6月6日、いよいよ潜入開始の日が来た。
これから俺、アリア、キンジは2週間横浜の紅鳴館に潜入する。
学校には理子に言われた通り、民間の委託業務を通じたチームワーク訓練と書類をマスターズに通したらあっさりと通ってしまった。
この泥棒大作戦は理子が外部からサポートする役目である。
どんよりとした気分で待ち合わせ場所のモノレール駅に俺は向かった。
前日まで古賀先輩に女らしさを悲鳴をあげるまで叩き込まれていたのだ。
男を喜ばす技術とやらは断固拒否したが……
お、アリア達だ。
「おはようございます。アリア、キンジさん」
「「!?」」
何やら言い争っていたアリアとキンジは振り替えるとびっくりしたように俺を見ると
「ゆ、優よね。あんた?」
確かるようにアリアが言う。
「ええ、アリア。私は今回は月島 優と名乗りますから間違えないでくださいねアリア。キンジさん」
「き、キンジさん?」
キンジが引いてるよ……
そう、俺は武偵高の女子制服に黒髪ロングのかつらに青いリボンで少しだけ後ろをまとめてる。
古賀先輩にも言われたがプロでも一目見ただけでは男だと見破れないんだそうだ。
この先の人生で潜入捜査に使えるかもしれんがこれは……
「キー君、ユーユー、アリア、ちょりーっす!」
理子の声に振り向く。
おお、えらいかわいい子に化けてきたな理子
「おお!おお!ユーユー似合うよぉ。」
「ええ……ありが……ってやってられるか!」
とうとう我慢の限界に来た俺は本心のままにぶちまける。
「あ、やっぱり優ね」
アリアが言う。
小型のボイスレコンジャーのせいで声は女声だが気にせずに
「ああ、ユーユー駄目だよ。今日からしばらくメイドさんなんだから女の子らしくしないと。しないとぷんぷんガオーだぞ」
と指を頭に二本立てて理子が言う。
「屋敷についたらでいいだろ!」
「仕方ないなぁユーユーは」
変装した理子を見ながら思う。
やはり、今までの言動からして理子も覚えてないらしいな……
無理もないかもしれんが……
「り、理子……なんで、その顔なんだよ」
ん?
「キンジ、知り合いの顔なのか?」
「あ、ああ」
俺の問いにキンジはあいまいに答える。
「くふっ。理子ブラドに顔割れちゃってるからさぁ。防犯カメラに映って、ブラドが帰ってきちゃったらやばいでしょ?だから変装したの」
そうなら願ったり叶ったりなんだがな……俺はブラドを逮捕する。
アリアのため、理子を助けるために……
今回、ブラドが出てこないなら別の機会に逮捕する。
「だったら他の顔になれ!なんでよりによってカナなんだ」
キンジの動揺ぶり見るに相当な人物らしいな……ま、まさか元恋人とかか?
「カナちゃんが理子の知ってる世界一の美人だから。それにカナちゃんはキー君の大切な人だめんね。 理子、キー君の好きな人の顔で応援しようと思ったの。怒った?」
「いちいちガキの悪戯に腹を立てるほどガキじゃない。行くぞ」
「心の奥では喜んでるくせにぃ」
黙ってキンジが改札に歩いていく
「な、何。急にどうしたのよキンジ、理子誰なのよそれ!」
「まあまあ、アリア。キンジも男なんだから過去に恋人ぐらいいてもおかしくないだろ」
「こ、恋!」
アリアがぼんと赤くなったのを笑いながら
「ま、冗談は置いといて友達だろ多分」
俺も女の子の知り合いはいるからな。
手に持った旅行用のカバンを見る。
ヴィトンのそれは古賀先輩に言われ買ったものだがこの中には今回の準備の道具がたくさん入っている。
無論、切札も用意してきたさ。
キンジと友達の会話をしながらトンガリコーンを食べる理子を見て顔をあげるとタクシーの窓から今回のクエストの場所、紅鳴館が見えてくる。
不気味だな……本当に化物でも出てきそうだ……
まあ、今回は最悪、化物退治になるからな……
さて、どうなることやら……
理子がインターホンを押すのを見ながら俺は思うのだった。