緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第61弾 闇の中の声

神戸 某所

 

「では、藤宮の小娘どもには学生の護衛がついたのだな?」

 

広いがカーテンにより薄暗い下手の中で車椅子の老人が言った。

 

「ええ、東京武偵高の学生です。 予想が外れましたね」

 

面白そうに闇の中から声が聞こえる。

 

「関西ではなく関東の武偵を雇うとはな・・・護衛のメンバーのランクはどうなのだ?」

 

「Sランクが4人、Aランクが2人ですね。 うち、戦闘限定においてはSが3人、Aが2人」

 

老人がうなるような声を上げる。

Sランクは1人で特殊部隊一個中隊と同等の戦力を意味する。

そんな化け物が2人も付いているとなるとうかつには手が出せない。

 

「それと、もう一つ」

 

影が言う。

 

「Aランク評価だが椎名 優希は日本でいう超人ランクで50位以内に入っています。 油断はできないですよ」

 

「すると、Sランククラスが3人か・・・依頼を果たせない場合は報酬はないぞ?」

 

「分かってますよ。 ただし、ランパンと交わした約束を破らないでいただきたい」

 

「わ、分かっている」

 

老人が焦ったように言った。

 

「それでどうするのだ? 藤宮の2人の殺害を出来る自信があるのか?」

 

「それは問題ありません」

 

「頼むぞ。 公安0が私を狙っているという噂もある。 くれぐれもミスはするなよ?」

 

「それはあなた次第ですよ」

 

影はそういうと姿を消した。

 

「ふん、チャンコロの劣等民族が・・・」

 

姿を消した空間を見つつ老人が悪態をつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

護衛2日目、学校についた俺たちに訪れた最大の危機は体育の授業だった。

 

「あれ? 椎名さん気分悪いの?」

 

更衣室のベンチに座りながら俺は

 

「うん、ごめんね・・・」

 

女装のまま、返事を返す。

なんて、拷問だ・・・周りは着替えをする女だらけ。 きぶんがわるいといって目をつぶっているがキンジならヒスルな・・・

でも、俺は男の子、目を少し開けた瞬間目を、チョキで潰された。

 

(ぐあああああ)

 

マリがやったらしいぞ

失明したらどうするんだ!

 

「じゃあ、椎名さん。 ゆっくりしててね」

 

「あ、はい」

 

最後の女子が出ていったのを確認してから俺はさっと服を着替える。

ジャージを着てから体育館へ。

見ると男子はバスケ、女子はバレーだった。

奏ちゃんが俺を変態という目で見てくる。

チーム訳の結果、俺は奏ちゃんとマリと敵チームだった。

そして、俺のサーブなんだが・・・

 

「・・・」

 

変態という目で見てくる奏ちゃんにおとこのプライドを見せてやりたいという俺の闘士がそうしたんだろう。

 

「はあああ!」

 

どごおおおと体育館の床にバレーボールをめり込ませる。

わああと歓声があがるがそれで終わる訳がない。

次々とサーブで決めていく俺。

フフフ、風凪容量で完全試合をきめてやるぜ

大人げないことだが俺一人で試合は進攻していく。

アリア達がいない以上、勝ち目などないのだ。

そして、予想通り試合が終わると圧勝。

マリや奏ちゃんはぜぇぜぇ言いながら悔しがっていたが知ったことではない。

勝利こそ正義だ。

 

そして、昼休み、再び屋上に集まった俺は・・・

 

「最低です!」

 

「最悪・・・」

 

マリと奏ちゃんに集中砲火を浴びていた。

なぜなんだ・・・

 

「普通、女の子相手なら少しは手加減するのに全力で叩き潰すなんて最低です!

 

「やはり、変態は性格も悪いんですね・・・」

 

うおお、最悪だ!

理子のLOVEのりを消しながら俺は頭をがっくりと下げる。

 

「すまない・・・」

 

「大変だな優・・・」

 

同情してくれるのはお前だけだキンジ・・・やっぱり友達は違うぜ

 

「それでも、女の子相手なら手加減するんのが普通です」

 

「そうよ。 変態はそのへんわかってない」

 

ダメだ。 泣きたいよ・・・

 

そんなこんなで学校の護衛が終わり理子の防弾車に乗り、藤宮家に戻ってきたんだが

俺への奏ちゃんの評価は最悪の最悪・・・

近寄らないようにしているらしく姿すら見えない。

しくしく泣きながら縁側で日本刀を持つ訓練を始める。

トラウマこそ、あるが徐々にこいつを持てる時間は増えている。

時間さえあればきっと、こいつを使えるようになる、

そう、思いながら剣を握る。

思い出すのは赤い・・・ただ、赤い光景

 

「やめて! 死にたくない!」

 

記憶の中にあるのはその言葉

 

「・・・フフ」

 

無慈悲に降り下ろされるその剣を見て俺は・・・

 

「泣いてるの変態?」

 

奏ちゃんだった。

俺は目の涙を拭う。

 

「どうしたんだ奏ちゃん?」

 

笑を浮かべて言うと少し奏ちゃんは顔を赤くしながら

 

「別に、変態がなんか元気なかったから・・・」

 

なんていうかこの子も結構優しい子だよな・・・・

 

「大丈夫さ。 気にすることはねえよ」

 

そういいながら刀を仕舞いながら言う。

 

「ねえ・・・」

 

しならくは無言だったが唐突に奏ちゃんが声をかけてくる。

 

「・・・」

 

俺は無言で刀をしまっていく。

 

「なんで私の護衛を引き受けたの?」

 

それは返事に困るぞ・・・

まさか、金がないから受けたなんて言えない感じだ。

少し間上げてから

 

「俺には・・・守らないといけない人がいるんだ」

 

昔は、依頼されたから・・・

でも、今は俺の意思で最悪、かなえさんの免罪までは付き合いたいと思うカメリアの瞳の少女。

 

「今いる、人の中にその人はいるの?」

 

奏ちゃんが聞いてくる。

アリアを思い浮かべ俺は頷いた。

 

「ああ、いるよ」

 

「そっか・・・」

 

奏ちゃんは夜空を見上げながら

 

「少し見直したかな変態」

 

「変態はやめてくれよ・・・」

 

「いやよ」

 

奏ちゃんはべっと舌を出して言った。

俺はため息を付きながら

 

「まあ、もういいけど。 奏ちゃん達本当に狙われてるのかね? 護衛終了日まで何も起こらなかったりしてな」

 

それはそれでいい。

何もせず報酬が入るんだからな・・・

 

「うん、だといいね・・・」

 

奏ちゃんの言葉を聞きながら俺は後日、その考えが甘かったことを思い知るのだった。

 

 


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