緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

46 / 261
第45弾大ピンチ

人の気配がする。

誰かの話し声も聞こえてくるのを見ると当たりらしい

 

キンジとマリが銃に手を伸ばしたのを見て俺は無言でちょいちょいと上を指した。

見ると

『KEEP OUT』や『DANGER』などの警告があちこちに書かれている。

そう、ここは火薬庫。

誘爆なんてものおこしたら俺たちは100%死ぬし武偵高が吹き飛ぶ。

ばらばらになった高校生の肉片が飛び散るなんて光景想像しただけでもぞっとした。

キンジがバタフライナイフを音がしないように慎重に取り出す。

ものの影に隠れてキンジのバタフライナイフを鏡のように突き出して先を見ると

白雪がいた。

まりが口を開きかけたので慌てて口を抑える。

それで分かったのだがマリは震えていた。

無理もない。

ダギュラでは命懸けの実戦なんて皆無だっただろう。

ぽんと頭を叩いてから大丈夫だと瞬き信号を送るとこくりとマリは頷いた。

 

「どうして、私をほしがるのデュランダル。 大した能力もない私を」

 

怯えきった白雪の声

やはりあいつか

その声は俺が戦ったあの女のものだ。

 

「裏をかこうとするものがいる。 表が裏の裏であることを知らずにな。 和議を結として偽り陰でそなえるものがいる。 だが、闘争ではさらにその裏をかくものが勝る。 我が偉大なる始祖は陰の裏―すなわち光を纏い。 陰を謀ったものだ」

 

「何の話?」

 

「敵は影でステルスを練磨し始めた。 我々はその裏でより強力なステルスを磨く。 その大粒の原石―それも欠陥品の武偵にしか守られていない原石に手が伸びるのは自然なことよ。不思議がることではないのだ白雪」

 

「欠陥品の武偵? なんのこと?」

 

白雪の声に怒りが含まれる。

大して相手の声は嘲るように

 

「ホームズは少々手こずりそうで椎名は予想外の力で向かってきたが撃退してやった」

 

「まさか・・・殺したの優君を?」

 

「さてな? ここに私がいるということがその証拠だろう? そして、遠山 キンジはお前たちをばらばらにすることに一役買ってくれた」

 

「キンちゃんは・・・キンちゃんは欠陥品なんかじゃない!」

 

「だが現にこうしてお前を守れなかったではないか」

 

「それは・・・それは違う! キンちゃんはあなたなんかに負けない!迷惑を掛けたくなかったから私が呼ばなかっただけ」

 

フンとデュランダルが言った。

 

「迷惑をかけたくないか? だがな白雪、お前も私の策に一役買ったのだぞ?」

 

「私が・・・?」

 

「電話を覚えているだろう?」

 

思わずキンジの方を俺は見てしまった。

それほど奴の声まねは似ていたんだ。

キンジの声にな。

 

「すぐ来てくれ白雪! バスルームにいる」

 

「―っ!」

 

白雪が息を飲む

 

「ホームズは無数の監視カメラを仕掛けていたがお前たちの部屋を監視していたのは私の方だ。 お前はリビングの窓際にいて遠山の入っていたバスルームの灯が消え・・・そこに丁度椎名 優希と神崎 アリアが帰ってきた。私はそう言う好機を見逃さない性でな」

 

なるほどな・・・すでにあのときから監視されてたのか・・・

レキの言うこともあながち間違いじゃないみたいだな

 

「キンちゃんのふりして私を動かして私たちを仲間割れさせたの?」

 

「後は転がる石のようにだ。 数日とかからず神崎アリアはお前たちの下から離れた。椎名 優希も同時に離れるのは嬉しい誤算と思っていたが・・・どうやらわざとだったようだな椎名 優希」

 

最後の声はこちらをむいている。

黙祷から目を開ける。

戦闘狂モード

キンジとアイコンタクトで物陰から飛び出す。

 

「白雪逃げろ!」

 

キンジの声と共に俺は銀玉を仕込んだワイヤーを発射した。

しかし、それはデュランダルに当たるより早く何かにぶち当たって床に落ちる。

 

「!?」

 

「そうくると思っていたよ」

 

 

デュランダルが何かを投げる。

まずい!

 

「キンジよけろ!凍らされるぞ!」

 

俺は右のワイヤーを天井に打ち込み空に逃げる

 

「え!?」

 

しかし、対応しきれなかったらしいキンジは床に縫いつけられてしまう。

 

「キンジ!」

 

「次はお前だ」

 

デュランダルが仮面越しに俺を見上げてくる。

 

「遠山先輩!」

 

助けようとでも思ったのだろう。

マリが物陰から飛び出してきた。

 

「馬鹿! 出てくるな!」

 

「で、でも・・・」

 

「まだいたのか?」

 

再びヤタガンをマリに向かい投げる。

俺はワイヤーを操りターザンのようにマリに近づくとマリを蹴飛ばした。

 

「あう」

 

マリはザザザと地面を滑る。

同時にヤタガンが地面に突き刺さりその一帯が氷の床になる。

 

「!?」

 

違和感を感じて上を見ると氷がワイヤーを覆っていっている。

見ると短刀がワイヤーに絡まっていた。

ぴきぴきとワイヤーは氷手に迫る。

 

「くそ!」

 

俺は右のワイヤーを切断して切り離すとバランスを崩して氷の地面に叩きつけられた。

背中から落ちたので床に縫いつけられる。

 

「しまっ・・・」

 

「椎名先輩!」

 

「逃げろ! マリ! 早く!」

 

「嫌です! 先輩を置いて逃げられません」

 

「この馬鹿!」

 

その瞬間、室内の非常灯が消えた。

 

「い、嫌! 何するの!―う」

 

ちゃりちゃりと白雪のいる方から聞こえてくる。

 

「―白雪!」

 

キンジが叫ぶ。

やばいぞこれは、さっきの比じゃない。

殺されるぞ。

 

「くそったれが・・・」

 

渾身の力を込めて脱出にかかる。

 

「まずはお前だ椎名。 死ね」

 

びゅっと刃が降り下ろされるのが分かった。

だけど、恐怖はない。

だってな・・・

そうだろアリア?

 

ぶん―もう一つ刃が飛ぶ音が後ろから上がり―ギン!

空中に一瞬、火花が散った。

 

「じゃあバトンタッチね」

 

「ああ、タッチだな」

 

そのアニメ声に俺は返答した。

 

ちかっと部屋の片隅の天井であかりが灯る。

その体育館が明かりを一周するように付いていく。

 

「そこにいるわねデュランダル! 未成年略取未遂の容疑で逮捕するわ」

 

ぎゅむぎゅむと俺を踏みつけてついでにキンジの頭を踏みつけて現れたのはアリアだった。

 

「ったく遅いだろアリア」

 

「優があまりにも遅すぎたからこっちが当たりみたいね」

 

「ホームズか?」

 

見るとデュランダルの姿は消えている。

白雪も火薬庫の影に引きずり込まれたらしい。

そのとき、銃剣が2本アリアに向けて投げつけられてきた。

アリアは小太刀でそれを弾く

 

「何本でも投げてくれば? こんなのバッティングセンターみたいなものだわ」

 

アリアがバッドのように小太刀を構えると同時にどこかの扉が締まる音がした。

 

「逃げたわね」

 

アリアは俺たちの近くに刺さっていた銃剣を引き抜いてぽいっと捨てる。

 

「まぁ、少しは役にたったわね。バカキンジも」

 

「な、なんだよそれ?」

 

「勇を使え蛮を使え。 賢を使え愚を使えっていうでしょ? バカキンジモードのバカキンジにもそれなりに使い道はあるのよ」

 

「ま、キンジはデュランダルを動かすのに役立ったってわけだ」

 

俺はばりばりと氷を引きはがしながら立ち上がる。

アリアは刀を宙に動かすと何かを切った。

 

「何かあるんですか?」

 

マリが聞くと

 

「ピアノ線よ。 あたしの首の高さにあった。 こっちはキンジと優のぶんね」

 

ぷつんぷつんと刀でそれを切るアリア。

デュランダルめ・・・用心深いやつだな・・・上の階にもピアノ線張り巡らせてたし。

 

「でも無駄無駄。 あたしの目はごまかせないわ」

 

「アリア、デュランダルには強烈な1擊を与えておいた。 追撃をかけるなら早いほうがいい」

 

「その言い方からすると1度戦って逃がしたのね?」

 

「あ、ああ・・・気絶までさせたんだが乱入者がいてな」

 

「それっデュランダル以外にも敵がいるってこと?」

 

「いや、もう逃げたみたいだが前に戦った黒衣のおと・・・いや、ローズマリーっていうステルスだ」

 

ぎりっと歯をくいしばる。

 

「分かったわ。 でも、1番は白雪よ」

 

アリアは刀を拾うと白雪の方まで行くとすぐに持ってきた。

 

「どうなんだ?」

 

俺が聞くと

 

「怪我はしてなかった。 でも、縛られてる。 助けるのあんたたちも手伝いなさい」

 

氷をはがし終わったキンジが立ち上がる。

 

「アサルトの屋上で喧嘩したのは作戦だったのか?」

 

「武偵憲章第2条。依頼人との契約は絶対に守れ。 あたしは1度受けたクエストは絶対に投げ出さない。 屋上で寝てたあんたにはマジギレだったけどね。 デュランダルは敵が複数いる場合はまず、距離を置いて、遠くからうまく敵の戦力を分断し、1人ずつ1対1で片付けようとする。 これが戦術パターンよ」

 

なるほどね。 俺が1対1で激突したのも計算のうちか

 

「ただ、ああいう策士は計画に歪みが生じると全てを無にしようとする傾向があるわ。 だとしたら改めて戻ってきて白雪を殺そうとする可能性もある。 まずは、白雪を開放するわよ」

 

「「いだだだだだだ」」

 

と、アリアは俺たちの耳をつかんで歩いていくのだった。

 

「尻にしかれてますね先輩方・・・」

 

ふぅとため息をついてマリもその後に続くのだった。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。