緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第40弾レキデート前編

「なんで今日なんですか! なんで!」

 

電話の向こうから聞こえてくるマリの声

 

「ああ、だから誘ったんだが・・・」

 

「今すぐ行きます! 超ダッシュで・・・」

 

「あ~、何言ってんの?」

 

「きゃっ! 離してください綴先生! 乙女の危機なんです!」

 

どうやら横にダギュラの綴いるらしかった。

ということは学校にいるのかマリは

 

「駄目駄目。 これから・・・えっと・・・そう、犯人の尋問だよ。 紅の担当は12人いるんだからさっさと行くよ」

 

「嫌です! 12人も尋問してたらお祭り終わって椎名先輩がぁ!」

 

「はいはい」

 

ズドン

という音が向こうから聞こえマリの声が止まった。

 

「ま、マリ?」

 

俺が電話越しに言うと

 

「ああ、椎名ぁ? 紅は無理だからあきらめな」

 

ぷつんと電話が切れる。

よくわからんがマリは駄目ということだな・・・

アリアには電話したんだがつながらなかった。

となると武藤や不知火当たりだが野郎を誘ってもなぁ・・・

まあ、たまにはいいかな

 

「じゃあ行くかレキ」

 

祭りだから浴衣を来ているとかそういうこともなくいつもの防弾制服にドラグノフを肩にかけているレキはこくりと頷いた。

ま、レキに限って俺に気があるとかそういうのじゃないのはわかってるさ。 白雪達も行くみたいだから護衛が同じ会場にいる方が安心だからな。

武偵憲章第5条 行動に疾くあれ。 武偵は先手必勝を旨とすべしだ。

 

モノレールや電車を乗り継いで目的地の葛西臨海公園についたときには花火は始まっていた。

レキは無表情に空を見上げている。

うーむ、ここに来るまで会話がほとんどなかったんだよな・・・

ロボットレキは伊達じゃないってか?

 

「おっ! 屋台があるぞ! 行こうぜレキ!」

 

こくりと頷いてくれたが1歩を踏み出さない。

後から後から人が来てはぐれてしまいそうだ。

よし、俺はレキの右手を掴んだ。

小さくてひんやりとしている。

 

「?」

 

レキが不思議そうにこちらを見てきた。

 

「はぐれるといけないからな。 よし! 行くぞ!」

 

状況が分かっているのかいないのかレキは何も言ってこない。

どーんと花火が会場を照らす中、レキの手を引いて屋台を回りまくる。

5分程したときには俺の手には食べ物がこんもりと乗っていた。

 

「おじさん! フランクフルト2つ!」

 

「あいよ! 兄ちゃんデートかい? サービスしてやるよ幸せ者め」

 

「違うって!」

 

そんな何度目かもわからない会話をしながらレキの手にフランクフルト渡す。

食べながらだと手をつなげないのではぐれないように注意しながら歩く。

レキは小さな口でぱくぱくとフランクフルトを平らげていく。

この子はこんな状況じゃないとカロリーメイトしか食べない。

戦闘食としては優秀なんだが味気ないからなあれ・・・

しかし、レキ・・・お前本当に表情1つ変えないんだな・・・

笑えばかわいいだろうという確信はあるのだがそれを実行する手がまるでない。

 

「そういえば、もう終わりなんだな・・・」

 

花火はまだ、上がっているが人が減り始めている。

キンジは間に合ったのかな?

 

「・・・」

 

ぱくりとフランクフルトを平らげたレキは

 

「・・・優さん」

 

「ん?」

 

俺がレキが見ている方を見ると1件の屋台があった。

 

「ああ、射的か? よしやるか」

 

レキの返事も待たずに屋台の前まで来て俺は絶句した。

 

「やあ兄ちゃん。 俺の超豪華射的やってってくれよ」

 

「すげえ商品だな・・・」

 

PS3やPSPといった最新機種のゲーム機やIPODやテレビまであるぞ。 でもあんなものコルク銃じゃ落とせないって」

 

周りにはカスのような商品が置いてあるだけだ。

ひどいのはオヤジのプロマイドとかまである。

誰がほしがるんだ?

 

「やめといたほうがいいよ学生さん」

 

「え?」

 

俺が振り返ると少し気が弱そうな男性が小声で

 

「その屋台ぼったくりなんだ。 絶対に落とせないよな重いものばかりおいて参加者を釣って荒稼ぎしてるんだよ」

 

見ると浴衣の女の子があれとってと彼氏に行っているが商品にはあたっても棚から落ちない。

まあ、PS3だから結構重い。

 

「どうなんだい? 兄さんやるのかい?」

 

「レキ、ここはやめて・・・」

 

「やります」

 

「え?」

 

スナイパーとしてのプライドか何かが火を付けたのかコルク銃を手に取る。

 

「ほらよ。 こいつで落とせたら商品はやるよ。 姉ちゃんかわいいから弾いた玉があたった商品もやるぜ?」

 

それってあんたのブロマイドもだろ!いらないし

 

「っておい!」

 

なんとレキはドラグノフを肩から下ろして構えようとしたのだ。

 

「ドラグノフを使うな! これでやるんだ!」

 

俺がコルク銃を渡すとレキはじーとコルク銃を見ていたがやがて、構え直した。

ふー、そりゃドラグノフならPS3だろうと問答無用で取れるだろうさ。

破壊されるけどな。

レキがコルク銃を構える。

まるでスナイパーのよう・・・いや、本物のスナイパーのレキの周りの空気が変わる。

冷たい空気が背を撫でた気がする。

ほ、本気だレキのやつ

 

ギャラリーも狙撃銃をもった女の子が射的をすると知ってか増えている。

ごくりと誰かが息を飲んだ。

 

「私は1発の銃弾」

 

レキのいつものセリフが会場に響く。

 

「銃弾は人の心をもたない。 故に何も考えない。 ただ、目的に向かって飛ぶだけ」

 

その瞬間強い風がレキの後ろから吹いた。

 

パン

 

軽い音と共にコルクが発射される。

それは、PSPの箱に命中。

ぐらりと箱が揺れ落下を始める。

 

「馬鹿な!」

 

オヤジが悲鳴を上げる。

だが悲劇はそれで収まらなかった。

比較的上の方に配置されていたPSPが落ちた先にはなぜかバケツが置かれていた。

それが風の影響とPSPの激突でぐらりと揺れる。

勢い良くそれがPS3の箱にぶち当たり一番下の棚のPS3が落下する。

 

「ひいいい!」

 

オヤジの顔が青ざめていく。

まあ、当然といえば当然なんだが・・・

 

「私は1発の銃弾」

 

続けてレキは2発目を放った。

正確無比に箱の端に当ててコルク銃でも落とせるように商品をたたき落としていく。

3発4発、命中精度は百発百中だ。

ひでえ・・・自業自得とはいえ高額商品ばかりレキはたたき落としていく。

10万超えるって

 

「や、やめてくれ!じょうちゃんあんたは化け物か!」

 

「私は1発の銃弾」

 

そんなオヤジの声を無視してレキは非情に言い放つ。

そして、とうとうブロマイドを除いて最後に残ったのは巨大な液晶テレビだ。

あれは無理だろ

 

パン

 

最後の銃弾をレキが放つ

それは、屋台の上部に命中する。

 

「?」

 

「は、ハハハ、これはさすがに無理だったようだな?30万のテレ・・・」

 

オヤジが行った瞬間ばちんという音と共に鉄骨がテレビの箱に命中し、下段においてあったテレビに命中するとその存在を床に沈めた。

 

「あ・・・ああ」

 

この世の終わりみたいな顔でオヤジが膝をついた。

ああ、屋台を組み立てる時の鉄骨狙ったんだな。

いい加減に作ったんだろうなこのオヤジ・・・

わああと歓声があがる。

どうやら、誰も高額商品を取れなかったらしいがこの荷物どうするんだ?

もって帰れないぞ

 

「オヤジさん郵送とかできる?」

 

びくりとオヤジが肩を震わせる。

そりゃそうだろわずか1000円程度の銃弾で100万近い損害なんだからな

しかも、渡す気がなかった商品ばかり・・・

 

「か、勘弁してくれ! 金は返す! これを渡したら俺は破産だ!」

 

「いや、あんたも商売人なら覚悟を・・・」

 

「わかりました」

 

「きめ・・・え?」

 

レキの声に振り向く

 

「ほ、本当か!」

 

オヤジが顔を輝かせる。

きめえ

 

レキはこくりと頷くと歩きだしてしまう。

 

「あ、おい! レキ! おやじ金返せ」

 

「は、はい!」

 

「もうこんな馬鹿なことするなよ」

 

「はい!

 

俺はレキの射的の金をもらうとレキを追った。

 

どうでもいいんだが最後に残ってたオヤジのブロマイドが親指立てて笑顔だったのが何かわわえるよな

 


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