緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第87弾 蘇る記憶

「なるほどな……」

 

ジャンヌは俺から一部の情報を伏せて話したのを聞いて納得したように言った。

 

「それで女装か?似合ってるぞ椎名」

 

ローズピンクの口が馬鹿にしたように笑みを作る。

 

 

「お前もな」

 

皮肉まじりに言ってやる。

 

「遠山にも言われたが私とて恥ずかしいんだぞ?」

 

「なら、互いに突っ込むのやめようぜ」

 

「そうだな」

 

互いの利害が一致したので制服のことは突っ込まない。

じゃあ次の質問だな

 

「ローズマリーのことを教えろ」

 

ストレートに聞くとジャンヌは少し目を開いてから

 

「豪快に聞くものだな。遠山でさえ遠回しにイ・ウーのことは探っていたぞ」

 

どうやら俺が来る前にキンジがいたらしいな……

だが、今は関係ない。

 

「教えろ。教えないなら力ずくでも答えてもらうぞ」

 

ざわりと体内で戦闘狂モードになりそうになる。

 

「ほう、いつぞやの決着ここでつけるのも悪くはない……がやめておこう。話してやってもいい」

 

その言葉でなりかけてた戦闘狂モードが収束する。

 

「だが、私と戦っていたら最悪、捕まるぞ椎名。司法取引をした相手を襲うのはただの暴行だ」

 

「ローズマリーの情報が手に入るなら安いもんだ」

 

ジャンヌは俺を探るように見てから

 

「椎名、お前のことは調べさせてもらった。なぜ、ローズマリーを追うのかもその情報を見れば分かる。だが、復讐は身を滅ぼすぞ?」

 

「そうかもな……」

ジャンヌはため息をついてから

 

「とはいえ私もローズマリーのことは詳しくは知らんのだ。彼女はイ・ウーに所属こそしていたがほとんど、世界中を飛び回って姿を見せることがほとんどなかったからな」

 

「なんだよそれ。結局、何も知らないってことか?」

 

「いや、彼女はおそらく人間ではない」

 

「どういうことだ?」

 

「おそらくと言っただろう。私も全部知ってる訳ではない」

 

化物か……

 

「で?次の情報は?」

 

「それだけだ」

 

「は?」

 

「それだけだと言っている。実力は定かではないが私より強いのは確実だ」

 

「待てよ。アドシアートの時、おまえら共闘してたんじゃないのか?」

 

「いや、ローズマリーは縛られるのが嫌いらしくてな。気のむくままに事件を引っ掻き回しただけだ」

 

「それでよく俺達から逃げられたな」

 

 

「結果的にお前達は黒衣を着たローズマリーに疑いを向けざる得なくなり私への警戒心が分散された。自由とはいえ損はなかったさ」

 

ますます、わからねえ……ジャンヌの話を聞いていくらか分かったパズルのピースがある。

 

「おいしそうですわ。でも今は食べ頃じゃありませんの」

 

あのセリフの意味はやはりわからないな……

 

「ローズマリーの話はこれぐらいだ。ブラドについてならもう少し情報を与えてやれるぞ?」

 

「頼む」

 

とりあえずローズマリーの情報はこれだけということは次は激突する可能性が高いブラドが問題だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

音楽室を使いたいという合唱部が来たので俺たちは場所を中華料理屋炎に移した。

もちろん、俺は着替えて着ているぞ。

 

「おお!お兄さん、今度はクール系銀髪美少女ですか!さすがに5股は私も引きますよぉ」

 

「5股?」

 

ジャンヌが珍しそうに店内を見回しながら怪訝そうに聞いてくる。

 

「いつもいつも誤解招くようなこというなアリス!さっさと注文したもん持ってこいよ!」

 

「フフフぅ、了解です!」

 

くるくる回りながらアリスは行ってしまった。

大丈夫なのかこの店……

 

「で、聞きたいんだが理子のことだ。ブラドと理子過去に何があった?」

 

「理子は少女の頃監禁されて育ったのだ」

 

どこかジャンヌは哀れむように言った。

監禁……まじか?

 

「理子が未だに小柄なのはその頃、ろくなものを食べさせてもらえなかったからで……衣服に対して強いこだわりがあるのはボロ布しか纏うものがなかったからだ」

 

「なんで理子は監禁されたんだ?リュパン家といやアリアの祖先のホームズとやりあえるほどの名家だろ?」

 

「リュパン家は没落したのだ。使用人は散りじりになり、財宝は盗まれた。最近、母親の形見の銃は理子は取り返したようだがな」

 

「……」

 

その後はなんとなく想像がつくな……理子はブラドに……

 

「お前の考えてるとおりだ椎名。まだ、幼かった理子は親戚を名乗るものに養子として引き取られルーマニアに渡った。そこで捕らわれ監禁されたのだ」

 

あの馬鹿理子にそんな過去が……

つらいなんてもんじゃない……変えたい過去を持つ俺でさえ味方はいたんだ……虎児や千鶴、月詠、咲夜、あの人もいた。

俺が笑っていた時も……理子は……

 

 

 

 

「……て」

 

「う……」

 

その時、脳裏に何かが浮かんだ。

何だこの違和感は……

 

 

「……も……けて師匠!」

 

ザザザとまるで砂嵐のような画面に浮かぶ記憶がフラッシュバックする。

こいつは……そして、その場面だけは妙に繊細に蘇る。

 

「あなた……だれ?」

 

死んだ魚のように絶望に染まったその瞳。

対面の鉄格子の中にいたボロ布を纏う少女

 

「僕?椎名優希。君は?」

 

「……子……」

 

かすれるように少女は力なく言った。

 

「峰・理子・リュパン4世」

 

そうだ……俺は過去に理子に会ってる。

世界中を師匠と回ってるときルーマニアの城で……


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