緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第73弾強くあれただしその前に正しくあれ

はやぶさを降りて俺がはじめに見たのは奏ちゃんの髪をつかんで薄く笑っているシンの姿だった。

 

「変態・・・」

 

泣きそうな顔でこちらを見ている少女の右頬は赤くなっていた。

くそったれが!

 

「その手を放せ! クズ野郎!」

 

激怒の感情は戦闘狂モードを引き起こす。

ガバメントをシンに向ける。

奏ちゃんと目が合う。

怯えているその目に必ず助けるとアイコンタクトを送った。

 

「構いませんよ。 この状況で離しても結果は変わりませんから」

 

「レキ! 奏ちゃんを頼む!」

 

シンの手が奏ちゃんの髪から離れた瞬間、俺はフルオートで2丁拳銃でガバメントを発砲する。

シンはグロッグを抜くと同じくフルオート射撃で応戦する。

空中で火花が散り、45ACP弾が全てたたき落とされる。

ビリヤード撃ちだ。

パワーはこちらが勝るが装弾数ではデザートイーグルを入れてもシンの方が上だ。

ガバメントが弾切れになると同時に防音用の壁に左腰のワイヤーを打ち込むと空中に飛びあがる。

シンがグロッグを向けてくる。

デザートイーグルで迎撃しつつ、右と左のワイヤーを発射した。

右は短刀、左も短刀だ。

今日ノワイヤーはステルス戦を想定していない装備である。

 

「ワイヤー使いは君だけじゃありませんよ」

 

そう言うとシンもまた、手を振りかぶると先に折りたたみ式の剣がついたワイヤーを発射した。

空中で激突する4本ワイヤー群。

右足のワイヤーを地面に発射し巻き戻して地面に着地し、残りのデザートイーグルの残弾をシンに叩き込むがそれもシンは予想していたらしくビリヤード撃ちで迎撃する。

これで、残弾0

シンの残弾はまだ、10発以上ある。

再び防音用の壁にワイヤーを叩きこんで、空中に退避しつつ、シンの弾丸を交わしながらマガジンを入れ替える。

左のガバメントを3点バーストで放ちつつ、右手のワイヤーをハヤブサの方に向けて放つ。

 

「気でも違いましたか?」

 

シンもマガジンを入れ替えながら言った。

 

「はっ!」

 

ワイヤーははやぶさにくくられていた木筒に突き刺さると巻戻り、木筒が俺の手の中に来る。

素早く、木筒から日本刀を取り出す。

防弾壁を両足で蹴ると一気にシンとの距離を詰める。

狙うは居合、左腰に鞘をあてて柄を右手でつかむ。

 

「飛龍1式、風凪」

 

一気に抜き放つ、ガアアンと金属音が響き、シンの折りたたみ式の剣と日本刀が激突する。

シンの口元が笑む。

どうだか受け止めてやったぞと

だが、残念

「ぐっ!」

 

防弾制服の肩にあったであろう衝撃にシンは1歩引くと後ろに交代する。

 

「今のは?」

 

剣は確実に受けたはず、理解できないだろう。

音速の斬撃、これが生み出す衝撃破は1擊に続けて2の攻撃につなげることができる。

我ながら人間技ではないと思うが椎名の家では筋肉がこれに適するとように徹底的に

鍛えられる。

10年近く剣から離れていたが体は覚えている。

風を薙ぎ払う剣、風凪。

居合の境地だ。

 

「もう一回いくぜ」

 

剣を鞘にしまうと低く構える。

剣を抜き放つ

 

「なるほど、ソニックブームですか」

 

「!?」

 

剣は止められない。

シンは突っ込んでくると両手の剣で日本刀と激突した。

こ、こいつ

 

「それなら、音速に至るまでに剣を止めてしまえばいい。 それだけです」

 

さすがSランク武偵、一撃で技の特性を読みやがった。

まだ、あの赤い光景は見えない。

鞘に収めてベルトに鞘を付けて柄をしまいガバメントを抜く。

 

「椎名の後継、知っていましたよ。あなたが剣を使うことは」

 

「それは今はいい。 なんで、奏ちゃんをさらった? 武偵法は知ってるだろ?」

 

「フっ、あんな劣等民族が決めたものなど僕らランパンには関係ありません」

 

ランパン・・・中国の組織だが、多くが謎に包まれてる組織だ。

 

「いつからだ? いつから、犯罪組織に手を貸してやがった?」

 

「最初からですよ。 優希、僕ら3人は日本に潜入し、機会を待っていたんですよ」

 

「機会だと?」

 

「そう、知っていますか?藤宮の財閥は日本のありとあらゆる事業に関わっているんです。 その、財閥を中国の企業が全て裏から接収する。 どうなるかわかりますよね?」

 

そうなれば、日本の企業は中国の好きなように裏から操られることになるだろう。

実質、日本の企業が死ぬようなもの。

無論、全企業を買収する訳ではないが・・・

だが、そんなことは関係ない。

 

「んなことはどうでもいい。 なんで奏ちゃん達を狙う!」

 

ふぅとシンは軽く息を吐いた。

 

「相変わらず君は馬鹿ですね。 優希、財閥の関係者はほぼ、ランパンが抑えていましたがそこに、2人の隠された後継者がいるなんてことになると困るんですよ。 心配することはありませんよ。 彼女は中国か北朝鮮で可愛がってもらえるでしょう。 将軍様のお膝下なんてどうです?」

 

わかりやすい挑発だというのはわかる。

だが、怒らずにはいられねえ・・・

 

「ああ、そうそう」

 

 レキに保護されている奏ちゃんを見るとシンは楽しそうに

 

「君の父親を殺したのは僕ですよ。 心臓を一つき、あっけないものです」

 

奏ちゃんの目が見開かれる。

 

「お・・・とうさん・・・を?」

 

シンは小馬鹿にしたように両手を左右に広げ

 

「所詮、劣等民族の武偵、僕の敵じゃありません。 ああ、弱い相手でした。 クズな相手ですね」

 

「っ!」

 

奏ちゃんが拳を握り締めてシンに走り出す。

シンが口元をにやりと歪める。

 

「奏さん」

 

レキがそれを止めようとするが突如、レキは銃剣を付けたドラグノフを横に振るった。

ガキイイン

と槍と激突し、レキが後退する。

 

「あんたの相手はわ・た・し」

 

ひゅんひゅんと槍をぶんまわしながらミンは言う。

あ、あの槍は・・・

槍の刃先は青龍刀のような形をし、青龍が彫られている。

青龍偃月刀、確か、三国時代最強クラスの武人関羽が使っていた槍と同じ種類のものだ。

 

「きゃは、連結槍よりやっぱりこれよね」

 

くそ、レキは動けない。

 

「やめろ奏ちゃん!」

 

「うああああ!」

 

怒りで我を忘れているのだろう。

折りたたみ式の剣を構えるシン

 

「シン!」

 

ガバメントを向けようとして射線に奏ちゃんが入っていることに気づく。

横に飛びながら射線から離そうとするがまにわん!

 

シンが剣を奏ちゃんに振り下ろした瞬間、シンの剣がががんと弾かれた。

レキか!

 

ドラフノフのシンの剣を弾き飛ばしたらしい。

その隙にワイヤーを投げて奏ちゃんに巻きつけて引きながら左手のワイヤーで崩落した20メートルの穴を飛び越え、崩れたガレキの影に奏ちゃんを隠す。

 

「離して変態! あいつは! お父さんの! お父さんを殺した!」

 

怒りで言葉が少しおかしくなってるな。

無理ないか。

 

「いいから落ち着け! シンはお前が勝てる相手じゃねえ!」

 

「わかってるそんなこと!」

 

ぼろぼろと涙を流しながら奏ちゃんは泣き崩れた。

 

「じゃあ、どうしたらいいの! 仇を前にして何もするなっていうの! ねえ優希!」

 

「奏ちゃん・・・」

 

「私たちの生活をめちゃくちゃにしたあいつが許せない! お父さんを奪ったあいつが許せない! 殺したい! あいつは許せない!」

 

「分かった」

 

「え?」

 

俺は立ち上がるとマガジンを全部入れ替えた。

 

「俺がかわりにシンをぶん殴る。 逮捕して罪を償わせるさ」

 

「殺してよあんな最低な奴!」

 

「武偵憲章第3条」

 

「え?」

 

「強くあれ、ただしその前に正しくあれ。 武偵は人を殺害しちゃいけない。殺人は犯罪だ。 それは相手が犯罪者でもな。 シンを殺して正しくない道へ行く道もある。 でも、俺は君に人を殺してほしくない。 あれは、耐え難い罪だから・・・」

 

「優希・・・」

 

奏ちゃんは黙って聞いてくれている。

 

「でも、それでもシンを殺したいというなら今度は俺は君を逮捕しないといけなくなる。 でも、俺はそんなことしたくない。 だから、あいつを許せとはいわない。 俺がぶん殴ってやる。 それじゃダメか?」

 

「・・・ずるい・・・そんな言い方されたら私あいつ殺せないじゃない・・・」

 

「・・・」

 

「優希、あいつを倒して! 私のかわりに! お父さんの無念・・・私たちの無念を晴らして!」

 

俺はにっと笑うと

 

「了解! 分かってくれてありがとうな」

 

ぽんと奏ちゃんの頭を撫でて言った。

 

「・・・」

 

その顔が少し、赤みを帯びていたのに俺は気づくことはなかった。

さて、レキ1人じゃ危うい。

倒すぜシン、ミン。

てめえらは、俺達が処刑台に送ってやるぜ・

 

 


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