緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

252 / 261
もう誰も見てないかも・・・


第251弾 強襲!

サイド??

 

その日、暁本邸の南門警備小隊B班の末端、山田は緊張した顔で門に立っていた。

自衛隊の駐屯地の門のような状況で来る車をチェックして通す。

テレビでしか見た事ない政治家や財政界の大物たち。

その面子からこれから屋敷で執り行われる内々の結婚式がいかに重要なものかを物語っている。

暁家の次男暁竜馬様とどこかの名家の令嬢。

まるで、物語のような話だがこれは現実だ。

 

「よし、これで出席する方々は全部だな」

 

予定通りというようにAB班を束ねている室町が言った。

50になろうと言う初老に近い歳だが歴戦の戦いをくぐり抜けた男だと聞いている。

 

「どうした山田?緊張しているのか?」

 

「は、はい。ここに就職して戦闘訓練受けて初めての仕事なんです。それに、テレビでしか見た事ないすごい人達ばかりで・・・」

 

「ハハハ、今後も暁家で働くなら嫌ってほど見るぞ?何せこの家の方々は日本の表に出ている名家の中でもトップクラスの家なんだからな」

 

「嫌ってほど思い知りました」

 

「そうかそうか。そんなに緊張するな。ここの門は守りが一番厚い。何せ200人近い人員が詰め所に詰めてるしSランク級も140人集められている。テロリストが攻撃をかけてきても返り討ちに合うさ」

 

「攻めてくるってこの結婚に不満がある勢力があるってことですか?」

 

「ああ、なんでも学生が1人が侵入を試みてくるかもしれないとのことだ」

 

「が、学生?なんで学生が?」

 

「そこまでは教えてもらってない。ただ、その学生は武偵とのことだ。ランクはS」

 

「・・・」

 

無謀すぎると山田は思った。

同じSランクが大量にいるこの南門に現れればその学生は生きては帰れまい

現れるとしたら別の門だろう

 

「目的はその名家の令嬢とかでしょうか?」

 

「そこまでは分からんよ。ただ、噂ではその学生は令嬢の恋人なんだそうだ」

 

「恋人を助けに乗り込んでくる。どこかの3流小説みたいですね」

 

「そうだな。まあ、この南門から正面から1人で突入してくるような学生は俺は1人しか知らん」

 

「い、いるんですかそんな自殺志願者が?」

 

「というより、俺達が壊滅するだろうなぁ・・・」

 

思い出すようにいう室町に山田は首を傾げながら

 

「壊滅?これだけの警備がですか?」

 

「水月希を知ってるか?」

 

「?」

 

山田には聞いたことがない名前だ

 

「そうか、若いお前は知らんか。もう、15年以上前になるか・・・俺が傭兵をやっていた頃その名は世界に轟いていた。小国に攻め込んだソ連軍を壊滅させその後、ソ連を崩壊さたりとかな」

 

「へっ?」

 

「有名な話だがRランク級7人と1対7で勝利したとか世界滅亡の危機を救った。後は理由は覚えとらんがアメリカの1旅団を壊滅。テロの温床だった武装組織のリーダーを捕まえてテロ組織を撲滅・・・後は・・・」

 

「す、すみません。それどこのラノベですか?」

 

「ラノベ?事実だぞこれは学生時代から10年以上前の話になるがな」

 

「そ、そんなチートすぎる人がいるんですか?」

 

「と言っても最近は噂も聞かないし死んだと言われているな。まあ、いずれにせよここを突破できるものなんてそいつぐらいなものだ。心配しなくても現れんだろハハハ」

 

「そ、そうですよね。アハハハ」

 

そんな冗談のような存在がまして、自分の前に現れるわけがない。

そう山田が思った時だった。

 

「ん?」

 

山田の視線の先には人影があった。

ゆっくりとこちらに歩いてくる。

 

「室町さん」

 

「ん?各班警戒しろ。1人南門に接近中だ。山田行け!確認して来い。一般人なら追い返してこい」

 

「り、了解!」

 

スーツの中の銃を確認してから人影に接近する。

女性だ・・・10代後半くらいの容姿・・・

武器のようなもの・・・日本刀!?

最大限の警戒をしつつ銃を抜いて女に向ける。

 

「止まれ!これ以上の接近は許可しない!こちらには射殺の許可が与えられている!」

 

暁家の関連施設は場所にもよるが治外法権。

ここもその類だ。

 

「武器を置いて頭に手をつけてうつ伏せになれ!変な真似したら容赦なく撃つからな!」

 

「嫌だ」

 

「はっ?」

 

銃を向けられているのに女は怯んだ様子もなく豪快に腕を組んでにやりと笑っている。

 

「嫌だと言ったんだ。撃てるものなら撃ってみろ雑魚」

 

雑魚・・・血が頭に上るのを感じながらも女の上を狙い発砲する。

乾いた音が響き薬莢が地面に落ちる。

 

「次は体を狙う」

 

「撃てるのか?雑魚」

 

再び雑魚宣言に当ててやる!どうせ罪にはならない!女の腹を狙う。

当てるなら面積が広い体を狙えと戦闘訓練で学んだ。

再び引き金を引く。

鉛の弾はまっすぐ女の体に・・・入らなかった。

 

「ふむ」

 

ありえないと山田は思った。

女が鉛の弾を指二本で止めている。

真剣白羽取りのように・・・

 

「銃弾掴みも知らないのか雑魚・・・って挑発って難しいな。雑魚しか思い浮かばん」

 

女が考え込むようにしたので山田はチャンスとばかりにフルオートに切り替えて撃とうとした瞬間、山田は空を見ていた。

「え?」

 

地面に叩きつけられ女が門に向かい走る。

 

「さあて、派手に行くかぁ!」

 

山田が倒されたのを見て室町は迷わなかった。

駆け付けつつあった警備隊に発砲を命じる。

 

「撃て!」

 

数十の弾丸が走ってくる女に向かい飛ぶ

女はにっと笑いながら右指をくいっと上に曲げると銃弾が全て空に向かって飛んで行った。

 

「ステルス!?」

 

歴戦の室町は瞬時に理解不能の力をステルスと認識し指示を出す

 

「敵はステルスだ!銀装備を出せ!発砲は緩めるず撃ち続けろ!ステルス班C小隊は前に出ろ!発砲は味方に当てるなよ!」

 

矢継ぎ早に指示を出しステルスの能力を持った1人が発砲の合間を縫って飛び出した。

 

「死ねぇ!」

 

そのステルスは弾丸制御。

撃ちだす武器であれば軌道を隙に変えられるというステルス使いが出したのは84mm無反動砲だ。

人に使う武器ではないがこのステルス使いは好んでこれを使う。

引き金が引かれ砲弾が飛びだす。

砲弾は接近する女に向かうが女はにやりと笑い

横に大きく飛んだ

 

「逃がさんぞ!」

 

ステルス使いが砲弾の軌道を右に変えた。

本来ならあり得ない軌道である。

 

「弾丸制御か」

 

そういうと女は腕を組んでその場にとどまった。

 

「!?」

 

だが、砲弾はそのまま女に直撃し爆発を起こした。

黒煙が女がいた辺りを覆っているが・・・

 

「な、なんだったんだ?」

 

警備の1人がいい室町が確認のための指示を出そうとした瞬間煙の中から女が飛び出してきた。

 

「なぁ!?」

 

弾丸制御のステルス使いが仰天した声を上げる。

む、無傷!?

無傷で女は飛び出してきた。

疾風のように接近してきた女は弾丸制御のステルス使いを蹴り飛ばした。

 

「ぶげ!」

 

悲鳴をあげて叩きつけられる弾丸制御のステルス使い。

 

「し、死ねぇ!」

 

日本刀で切りかかる警備の1人。

その刀は炎に纏われている。

 

「ハハハ!遅い遅い!」

 

日本刀を炎ごと蹴り刀が吹き飛ぶと同時に右手を振りかぶると猛烈な竜巻が発生し警備員をなぎ倒す。

 

「必殺!非殺傷竜巻だ!」

 

地面に叩きつけられておる警備員は痙攣しているが生きているようだ・・・

だが・・・

 

「風使いか!」

 

「不正解だ!」

 

指を1本立ててにっと女は笑い警備員が発砲した数十の銃弾の空中で静止させた。

 

「だ、弾丸制御!?」

 

「んー、正確には違うな」

 

くいっと女が指うを上に向けると弾丸が空に消えていく。

 

「そーれ!」

 

振りかぶった拳を撃ちおろすと地面が割れ衝撃波で週十人の警備員が一度に吹き飛ばされた。

 

「つ、強い!強すぎる!」

 

僅かな時間で50人以上倒された光景に警備の1人が悲鳴を上げた。

だが、その光景に室町は思いあたる節が合った。

黒髪に日本刀に圧倒的な化け物。

このでたらめな力!

ここは日本なわけで黒髪の日本刀の女などいくらでもいる!

そして・・・思い出した。

思い出してしまった。

 

「ま、まさかお前水月希か!?」

 

「正解!」

 

びっと親指を立てた彼女に数人の警備員がへたり込んだ。

立っているのは彼女を知らない人間だけ・・・

 

「もうだめだおしまいだ」

 

「勝てっこない」

 

「逃げるんだぁ!」

 

次々にとある王子並みにへたれていく警備達だが、それでも室町は逃げることは許されない。

 

「援軍を呼んで来い!ありったけだ!」

 

「り、了解!」

 

門の中に駆け込む部下を横目に無駄と室町は思った。

傭兵時代に聞いたことがある。

彼女を倒す気なら一切私利私欲がない最新装備の全世界の軍隊とRランク千人が同時にかからなければならないと・・・

そして、そんな数のRランクは存在しない。

つまり・・・

 

「ひいい!」

 

「助けてくれぇ!」

 

悲鳴を上げていく仲間を見ながら室町は半泣きで思うのだ。

前にオタクな仲間が言っていたセリフが当てはまる

これ何の無理ゲー?

 

「ほい!」

 

いきなり目の前に距離を詰めた水月希の指が室町の額に当たるとそのままブッ飛ばされる。

飛んで気絶するまで自分がデコピンでブッ飛ばされたと知ることはなかった。

 

「えええ!デコピン!?」

 

それを見ていた警備の驚愕した声に彼女は笑いながら

 

「ハハハ、これぐらいなら誰にだってできるさ」

 

いやいやいや!無理ですから!とその場全員が首を横に振った。

 

「さーて」

 

水月希が自分たちを見ずに遠くを見るような仕草をした瞬間爆発音が遠くから響いてきた。

 

 

 

 

                †

サイド??

 

南門で希が暴れていた頃、時少し遅くして暁本邸東門前は戦場になっていた。

 

「う、撃て!相手はたった2人だぞ!」

 

隊長の怒号に機関銃を始めとする銃が一斉に火を噴き襲撃者に殺到する。

人などまともに食らえば生きてはいられないその数の銃弾

 

「無駄って言ってんだよ」

 

黒い防弾ロングコートに仮面をつけた男は手に持っていた剣を一振りすると銃弾が全て目の前で消滅した。

幾度か目撃した光景だが暁の警備員達はその光景に絶句する。

相手がステルスだという事に疑いはない。

だが、そのステルスの能力に検討がつかない。

消滅のステルス

そう考えれば説明の一端はつくが問題はもう一つ

男がもう一つ持つ一振りの日本刀が振るわれると警備員が1人吹き飛ぶ。

衝撃波を生み出しているようだがあれもステルスだとすれば2つのステルスを持つことになる。

同時に2つのステルスを使えるという人間の存在は知っているがそう多い存在ではない。

だが、今はその謎をじっくり検証している暇はない。

男は剣の他にも炸裂弾を始めとする攻撃を繰り返してきている。

だが、接近戦を仕掛けようにも連れ添うように男と戦っている女の存在がそれを阻んでいた。

日本刀1本で銃弾を弾き切り幾多の警備員を地面に沈めている。

幸いなことに相手の進撃はゆっくりで増員は次々と来てはいたが倒せる気は全くというほどなかった。

 

「ま、魔剣の土方と閃光の雪羽・・・」

 

「知っているのですかあいつらの正体を?」

 

つぶやくように言った上司に警備の一人が効くと40代くらいの上司の男は頷き

 

「あんな能力の化け物は俺は2人しか知らん!土方歳三のステルスは魔剣生成。日本刀に特定のステルスを付属させて能力を振るう能力だ。だとすれば今の状態で勝ち目はない。おい!花蓮様に指示をもらってこい!」

 

「り、了解!」

 

「まともに戦うな!距離を取って戦え!」

 

幸いなことに2人は攻め込んでくる様子はない。

いや・・・

 

「それが目的か?」

 

音が近づいてくる。

見ると違う門の上空に1機のヘリが接近してきている。

だが、現状そちらに対処する余裕はない。

航空機が相手であれば屋敷内のあれが火を吹くだろう。

そう思った時屋敷の中から音と轟音が轟いてきた。

ミサイルが発射された音だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミサイルが来る!」

 

悲鳴のように怒鳴ったのは屋敷まで後少しという場所だ。

信じられないような低空飛行で街中を突っ切り急上昇した所をミサイルにロックオンされた。

周辺に飛行禁止命令が出ているわけだから問答無用で撃ち落としにかかってくる。

日本国内とは思えない信じられない暴挙だ。

街中に落ちれば確実に一般人に被害が出るのにもみ消す自信があるということなのだろう。

 

「・・・」

 

鈴さんがヘリの右側のドアが開きマントの中からレミントンM700を取り出してミサイルの方に向ける。

鈴さんの腕は知ってるが狙撃銃でミサイルを撃ち落とせるのか?

 

「大丈夫です」

 

俺の横でレキが言う。

ヘリの大きさの関係から今回の狙撃は鈴さんだけで行う。

おそらくミサイルを破壊するには空間跳躍射撃でなければ難しいのだろう。

 

「・・・」

 

一瞬の間の後に引き金が引かれ発砲音がしたと同時にミサイルに異変が起こった。

俺達の場所に到達する前に屋敷上空を出ることなく爆発したのだ。

 

「今」

 

無表情に鈴さんが言うとどこから調達したのか知らんがUH60Jが暁家上空に入る。

北西方面の守りは空から見ると確かに薄い。

土方さんと姉さん達が暴れている証拠だろう。

遥か先に暁家の本邸らしき建物が見えるが屋敷内だけで何キロあるのやら・・・

 

「ミサイルは!」

 

見える範囲には発射車両らしきものは存在していない。

1発限りのものだったのだとすればありがたいのだが・・・

 

「じゃぁ後は頑張る」

 

暁家の上空に入る直前鈴さんがとんと落下するようにヘリから飛び降りる。

敷地内に入るとまずいという配慮だ。

鈴さんは陽動班に回ってくれる。

 

「生身で飛びおりるとかステルスは便利だな」

 

「確かにな」

 

キンジの言う通りだと同意した瞬間

 

「優!あそこ携行ミサイル!」

 

アリアが悲鳴のように声を上げた。

見ると携行型のミサイルがまさに発射される瞬間だった。

り、鈴さんはもういないし仕方ねえ!

 

「みんな!手はず通りだ!後で会おう!」

 

ガバメントを取り出し全員の中央に銃口を向ける。

銃弾は魔封弾、空間制御の鈴さんのステルスだ。

一定範囲の人間を空間ごと転移させるといういわゆるテレポーテーションなのだが鈴さんがそれを使わないのは恐ろしく使い勝手は悪い。

ようは、転移先を一切指定できないのだ。

だが、ミサイルから逃れるにはこれしかない。

引き金を引いて光が当たりを包み外に投げ出されるような感覚。

一瞬だがいきなり白い空間から緑の芝生が見え着地すると同時に遠くから爆発音が聞こえてきた。

ヘリが撃墜された音だろう。

パイロットは無人だから問題ないがあれ自衛隊の新型の無人ヘリだよなぁ・・・

しかも、一般国民には知らされていない秘匿兵器・・・

さて、周りにはみんなはいないから問題はどこに飛ばされたかだ。

事前の打ち合わせではバラバラになった場合は全員が武田信春の目指す手はずになっている。

すなわち屋敷を目指せば合流できるってことだ。

さて、周りに敵がいないってことはラッキーだが今の位置は・・・

 

「あなたですか椎名優希」

 

げっ!?

 

振り返るとそこにいた奴は最悪だ・・・

空き地島で戦った・・・

 

「高木文香か・・・」

 

風林火山の山・・・いきなり幹部クラスかよ・・・

 

「覚えていてもらい光栄です」

 

「高木様」

 

周りにいた警備兵が一斉に武器を構えようとしたがそれを高木が手で制す。

 

「あなた達は南門へ行きなさい。あなた達が敵う相手ではありません」

 

「了解!」

 

高木を残して警備兵が走り去るが状況は全然よくない。

最悪な相手が残った。

 

「さて、今さら言うまでもありませんね。私は南門の援軍に向かう途中でしたが侵入者は排除。信春様から生死は問わないと命令を頂いています」

 

どうする?考えろ・・・まともにぶつかって勝てるにせよ消耗は避けられない。

そんな状態で信春と対峙すれば・・・

周りを確認する位置は南門の近くか・・・戦闘音は遠くない・・・

 

「さて、椎名優希。選びなさい。死にますか?降伏しますか?」

 

カチャリと眼鏡を高木が外す。

その眼光は明らかな殺意を感じさせる。

強い。

空き地島で戦った時は本気じゃなかった。

だが、運は俺に味方してるな

 

「はっ!死ぬ?降伏?馬鹿言うんじゃねえよ。おまえは既に負けてるんだ」

 

「フフ、面白いことを言いますねあなた。先手は譲ってあげます。さあ、どうぞ」

 

「後悔するなよ?」

 

そう言った瞬間、俺は全速力で後ろに向かって地を蹴った。

 

「なっ!?」

 

まさかいきなり逃げるとか考えていなかったのだろう。

反応が一瞬遅れた。

 

「このひきょう者!それでも武家の人間ですか!」

 

背後からステルスを使用する気配を感じるがここまでくれば問題ない。

戦闘中の中に飛び込み混乱の隙をついて門の外に飛び出す。

当然、高木も追ってくる。

ド派手な音がする方へ走り目的の人を発見する。

 

「姉さーん!」

 

「ん?おお!優希か?」

 

「俺を屋敷まで投げ飛ばしてくれぇ!」

 

「よし来た!」

 

ひょいっとすれ違いざまに姉さんが俺を担ぎあげる

 

「ついでに山の相手もよろしく」

 

「ふむ、姉使いの荒い奴だ。だが、門の外だしいいぞ別に。お嫁さんを助けてこい!」

 

ごおおと風を切る音と共に俺の体が空に投げ飛ばされる。

下から高木のぎょっととた顔が見えだんと空中に飛ぶのが見えた。

 

「おおっと!門の外に出たなら行かせんぞ!」

 

「み、水月希!」

 

高木の前に立ちふさがり足を振りかぶる姉さん

 

「そーれ!」

 

「くっ!」

 

高木はサイコキネシスでバリアを張ったようだがそんなもの関係なく姉さんにブッ飛ばされる。

飛ばされながら高木が俺に向けた目はこう言っていた。

この卑怯者ぉ!

弟特権って奴だ。

 

空を飛びながら俺は思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

サイド高木

 

失敗した失敗した。

激突したがれきの中から立ち上がると屋敷の方へ消えていく椎名優希を見て怒りを感じる。

まさか、あんな恥知らずなことをするとは・・・

日本武家の仮にも後継者の候補だった人間が敵に背を向けるだけに飽き足らず戦闘をなすりつけていくだなんて・・・

状況を知らない人から見たら最悪の鬼畜野郎だ。

 

「大人しく寝ていれば攻撃はしないぞ。全て終わるまで気絶していたらどうだ?」

 

「余計なお世話です。あなたこそそろそろ帰ったらいかがですか?」

 

「ハハハ、そういうな。今日は弟が帰ってくるまでここにいるつもりなんだ。まだまだ、暴れたりんしな。相手になってくれないか?」

 

「いいでしょう。殺してあげます」

 

こいつは殺す!世界最強だとふざけた評価を受けるこの女を倒せば武田家での地位は安泰だろう。

対峙した時、銃声が止んだ。

全員が2人の高ランク同士の戦いに介入はできないと判断したためだ。

 

「くっ!?」

 

相手は腕を組んで不敵に笑っているけだ。

だというのに隙がまるでない。

中途半端な攻撃をすれば粉砕されてカウンターで終わる。

だとすれば・・・

最大最強の攻撃で粉砕するのみ

右手を空に手を上げありたっけの力を放出する。

左手を敵に向けると紫の光が彼女を包んだ。

 

「ん?」

 

水月希は動かない。

 

「受ける勇気がありますかあなたに?私の最大の攻撃を」

 

「・・・」

 

うすら笑いを浮かべたままのその顔は撃つならさっさとしろと言っている。

ならば望み通り!

 

「裁きを受けて死になさい!」

 

右手を振り下ろす

 

「覇岩砲!」

 

見るものは見えただろう。

空から巨大な火の固まりが振ってくるのが。

その大きさはゆうに20メートル以上あるだろう。

宇宙空間から真っすぐに一人の人間に向かい隕石が振ってくる。

風林火山『山』の最強の技。

相手を念動力の壁の中に閉じ込め宇宙空間から手繰り寄せた隕石をサイコキネシスの壁で大気圏の壁を突破させてその運動エネルギーを相手に叩きつける。

激突の爆発エネルギーは相手の壁の中ののみに留まるため相手は塵一つ残さずに消滅する。

宇宙空間からの隕石は小型でも地面に激突すれば圧倒的な破壊力でクレーターを作るものだ。

そんなもの人間が当たればひとたまりもない。

幾多の高ランクを葬ってきた高木の最強の技だ。

 

「後悔しなさい水月希。武田に逆らった罰を受けるのです」

 

「なるほど、隕石を直撃させる技か。面白いが使いどころが難しいなぁ・・・」

 

「何を言って・・・」

 

「よし!」

 

ぐっと水月希が構えを取る。

何をする気だと全員が息を飲んで見ている。

もはや、自らを滅する隕石が着弾するまで数秒もない。

右手を隕石に向け親指を曲げ・・・

 

「ま、まさか・・・」

 

「ほい」

 

「「「ちょっ!?」」」

 

全員が同じ言葉を発した。

隕石がUターンし空の彼方に消えていく。

それを成したのは・・・

 

「で、デコピンで隕石を弾き返した・・・」

 

あ、ありえない・・・ありえない・・・なんだこいつは・・・

 

「ホームラ―ンってな」

 

ひゅっと右手を振りかぶると高木の障壁が消滅する。

 

隕石の運動エネルギーすら防ぐ障壁を・・・

噂だけだと思っていた。

そんな人間がいるはずがないと・・・

高木は今、この瞬間確信した。

目の前の女は次元が違うと世界最強が目の前に・・・

 

「ほい!」

 

!?

額に激しい衝撃を感じた瞬間、宙を舞う感覚次の瞬間、高木の意識は闇に沈んだ。

 

 

 

 

 

 

            †

 

 

サイド 水月希

 

「ひいいい!高木様が負けた!」

 

「な、なんなんだ!隕石をデコピンとか!ありえねえ!」

 

「逃げるんだぁ!」

 

「ああ、やりすぎたか?」

 

思っていた以上にやりすぎたようだ。

南門の警備部隊は総崩れになり我先にと門の中に逃げていく。

これでは陽動の意味がない。

 

「うーん」

 

「ぎゃああああ!」

 

とりあえず門の外の人間を気絶させてから誰もいなくなった門の前で腕を抱える。

 

「やばい・・・歳に怒られるぞこれ・・・」

 

その気になれば中に突入することもできるがそれをするといろいろと厄介なことが生まれるためできればそれはしたくない・・・

歳には適度に暴れて警備を引きつけろっていわれてたのになぁ・・・

引きつけるどころか壊滅させて逃げられてしまった・・・

 

「どうするかなぁ・・・」

 

「希様」

 

声に振りくと見知った顔が合った。

 

「ん?来たな」

 

「もう終わってるようですけど」

 

「ここはな。後は中だ。優希達が戦っている。中のことは頼む」

 

「了解。世話の焼けること」

 

屍(死んでないが)の山を越えて門に突入していく背中を見ながら遠視のステルスで中の様子を見ながら笑みを浮かべる。

 

「生き残れよ優希。応援してるぞ」

 

戦いは中の若き武偵達に委ねられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイド優希

 

俺って運が悪いのか・・・

姉さんの投げ飛ばされて着地したのは屋敷まで数百メートル地点

周りに警備の人間はいない。

陽動が意味をなしているのだろう。

だが・・・

 

「なんのつもりだ?」

 

殺気を猛烈な勢いで放っているのは俺の見知る顔だ。

こいつは信冬のことを大切に思っていると思っていた。

 

「知れたことだ少年。先に進もうとるすならここが墓場となる」

 

「俺は信冬を救いに来た」

 

「違う。少年の行動は信冬様を不幸に落とす」

 

信春に何かを言われたのか・・・雪村の時と同じだな

 

「もう一度言う。俺は信冬を助ける」

 

「では聞こう。少年、信春様との戦いに水月希は参戦するか?」

 

「姉さんは直接は参戦しない」

 

「なら少年。お前に勝ちはない。引くならよし。進むと言うなら」

 

ガシャン

 

何もない場所から巨剣を取り出した吸血鬼のハーフ、ジャンは構えを取る。

雪村も同じようだったな・・・きっとお前も悩みに悩んで信冬のために交換条件を飲んだのだろう。

これは男が守りたい物のために選んだ選択だ。

ならば、それに答えないのは失礼だろう。

 

「ひ・・・」

 

緋刀を呼び起こそうとそのワードを口にする寸前に声が重なる。

 

「ちょっと待った!」

 

「「!?」」

 

ジャンと俺が声をのた方を見ると木の枝に座っている存在に気がついた。

いつの間に!

 

右手には日本刀

左腰にも同じく日本刀だ。

 

闇のせいではっきりとは見えないが髪の長さから女だということがわかる。

 

「優様は先にこいつの相手は私に任せて頂戴」

 

俺を様付で呼ぶということは・・・

近衛の誰かか?

だが、椎名の近衛は・・・

 

「何者か知らんが邪魔をするな。少年と俺は・・・」

 

「ふふん」

 

にっと少女の口元が緩み次の瞬間

 

「飛龍一式風切り」

 

「「なっ!」」

 

俺とジャンが同時に声を上げる。

すれ違いざまに切りつけたの技は椎名の剣術。

 

「ぐっ」

 

ジャンが膝をついた。

速く正確な剣術だ。

 

「お前その技!」

 

「今はその話してる場合じゃないんじゃない?」

 

すっと少女は右手で日本刀を肩に置き左手でかわいらしく指を立ててウインクする

 

「また会うこともあるかもしれないけど今は名乗る気はないわ。武田信春とは消耗なしで戦いたいでしょ?」

 

少女の言うことはもっともだが正体がわからないものの言葉を信じていいのか迷うところだ。

 

「じゃあ、こう付け加えておく。私は今回水月希の依頼で動いているわ」

 

姉さんか!そういうことかよ・・・

 

「すまねえ!任せたぞ!」

 

「任されるわ。また、会いましょ兄さん」

 

背後からなんかすごい言葉が聞こえた気がするが聞かなかったことにしよう

同時に背後から戦闘音が聞こえてくる。

少女とジャンが戦いを始めたのだろう。

 

屋敷が見えてくる。

正面入り口には警備が2人

俺を見るやいきなり、発砲してきたが銃弾切りで裁きすれ違いざまに切りつけ無力化する。

 

ドアを蹴破り巨大な暁の屋敷に突入する。

土方さんに教えてもらった見取り図によれば信冬がいる場所は遠くない。

 

「邪魔だどけぇ!」

 

ワイヤーで2階に跳躍し廊下を警戒していた3人を気絶させて廊下を走る。

待ってろよ信冬!あと少しだ!あと少しで解放してやるからな

 

廊下の先にあるのは巨大な扉だ。

あの扉の向こうでは結婚式が執り行われているはずだ。

廊下を走りながらその声が聞こえてくる。

 

「ではこの結婚に異論のあるものはいませんか?」

 

神父さんらしいその声・・・

なんというタイミング・・・

我ながらものすごいタイミングできたんじゃね?

 

ドアを蹴破り中に転がり込みながら

 

「その結婚異議あり!」

 

力一杯叫ぶ!

教会のようなその場所で参加者たちが俺に視線を向けてくる。

だが・・・いたな

純白のウェディングドレスを着て俺を泣きそうな目で見ているのは紛れもないあいつだ。

だが、もたもたできない理由がある。

ここにいるのは武田信春以外にも強者が多い。

 

「その結婚は認めない!武田信春!もう一度信冬をかけて勝負しろ!」

 

周りが動く気配がする。

こいつらが全員動けば終わりだ

まだか・・・まだなのか

 

「全員動くんじゃないよ」

 

とんと化け物が俺の前に進み出てくる。

かけには勝ったな

 

武田信春は引きずりだした。

ここからだ!ここからが本当の本番だ。

勝って見せる!1人で対峙になっちまったが勝って信冬を救って帰るんだよ!

 

 

 

 

 

 




というわけでお久しぶりな草薙です。
お前誰?というぐらい開けてしまいましたが細々とは書いていました。
実はキーボードがぶっ壊れて書けなくなっていたのですが最近、新しいパソコンに変えたので戻ってきました(^▽^)/

更新速度は相変わらず亀ですが感想ドーピングお待ちしています(笑)

さて、本編ですがついに暁家強襲。
少し駆け足気味ですがオリジナル話もクライマックスが近づいてきました。

果たして、優は信春に勝てるのか!

それでは!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。