緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第64弾 風は言っています

「一体どういうことなのよこれは!」

 

怒りで顔を真っ赤にしているアリアを筆頭に理子、キンジ、マリに囲まれ俺は壁に背を付けて座っていた。

藤宮家のリビングにはレキ、ミン、シン、春蘭が付いている。

戦力としては過剰すぎるほどの戦力だが俺は問い詰められていた。

当然のことながらいきなり、護衛に割り込んできた3人ことだ。

 

「あいつらは・・・中学時代の知り合いだ」

 

友達ではないというように知り合いだと強調しておく。

 

「あいつらはみんな中国からの留学生だ。 常に3人で行動してるが戦闘能力は高い。特にあのシンには俺でも正直勝てるかわからん。 ミンはアリアやキンジとほぼ同等の実力者だ。 春蘭もAランクを名乗っているがレキと撃ちあえるかもしれん」

 

「優、あいつらが言ってたあんたが犯罪者ってこと話しなさい」

 

まっすぐに俺の目を見てアリアは言ってきた。

 

「おい、アリア」

 

キンジが静止しようとするが

 

「いや、いいよキンジ。 少しだけ話してやるよ」

 

諦めたように俺は話し始める。

 

「俺の家はアリアやキンジみたいに歴史の表に出てくる家系じゃないんだ。 いわば、裏の家系だな。 もう、10年近く前になるのかな・・・そこで、俺は犯罪を犯した。 まだ、武偵じゃなかったが武偵法に照らし合わせると死刑になるような犯罪だ」

 

「・・・」

 

アリアたちは黙ってそれを聞いてくれている。

 

「理由はあった。 でも、それを俺は正当化する気はない。 裁かれるべき犯罪者の俺は実家の・・・椎名の家の力で何もなかったことにされたんだ」

 

「司法取引したの?」

 

アリアの問いに俺は首を横に降る。

 

「違う。 何かは今は言えないけどな。 ただ、ローズマリーはこの件に関わっている。 あいつだけは俺がこ・・・逮捕する」

 

「それで、あのシンって奴はなんでそれを知ってるの?」

 

これまでの会話からシンが俺の過去を知り、その情報を元に俺を追い出したと推測したのだろう。

 

「わからん・・・情報は秘匿されてたはずだが物事に完璧はないからな」

 

「そう・・・」

 

アリアはカメリアの目を1度とじると

 

「理子、キンジ、マリ、レキには後で話すけどこの件はこれ以上探るは禁止よ。 探ったら風穴」

 

「・・・アリア」

 

ばれるかと思った。

兵庫武偵高の生徒を調べれば俺の噂にたどり着く可能性が高い。

俺の罪の内容に・・・

でも、この子は人の本当に嫌がることはしないんだ。

ありがとう・・・アリア

 

 

 

 

 

 

なんでこんなことになったんだろう・・・

私はリビングに流れる重い空気を感じながら思った。

 

「? どうかしましたか奏さん」

 

にこりと微笑みながら糸目の青年、シンさんが千夏が入れてくれた紅茶を左手に掲げる。

 

「なんでもありません」

 

テレビはバラエティー番組をやっていたが全然耳に入らない。

千夏は私の肩に寄りかかり寝息を立てているが部屋に戻る前に変態たちにあって置きたかった。

ちらりと、横を見ればレキさんがドラグノフ狙撃銃を持ってソファーに座っている。

その先には銃剣が付けられている。

聞けば、レキさんが接近戦をすると気に使用するという。

 

「てかさあ、あんたレキっていったっけ? 何、殺気出しながらうちらみてるわけ?」

 

くるくると名前は知らないが軍用ナイフを回しているミンさん。

槍は組立式らしくリビングの壁に立てかけられている。

 

「風が言っています。 あなたたちを警戒しろと」

 

「風ですか?」

 

シンが困ったように首をかしげる。

 

「スナイプとしての隠語か何かですか春蘭」

 

「ううん、知らない」

 

こちらもM900狙撃銃をレキ同様肩にかけているポニーテールの少女、レキさんとほぼ、同じくらいの背丈のこの子の名前は春蘭という。

 

「そうですか」

 

それ以上、深く聞かずシンが言うがミンは好戦的にレキを睨みつける。

 

「うちらと殺りあうなら相手になるよ」

 

ミンが槍を手にした瞬間、レキが動いた。

瞬間、何が起こったかわからなかった。

風が吹くその一瞬で2人の武器はその顔の直前で止まっていた。

レキさんの銃剣、ミンさんの槍。

神速とはこういうことを言うんだろう。

 

「へー、やるじゃない狙撃手」

 

「・・・」

 

レキは何も言わない。

だが、動けない。

このまま、動けばよくて相打ち、悪ければ死だ。

それに接近戦ならレキは部が悪い。

彼女は狙撃手であり、接近戦は本来、専門外なのである。

 

「ミンやめなさい」

 

シンの声が静かに部屋に響きわたる。

 

「ふん」

 

ミンはしらけたように槍を下げた。

同時にレキもドラグノフを下ろした。

 

「信用してくれとは言えません。 優希君以外の東京武偵高の護衛の方々は僕は信頼してますよ」

 

まただと私は思った。

この人の言う変態の過去・・・

犯罪

それも、死刑になるほどの重犯罪をあの変態は起こしたという。

殺人かもしれない。

父が死んだのも犯罪者のせいだ・・・

中国の犯罪者がお父さんを・・・

あの変態はその同類なのかもしれない・・・

お父さんを・・・

 

「・・・私は優さんを信用しています」

 

はっとしてレキさんを見ると顔は無表情なのだがどこか、怒気を含んでいるような気がするその言葉はまっすぐな言葉だった。

 

「・・・ほう」

 

シンが面白そうにレキさんを見た。

 

「彼の過去を知らずに死刑になるような犯罪を犯したと聞いてもあなたは優希君を信用すると」

 

「・・・はい、風は言っている。 信用できないのはあなた達だと」

 

シンの目が一瞬、開いた。

背筋が凍りついたようにひんやりとした。

それはレキに向けられたものだろうか?

だが、それは一瞬だった。

 

「やめましょう。 護衛同士がいがみ合っていても仕方ない。 僕らが怪しい動きを見せたらそのドラグノフで僕らを撃ち抜けばいい」

 

「・・・」

 

レキは何も言わない。

 

「できるならねぇ」

 

ミンはアドレナリンに酔ったような表情でレキに言う。

戦闘狂という言葉が頭に思いつく。

怖いと私は思った。

千夏をぎゅっと抱きしめる。

隣にはレキさんがいる。

でも、3人が敵なら私は一瞬で殺されるだろう。

怖い・・・

 

「悪い遅くなったなレキ」

 

そんな時、声が聞こえた。

 

「・・・大丈夫です」

 

レキさんが言った先にいたのは変態だった。

続いて、アリアさん、キンジさんと東京武偵高のメンバーが入ってくる。

 

変態とシンの目がぶつかり合う。

 

「まだ、いたのかシン? さっさと帰れよ」

 

「それはできませんよ優希君。 僕らはクエストを受けてきたんですから」

 

ちっ・・・

 

「ふーん」

 

舌打ちしながら俺は別室で調べた情報を思い出す。

 

 

 

 

 

 

「ああ、確かに護衛のクエストはでとるな。 でも、すぐにシン達が受け取る。 めっちゃ高額なクエストやしアリアさんとかぶるんやったら俺が受けたかったわ!」

 

「それで、虎児? 少し調べてもらいたいというかお前経由で頼み事がある」

 

電話の相手は虎児だ。

 

「なんや? 俺もメンバーに加われって言うんやったらくわ・・・」

 

「千鶴に兵庫県で起きてる事件と中国人の後ろにいる連中の調査を依頼したい」

 

「千鶴か・・・直接頼めばええやん?」

 

「いや、千鶴俺の携帯着信拒否にしてるんだよ・・・」

 

「ああ・・・千鶴お前が東京行くって決まってからめちゃくちゃ怒っとったからなぁ・・・」

 

「学校の関係者には言うなよ? あくまで、お前と千鶴だけでこの件を処理して欲しい。報酬は出すよ」

 

「それは賛成やな。 この事件兵庫武偵高の内部に敵がおる可能性もあるからな・・・信頼してくれて嬉しいで優」

 

ま、兵庫武偵高で俺が心から信頼できるのは虎児と千鶴ぐらいなものだからな・・・

 

「ま、友達だしな」

 

中学時代のことを思い出しながら俺は微笑んだ。

あいつらは、孤立する俺と最後まで友達でいてくれたんだ。

千鶴は怒らせちまったけどな・・・

 

「ところで優!」

 

「ん?」

 

「ちょ、ちょっとでええからアリアさんとでんわか・・・」

 

ぶつん

 

電源をおして携帯をポケットにしまう。

 

「ゆーう」

 

ん?

 

アニメ声に振り返るとなぜか、ご立腹のアリアさんがいた。

え? 何?

 

「今の電話女の子でしょ?」

 

「え! 違う違う! プリンだよ! お前も三宮であっただろ?」

 

「嘘! 千鶴って聞こえたわよ! 護衛の最中にか、彼女に電話なんていい身分ね」

 

どんな地獄耳だよお前は!

つうか断片的に間違ってるし

 

「ちょっと、兵庫武偵高の昔の知り合いに調査を依頼しただけだ! やましいことは何もない!」

 

「じゃあ、携帯貸しなさいよ」

 

「あ、ああ」

 

俺がアリアに携帯を渡すと少し操作してからどこかに電話をかける。

 

「もしもし?」

 

「あ、アリアさん!」

 

げっ! 電話の向こうから聞こえんのは虎児だ! 発信履歴の1番上にあったのに電話したみたいだぞ!

そんなに奴隷がほかの女の子と話すのが嫌か!

 

アリアは1言2言話してから納得したように頷いて

 

「そう、ありがとうねプリン」

 

「え? いややなぁアリアさん俺の名前はつき・・・」

 

ぷつん電話が切れた。

ひでえ・・・

そういや、俺虎児のことプリンで登録してたな・・・

 

「優」

 

「はい!」

 

カメリア色の目が俺を見てくるので背筋をぴんとして言うと

 

「疑いは晴れたわ。 風穴デストロイは勘弁してあげるから」

 

風穴デストロイってなんですか?

そんな疑問が浮かんだがろくなことにならないのでスルーしておく。

 

「そろそろ、理子達に声をかけてリビングに戻りましょ。 3人をレキだけに任せるのは危険だわ」

 

そう言って歩き出すアリア

いつもと変わらないアリアの態度に俺は・・・安堵感を覚えるよ。

 

アリア

 


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