るうまさでボーダー隊員から絶大な人気を誇るが、彼自身が玉狛所属なため味わったことのある隊員は多くない。そしてアニメオリジナルではブーメランパンツにより宇佐美やら那須隊やらの水着を心待ちにしていた視聴者(作者を含む)は最後に全てを持って行かれた。陽太郎のヘルメットも彼の手作り。

小南桐絵
「騙したな!」でお馴染みもてかわ騙されガール。全てのことを鵜呑みにし、普通だれも信じないような烏丸の嘘を全て信じるという本気のチョロイン。彼女がお嬢様学校でなかったらどうなっていたのだろう。将来が平塚先生とは別の意味で不安。戦闘狂なところがあり八幡には会うたびに勝負をけしかけてるが最近ロクに相手にされないことに若干落ち込んでるらしい。八幡ヒロインの一人。

烏丸京介
もさもさした公式公認のイケメン。レイジさん同様常に無表情で笑う際にも無表情。八幡に表情筋生きてるのか疑問に思われてる。しょっちゅう小南に適当な嘘をつき弄り倒してるとこを見ると小南のことは多分なめくさってる。バイトをいくつも掛け持ちしていて彼がバイトに入る日は奥様方の客が増えるとかなんとか。13巻の唯我の態度を見る限り何かしらの因縁がありそうだが多分烏丸は唯我のことあまり相手にしてないと思われる。

迅悠一
セクハラエリート。しょっちゅういろんなとこで暗躍してるらしいから本部、主に城戸司令に睨まれてる。そしてそれに巻き込まれる八幡と琲世も少し睨まれてる。ご愁傷様です。多分迅と八幡が組んで占い師とかやったらかなり儲かりそうな予感がする。口癖は「俺のサイドエフェクトがそう言っている」


10話 ボーダーのシェフツートップが作ったメシは、例外なく美味い。

現在、おれは警戒区域、平たく言えばゴーストタウンにいる。

ネイバーは基本門(ゲート)と呼ばれる異次元の扉を通ってこちらにやってくる。基本的に遠征艇からトリオン兵となる卵みたいなものを放ってこちらにくるらしい。というかほぼ毎日出てくることを考えると三門市狙われすぎだと思う。

一昔前までここにも人が住んでいたが、四年以上前の大規模侵攻後にボーダー本部ができて、そのゲート誘導装置的なものでゲートが発生するのが本部周辺だけとなり、それゆえ本部周辺の人は撤退を余儀なくされた。当然反発も出た。デモ的なのもあったが、やはり人間命あってこそのものだ。ボーダーがしっかり防衛してるのを見るとデモ的なのも無くなっていった。まぁ根付さんの手腕もあるのだろうけど。

 

そしておれも撤退を余儀なくされた人間の一人だ。

 

方角的にはもっと西の方だから今日の防衛任務の担当位置ではないが、元我が家周辺の担当の時はちょっと抜け出して家に行ったりしてる。幸いおれの家周辺はネイバーが出てないようで今もそのまま残ってる。とは言っても撤退の時に家具及びその他諸々も全て現在のマンションに持っていったから今はもぬけの殻だが。

当然放置されてるから埃だらけなのだが、おれが勝手に持ち込んだ掃除道具で適当に掃除してる。佐々木さんもよく手伝ってくれる。願わくばこれからも元我が家周辺にネイバーが出ないことを願う。

 

そして話は変わるが、今日の防衛任務は玉狛となのだ。

が、早く着いてしまったようでまだ玉狛勢は来ていない。いるのはおれと佐々木さんだけだ。

 

「ちょっと早かったね」

「そうっすね。まだ交代まで10分くらいありますから」

「今この周辺の担当は、確か諏訪隊だったっけ」

「ええ、多分」

「まぁ、時間までここいよっか。それとも家いく?」

「いや、この前掃除したのでいいっす」

「そっか」

 

その後は特にすることもなくただ雑談していた。

 

 

時間になり、諏訪隊の面々と適当な挨拶をし、交代になる。少し待つと玉狛勢がやってきた。

 

「早いな」

「レイジさん、どうも」

 

木崎レイジ。お菓子作りから狙撃までなんでもこなすマジでパーフェクトなオールラウンダー。別名落ち着いた筋肉。

 

「どうも比企谷先輩、佐々木さん」

「よお烏丸」

「やあ烏丸くん」

 

烏丸京介。もさもさしたイケメン。その名の通りもさもさしててイケメン。こいつがバイトに入る日は大体店が混む。

 

「佐々木さんはともかく比企谷が早いってのは意外ね」

「こんにちは桐絵ちゃん」

「おいコラ小南、それはどういう意味だ」

 

小南桐絵。なんでも信じちゃう本気のチョロイン。なぜこいつに悪い虫がつかないか不思議に思ってたがよく考えたらこいつお嬢様学校だった。

 

「小南先輩、それはひどいですよ」

 

お、珍しく烏丸がおれのフォローに回ってる。

 

「比企谷先輩、小南先輩に会うの楽しみにしてたんですから」

 

違った。こいつただ遊んでるだけだ。

 

「え、そうなの⁉︎」

「違う」

「な、なによそんな急に言われてもゴニョゴニョ……」

 

うん、話聞こうね?

 

「すいません嘘です」

「……」

 

あ、もういいや。これはアレですね、おれがアレされるやつですねわかります。

 

「騙したなぁ⁉︎」

「騙したのはおれではなく烏丸だ!」

 

なんで毎度毎度騙すネタとして使われた人がキレられるんだよ。普通烏丸にいくだろ。

 

「うがぁぁ!」

「野生児かお前は!噛むな!」

「あっはっは」

 

無表情で笑ってんなよもさイケメン!

レイジさんはため息をつき、佐々木さんは苦笑いで見てる。

 

というか助けてくれません?

 

 

『みんな!ゲートが発生するよ!』

 

宇佐美の声によりおふざけは終了。さぁ仕事だ。……やだなぁ。

と、仕事への嫌悪を頭で唱えているのだが、なんかトリオン兵の数がおかしい。30体くらいいるんだけど。

 

「横山、これ数いくついる?」

『んーとね、32体』

 

多くね?なに、とうとう攻め落としに来たの?

するとトリオン兵の集団は二つに分かれる。ここは各個撃破だろうな。

 

「比企谷、右はおれ達がやる。左は頼むぞ」

「了解っす」

 

レイジさんからの指示により、各隊標的へと向かう。バムスターにモールモッドに、あれ、あの砲撃してくんのなんだっけ?……パンダ?いやバンダーだ。バンダーもいる。

 

「佐々木さん、フォローするんで先行お願いします」

「了解。『テレポート』」

 

佐々木さんは一瞬にしてその場から消え、一番近くのモールモッドの上に出現。そしてモールモッドが反応する前に孤月を振り下ろしモールモッド撃破。追加でやってきたもう一体のモールモッド鎌をかすることなく避け、懐に入りこみ一閃。そして後方から砲撃をしようとしてるバンダーにおれがバイパーを打ち込む。ついでに佐々木さんに向かってるモールモッドの足の付け根にも打ち込んでおく。するとモールモッドは足を無くしダルマ状態になる。そこに佐々木さんが再び一閃。あと13体もいる…。めんどくさいな…。

とりあえずグラスホッパーで上空へ舞い上がり、フルアタックバイパーで狩れるやつは狩っていく。うーむ、バイパーは弾道設定ができるからおれのサイドエフェクトと相性はかなりいいが、ちょっと威力ないんだよなぁ。特に弾数多くすると。

 

と、そこでバンダーが再び砲撃。あ、やべ。フルアタックだからシールドだせない。

 

「佐々木さん」

「了解」

 

砲撃炸裂。寸分違わずおれを狙ってくるが、おれの前にはテレポートで移動した佐々木さんがフルガードで守ってくれる。シールドに少しだけヒビが入るがお互い無傷だ。そしてその隙をついてバイパーを打ち込む。

 

「助かりました」

「隊長の命令とあらばこのくらい」

 

なんとも心強い。そしてこの人が年齢気にする人でなくて良かった。プライド高いやつなら年下に命令されるとかすげー嫌だろうし。といってもおれを隊長にしたのこの人なんだけどね。

 

そのまま残りを速攻で片付けた。

 

 

最後のバムスターの目玉にアステロイドをぶち込み、殲滅は終了する。うわぁ、死骸だらけ。

 

「お疲れ様比企谷くん」

「うす。佐々木さんも」

 

どうやら玉狛の方も終わったみたいだ。

佐々木さんが孤月を鞘に収める。佐々木さんの孤月は少し改造してあり持ち手、刃共に少し長めに設定されている。その分少し重くなるのだがほぼ誤差の範囲だ。本人曰く「このくらいが一番使いやすい」らしい。まぁ他にもトリガーちょいちょい弄ってる人いるらしいし別に珍しくないか。玉狛の方がよっぽど珍しいし。

 

「おう、終わったか」

「ええまぁ。横山、回収班よんどいて」

『ほいほーい』

 

あー疲れた。もう帰りたい。おうち帰りたい!というか玉狛と防衛任務すると毎回烏丸が小南弄っておれが生贄にされるからやなんだよなー。それなければ特に文句ないんだけどなー。

 

「今日もうちでメシ食ってくか?」

「行きます」

 

前言撤回。木崎メシ食えるなら帰らなくてもいい。

というか玉狛との防衛任務のたびにうちの隊は玉狛でメシ食ってってるからもはやお約束。

 

あ、小町に連絡しとかねーと。

 

 

その後、無事防衛任務を終え報告書を提出し、作戦室に戻る。荷物をまとめていざ、玉狛へ木崎メシをたかりにいくぞ!

と、そこで声をかけられる。

 

「お、琲世に比企谷、それに夏希ちゃんも」

「あ、迅くん」

「どうも迅さん」

「あ、迅さん。よっす」

 

迅悠一。ボーダーでも2人しかいないS級隊員の一人で自称「実力派エリート」。別名「セクハラエリート」。よく沢村さんとか熊谷とか横山が犠牲になってる。

 

「防衛任務あがりか?」

「そっすね。これから玉狛にメシたかりに行きます」

「ほうほう、おれもちょうど帰るとこなんだ。一緒に行くか」

「小町迎えに行きますけど」

「大丈夫だ、問題ない」

 

なんのフラグだよ……。

そしてそこで迅さんが横山の尻をなでる。

 

「ぎゃっ!」

 

そして振り向き正拳突きが顔面に突き刺さる。うわー、痛そう。そういえばスマブラでガノンとかキャプテンとかの振り向きパンチ当たれば強いよな。

 

「相変わらず健康的なパンチだ」

「反省の色が見えませんねぇぇ迅さん?」

 

あ、横山キレたなこれは。まぁ、自業自得だね☆

とそこで横山は倒れてる迅さんの胸ぐらを掴み上げ殴る、殴る、殴る。おーっと!ここで顔面に肘まで突き刺さった!さらに鳩尾にかかと落とし!これは痛い!

 

「比企谷くん、あれどうする」

「いやどうしよもないっすよ。てか下手に止めるとおれらも巻き込まれますよ」

「それは嫌だけどさ、血が出てるから多分迅くん生身だよ?」

 

ファ⁈

 

 

「いやー小町も呼んでいただき嬉しいですよ。ちょうどお昼どうしようかって思ってたとこでしてー」

「ほほう、それはいいタイミングだったね」

 

阿修羅モード全開の横山をトリオン体に換装してから横山を止め、ボロボロの迅さんと引き離すことにどうにか成功。

今は小町と合流して、玉狛に向かっている最中だ。小町に電話したら行くの即答。こいつボーダーじゃないのにやたらボーダーに知り合い多くなってない?間違いなくおれのせいだけど。

そんなこんなで玉狛到着。

 

「ただいまー」

「あ、お帰り迅さん」

 

出迎えたのは宇佐美栞。玉狛第一のオペレーターで横山と綾辻と同じクラスだ。学業も優秀なメガネ信者。

 

「お、夏希じゃん!あー小町ちゃんもいるー!」

「よっす栞」

「こんにちは栞さん!」

「比企谷くんと佐々木さんもいらっしゃい」

「うす」

「やあ栞ちゃん」

「んじゃまぁ上がって上がって」

 

相変わらずテンション高いやつだ。

 

 

ダイニングに行くと、もさもさしたイケメンとカピバラにのったヘルメットのガキがいた。

 

「おう、ひきがやたいのメンバーか。よくきたな」

 

このやたら偉そうなガキは林藤陽太郎。支部長の林藤さんとどんな関係なのか未だに知らない。あとなぜかヘルメットを常に被ってる。

 

「あ、お疲れ様です」

「おう、よく来たな。これからメシを作る。佐々木、手伝ってくれ」

「了解です」

 

と、そこでなんかやたら慌ただしい音が聞こえる、と思ってたら勢いよくドアが開けられる。

 

「比企谷!勝負よ!」

「開口第一声がそれか」

「いいから勝負しなさい!」

「嫌だ。たった今防衛任務してきたばっかなのになんでわざわざお前とやらにゃならんのだ」

「前回あたしに勝ち逃げしたでしょ!今日こそあんたに勝ち越すのよ!」

 

面倒くせぇ…。勝ち逃げの何が悪いんだよ。そもそも戦歴的にお前が勝ち越したことほぼないだろ。

 

「小南先輩、開口一番がそれでは比企谷先輩もドン引きですよ。比企谷先輩、今日は小南先輩に会いに来たんですから」

「おい烏丸、なに設定捏造してんだ」

「え⁈そうなの⁈」

 

なぜ信じる。おれはメシ食いに来たんだ。断じてこんな鵜呑み系女子に会いに来たわけではない。

 

「そ、それならそうと言ってゴニョゴニョ…」

 

後半なに言ってるかわからんし信じるなよ。顔真っ赤にすんな、勘違いしちゃうだろ。まぁありえないだろうけど。

 

「すいません嘘です」

「……騙したわね比企谷ぁ!」

「いやまて騙したのおれじゃねぇいってぇ!」

 

なんで噛んでくんだよ。というかすごいデジャヴ。

 

「あっはっは」

 

おいコラそこの無表情笑ってないで助けろ!

 

「うがぁぁ!」

「痛いからはなせこら!」

 

なぜ誰も助けないし。解せぬ。

 

 

小南を無理やりひっぺがし佐々木さんの作ったオムライスとレイジさん特製肉肉肉野菜炒めをいただく。なんでも卵と肉が特売だったとか。一口食べる。

うーまーいーぞー!と目から光が出そうなくらいうまい。さすがボーダーのシェフツートップ。おれではこれはなかなか作れない。多分今ジャンプでやってる食◯のソーマとかでも出せるレベル。あの総帥さんもおはだけしちゃう!

ちなみに支部長の林藤さんは仕事で本部にいってるとかなんとか。

 

「そういえば比企谷、お前ランク戦はいつから復帰するんだ」

 

オムライスをもさもさいただいてたらレイジさんが聞いてくる。

 

「ああ、まぁとりあえず来シーズンからです」

「そうか。そうなると最下位スタートか」

「まぁ休隊しましたからね」

「僕が受験でしたからね。でも比企谷くん達の時も休隊しますよ。防衛任務は他の隊にくっついていけばどうにかなるでしょうしね」

「まぁA級であればいいですからね。順位は高いに越したことはないですけどうちは順位にあまりこだわりありませんから」

「ふん、そんなこと言ってるとどっかに抜かされるわよ」

 

偉そうに言ってるけど小南、お前戦歴的にはおれに負け越しだからな?おれの方が強いからな?

そんな風に小南に内心で悪態ついてると、烏丸が唐突に聞いてくる。

 

「そういえば比企谷先輩、だいぶ前にレイジさんに何か相談してましたよね。あれ結局なんだったんすか?」

 

だいぶ前に相談、ああ、あれかな。

 

「ん?ああ、あれか。あれはだな…生身のトレーニングメニューを考えて貰ったんだ。二宮さんにトレーニングしろって言われたはいいけどどういうのやればいいか何も言われなかったから」

「へーお兄ちゃんコミュ力上がったね。昔なら絶対他の隊の人に相談なんてしなかっただろうに」

 

ちょっと小町ちゃん?コメントするとこそっちなの?なんでおれのコミュ力の方へ話がシフトするの?そこ普通レイジさんのイケメン師匠ぶりにコメントするとこじゃないの?

 

「でも比企谷くんもスランプ的なのあったんだね」

「おい宇佐美どういう意味だ?おれなんてもはや人生そのものがスランプしてるまであるからな」

「だって比企谷隊B級上がったら瞬く間にB級上位までいったじゃん。あたしその時まだ風間隊いたからすごく印象的だったよ」

 

確かに。おれらはB級上がりたてでB級下位相手に初戦で8得点をとり、中位相手に6得点をあげて一気に上位に上り詰めた。さすがに上位相手にポンポン点は取れなかったが、それでも順調に順位をあげて行き上位陣のトップまでいった。だがA級相手には勝てなかったがな。風間隊は上位のランク戦であたったのだ。その時なめてかかってきた菊地原を軽くひねったらライバル視されるようになっちゃった☆

 

「ふん!比企谷もまだまだね」

「お前はおれに勝ち越してから言え」

「うるさいわね!」

「比企谷先輩はなんでB級上がりたてであんな強かったんすか?」

 

ああ、それ聞くのね…。

 

「いや、あれだ。おれはC級時代にあんまランク戦しないで正隊員の人と練習試合ばっかしてたから」

 

おれは二宮さんとか加古さんとかとやりまくってた。加古さんは頼んだらすぐOKしてくれた。二宮さん?ボコられてダメなとこ指摘されて改善案出されてその後ボロクソにやられ罵倒されまくった。

そしてB級に上がる頃には既に上位レベルまでの戦闘力になってた、ということだ。佐々木さんはおれが入隊した時にはすでにB級だった。

そしてそんなこんなでオムライスと野菜炒め完食。ごっつぁんでした。

 

「比企谷!勝負よ!」

 

やっぱこうなるのね…。どんだけ負けず嫌いなんだよ雪ノ下かよ。

 

「あーすまんな、比企谷はおれと話があるからダメだ」

 

そこで迅さんが言ってくる。

 

「え、話って?」

「ちょっとなー。そういうことだから小南は琲世とでもやっててくれ」

「仕方ないわね。佐々木さん!勝負よ!」

「えー、桐絵ちゃんの相手は疲れるなぁ……」

「あ、佐々木さん、手合わせお願いしていいすか?」

「うんいいよ。烏丸くんはやってて楽しいし」

「なんでとりまるはいいのよー!」

 

本当に騒がしいな。子供かお前は、もう少し落ち着きを持て。玉狛お前以外みんな落ち着いてるぞ。

 

「あ、夏希さん栞さん!勉強教えてください!」

 

用意いいねー小町。一応受験生だもんね。

 

「お、いいよいいよ。じゃあ私の部屋でやろうか。夏希もやるでしょ?」

「もちろんだぜ!小町ちゃんの為にもあたし頑張っちゃうよ!」

「頑張るのは小町ちゃんだけどね」

「じゃあお願いします!」

 

そうしてダイニングに残っているのはおれと迅さんとレイジさんだけになった。

 

「で、話ってなんすか?」

「ああ。えっとな、今度の水曜日にお前らの隊は夕方くらいには本部にいてくれ」

「はぁ、まぁいいですけど」

 

今度の水曜日、5月1日か。その日になんかあるのか?

 

「なんかあるのか?というかおれは聞いてていいのか?」

「レイジさんはどっかで関係してくるみたいだからいいよ」

「なんでうちの隊なんすか?」

「お前らがいてくれると、将来的にいいことがあるかもしれない。水曜日になんかあるのは確かだけどなにがあるのかはまだわからないんだ」

「……それ多分ネイバー関連ですよね」

「多分な」

「とりあえず、本部にいればいいんすね」

「そうだな、そうしてくれ」

「了解です」

 

さて、何があるのやら。

そしてその後小南を適当にひねり「勝ち逃げだー!」と叫ぶのをスルーして、迅さんの話の内容を佐々木さんと横山に伝えて帰路についた。

ちなみにシフト確認したらその時間ちょうど入ってて風間隊とだった。菊地原いらないな……。

 

 

言われた5月1日、今おれと佐々木さんは警戒区域でトリオン体の状態で待機している。い、いやさぼってるわけじゃないよ?ほんとだよ?

あいにくの曇り空。いつ雨が降ってもおかしくなさそう。バッグワームを装備しぼんやりする。なにかが起こるのはわかる。だが何が起こるのかはまだわからない。

 

「何があるんだろうね」

 

隊服のフードを被っている佐々木さんが聞いてくる。

 

「わかりませんね。でも、何かしらある。おれのサイドエフェクトがそう言っている」

 

「そっか」

 

正直、杞憂で終わってくれる方がこちらとしてはいい。迅さんの態度からあまりいいことではなさそうだし。

遠くでゲートが開く気配がする。トリオン兵か?

 

『比企谷隊、風間隊、聞こえるか。こちらは忍田だ。これより君たちに緊急任務を下す。密航者を捕らえろ』

 

密航者?どういうことだ?

 

「え、ちょ、どういうことですか密航者って」

 

『詳しくは現地に向かいながら話す。今から送る座標に一刻も早く向かってくれ。バッグワームを忘れるなよ』

 

「了解」

 

視界に座標が表示される。そこに向かっておれと佐々木さんはグラスホッパーを駆使して全速力で向かう。

 

『じゃあ説明するね。さっき上層部から言われた指令内容はトリガーを民間人に横流しして、外の世界に密航しようとしてる人がいるからその人を捕らえろって来たの』

 

横山からの説明に疑問が生じる。

 

「誰だ、その密航者は」

 

『…二宮隊の、鳩原さん』

 

二宮隊の鳩原さん…。あのスナイパーの人か。武器破壊が得意の。

 

「なんで、そんな」

 

佐々木さんの考えることも最もだ。なぜそんなことしなければならないのか。それにトリガーの横流しは記憶封印措置も適応される重度の違反行為だ。

 

『理由はわからないけど、でも上層部としてもそんな違反者を野放しにはできないんだと思う。それに民間人と一緒に密航なんて…』

 

まぁそうだろう。ボーダーはトリガーという技術に関してかなり情報を隠している。おれら隊員にも守秘義務が課せられていることも多々あるのだから。

そこでレーダーに4つのトリガー反応がある。四人か、意外と多いな。

 

『トリガー反応確認。距離残り400』

 

ゲートの気配、まずいな。このままだと逃げられる。

 

「バイパー」

 

トリガー使ってるならベイルアウトもあるだろうし、無くても生身に戻るだけだ。最悪牽制程度でもいい。

だがバイパーを放ったその瞬間そのトリガー反応が消えた。多分ゲートを使って向こうに行ったのだろう。間に合わなかったか。現場に着くとやはり何も残ってなかった。

 

「本部、比企谷隊現着しました。現場に密航者の姿はありませんがトリガーの反応は確認しました」

 

『ご苦労。しかし、間に合わなかったか。風間隊にも追手を頼んだがまだ来てないか?』

 

「たった今来たようです」

 

そこで風間隊が到着する。

 

「風間隊現着しました」

「なんで比企谷先輩がいるんですか。指令を受けたのはうちですよ。先輩方には荷が重いでしょうから邪魔なんで帰ってください」

 

この毒キノコが。

 

「うちも指令受けたんだ。それに現着したのうちの方がはやいからね?」

「うちだけでいいのに…」

「まぁそう言うな。比企谷先輩方も指令を受けたんだし」

「雑談はそこまでだ。現場を少し調査してから本部に帰投する。比企谷隊、手伝え」

「了解です」

 

とりあえず周囲を見回すが、これといってなにかあるわけではない。しばらく散策してみるが何もなく、雨が降ってきたので本部に戻った。

 

 

ボーダー本部司令室

 

「以上が報告となります」

 

先ほどの密航者の件でおれと風間さんは司令室に報告に来ていた。ぶっちゃけおれここに来てから何も言ってないし帰っていいかな?とか考えたら沢村さんに睨まれた。解せぬ。

 

「報告ご苦労。しかしトリガーが横流しされあげくに密航か。なかなか手の込んだ計画だ」

 

顔に大きな傷があり重々しい口調のこの人は城戸司令。ボーダー本部のトップの人だ。ネイバーは絶対許さないぞ主義の人。

 

「そもそもどうやってトリガーをその数用意したのかすら方法がつかめていない」

 

落ち着いた雰囲気の人は忍田本部長。街の安全が第一だよね主義の人。ちなみにおれはこの人の派閥。城戸司令のとこはなんとなく雰囲気があわないからと、おれも街(小町)を守るのが第一だと思うから。

 

「ぬぅ、まさか3つもトリガーをくすねられるとは」

 

見た目完全たぬきのこの人は鬼怒田開発室長。先ほど言ったけど見た目完全たぬき。

 

「このことが民間人に知られるのは、こちらとしては避けなければなりませんねぇ」

 

メディア対策室長根付さん。よく考えるとこの人の名字反対から読むとキツネだ。

 

「今回のことは関係者である諸君ら以外には口外しないように願う。恐らく下手につつきまわすと事が広まる恐れがある。それはこちらとしては避けたい」

「そうですねぇ。それが懸命でしょう」

「鳩原め、一体何を企んどったのか」

 

確かにかなり手の込んだ計画だ。トリガーをくすね、ゲート発生地を予測し、さらに寸前まで本部に気付かれずにやり遂げるのだから。

 

「そこで比企谷、お前は今回の件どう思う?」

 

忍田本部長から質問されるが、正直何もわからない。だって情報が少なすぎる。

 

「…勘でよければ」

「構わない。君の勘は頼りになる」

「…多分、今回の件は結構前から計画されてたことでしょう。誰が計画したのかはわかりませんけど。あと、これは誰かのために行われた計画だと思います」

「ぬ?誰かの為とはどういうことだ?」

「いや、勘ですから」

「そうか。しかし情報が少なすぎる。最低限誰がいなくなったかくらいは目星をつけねばならない。鳩原の他にも密航者がいるかもしれん」

「そうですね、とりあえずはそのことについて調べましょうか」

「会議は以上だ。今後についてはおいおい連絡する」

 

そしてこの事件の真相を知るのはかなり先のことになる。

 

 




次回もワートリサイドかな。多分アレです。綾辻さん出てきます。

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