緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第69弾 向けられる牙

そして、護衛最終日がやってきた。

月曜のため、奏ちゃん達は学校にいったのである。

23時59分までに指定された会議の場所まで行き、遺産相続の意思を確認する。

学校が終わってから行けば間に合うだろう。

 

「えー、短い間でしたけどこのクラスで楽しかったです」

 

俺とキンジの自己紹介が終わる。

そう、名目上今日で再び転校することになっていたのだ。

なるべく、人を避けていたため、残念だとか元気でねとか形式的な言葉をかけてくるクラスメイトと話しながら5時間目後の休み時間が始まる。

 

「これで、終わりか。 どうだよキンジ? 普通の学校ってやつは?」

 

「アサルトの連中がいないだけで静かでいいな」

 

「ふーん」

 

この先どうするかはわからないがキンジは一般校に転校を望んでいる。

いわば、これは予行演習みたいなもんだな。

個人的にはずっと武偵高でチーム組んで欲しいだけどな・・・

 

ガタ

 

「ん?」

 

 

横を見ると奏ちゃんが携帯を手に立ち上がっていた。

 

「どうしたんだ?」

 

「あ、変態・・・」

 

一瞬、目が合うが奏ちゃんはにこりと笑い

 

「ちょっとお手洗いにいってくるね」

 

「あ、じゃあ私が一緒に・・・」

 

教室に来ていたマリが言った。

 

「う、うんお願い・・・」

 

「俺も行こうか?」

 

「デリカシーないですね優先輩」

 

別にいいだろとは言わない。

いくら女装でも俺は男だしな。

2人が出ていったのでなんとなく携帯を開く。

 

「そういえば、優?」

 

「んん?」

 

「マリに優先輩いって呼ばれてるけどいつ許可したんだ?」

 

ぴたりと携帯の操作を止め・・・

そういえばいつ、変わったんだ?

まあ、いいか

深く考えずに携帯に目を戻す

 

着信 理子

 

「え? 理子?」

 

通話ボタンを押すと理子の男言葉が飛び出した。

 

「優! キンジ! 千夏の小学校で爆発があった! そっちも、奏を・・・」

 

「キンジ!」

 

立ち上がると走り出す。場所は女子トイレだ。

ドアを蹴破るようにしてあけるとそこにマリが倒れていた。

 

「マリ! おい!」

 

ぱんぱんと頬を叩くが気絶しているようだった。

 

「優!」

 

キンジが走り込んでくる。

窓の枠に手をかけ外を見るが何もない。

 

「くそ!」

 

やられた。

敵はマリを気絶させ奏ちゃんを拉致したのだ。

 

「奏!」

 

念のため叫ぶが返事はない。

そういえば、シン達の姿がない。

電話をかける。

 

「レキ! そこからシン達の姿は見えるか?」

 

「春蘭さんのいた、場所には誰もいません。 優さんの学校から黒い車が出ます」

 

ドン

 

電話の向こうからドラグノフの狙撃音が聞こえてくる。

やったのか?

 

「どうなったレキ!」

 

電話に向けて怒鳴る。

 

「妨害されました。 春蘭です。 車内に奏さんとシン達の姿も見えます」

 

アホか俺は!

壁を殴りながら自分のうかつさに怒りを覚える。

シンは信用ならないやつだと分かっていた。

だが、拉致など武偵法にてらしあわせれば死刑に近い罪になる。

そんなリスクを払ってまでこんなことするわけないと心の中で思っていたのかもしれない。

俺の責任だ。

 

「レキ! シンの車の番号わかるか?」

 

「ね 31―○○です」

 

よし、さすがSランク

レキの電話を切ってもう一人にかける。

 

「はい?」

 

「千鶴! 今から言う番号の車の追ってくれ。 大至急だ!」

 

「分かった」

 

緊急ということを理解してくれたのか千鶴は追跡に入ってくれたようだった。

 

「おい、優。 俺たちも追わないと」

 

キンジの頭に浮かんでいるのは護衛に使っていた防弾車だろう。

だが、それじゃおそらく追いつけない。

 

「マリを頼むキンジ!」

 

マリをあずけて後ろからキンジの声を聞きながら学校を飛び出す。

そして、空き地の草むらからそれを取り出した。

スズキ・GSX1300Rハヤブサ。

ノーマル改造で333キロ出る米国のY2Kに抜かれるまでは世界最速のバイクと言われ今なおその圧倒的な性能からアルティメットスポーツと言われる化け物オートバイ。

 

「久しぶりだな・・・相棒」

 

インカムで携帯を操作できるようにしてからヘルメットをかぶりオートバイにまたがる。

アリアや理子達は千夏ちゃんの護衛で動けない。

となると、動けるのは俺だけか・・・

追いついても3対1・・・きついな。

でも、やるしかないよな。

ドン

ん?

後ろに感触があったので振り返る。

 

「レキ」

 

なんとレキがハヤブサの後ろのシートに座っていた。

 

「あなたでは春蘭に勝てない」

 

「助かるぜレキ」

 

狙撃対拳銃に持ち込まれれば勝ち目は薄いからな。

 

「アリア、理子みんな聞こえてるな?」

 

「優? あんたどこにいるのよ」

 

「アリアか? 俺とレキは情報が入り次第奏を追う。 お前たちは千夏ちゃんを頼む」

 

「レキュもそこにいるの?」

 

「はい」

 

リコの言葉にレキが言う。

 

「優、聞きなさい。 あたしたちも千夏の安全を確保したらすぐに援軍に行くから回線は開いと来なさい」

 

「了解、っと」

 

「優希聞こえる?」

 

「千鶴か!」

 

「該当の番号の車の所在がわかった。 そこから高速に入って時速130キロで大阪方面に向かってる」

 

130キロか、なら追いつけるな。

 

「行くぞ、レキしっかりつかまってろ」

 

「はい」

 

腕が俺の腰に回されぴったりと付いてしまう。

お、おおなんか柔らかいものが背中に・・・ってそれどこじゃないよな。

爆音を響かせハヤブサが住宅街を走る。

待ってろよ奏ちゃんすぐに追いついて助けてやるからな。

高速道路の入口が見えてくる。

あ、やば金教室に忘れてきた・・・

みるみる入口が迫ってくる。ごめんなさい

俺はETCのバーを激突して破壊すると一気に加速した。

免停じゃすまないだろうな・・・これ

 

 

 


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