緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第44弾銀の魔女

白雪を見つける前にこいつを縛っておくかと腰のベルトに固定されたワイヤーを手に警戒しながらデュランダルに近づいていく。

ぴくりとも動かない相手は完全に伸びているのだと信じたいところだ。

薄暗い闇の中俺の歩く音だけが響く。

コツコツコツ

カツン

 

「!?」

 

俺の足音に混じった異音に気づいたときには既に敵は剣を振りかぶっていた。

西洋式の大剣を振りかぶった黒衣の襲撃者が横殴りに振るわれる。

その襲撃者の剣の刃ではない幅広い部分でまともに俺は体に受ける。

 

「ぐ・・・」

 

激痛と共に俺は吹き飛ばされ数メートル以上先の壁に叩きつけられる。

 

「がっ・・・」

 

気が遠くなる。

意識が遠のきかけ視界がぐらぐらと揺れている。

だ、だめだ・・・

デュランダルとの戦闘のダメージに加えてこの一撃

左ひざががくりと床におち俺は右手でなんとか床を支えて倒れまいとする。

 

「あらあら、優希ならこの程度軽く交わすと思いましたのに」

 

仮面の下から聞こえてくるのは先程の声とは別の女性の声だった。

 

「だ、誰だ・・・てめえ・・・」

 

床に沈んでいるデュランダルと思われる奴とは違う。

誰だこいつは・・・

 

「わかりませんの?」

 

ゴゥと青い炎が剣から沸き上がる。

そして、仮面とマントを外した相手を見て俺は驚愕する。

 

「ごきげんようですわ。 優希」

 

理子がよくつけているリボンをふんだんに使った黒いゴシックロリータ風のドレス

ツインテールの銀の髪、赤い瞳。

 

「お、お前・・・」

 

見間違うはずがない。

あいつは・・・俺の

 

「あの時は名乗れなかったので自己紹介にきましたわ」

 

にこりと聖女のように微笑む少女は炎を背景にして美しかった。

剣を床に刺しドレスの端と端を持ち左足を1歩下げる。

 

「ローズマリーと申しますの。ローズとお呼びくださいな」

 

「・・・ローズマリー」

 

「はい。 なんですの優希?」

 

戦闘狂モード

激痛に耐えながらも俺は立ち上がる。

 

「俺は・・・お前を逮捕するために生きてきたんだ・・・お前が・・・俺達の人生をめちゃくちゃにしたから・・・」

 

「美味しそうですわ。 でも、今はまだ、食べごろじゃありませんの」

 

右の人差し指を唇に当てて、記憶のなかにある言葉と同じセリフを言うとローズマリーはこつこつと背を向けて歩きだした。

 

「待て! 待てよ!」

 

1歩踏み出すがそれが限界だった。

がくりと足から力が抜け地面に倒れる。

脳震盪状態になってるのか・・・

その間にもこつこつと音は遠ざかっていく。

 

「ちくしょう・・・仇が目の前にいるのに・・・」

 

意識が遠のいていく。

ちくしょう・・・

そして、意識は闇に包まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・う・・・優!」

 

仇を・・・

 

「優! しっかりしろ! おい!」

 

「椎名先輩!」

 

「う・・・」

 

がんがんする頭を振りながら目を開ける。

 

「優!」「椎名先輩!」

 

キンジとマリだった。

マリは泣きそうな顔で胸に飛び込んでくる。

 

「よかったぁ先輩が無事で」

 

「いたたたた! 離れろマリ怪我してんだぞ!」

 

「あ! すみません。 うれしくてつい・・・」

 

「ったく・・・キンジ状況を教えてくれ」

 

「状況も何も、白雪が失踪したからレキにここを調べるように言われて降りてきたんだ。

地上でマリと会ってついてくると聞かなくて優が倒れてるのを見つけて声をかけたところだ」

 

「デュランダルとローズマリーはどうした!」

 

「ローズマリー?」

 

初めて聞く名前にキンジが首をかしげる。

デュランダルが倒れていた空間を見ると何もなくなっていた。

ローズマリーも消えている。

 

「私たちが降りてきた時には誰とも会いませんでしたけど・・・」

 

逃げたか・・・

いや、ここにはまだ、下がある。

 

「白雪が心配だ。 先を急ごうキンジ」

 

「待てよ優。 何があったんだ?」

 

「ああ・・・」

 

歩きながら要所要所を説明していく。

ローズマリーと俺の因縁は省いてデュランダルとの激突と気絶させたことも話す。

 

「マリは地上に戻れ」

 

「で、でも先輩の話だとローズマリーって敵がまだ、残ってるかも・・・」

 

それを指摘されて舌打ちする。

確かにばらばらに行動するのはリスクがでかすぎる。

援軍を呼ぼうにも局内基地局が破壊されたのか携帯は圏外になっている。

 

「いいか? 俺たちはお前を守る余裕がなくなるかもしれない。 その時は戦おうなんて思うな。逃げろ」

 

「で、でも・・・」

 

「レキか誰かを呼んできてくれ。 それだけでも助かるからな」

 

「は、はい」

 

よし、後は、右手の感覚が徐々にではあるが戻りかけている。

だが、武器はワイヤーとガバメント1丁、左手は使えない。

戦力は普段の半分もなく援軍もない。

頼れるのはヒステリアモードではないキンジのみ。

だが、無理やりヒステリアにするわけにもいかないので現状の戦力でやるしかない。

デュランダルは多少ダメージを負っているはずだから後は、迅速に沈めること。

だが、もうフルバーストは使えないだろう。

あれは、1度見られたら警戒されるからな。

まさに、一撃必中の技だ。

防弾制服でなく、ワイヤーの先がナイフなら確実に殺害できる技でもある。

もっとも9条があるから俺が殺害目的で使うことはないだろうが・・・

開け放たれたマンホールをおりついに地下7階についた。

さて、救出作戦スタートだな

 

 


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