東京武偵高は隅からすみまで危険な学校だが特に危険極まりない場所が3つある。
強襲科(アサルト)
地下倉庫(ジャンクション)
そして、教務課(マスターズ)だ。
え?なんで教師がいる場所が危険かって?
答えは簡単。
武偵高の教師は危険人物の宝庫なんだよ。
元特殊部隊だったり、元暗殺者やマフィアだったなんて噂がある奴もいるし・・
正直、本気で戦っても勝てないかもしれないなんて奴がいるのもこのマスターズだ。
まあ、インケスタやコネクトのような常識的な教師もいるがそれは少ないんだ。
悲しいが・・・
「キンジ届かない。 抱え上げて」
と無声音でいうアリアと俺達はその虎の穴に侵入しようとしている。
「・・・はいはい」
「おい、キンジ早くしろ。 誰かきたらまずい」
マスターズの廊下に忍び込み、天井のダクトにアリアをキンジが抱え上げる。
俺は周りの警戒役だ。
「ほーれ、たかいたかーい」
あ、馬鹿
「風穴」
ゴスとキンジの鳩尾にアリアの黒二―ソがめり込んだ。
「うおおお」
とキンジが苦痛の声をあげているとアリアは懸垂の要領で上がってしまう。
「優!」
アリアの手を借りキンジに押してもらい俺もダクトに上がった瞬間。
「おーう、遠山。 マスターズに何か用か?」
げっ! この声、蘭豹じゃねえか!
音を立てずにダクトのふたを閉める。
下からキンジが裏切り者という目で俺を見ていたが俺はダクトの中から頑張れと親指を立てた。
「上になんかあるんか?」
「い、いえなんでもない・・・です」
悪いなキンジ生きていたらまた会おう。
後ろから遠ざかっていくキンジの声を聞きながら俺は犠牲者に黙とうするのだった。
シャカシャカシャカとまるで某虫のように匍匐前進で進んでいくアリアは短いスカートなのだが悲しかな。
暗くてよく見えない。
「アリア」
「何?」
「キンジは残念だったな」
「仕方ないじゃない。 置いてこないとあたし達も見つかってたんだから」
「まあな、それはそうと匍匐前進はやいなアリア」
「得意だもの。 アサルトの女子では一番早いわ」
「なるほど胸が平らだか・・・」
ゴスっと俺の頭にアリアの蹴りが食らわせられた。
痛いよ。お!白雪発見! どうやら呼び出しをした教師の所にいたらしいな。
狭い通気口からアリアと俺で下の様子をうかがう。
アリアとは頭と頭をくっつけたような格好で下を見る羽目となる。
ち、近い・・・クチナシのようなにおいもするし・・・
目をアリアに向ける。
通気口から漏れる光に照らされるアリアは本当に可愛かった。
お人形さんみたいに整った顔。
人形と言えばレキを思い出すがアリアは表情が豊かなのだ。
守らないとなこの子のこと・・・
俺がそんなこと思っていた時
「星伽ぃ」
女にしては低めの声に下に目を戻すと室内では2年B組の担任ダギュラの綴先生が足を組んで座っていた。
白雪は迎えの椅子にうつむいて座っている。
「お前最近急に成績下がってるよなぁ」
室内なのに黒いコートを着て煙草を口にくわえている。
目が少しおかしいし年中ラリってる奴だからなあの先生は
てか、あの煙草日本じゃ販売禁止っぽいし
「あふぁー、まあ勉強はどうでもいいんだけどさ」
煙を口から出しながら言う。
そんなこというから武偵高は馬鹿といわれるんだ! まあ、否定はしないけどな。
「なーに・・・何? あ、変化・・・変化は気になるんだよね」
単語を忘れたのか?
頭すかすかだと言いたいがこの先生、尋問に関して日本で5本の指に入る。
何をされるかわからんがこいつに尋問されたらそいつは綴を女王様とかあがめられるらしい。
そういや、紅 真里菜はどんな尋問するんだろうな?
まあ、今気にすることじゃないか
「ねえぇ、単刀直入に聞くけどさ。 星伽、あいつにコンタクトされた?」
「デュランダルですか?」
ピクっとアリアが眉を動かした。
確か周知メールできてたな。
確か、超能力用いる武偵『超偵』ばかり狙う誘拐魔
アリアは超偵じゃないから気にとめてなかったんだがそもそもあのデュランダルというのは存在自体デマと言われている。
失踪した武偵もこいつにやられたんじゃないかという都市伝説のような存在である。
いるのかまさか?
「それは・・・ありません。 というかデュランダルが実在していたとしても、私なんかじゃなくもっと大物の超偵を狙うでしょうし」
「星伽ぃ、もっと自分に自信を持ちなよ。 あんたは武偵高(うち)の秘蔵っ子なんだぞ?」
「そ、そんな」
「星伽ぃ、何度も言ったけどいい加減ボディーガードつけろってば。 レザドはデュランダルがあんたを狙ってる可能性が高いってレポートを出した。 SSRだって似たような予言したんだろ?」
「でもボディーガードはその・・・」
「にゃによう?」
「私は幼馴染の子の、身の回りをしたくて・・・誰かがそばにいるとその・・・」
「星伽ぃ、教務課(うちら)はあんたが心配なんだよぉ。 もうすぐアシアードだから、外部の人間もわんさか入ってくる。 その期間だけでも誰か有能な武偵をボディーガードにつけな。 これは命令だぞ!」
「で、でもデュランダルなんて存在しない犯罪者で・・・」
「これ命令だぞー。大事なことだから先生は2度いいました。 3度目は怖いぞぉ」
ふうーと煙を白雪に吹きかける綴。
「けほ、は、はい分かりました」
とうとう頷いた白雪を見ながら俺は情報を整理してみる。
なるほどね。
いるかもわからない犯罪者に狙われている白雪にマスターズが護衛をつけろと言ってるわけだ。
SSRの予言なんて俺は信じてないしレザドの情報はガセも少なくない。
マスターズの過保護って奴だ。
まあ、仮に狙われているんだとしてもアリアの護衛と両立なんて・・・
がしゃん
とアリアが通気口のふたをパンチでこじ開けた。
「っておおおおい!」
俺が止める間もなくアリアはすたっと2人の前に降りてしまった。
スカートがめくれ上がっていたが角度的に見えなかった。
そして、またこの子はとんでもないことを言い出すんだよな。
「―そのボディガードあたしがやるわ!」
やっぱりね