緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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ドーピング期間は終わり、アリスベルも完結してしまってちょっと寂しい


第246弾 不安な夜

10月27日、武田が提示してきた再襲撃まで後4日。

昨日の暁の件は悪いがアリア達には黙っておいた。

絡めば絡むほど、この問題は俺というより、俺達の日本の裏武家の戦いの構図が浮き出てきている。

信冬の護衛の依頼を頼んだのは俺だが、あまりアリア達を深くこの件に関わらせたくないと思えてきた。

道路の風間との戦闘でも武偵校がある学園島と言う点も幸いしアサルトの馬鹿が暴れたで済まされた。

つまり、よくあることなので誰も気にしなかったのだ。

死人やけが人が出ていたら話は別だっただろうが何せ、この件に関わったのは・・・

 

「むー、傷一つ残ってませんねぇ」

 

と不満そうに言いながら俺の上半身を見ている白衣姿のアリスだ。

アリスに呼び出された俺は服を脱いでくださいと言われ上半身裸で後輩に検査を受けさせられていた。

ちょっと、恥ずかしい。

 

「おい、もういいだろアリス」

 

できるならこの時間を早く終わらせたいんだが。

アリスは首を横に振りながらその少し小ぶりな顔を俺に向け

 

「駄目ですよぉ。武偵弾の直撃受けて生きてるお兄さんもお兄さんですけど破片とか刺さってたらどうするんですか」

 

「別に痛みもないし問題ない」

 

「そうですけど・・・アンビュラスとしてはやりがいありませんねぇ」

 

アリスはむうとかわいらしく首を傾げて少し下がり足を組んだ。

お、おい!

白衣の下は武偵校制服なので中が見えそうになるので慌てて目をそらした。

 

「おや?どうしたんですか?」

 

顔だけ見えるように目を向けるとアリスはにやりしていたのでもしかして、わざとか?

 

「可愛い後輩のパンツを見たいお兄さんの気持ちは分かりますが」

 

「ばっ!違う!」

 

「ほほう。興味はないと?」

 

こ、こいつは。本当に小悪魔だな。

いくら、武偵病院の中の診察室とはいえ、外に出れば人はいっぱいいるんだぞ。

というか、上半身裸の男の前でそんなことするな!いつか、襲われるぞお前。

い、いや俺はやらんが

 

「大丈夫ですよ。スパッツはいてますから」

 

「・・・」

 

見ると確かに黒いスパッツが見えるがお前・・・そういや、秋葉もいつもスパッツはいてるよなとか考えて慌てて首を横に振った。

 

「じゃ、冗談はこれくらいにして診察の結果です。あ、服着ていいですよ」

 

制服に腕を通して再び座るとアリスが説明を始めてくれた。

 

「まず、体に傷はありません。折られたっていう肋骨も完全に治ってますね。化け物ですかお兄さん」

 

少しだけ目を細めてアリスが言った。

否定できんな・・・致命傷に近い傷負っても治るとか吸血鬼のレベルじゃね?

 

「緋刀の進行ですが、これは進んでます。カラコン出しときますね」

 

「ああ・・・」

 

そう、昨日緋刀を多用したせいか左目に続いて右目もカメリアの色になっちまった。

だから、朝アリスに電話してここにいるんだがこの分だと髪の色も変わるのかな?

 

「髪は変わらないと思いますけどね」

 

俺の考えを読んだのかアリスが言うが

 

「なぜだ?アリアはピンクだぞ」

 

「んん、アリア先輩は緋弾ですからよく分かりませんが緋刀の方はいろいろと調べた結果目までだと思いますよ?変わるの」

 

つまり、根拠はないが多分、大丈夫ってことか?

だが、緋刀化の時、髪の色変わるんだが・・・

 

「いいじゃないですかスー○ーサイヤ人みたいでかっこいいですよ」

 

「うーん・・・」

 

まあ、考えようによっちゃそうかもしれないけど・・・強くなる時、姿が変わるなんて変身ヒーローみたいだしな。1度は男の子があこがれるもんだし。

秋葉当たりは面白そうとか言ってくれるかな?

そういや、秋葉も椎名本家から暁と武田と戦うなと指令を受けたみたいだったな・・・

あの後、すみませんと何度も謝ってたし。

 

「それで、アリス。聞きたいんだが緋刀がこのまま進行していけば最終的にどうなると予想できる?」

 

「そうですねぇ・・・アリア先輩の方は緋緋神に乗っ取られるとか聞いてますがお兄さんの中にはスサノオさんとかいう人がいるんですよね?」

 

「自由に出てくるわけじゃないが時々、頭の中で声がしたり、夢の中で姿を見たりするな」

 

「その姿はお兄さんが女装して髪が長いバージョンそっくりだと?」

 

「ああ」

 

「んー、乗っ取られるとかはないと思うんですが・・・これは私の予想なんですけどスサノオさんはその紫電の残留思念とかじゃないんですか?」

 

「残留思念?」

 

「紫電を使えるのはお兄さんだけなんですよね?今まで、抜き身で遠山先輩も使ったらしいですがスサノオは遠山先輩には現れなかった」

 

「ああ。だが、紫電が手元を離れた時もスサノオは出てきたぞ」

 

「ですけど、紫電持ってる時より遥かに少ないんですよね?まあ、私の予想ですしこれはもう少し研究してからですね」

 

私には専門外ですからと右手を軽くあげてアリスは言った。

 

「まあ、新技を教えてくれたりとか悪いことばかりでもないんだがな」

 

「それは、緋刀を使った?」

 

「ああ、割といろいろ教えてもらってる。なんか、忘れてるのもあるから思い出したら教えてくれるそうだが・・・」

 

「・・・」

 

アリスは再び考え込むように足を組んでスパッツが見えるのも気にせずに右手を口元に当てた。

真剣に考えているようで今度は口出しできない。

 

「私の悪い予想があたらなければいいんですがやはり、緋刀の進行はやはり、抑えた方がいいですね」

 

アリスはポケットからカプセル状の薬を取り出すと俺に差しだしてくる。

 

「紫電があるなら緋刀には割と自由になれるみたいですが普段は可能な限り使用しないでください。と言っても、武田の襲撃が近い今そんなこと言ってられる状況じゃないのは分かりますが・・・」

 

「悪いな。アリス、今は最悪の状況だが緋刀の力を引き出さなきゃ今回の相手には勝機の1%も見いだせないんだ。緋刀は使う」

 

「勝算はあるんですか?」

 

「信冬には当日になれば考えがあるって話だ。それに、俺の方でも少し考えてる」

 

「聞いていいですか?」

 

「武田信春って信冬のばあちゃんに直接話してみる。婚約を取り下げるようにな」

 

「それ・・・現実的じゃないと思いますけど」

 

「通らなきゃ力で押し通す」

 

化け物。戦うなと周りからは散々言われているが俺は覚悟をもう決めた。

どんな化け物だろうがやれるだけやって後悔ないようにする。

 

「即死しなければ私が治してあげますから怪我は安心してください」

 

「その時は頼むなアリス。無傷で勝てる相手じゃなさそうだし」

 

「はい、1傷10万で治しますよ」

 

悪魔か・・・ペロッと舌を出す可愛らしい後輩の小悪魔ぶりに俺はため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                     †

 

「え?弁当がない?」

 

その一言から俺の昼休みは始まった。

朝、アリスの所に行って秋葉にも信冬にも弁当をもらうのを忘れてたため昼に2人に話しかけたんだが・・・

ちなみに、現在、2人には量を調整してもらい2人でそれぞれ弁当を作ってもらっている。

信冬的には不満だし秋葉は上位の命令であるから、嫌々ながらも引きさがりそうだったんだが俺が妥協案で2人に量を調整してもらう事で話はついたわけだ。

ちょっと、信冬の笑顔と秋葉のジト目が怖かったけど・・・

 

「すみません。優君、昨日の件でちょっと朝に時間がとれなくて・・・」

 

「不本意ながら理由は同じです。申し訳ありません優希」

 

周りの連中が弁当を広げているのを横目にしながらさて、どうするか・・・

購買はもう、出遅れてたから今から飛び出しても間に合うまい。

キンジも同じくパンを買うために飛び出しているからいないし、アリアは食堂に行ったようだ。

理子はご飯食べないのかアイマスクしてク―ク寝てるし・・・

エルはどこ行った?

 

「しゃあねえな。食堂行くか」

 

「食堂ですか?私は利用した事がないのですが・・・」

 

「なら、初めての利用ってことで行こうぜ」

 

今からなら混んでるだろうがなんとか座れるだろう。

キンジやアリアもいるかもしれんしな。

とまあ、こんな流れで食堂に来たんだが

 

「あんた達なんでここに集まるのよ」

 

「せっかくのアリア先輩と2人きりの昼食がぁ・・・」

 

「別にいいだろアリア」

 

食堂でアリアとそのアミカの間宮あかりを見つけ丁度、席も3つ余っていたのでそこに座らせてもらった。

 

「すみませんアリアさん。迷惑と言うなら・・・」

 

「あんたと秋葉はいいわ。優は床に座りなさい」

 

「なんでだよ!」

 

「そうです。椎名先輩は床がお似合いです」

 

間宮ぁ・・・

そう思った時

 

「優先ぱぁい!」

 

「うお!」

 

どーんと背中から何かがぶつかってきたので持っていたうどんを落としそうになり慌てて踏ん張る。

この声は・・・

 

「おいこらマリ!いきなり抱きつくな!」

 

「へへへ、いいじゃないですか。私クエストで最近学校いなかったんですから」

 

頬ずりされてる感覚を背に感じながらはっとすると、信冬と秋葉がこっちを見ているぞ

 

「優希?その子は?」

 

「初めまして武田先輩!優先輩の1番大事なアミカの紅真里菜です!」

 

「1番大事な?」

 

秋葉お前は真里のこと知ってるだろうが!なんだ、そのジト目は

 

「どこ行ってたの真里?」

 

「あ、うん。ちょっと、九州の方に行ってたんだ」

 

そう言いながらマリが間宮の横に座ったので俺の席が消える。

ちなみに、秋葉と信冬は既に座ってるのだが・・・

 

「アミカの制度は知ってるだろ?あいつは、まあ、気まぐれでアミカにしたんだよ」

 

「優先輩、激しく私を求めたんですよ。おまえをアミカにしたいって情熱的に迫ったんです」

 

「んな事実はねえ」

 

怒られる前に言っておく。

にしても、座るとこないのか・・・お!

 

「座るぞ」

 

「断る!」

 

「んな固いこと言うなよ」

 

アリアの後ろでカレーを食ってたRRR会長村上の横が空いていたので強引に座った。

やれやれこれで飯が食える

 

「騒がしくしないでよね」

 

「へいへい」

 

アリアが斜め後ろから言って来たので適当に返事してうどんをすする

ちなみに金の節約で素うどんだ。

 

 

「いただきます」

 

信冬は礼儀正しく手を合わせて俺が勧めたとんかつ定食を食べ始める。

やはりというか信冬は一挙に気品を感じるなぁ

秋葉は信冬から離れた間宮の横。つまり俺の斜め後ろでおにぎりとサラダ、自前の板チョコをもそもそと食べている。

チョコばかり食べてたら将来糖尿病になるんじゃないか秋葉?

まあ、ステルス使いは全部それをエネルギーに変えてるからならないんだろうが・・・

 

「おい、椎名」

 

「ん?なんだ村上」

 

「レキ様はいないのか?」

 

「レキ? 今日はまだ、会ってないな。この時間なら屋上じゃないか?」

 

「ふん、使えない奴め。せめてレキ様を連れて私の目を浄化させるぐらいの役目を果たせ」

 

知らねえよそんなこと。

 

「まあ、それはいい」

 

後ろで女子たちが話をしているのを聞きながら村上が小声で聞いてきた

 

「また、厄介事に巻き込まれてるな貴様」

 

「ああ、まあな。だが、今回はレキがらみじゃねえぞ」

 

「レキ様がらみならすぐに分かる。だが、あの転校生がらみだろう」

 

するどいな。RRRの情報網って奴か?

いや、ある程度見ていたら分かるか・・・

 

「ちょっと厄介なクエスト抱えてる」

 

「それは先日、お前が襲われた件に関係してるのか?」

 

「まあな」

 

「ふん、貴様がくたばろうとも関係はないがレキ様が悲しむことだけはするなよ」

 

「なんだ?心配してくれてるのか」

 

「そんなわけないだろう。お前はRRRの宿敵だ」

 

そう言っても少しは心配はしてくれてるんだろう。だが今回の問題は周囲に助けを求めるのは次々潰されて言ってる状況だ。

裏の世界の問題はやはり、周りを巻き込むわけには・・・

秋葉も封じられた今、俺だけで信冬を守れるのか?

ん?携帯か?

振動を感じてポケットからスマホを取り出すと見知った人からの電話だった。

鈴さん?

鈴・雪羽月花の鈴さんだ。

確か、土方さんの家にいるはずだが・・・

信冬達に断って食堂を離れて校舎の裏に出て電話に出る。

 

「もしもし?」

 

「校門」

 

「え?」

 

一言鈴さんの声がしたかと思えば電話が切られてしまう。

とりあえず、校門の方に行ってみると車が1台止まっている。

レガシィだから土方さん?

だが、運転席にいるのは鈴さんか?

すっと俺に目で乗るように促しているみたいだな。

とりあえず、助手席に座ろう。

 

「あの、鈴さん?何か用ですか?」

 

「・・・」

 

レキのように無表情のまま、鈴さんはそのまま車を発進させる。

どこに連れて行く気だ?

 

「鈴さん?どこに行くんですか?」

 

「目的地はない。話をするだけ」

 

「話?」

 

「優希は武田信春と戦う?」

 

その話か・・・なんだかんだで俺っていろんな人に心配かけてるんだな・・・

 

「話し合いはするつもりですが最悪はそうするつもりです」

 

「無理、勝てない」

 

「あの、俺よく知らないんですが信冬のばあさんってそんなに強いんですか?」

 

「強い。勝てたのは歳、雪羽、そして、あと一人しか私は知らない」

 

「なるほど・・・って土方さん達が?姉さんじゃなくて?」

 

こくりと鈴さんは頷いた。

 

「飲む?」

 

そう言って買っていたのかミネラルウォーターを差し出してきたのでありがたく貰っておくが話の続きだ。

というか、鈴さんって信冬のばあさんとの戦いを直接見た事あるみたいだぞ。

これはチャンスだ。

敵の情報をするのは戦いの基本。

まして、土方さん達が勝ったことあるならその方法も聞いておけば化け物相手でも勝機は生まれる。

 

 

「信冬のばあさんの能力を教えてください。それと、どうやって土方さんが勝ったのかも」

 

「戦う?」

 

きろりと目で俺を見てくる鈴さんだがここは引く気はない。

もう、戦う覚悟は固めてるんだ。

 

「はい、避けられないなら俺は戦います」

 

「風林火山は5つの能力のカウント。5つ全てが使用された時、5つの能力が全て破壊のエネルギーの固まりになり相手を滅ぼす」

 

諦めたのか鈴さんは前を見ながら説明を始めてくれる。

 

「カウント?それって『風』『林』『火』『山』の5つの能力を使う事が条件にとんでもない破壊力の一撃を放てるってことですか?」

 

「そう、その破壊力の最大値は海を割り山を消し飛ばす」

 

それは・・・撃たせれば確実に負けるってことか・・・

土方さん達は撃たせずに勝ったんだろう。

 

「18年前の戦いでは正面からの一撃を私たちは受けなければいけなかった」

 

「え?それって・・・」

 

「山を消し飛ばす一撃を正面から」

 

「えっと・・・あ!姉さんが弾き返したんですよね?」

 

姉さんならそれぐらいはやるだろう。

しかし、鈴さんなんで首を横に振るんです?

 

「希はその時は戦えない状態だった。私達が勝てたのは花音のおかげ」

 

花音・・・北条花音か・・・となると・・・

 

「そう、因果律を操り武田信春の攻撃をぎりぎり打ち勝つ因果に書き換えた」

 

やっぱりか・・・

 

「あの戦いは花音がいなければ負けていた。そして、今は花音はもういない」

 

無表情だが・・・どこか、寂しそうに鈴さんは言った。

そして、俺を見ると

 

「だから勝てないと言った。歳はあなたを死なせたくない」

 

だから・・・信冬のことは諦めろっていうことか?

 

「心配してもらえるのは嬉しいんですが俺は信冬を救うって決めてるんです。だから・・・」

 

「今回の件。私たちの助力を得られると考えるのはやめるべき」

 

「それでも俺は引きません」

 

たとえ、孤立無援になってもやってやる。

どれだけ脅されてもな

 

「強情。歳の若い頃に似てる」

 

「ハハ、それは光栄です」

 

土方さんは俺が尊敬している1人なんだ。

そんな人に似ていると言われるのは褒め言葉ですよ鈴さん

 

「だが、好意は持てる」

 

そう言って鈴さんは微笑みを浮かべて俺を見る。

この人は・・・表情は少ないがレキよりは自然に笑みを浮かべられるんだな。

いつか、レキもこうなるのかな・・・

 

「雪羽も、本音では信冬を助けたいと考えている。だが、雪羽が動くことは今回は難しい」

 

「分かってます」

 

武田家の問題というのもあるが雪羽さんの立場は微妙だ。

鈴・雪土月花の助力はやはり無理そうだ。

 

「姉さんは?」

 

そう言えば、あの人今どこいるんだ?ついでに聞いとこう

 

「希は今、アフリカ。正確な場所は知らない」

 

ああ・・・テロリスト壊滅無双でもしてんのかなあの人・・・

 

「あまりあてにしない方がいい。完全に予想不能」

 

ですよねぇ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、寮に戻るとキンジと信冬がソファーで話をしているところだった。

珍しい組み合わせだな

 

「おかえりなさい優希」

 

立ちあがって鞄を取りに来てくれる信冬。

ついつい、渡してしまう。

 

「じゃあ、信冬。俺は行くぞ」

 

「はい、ありがとうございます。キンジさん」

 

「ああ」

 

「なんだ?キンジどこか行くのか?」

 

「まあな」

 

そう言って玄関から出て行ってしまうキンジ

ん?いったいなんだ?

 

「キンジどこ行ったんだ?」

 

「すみません。優希、私がキンジさんに頼んだんです。今日は2人きりにしてほしいと」

 

ふ、2人きりって・・・あの、なんで頬を赤くしてらっしゃいますの信冬さん

 

「そ、そうか」

 

ま、まずいんじゃないの? 男と女が2人きりって・・・

って、信冬なら心配はないか・・・

何せ、信冬は箱入りお嬢様。

そういった行為は結婚後と今時珍しい古風な考え方な持ち主だ。

俺がそういう行動を起こさなければって何考えてる俺よ!

 

「優希は先にお風呂にしますか?それともご飯の方が先がいいですか?」

 

「・・・」

 

王道的にはその先はそれとも私なんだが信冬はにこにこして俺を見てるだけだ。

その顔には裏は見受けられない。

なんかごめん信冬・・・

 

「んじゃ、風呂に入ろうかな」

 

「はい、温度は45度にしてますよ」

 

と言ってタオルを渡してくれる。

気が利くよな相変わらずお前

そして、風呂に入り信冬のおいしい晩御飯を食べて後はだらけて寝るだけという状況になっても信冬は特に変わった話をしてくることはなかった。

ただ、俺の世話を嬉しそうにしてくれているだけ。

アリアもレキも誰も訪ねてこない。

完全に2人だけの空間だ。

武田襲撃の話は一切せず時間だけが流れ、俺は先に自分の寝どこに潜り込んでスマホをいじってそろそろ寝るかとスマホを置いて寝転ぶと急に部屋の明かりが消えた。

 

「あれ?信冬か?」

 

襲撃の可能性を一瞬、考えるもその可能性は低いと考え直す。

となると犯人は・・・

 

「優希」

 

暗闇で何も見えないが声から信冬が目の前にいるのが分かった。

ベッドの前に・・・

ってえええええ!まさか、そんな展開!

いやいや、待てそんなわけあるか!

そうだ!分かったぞ!

 

「じ、冗談はやめろ理子!どうせお前の変装なんだろ?

 

こんなことやるのは理子しかいない!

 

「・・・」

 

すっと気配がベッドに入り込んでくるのが分かる。

慌てて後退するが逃げ場を失うだけ。

これ、前にもあったような・・・

 

「今夜は・・・一緒に眠りませんか?」

 

いやいや、それはまずいだろ!

すっと信冬が俺の背中に頭を押しつけるのが分かった。

 

「信冬?」

 

煩悩は全部消えた。

これは理子じゃない。

だがあの時の理子に似ている。

信冬は俺の背中にしがみついて震えているのだ。

 

「武田家のことか?」

 

「・・・」

 

信冬は答えない。

背中の気配を感じながら俺は何を言えばいいかを考える。

大丈夫だ。俺に任せろ。

そう言えば・・・いいのだろうか?

話し合うとはいった。

戦うとは決めた。

だが聞けば聞くほどの絶望に俺は・・・

 

「優希は・・・覚えていますか?」

 

「何をだ?」

 

「あなたが最初に私の家に来た時のことを」

 

「ああ、覚えてるよ。お前は雪の降る庭にいたな」

 

「では、滞在中に言ったあのことは覚えていますか?」

 

「あのこと?」

 

「・・・いえ、覚えていないのならいいのです」

 

「そうなのか?」

 

「はい」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

沈黙が闇の空間に流れる。

こちこちと時計の音だけが部屋に響くがやがて、スゥスゥと寝息が聞こえてきた。

どうやら、寝たらしいな信冬。

このままじゃ、まずいし俺はソファーで・・・

だが、それは叶わなかった。

信冬が俺のシャツをつかんで眠っていたからだ。

このまま、シャツを脱いで行くことはできるが・・・

 

「はぁ」

 

ため息をついて俺は再び寝転がるといいにおい、だが少し落ち着く匂いを感じながら目を閉じた。

 

付け加えるならその日の夜は何も起こらなかったとだけ言っておく

 

 




といわけで優は狼になれないヘタレた羊さんでした(笑)

まあ、信冬はそんなこと望んでたわけではないのですが男としてどうなんだと笑って下さい。

さあ、次回は一気に飛んで学園祭に突入予定!
つまり、武田襲撃まであと一日となるわけです。

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