緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第35弾黒衣の襲撃者

アドシアートの準備委員会に行くと言う白雪の護衛をキンジに任せて俺は校内の1室でノートパソコンを開いて情報を収集していた。

理子がいなくなったので少し、時間がかかるがこの前はそもそも信頼していた相手が敵だったわけだからな。

 

「ふぅ・・・」

 

ノートパソコンを閉じて誰もいない教室を見渡してから携帯電話を取り出す。

 

「ん?」

 

見ると着信アリとなっていたが非通知の相手だった。

依頼主かと考えるが用があるならまた、かかってくるだろう。

 

「そろそろ帰るかな」

 

パソコンをかばんにしまってから教室を出た瞬間見覚えのある後ろ姿を見つける。

 

「あれ? 白雪?」

 

俺が声をかけるより早くその影は廊下の向こうに消えてしまった。

追うかどうか迷うがどうせ、近くにキンジもいるはずだから気にかけないでおく。

 

「椎名先輩はっけーん!」

 

その時、どーんと後ろに衝撃があり誰かが背中に抱きついてきた。

 

「うお! マリか!」

 

勢いに一瞬前に足を踏み出すが彼女は悪びれた様子もなく。

 

「昨日は椎名先輩伸びてましたから挨拶できませんでしたが今日も、お供しますね」

 

「いや、白雪の護衛はお前じゃ無理だろ!」

 

「でもほら、最後の尋問は私がやりますから関係者ですよ私は。 もう、マスターズに単位の申請もしてますし」

 

「いつの間に・・・」

 

なし崩し的にマリも白雪の護衛パーティーに加わってしまったようだ。

 

「レキ先輩もパートタイムですけど参加してますし神崎先輩の許可ももらいました」

 

「レキも?」

 

昨日は断ったレキの顔を思い出しながら言うとマリは、はいと頷いた。

 

「神崎先輩が雇ったみたいですよ? アドシアートの練習の合間しか参加しないそうですけど」

 

アリア・・・情報は共有しようぜ・・・俺、知らなかったぞそれ

 

「じゃあ、そろそろ星伽先輩迎えに行って帰りますか先輩?」

 

「そうだな・・・いや、その前にちょっと出かけるか」

 

「どこにですか?」

 

「ちょっと約束があるんだよ」

 

「私も行きます!」

 

「駄目だ! ついてくるな!」

 

俺はそう言って窓から飛び降りるとワイヤーを使って一気にマリを引き離す。

後ろから椎名先輩ひどいという声が聞こえてくるが知ったことじゃない。

1人でこいと言われてるからな。

 

 

 

 

 

 

その約束とは武偵弾の職人からの引き取りである。

依頼主が紹介してきた奴は変わった奴で直接取引しかしないのである。

100万円を渡して武偵弾1発を受け取って学園島に戻ってきた時にはすっかり遅くなってしまっていた。

時刻は9時半を回っている。

やばいな、アリアに何言われるかわからんぞ。

大急ぎでキンジの寮に向かう途中

生温かい風が髪をゆらした。

それに気づけたのは幸運としか言いようがない。

 

「何!?」

 

満月の光から影ができて視界が少し暗くなった瞬間、俺は右に飛んでいた。

 

ガアアアン

 

とアスファルトが粉砕される。

 

「ちっ!」

 

飛びながらガバメントを引き抜くと襲撃者に向ける。

奇妙な襲撃者だった。

顔や髪をすっぽり覆う仮面、体を隠すような黒いマント、そして、それとは対照的に

襲撃者の背丈はあろうかと言う巨大な西洋式の剣が手に握られている。

デュランダルという言葉が脳裏に浮かぶ。

情報収集の段階でデュランダルは剣の使い手という情報を見たのだ。

何が起こってるかよくわからんが、なら丁度いいじゃねえかここで逮捕すりゃ白雪の護衛は終了だ。

 

「デュランダルかお前!」

 

確認のために行ってからガバメントを3点バーストで放つ。

だが、襲撃者は大剣を盾のように構えて銃弾を弾く。

同時に、地面をけりすさまじい速度で接近してきた。

はええ!

横殴りの一撃を街灯に巻きつけたワイヤーを引き戻してかろうじてかわす。

強い!

本気で戦わないと殺される。

襲撃者は武偵憲章など関係ないのか殺す気の一撃を繰り返している。

だが、戦闘狂モードの発動はこの状況では難しい。

発動条件の1つは30秒の黙とうが必須だ。

後の方法はこの状況では使えない。

そう、強者相手に30秒は致命的な隙になる。

都合よく援軍がくるという展開は期待せずアスファルトの上に着地する。

相手は接近戦一筋なのか再び接近してくる。

 

ドドドン

 

45ACP弾をものともせず接近してくる相手

銃弾を切る銃弾切りまで使いものともせず迫ってくる。

ならば

俺はデザートイーグルを抜くと相手に向ける。

それでも、敵の接近は止まらない。

こうなれば、アル=カタで至近距離からこいつをぶち込んでやる。

 

「デュランダルは超偵という話だ」

 

脳裏に浮かんだ依頼主の言葉が浮かんだのは間一髪

横殴りの一撃を下にもぐりかわした俺がデザートイーグルを叩き込むより早く敵は左手に小太刀を持ちふるったのだ。

かわせない!

デザートイーグルで受け止めるか迷ったが右手の防弾制服でその一撃を受ける。

 

「ぐっ!」

 

バッドで殴られたような衝撃を受けながら俺は交代する。

見ると受けた部分が少し焦げている。

炎を使う超偵か・・・

小太刀から青白い炎が纏われており、その炎は大剣に映りゆらゆらと陽炎を起こす。

襲撃者が小太刀をしまい人差し指をくいくいと自分の方にまげてさあ、こいよというように挑発してくる。

馬鹿にしてやがるなこいつ・・・

それにな・・・

 

「てめえ馬鹿にしてのか? 公開させてやるぜ?デュランダルさんよ!」

 

戦闘狂モードの発動。

2つ目のキーは怒り。

特に俺は炎と戦場が重なればこのモードになれる。

 

極限の集中と戦闘狂モード

体に仕掛けてあるワイヤーと拳銃で無数のパターンを作り出す。

デザートイーグルとガバメントを手に持ちじゃりとアスファルトの地面を横に少し移動する。

相手は、これを待っていたのか両手で剣を握り直すと下段に剣を構え直す。

互いの距離は10メートル。

動いた瞬間、勝負は決まる。

そんな、状況。

 

「答えろよ。 てめえ何者だ? デュランダルなのか?」

 

「・・・」

 

相手は何も答えない。

その時だった。

 

ドドドン

 

突然の銃撃に襲撃者が後ろに飛ぶ。

 

「優!」

 

「アリアか!」

 

アリアが路地裏から飛び出してきてガバメントを連射しながら俺に走り寄ってくる。

 

「大丈夫なの! 銃声が聞こえたから来たんだけどなんで優が襲われてるのよ」

 

「知らねえよ! デュランダルに聞け」

 

「あいつがデュランダル?」

 

交代してこちらをうかがうように動かない敵をアリアは見る。

 

「気をつけろアリア。 あいつは、炎を使うぞ」

 

「優、援護しなさい。 アル=カタで行くわ」

 

「はっ! 悪いなアリア。 逆だ。 俺が前衛に立つ。 あいつを沈める手札はもう、俺の頭の中にあるからな」

 

アリアがはっとして

 

「それが、優の覚醒モードなのね? いいわ。 やってみなさい」

 

「ああ」

 

そういうと俺は地面をける。

後ろからアリアがガバメントで牽制しながら敵が動く。

あのマント防弾製らしく貫通には至らないようだ。

大剣を小枝のように扱う相手を沈める方法はある。

それに、剣の相手は昔、実家でさんざん叩き込まれているからな。

右手のみで大剣をマントの敵が振り下した瞬間

 

ガアアンン

 

金属と金属が激突する音と共にマントの敵の剣が浮かび上がった。

続けてマントの男が数回、衝撃を受けるようなしぐさを向ける。

こいつは、狙撃・・・まさか、レキか!

最大のチャンス

相手の懐に潜り込もうとした瞬間、男がマントから何かを放り出す。

 

「しまっ!」

 

目を閉じようとした瞬間、閃光手投弾が炸裂した。

後ろに交代しながら一時的に失明している状態で全神経を集中させる。

今、襲われたらと恐怖が襲うが相手の襲撃はなかった。

 

「優!」

 

後ろからアリアが駆け寄ってきたのが気配で分かる。

 

「アリア! 敵は!」

 

「逃げたわ。 レキ、犯人まだ、追えてる?」

 

携帯電話の相手はレキのようだ。

 

「目標を見失いました。 追撃は不可能です」

 

「ありがとうレキ助かったわ」

 

そういうと、アリアは携帯の電源を切った。

 

「優! キンジの部屋に戻るわよ! あいつ白雪の所に行ったかもしれない!」

 

そう言って、アリアは路地においてあったらしいカバンとももまんが大量に入った紙袋を持って走り出した。

 

「お、おい! 待てよアリア!」

 

ああ、なんでこうなるんだか・・・

護衛してるつもりが自分が襲われるなんて情けないよな本当に・・・

 


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