「キ―ンジ」
アリアがとててと夕焼けのグランドをかけてキンジに近づいていく。
「言っておくが放課後は訓練なんかしないぞ。 俺は一般科目の宿題をやるんだからな」
「まだ何も言ってないじゃない。 放課後は優を訓練するから」
「俺かよ!」
「優、朝逃げた補修よ」
「よかったな優」
「キンジてめえ!」
アリアはとててと、バス停に向けて歩いていく。
そして、振り返りひまわりみたいな笑顔を俺たちに向け
「朝練はやるからね。 優も」
俺の自由な時間よさらばだ。
俺が心の中で自由とさよならをかわしながら俺達は並んで歩く。
アリアを真ん中にして右にキンジ、左に俺と言った構図だ。
アリアは楽しそうにアサルトで習った投げナイフの話をしている。
「それで、優ったら先生にぼこぼにされてね」
その話はしないでくれ情けないから・・・
「ねえ、キンジ、優」」
「「なんだ?」」
俺とキンジの声がはもる。
「ふふ。 なんでもなーい」
少し前に行ったアリアは道すがら振り返り俺達がいるのを確認してはランランとセーラー服をちらつかせて道に戻るアリア。
機嫌いいな。
「お前さあ。 俺たち以外のパートナーはもう探さないのか・・・? せめてもう2、3人仲間を加えてチームを組んだほうがいいんじゃないか?」
「仲間なんかいらない。 みんなで何かやるって苦手だもん」
仲間ね・・・一瞬、レキが頭に浮かんだがSランクがアリアのチームメイトになるなら護衛も楽になるんだがな・・・
「そもそも、あたしは1人で戦えるし、あたしについてこれるパートナーがいればそれでいいの。 あんた達の調教が済めばそれで十分。 あんた達だけいればいいの」
まあ、神様とか訳のわからない力を使う連中じゃなきゃ対応は可能だがな
キンジが頭を抑える。
「頭痛がしてきた。 お前に頭をぽこぽこ殴られたせいだ」
「アスピリンでも飲めば?」
「俺は頭痛とか風には大和化薬の『特濃葛根湯』しか飲まねえんだよ」
「特濃? なにそれ」
「生薬の成分を濃縮したって意味だ。 漢方薬がいろいろ入ってる」
「じじむさ! じゃあ、それ飲んでおきなさい。 あしたもぽこぽこするから」
ぽこぽこって・・・
「ちょうど今切らしてるんだよな・・・あれはアメ横にしか売ってねえし結構、面倒なんだよ。 あそこに行くの上野と御徒町の中間ぐらいの薬屋でどっちの駅からも遠いし」
「キンジ、優」
いきなり立ち止まるアリア
ああ、キンジ聞いてなかったみたいだぞこの子
「これ見て!」
「なんだ?」「ん?」
キンジと俺がマスターズの掲示板を覗き込む。
『生徒呼び出し 2年B組 超能力捜査研究科 星伽 白雪』
白雪が呼び出し? 珍しいなあの子、超まじめで偏差値75の優等生で生徒会長で園芸部部長で手芸部部長で女子バレー部部長、性格はキンジの対するあれを除けば完璧なんだが・・・
はて?
「アリア、お前この前白雪に襲われたのちくったのか?」
キンジがアリアに尋ねる。
アリアは心外よというように
「あたしは貴族よ」
紅い瞳がキンジを睨みつける。
「プライベートなことを教師に告げ口するようなことは卑怯な真似はしないわ。 いくら売れた喧嘩でもね」
アリアは何か考えるようにしながら
「キンジ、優これはあの女を遠ざけるいいチャンスだわ。 この件を調査してあの女の弱みを握るわよ」
おい、アリア!貴族は卑怯な真似をしないんじゃいのか?
「弱みってなんだよ。 白雪はあれから来てないだろ?」
「来てるじゃない」
「え?」
「最近あたしが一人だとドアの前から気配がしたり物陰から見られている感じがしたり・・・電話が盗聴されてるみたいに断線したり一般校区でも渡り廊下から水をかけられたり、どこからともなく吹き屋が飛んできたり、落とし穴に落とされたり」
陰湿ってレベルじゃねえ! まじで白雪がやったのかよそれ!
「『泥棒猫』ってかかれた手紙が送られてきたり、猫のイラストつきで」
それはかわいい
「とにかくあたしはあの女に嫌がらせを受けているのよ。 気付いていないなんてあんた達どこまで鈍感なの! この無能!」
まあ、それぐらいなら護衛が出張る必要はない。
命こそ・・・
「それだけならまだいいわ」
ん?
「こないだなんか女子更衣室のロッカーを開けたらピアノ線が仕掛けてあったのよ! あたしが・・・その・・・まあ、身体的な理由によってロッカーの奥に潜り込まないと服を取れないのをわかってて・・・首の位置に仕掛けてあったんだから」
それはしゃれにならん。
下手すりゃ俺の知らない所でアリアは首をすぱっといって俺の護衛は終了という流れになっていたかもしれないんだな・・・
説得して聞いてくれるか?
うーむ、嫌だな。白雪とは戦いたくない。
実力も未知数だし・・・
「あんたたちこの白雪が呼び出されている時刻に一緒に・・・」
嫌な予感が・・・
「マスターズに潜入するわよ!」
勘弁してくれ