緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

79 / 261
第78弾 別れ

実の所、神戸の最終日は市内で遊んでいうこうと言う案もあったのだが、武装検事の事情聴取や俺の入院でそれは叶わなかった。

なので、朝1番の飛行機に乗るために俺たちは神戸空港に来ていた。

搭乗開始まであと30分か・・・

お土産を見に行くというキンジとアリアとマリに続いてマリも行ってしまった。

レキはいつの間にか消えているし、俺は椅子に座ってぼんやりと天井を見つめていた。

 

「武偵になるんだってな?」

 

「え?」

 

天井を見ながら俺は隣に座る奏ちゃんに話しかけた。

 

「武偵なんていい仕事じゃねえぞ? 財閥で過ごす方が幸せなんじゃないか?」

 

ぼろぼろになるし一歩間違うと死ぬしな。

今回だって最悪、俺は殺され、レキや奏ちゃんは中国へ、千夏ちゃんは爆死してい他最悪の未来だってありえない話じゃない。

武偵に限った話じゃないがそんな世界と隣あわせなんよなこの世界は・・・

 

「優がいるから・・・」

 

「え?」

 

よく聞こえなかったんだが・・・

 

「だから・・・!」

 

顔を真っ赤にして奏ちゃんが何かを言おうとした時

 

「おーう! 優間に合ったな」

 

「・・・久しぶり優」

 

プリン頭の虎児とメガネを掛け、ポニーテールに結っている少女がロビーから人並み和変えて歩いてくる。

 

「虎児! 千鶴! 見送りに来てくれたのか?」

 

「俺はそうなんやけどな・・・」

 

冷や汗をかきながら虎児が横を見る。

 

「ん」

 

千鶴が紙を俺に突きつけてくる。

なんだろう?

受け取って見ると凍りついた。

 

請求書 400万

 

「待てなんだこれは!」

 

「私への依頼料」

 

「法外だ!」

 

400万てなんだそれ!

 

「今回は自衛隊のやばい衛星も使った。 結構苦労した部分になったからその金額。びた一文巻けるつもりはない」

 

まずいぞ、今回は依頼でかかった金は

 

日本刀破損100万→すでに調達のために支払い済

 

武偵弾 100万

 

千鶴依頼料 400万

 

高速修繕費 司法取引で0ただし、単位剥奪報酬なし

 

報酬0

 

結果、マイナス600万

 

借金だ! 増えてるじゃねえか!

 

「ぶ、分割で・・・」

 

俺がたのみこむように言うと千鶴はこくりと頷いた。

 

「利子は4割。 期限は今年中に」

 

無理です! 破産するから! あんたは悪魔ですか!

そういえば、アリアを守ると言う点では依頼主から報酬も出るはずだ。

 

「ちょ、ちょっと待ってろ!」

 

俺は3人から離れると電話をかける。

3コールののち・・・でねえ・・・

もうだめだおしまいだ

とぼとぼと戻ると千鶴が領収書を突き出してくる。

うう・・・

泣きながら受け取ろうとすると奏ちゃんが領収書を受け取った。

 

「私が払います」

 

千鶴の目が見開かれる。

 

「400万よ? 払えるの?」

 

眼鏡の奥の目が少し攻めるように細まる

 

「少し利子がついても構いません。 私が払います」

 

毅然たる態度で彼女は言った。

 

「い、いやあの・・・」

 

それは嬉しいんだがあまりに申し訳ない

 

「心配しないで優」

 

奏ちゃんはにこりと微笑んだ。

 

「あなたは私たちの命を救ってくれた。 これぐらいさせて」

 

お言葉に甘えるしかないか・・・

最悪実家に金借りるなんてことになったら最悪だしな。

あいつにばれたらぼっちゃまは金使いが荒すぎますと薙刀を持って追い回されかねん

 

「ごめん・・・いつか返すよ」

 

「期待しないで待ってる」

 

からかうように奏ちゃんは言う。

 

「じゃあ!」

 

千鶴はなぜか、不機嫌にそう言ってきびすを返した。

おい!待てって!

 

「千鶴!」

 

千鶴は振り返らない。

なので、その背に

 

「ありがとうな! それとごめん! 東京に行って! できればまだ、友達でいてほしいんだ千鶴!」

 

千鶴は一瞬、振り返ってから人ごみの中に消えていった。

ダメか・・・

あいつとは友達でいたかったんだが・・・

 

「優・・・」

 

ぽんと虎児に肩を叩かれたので

 

「あ?」

 

「浮気はあかんでハーレム優。 理子さんって彼女おるやから女の子にフラグたてたらあかん?」

 

だれがハーレムだ! 付き合ってる奴なんていねえよ

 

「え? 理子さんと優って付き合ってるの?」

 

奏ちゃんがショックを受けたように目を開く。

え?何この反応

 

「せや、理子さんと優はらぶら・・・」

 

「てめえは寝てろ!」

 

怒りまかせに虎児の頭を殴ると虎児は白目をむいて気絶してしまった。

 

「理子と付き合ってねえよ。 誤解だ奏ちゃん」

 

「よかった」

 

ほっと胸をなでおろした仕草をとる奏ちゃん

なんなんだろう?

 

「わ、私お手洗い行ってくる!」

 

顔を真っ赤にしながら人ごみの中に消えていく奏ちゃん。

入れ替わりに、千夏ちゃんがレキとやってきた。

レキ、千夏ちゃんについてたのか

 

「どうかしたんですかお兄さん? お姉ちゃん真っ赤でしたけど?」

 

小悪魔っぽく口元を緩めながら千夏ちゃんが聞いてくる。

むぅ・・・将来、理子みたいな性格になるんじゃないかこの子・・・

 

「さあ? トイレ行くらしいけど顔が赤いってことは熱かな?」

 

「・・・」

 

レキに聞いてみたがレキは無言で何も言わない。

わからないということか・・・

話題を変えよう。

 

「傷は大丈夫なのかレキ?」

 

俺はレキの体のあちこちに見えている包帯を見ながら言った。

 

「動けない傷ではありません」

 

「そりゃよかった」

 

短い会話が終わってしまう。

今度は千夏ちゃんにふろう。

 

「短い間間だったけどお世話になったな」

 

「いえいえ、お兄さんならいつでも大歓迎ですよ? 神戸にきたらぜひ寄っていってくださいね。 おねえちゃんも喜びますから」

 

片目をウインクして彼女は言った。

 

「了解、また寄らせてもらうよ」

 

「ところでお兄さんこれいります?」

 

「ん?」

 

千夏ちゃんが何かを取り出したので受け取ってみる。

 

「ぶっ!」

 

思わず吹いちまった。

だって、小学生に混じり、廊下を歩いているアリアの・・・

 

「ゆーう・・・それは何かしらぁ?」

 

ひっ!

その場に張り詰めた空気に俺は凍りついた。

殺される・・・

ぎぎぎとロボットのように後ろを見るとアリア様が・・・

空港だからかガバメントは抜かずに飛びかかってくるところだった。

 

「風穴ぁ!」

 

「ぎゃああああああああああああ!」

 

床に叩きつけられ俺は絶叫を上げるのだった。

余談だが目覚めた虎児がアリアに詰め寄ろうとしたので再び沈黙させたのは本当に余段である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛い・・・」

 

打ち付けた顔をさすりながら来た時と同じVIPの部屋で空の旅をする俺達だがメンバーの大半は眠っていた。

昨日からの激戦もあるがみんな疲れがたまってるんだろう。

俺も寝るか・・・

 

「ユーユー」

 

眼を閉じた瞬間、声をかけられたので目をあけると理子が俺の膝に手をおいてしゃがみこんでいた。

 

「り、理子なんだよ!」

 

理子はくふふと笑いながら

 

「理子依頼手伝ったよ。 忘れてないよねご褒美」

 

ご、ごごごご褒美!? あ、ああ泥棒ね・・・

 

「紛らわしい言い方すんなよ。 心配しなくても忘れてねえよ」

 

「ユーユーって頼りになるなぁ。 かなでんとチーを狙ってた連中を撃退は大手柄だよ」

 

「単位と報酬は剥奪だけどな・・・」

 

涙目になりつつも収穫はあったと思う。

あまり、利益等でいいたくないが財閥のお嬢様が知り合いになったんだから役に立つこともくるかもしれない。

 

「かなでんは最初は、ユーユーを毛嫌いしてたのに最後は一番ユーユーを信頼してた。 これってすごいことだと理子思うんだ」

 

「信頼ねぇ・・・まあ、それは嬉しいけどな」

 

「だからね・・・て」

 

小さく理子は何かを言った。

底抜けに明るい彼女の顔に一瞬指した闇

 

「理子・・・」

 

俺が何か言おうとした瞬間、

 

「さってと! 理子も寝よっと!」

 

そういいながらふりふりのアイマスクを取り出し耳栓で耳を塞いでしまう。

そして、くーくーとかわいらしい寝息を立て始めた。

な、なんて寝つきの速さなんだ。

椅子に座り直しつつ俺はため息をついた。

最後の理子の言葉・・・

あれは確かにこう言った。

 

助けてと・・・

 

うーむ、理子の泥棒作戦無傷でおえたいもんだが・・・無理な気がするな・・・

もう、切り札解放はしたくないぜ・・・

ま、俺に出来る範囲でなら助けるよ友達だしな理子・・・

眠気が襲ってきたので俺は目を閉じた。

 

そして、舞台は東京に戻る。

神戸でのクエストが終了し、新たなる日々の始まりだった。

 

               オリジナル神戸編 完


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。