緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第47弾狩りの時間ですの

敵は不利な状況では戦わないのだろう。

大型のコンピュターが並び迷路のようになっているこの階では交戦する意思が見受けられなかった。

敵をおびき出すため別れて行動しているが俺の後ろにはマリがいる。

 

「し、椎名先輩・・・」

 

怯えながら声を出すマリ

 

「先に上に戻してやりたいんだが・・・」

 

上への道は全て塞がれていた。

デュランダルを撃破しない限り上へと上がるのは難しいだろう。

先を慎重に進みながらガバメントを右に構える。

デザートイーグルは氷ずけにされつかうのは怖いしガバメントの1丁は寒冷地使用ではない。

使える銃は1つだけガバメントだけだ。

 

マガジンは後3個、武偵弾もあるがこの状況では使いたくない。

慎重に、トラップが仕掛けていないかを確認しながら神経をすり減らしていく。

どれほど、そうしていただろう・・・

やはり、デュランダルは戦うつもりがないようだった。

 

「・・・だ」

 

「ん?」

 

「どうかしたんですか先輩?」

 

「人の声だ。 キンジたちかもしれない。 1度もどるぞ」

 

「は、はい」

 

 

 

 

 

 

そして、コンピューターの影に人影を感じガバメントを構える。

3丁の銃が同時に標的を向き合った。

 

「「キンジ」」

 

俺とアリアが同時にその人物を見て呼ぶ。

 

「よかった。無事だったのね」

 

「まあ、俺はお前が死ぬとは思ってなかったがな」

 

「なんで逃げなかったの? あんたは戦わないくていいのに」

 

「可愛いアリアを見捨てて逃げられるほど俺は理性的じゃないんでね」

 

「な、なによそれ」

 

がう犬歯を向くアリア。

そのやりとりで俺は直感する。

 

「なったなキンジ?」

 

それに対しキンジは頷く

 

「ああ、優、デュランダルは?」

 

「俺らと戦う気はないようだな。 特に俺は1度沈めたからか警戒されてるみたいだ」

 

「そうか」

 

「この部屋にいることは確かよ。 上に続く階段やエレベーターは内側から塞がれてた」

 

「敵はこの階で決着を付ける気らしいな」

 

「ねえ、さっき声が聞こえたけど白雪は救出できたのよね? ケガとかしなかったのね?」

 

いがみあってても白雪のこと心配なんだなアリア・・・責任感あるいい子だな・・・

 

「ああ、だがここで見失ってしまったんだ。 戦力を分散したまま各個撃破されてしまったら敵の策どおりになる。 まずは、白雪と合流・・・」

 

けほけほ

 

戦闘狂モード、ヒステリアモード、動物並みの鋭敏な聴覚

マリ以外の俺たちは同時に振り向いた。

 

「白雪だわ。 あっちにいる」

 

「行こう。 だがデュランダルがどこから襲ってくるかわからない。 アリア盾にならせてくれ」

 

「ならキンジ。 FWは俺とお前でアリアは後ろのフォーメーションでいいな?」

 

「ああ、それで行こう」

 

 

 

 

 

 

 

白雪はすぐ見つかった。

エレベーターホールで人魚姫のようにぺたんと座り込んでいたのだ。

 

「けほ・・・けほ、敵は?」

 

「姿は見えないわ。 白雪あたしたちから離れないで」

 

その背中をさすってあげながらアリアはかがむ

 

「よかった」

 

マリが安心したように言うが俺は何か直感が危険と告げていた。

なんだ?何がある?

 

「キンちゃん」

 

白雪は弱々しく半べそをかきつつキンジを見ている。

濡れた巫女装束はぺっとりと体に張り付き高校生らしからぬボディーを露にしている。

何かしたに鎧のようなものを装備してるのか?

 

「唇大丈夫かさっきの?」

 

周りを警戒しつつキンジの言葉に耳を傾ける。

 

「うん、大丈夫」

 

白雪がこくりとうなずく

 

「血が出てただろう見せてみろ」

 

「ううん。 大したことなかったよ口の中を切っただけ」

 

「アリア逃げろ!」

 

キンジのその言葉だけで俺は瞬時に、判断する。

キンジの攻撃に合わせガバメントを発砲した。

 

白雪? もそれは予想済みだったらしく振袖で俺たちの弾丸をそらした。

 

「キンジ!」

 

驚くアリアの側面に白雪が驚く速度で回り込む。

くそ!間に合わねえ!

フルオートで放ったガバメントとベレッタをいなして白雪はアリアの体を盾に取る。

アリアは本能的に危険を察してガバメントを白雪に向けようとしたが白雪は日本刀をアリアの頚動脈に当てる。

人体の急所。

少し切れば数分もかからず失血死する。

 

「しら・・・ゆき・・・なによどうしたの?」

 

 

喚くアリアの拳銃をもったままの右拳にふっと息を吹きかける。

 

 

「うあ!」

 

アリアは焼きごてでもあてられたように覗ける

落ちたガバメントが氷に染まる。

 

「くそ! アリアそいつはデュランダルだ!」

 

さらに、白雪がアリアの左手に息を吹きかけた。

 

「きゃあ!」

 

ついに漆黒のガバメントも離してしまうアリア

 

「只の人間如きが」

 

こいつ・・・あの時の・・・

 

「ステルスに逆らうとは愚かしいものよ」

 

そうか、キンジはかまをかけたんだ。

白雪とキンジしか知らない何かを言ってデュランダルの嘘を見抜いた。

戦闘狂モードでも気づかなった・・・

完璧な変装だ。

 

「デュランダル・・・」

 

アリアは手の痛みに耐えながら言う。

 

「私をその名で呼ぶな。 人に付けられた名前は好きではない」

 

「あんた、あたしの名前に覚えがあるでしょう! あたしは神崎・ホームズ・アリア! ママにきせた冤罪107年分はあんたの罪よ! あんたが償うのよ」

 

「この状況でいうことか?」

 

ふんとデュランダルが嘲るように笑う。

 

「それにお前の名前。 たかが150年ほどで歴史で名前を誇るのは無様だぞ? 私の名前はお前よりはるかに長い600年にわたる光の歴史をたどるのだしな」

 

「笑わせるなデュランダル?」

 

「何?」

 

デュランダルが俺を睨みつけてくる。

 

「祖先なんて関係ねえよ。 大切なのは目の前にいる奴がどれほど実力があるかだろ?」

 

「そうかもしれん。 だが、私はジャンヌダルク30代としてお前らを倒す」

 

「嘘よ! ジャンヌダルクは10代で死んだ! 子孫なんていないわ」

 

「あれは影武者だ。お前が言った通り我が祖先は火刑になるところだったのでなその後代々この力を研究してきたのだ」

 

ジャンヌの手がアリアの太ももにのびるとアリアが激痛に体をねじった。

 

「きゃう!」

 

見るとアリアの膝小僧に氷が張り付いている

 

「てめえ!」

激怒の感情が打開策を探る。

何かないのか・・・何か・・・

 

「ふん、椎名、ホームズがそんなに大事か? お前に借りがあるが今は動くな」

 

くそ、ワイヤーもガバメントも使えねえ・・・

 

「遠山、椎名、そこの女も動くな。 アリアも動かした場所を凍らせる」

 

「キンジ・・・優撃ちなさい」

 

無理だアリア・・・俺たちはお前ごと撃つ選択肢はできないんだ。

 

「しゃべったな。 アリア、悪い口はいらないな」

 

アリアの唇に寄せていく。

あの氷のアリアの口に流し込むつもりか!

くそ! なら特攻で・・・

 

「やめろ!」

 

キンジの声が響く

俺が床をけろうとした瞬間

 

「アリア!」

 

室内に響いたその声は勇敢で心強い。

鎖がデュランダルの剣に絡みつく。

アリアの首から剣が離れた。

その隙を見逃さず俺がガバメントのフルオートで放つ。

 

 

「キンちゃん! アリアを助けて!」

 

本物の白雪が鎖を引き剣を手に取る。

白雪はデュランダルに切りかかるがそれを振袖で受けようとしたデュランダルをアリアが足で妨害する。

ジャンヌがバランスを崩す。

アリアは転がりながら俺たちの前まで来て片膝だちになる。

アリアを守るように白雪が立つ。

よし、これで戦力は怪我人もいるが4対1だ。 勝てる。

 

「白雪・・・貴様が命を捨ててまでアリアを守るとはな」

 

デュランダルが何かをほおると煙が出始めた。

発煙筒か

 

スプリンクラーが水を巻き始める。

 

「ごめんねキンちゃんやっつけられるかと思ったけど逃がしちゃったよ」

 

「上出来だよさすがしらゆきだ。 アリア、だいじょうぶか?」

 

「や、やられたわまさか白雪が2人いるなんてね」

 

ぐーぱーで手を確かめるアリアだが握力がまるでない。

俺の左手と同じ状況だ。

くそ、なんか室内が冷えてきやがった。

 

「白雪一つ答えてくれないか?」

 

「はい」

 

「アリアのロッカーにピアノ線を仕掛けたか?」

 

「ロッカー? そんなこと誓ってしてないよ」

 

「あともうひとつ、白雪は花占いしてるところを不知火に見られたか?」

 

「え、あ、うん」

 

少し恥ずかしそうに白雪は答える。

 

「俺は同じ時刻に白雪とすれ違っている。 あの女はずっと白雪に化けて武偵高に潜り込んでいたんだ。だから、俺たちを細かく監視し分断できた。 アリア、お前のロッカーにピアノ線を仕掛けたのもジャンヌだ。 さっき、下の階に仕掛けられていたピアノ線を覚えているだろう? 木を隠すなら森、白雪のアリアへの嫌がらせの中に殺人トラップを仕掛けたんだ」

 

「キンジあんたまたなったのね」

 

アリアが目を見開いて言った。

 

「デュランダル! あんたがジャンヌダルクですって? 卑怯者!どこまで似合わないご先祖様ね」

 

挑発されたアリアの言葉に煙の向こうだいぶ遠くから

 

「お前もだろうホームズ4世」

 

エレベーターホールか・・・

その時、俺たちは気づいた。

スプリンクラーから巻かれた水が凍りつき雪のように降っている。

ダイヤモンドダストという現象だ。

 

「キンちゃん、アリアと優君達を守ってあげて2人はまだ、戦えない」

 

「・・・」

 

否定はできない。

確かに右手は銃が撃てる握力はあるが完全じゃない。

 

「魔女の氷は毒のようなもの。 それをきれいにできるのはシスターか巫女だけ。でも、この氷がグレード6か8ぐらいの強い氷、私の力で治癒しても元にもどるまで5分はかかると思う。 だから、その間キンちゃんが守ってあげて、敵は私が倒すよ」

 

「何を言うんだ白雪。 お前を1人で戦わせることなんてできない」

 

「キンちゃん。 そういってくれるのは嬉しいよ。でも、今は超偵の私に任せて。 アリア、優君これすごくしみると思う。 でもそれで良くなるからがまんして」

 

言うと白雪は呪文のような言葉をつぶやいた。

 

「あ・・・んく・・・」

 

アリアが覗ける。

俺も手に激痛を感じながら唇を噛んでその痛みを押し殺す。

 

「んく・・・」

 

制服の袖をつかみ除けったアリアの前髪がはねる。

その額には×字の傷。

そう、俺とキンジが作った原因の傷・・・

ごめんな・・・アリア

この償いはするから・・・

 

俺たちの治療を終えた白雪は袖からロウ紙のようなものを取り出すと壁のようなコンピューターに貼り付けると暖かくなってきた。

すげえ。これが超能力ってやつか

 

「白雪・・・」

 

キンジは決めたらしい。

ここは白雪に任せると

 

「ジャンヌ・・・」

 

白雪は俺たちがアリアを守るように下がったのを見て

 

「もう、やめよう。 私は誰も傷つけたくないの。 それがあなたであっても」

 

それに対しフンという笑い声が聞こえてくる。

 

「笑わせるな。 原石でしかないお前にイ・ウーで研磨された私を傷つけることなどできん」

 

「私はグレード17のステルスなんだよ」

 

笑い声が返ってこない。

なるほど、白雪の言葉はそれほど凄まじいものなのか・・・

 

「ブラフだG17などこの世に数人しかいない」

 

「あなたも感じてるはずだよ。 星伽には禁じられてるけどこの禁布を解いた時に」

 

「仮に真実であったとしてだ」

 

ジャンヌの言葉には緊張が混ざっている。

 

「お前は星伽を裏切れない。 それがどういうことを意味するかわかってるからな」

 

「ジャンヌ。 策師策に溺れたね」

 

白雪の声が強まる。

 

「それは今までの私。 でも、今の私は星伽のどんな掟だって破らせる。 たったひとつの存在のそばにいる。 その気持ちの強さまではあなたは見抜けなかった」

 

ジャンヌの言葉が止まっている。

予想外の展開に策を展開するモノは弱い。

おそらくこれは想定外に近い状態だ。

室温はすでに常温、スプリンクラーも止まっていく

 

「やってみろ。 直接対決の可能性も想定済だ。 グレードの高い超偵はそのぶん精神力を早く失う。 持ちこたえれば私の勝ちだ」

 

覚悟を決めたのだろう。

煙の向こうから姿が現れていく。

やはり、西洋式の甲冑

 

「リュパン4世による動きにくい服装も終わりだ」

 

べりべりと薄いマスクをはいだ。

目はサファイアの色。

2本のつむじの辺を沿った髪は氷のような銀色

ジャンヌダルクは見た目は美しい白人だった。

 

「キンちゃん。 ここからは私を見ないで」

 

白雪は震える声で言った。

 

「・・・白雪?」

 

「これから私は星伽に禁じられている技を使う。 でも、それを見たらきっとキンちゃん私のこと怖くなる。 きっとありえないっておもう。 嫌いに・・・なっちゃう」

 

言いながら白雪は頭にいつも付けている白いリボンを手にかける。

くだらないよな・・・キンジ・・・

俺は言う。

 

「なあ、キンジ。俺たちと白雪はどんなことをしても友達だよな」

 

「ああ」

 

キンジが頷く。

 

「どんな、化け物のような力があっても俺達は怖がったりしねえよ。 武偵憲章仲間信じ仲間を助けよだ。 信じてるぜ白雪」

 

「白雪、安心しろ。 俺がお前を嫌いになることはありえない」

 

補足するようなキンジの言葉に白雪は無理に微笑んだ顔を向けながらリボンを振りほどいた。

 

「すぐ戻ってくるからね」

 

剣を学んだオレだからわかる。

白雪が今構えている構えは一切の流派に存在しない構えだ。

 

「ジャンヌ、あなたをもう逃すことはできなくなった」

 

「?」

 

「星伽の巫女がその身に秘める。禁制鬼道を見るからだよ。私たちもあなたたちと同じようにしその力と名前をずっと継いできた。 アリアは150年。 あなたは600年。 そして、私たちは2000年ものの永い時を・・・

 

くっと白雪がその手に力を込めた

刀の先端に緋色の炎が灯る。

それが刀全体に広がった。

 

炎の剣だ。

 

「白雪という名前は真の名前を隠す付せの名。 私の諱、本当の名前は緋巫女」

 

いい終わると同時に白雪が地を蹴る。

ジャンヌは低くかがむと後ろに隠していた洋剣でそれを受け止める。

ぶつかり合うのは火花ではなくダイヤモンドダスト

いなされた白雪の刀がコンピューターをまっぷたつにした。

ざっと、ジャンヌは後退する。

 

「炎・・・」

 

その顔には明らかに恐怖と怯えが混ざっている。

ジャンヌダルクは火刑により命を落としかけた。

その恐怖と戦いながら代々研究をしてきたのが氷の能力。

 

「今のは星伽候天流の初弾、火焔毘、次は緋火虞槌―その剣を切ります」

 

白雪は炎の剣を頭上に掲げる。

 

「それでおしまい。 このイロカネアヤメに切れないものはないもの」

 

「それはこちらのセリフだ! 聖剣デュランダルに切れないモノはない」

 

ジャンヌは勇気を振り絞るように剣を構える。

その剣はクレイモア

ギンギギンと激しい激突を繰り返しながらクレイモアと日本刀は切り結ぶ。

互いが切れるものはないと言った名剣同士の戦い。

互いの剣は傷一つ付いていない。

 

「これが超偵の戦いなのね」

 

アリアが言った。

 

「アリア」

 

俺たちはかがんで小声で話を始める。

 

「動けそうか?」

 

「でも、銃が床に張り付いているしはがしても使えない。 あたしの銃は寒冷地仕様じゃないの。 完全分解して整備しないと多分生き返らないわ」

 

「俺も同様だな。 ガバメント1丁は使えるがデザートイーグルと、1丁のガバメントは正直使いたくない」

 

「作戦を立てよう」

 

キンジの言葉にアリアが頷いた。

そういえば、マリがいないな・・・隠れてろという支持を守ってるらしいな。

そういえばマリのCZ78をアリアに貸せば・・・

 

ギギギン

 

「くっ!」

 

明らかに白雪が苦悶の声を上げる。

俺達がそちらを見ると

 

「苦戦してますのね。 ジャンヌ」

 

最悪だ。

にこりと、大剣を構えるローズマリーが白雪に対峙するように立っていたのだ。

赤い瞳を俺に向けてにこりと微笑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「狩の時間ですの優希」

 


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