緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第233弾 狂戦士ヒルダ

ミスったなヒルダ!

走りながら俺はそう考えた。

奴の服が少なくなったことで魔臓の位置を示す模様が丸見えだ。

両腿に2つと臍の下に1つ、右胸の下だ。

銃はある。

俺達全員分を合わせればおつりが来るだけの弾が今はあるのだ。

同時破壊なら刀でもいけることはブラドで証明されている。

いけるぜこれは!

ローズマリー参戦をさせないため、治療は施せないが理子をエルに任せ先陣として飛び出したのは俺と秋葉だ。

本来最前衛はアリアも含まれているが動きは仕組まれていたように自然に動く。

俺は正面から、秋葉は風で宙に飛び上がる。

 

「気でも狂ったのかしら?」

 

ヒルダが前に手を突きだすと120%と言っていた大きさの雷球が時をほぼ置かずに現れる。

そして、それは更に、巨大化し

 

「プレゼントよ!有難く受け取りなさい下郎」

 

「いらねえよ!」

 

俺は進路を右に変えて走り出すがヒルダはそれに合わせて雷球をずらしていく。

そのヒルダに暴風が襲った。

 

竜巻のような風がヒルダを包み無数のかまいたちとなりヒルダを切り刻むがヒルダは秋葉を見上げず、にいと笑う。

相手にするまでもないという事だろう。

 

「さあ、受け取りなさい!」

 

雷球が射出される。

バチバチと恐ろしい電圧を感じさせるもんだがな!

閃電と天雷をクロスさせ刀気を纏い雷球に激突させそのまま上に受け流すと雷球はそのまま、空へと消え雲の中で巨大な雷鳴を響かせた。

スパークと閃光。

その隙を俺達は見逃さない。

 

俺と秋葉が作った隙にアリアとキンジが弾丸のように疾走し、俺達は同時に銃を発砲する。

ヒルダに奪われたガバメントの弾を補充したアリアの2丁拳銃。キンジのベレッタ。

そして、俺のデザートイーグル。

4つの弾丸がヒルダの目の模様に吸い込まれていった。

ヒルダの目が大きく見開かれる。

その目は俺を見て・・・笑う。

 

「効かないわね」

 

ヒルダの傷口からぽろりと弾が落ちて傷がふさがっていく。

おいおい。まじかよ。

虚勢張ってるわけじゃねえよ・・・な。

 

「いいわ。その目、勝利を確信した瞬間、裏切られた絶望の目。あなた達はこう思ってる。なんで、魔臓を破壊したのに傷が治るのか?ホホホ、もっと絶望しなさいそれを串刺しにしてあげるから」

 

考えられることはいくつかある・・・だが、それが事実だとしてどうする・・・

 

「私はね。生まれつき見えにくい所に魔臓があるわけではなかった。その上この忌々しい目玉模様をつけられてしまったの。だから、これはお父様にすら秘密にしてたけど外科手術で変えちゃったのよ魔臓の位置を。ほほほ、おほほほほ」

 

雷鳴がとどろきシルエットが悪魔のようなヒルダ。

 

「さあ、私の魔臓はどこでしょう椎名優希?」

 

「さあな。教えてくれよ」

 

考えろ。こいつがおしゃべりしている間になんとかする方法を

 

「実は私も知らないの。あえて知らないようにしてたのよ。だって、私が知ってたら誰かにばれるかもしれないでしょう?手術痕は無くなっちゃったし手術をさせた闇医者は封じちゃったから真相は誰も知らない」

 

殺したわけか闇医者・・・

 

「残念だったわね」

 

「・・・」

 

大ピンチ。大ピンチだなこれは・・・

 

「秋葉」

 

ヒルダに聞こえないくらいの距離で隣に降り立った秋葉に小声で話しかける。

 

「最悪。俺が何とか隙を作る。全員を連れて風で離脱できるか?」

 

「それは優君を含めてですか?」

 

「俺は含まなくていい。ヒルダを抑えるだけ抑える」

 

緋刀は使えない。だが、刀気を使えば持ちこたえるぐらいはできるだろう

 

「嫌です」

 

それはつまり出来るってことか秋葉・・・

 

「勘違いするな秋葉、どうにもならなかった時だけだ」

 

秋葉は首を横に振る。

近衛としてか秋葉の意思なのか・・・

 

「私はあなたに死んでほしくない」

 

そう秋葉は言った。

それ、本心か?秋葉?

そう聞きそうになった。

葉月さん・・・秋葉の母親を殺したのは言い訳しようもない俺だ。

俺は恐れていることが1つだけある。

秋葉は俺を恨んでいるんじゃないか?

それを隠しているんじゃないかと・・・

だけど、秋葉が今、そう言うなら俺はこの子の願いを聞かないといけないな。

 

「分かった。なら、少しでいい。ヒルダを抑えられるか?」

 

「はい!」

 

秋葉はそう言って単身ヒルダの前に立ちふさがる。

 

「ホホホ、人間にしてはなかなかのステルス使いね。どう言う死に方がお望み?感電死?それとも切り刻まれて死にたいかしら?椎名の近衛」

 

フォンと風を切る音がして秋葉の手元にヒルダの腕を切り裂いた槍が戻ってくる。

それを構えながら

 

「お断りします。私はまだ死ぬ気はありませんので」

 

パリパリと帯電するヒルダとそれに対抗するように風を纏う秋葉。

だが、ヒルダには再生能力があるが秋葉にそれはない。

どちらが不利なのかは火を見るより明らかだ。

俺はヒルダを警戒しつつ理子達の元に移動する。

 

「さーて、どうする?殺すって案は駄目だよなアリア?」

 

「9条よ優」

 

とはいってもヒルダは人に当てはまるのか微妙だがな・・・

緋刀以外に倒せる手段はこの状況ならある。

ただし、殺すのはおそらく絶対に避けられない切り札だ。

 

「一気に魔臓を同時破壊する方法があれば・・・」

 

キンジが考え込むようにして言うが方法は思いつかない。

 

「・・・」

 

武偵弾職人からもらった魔封弾を思いついてみるが果たしてそんな都合のいいものがあるのか・・・

魔臓を破壊しない限りこいつは決定打にはならない。

 

「方法ならあるよ」

 

理子?

エルと一緒に俺達の所に来た理子が言う。

 

「お前、体は?」

 

「クフ、心配してくれるなんてうれしいな。でも、大丈夫だよ。それより、魔臓同時破壊する方法ならあるよ」

 

「本当なのそれ?」

 

アリアがヒルダの足止めをしている秋葉の方をちらりと見て言うと理子は黙って頷いた。

そして、その方法を聞いた後、俺達は軽く打ち合わせをする。

その間にもヒルダと秋葉の戦いは続いていた。

 

「ちょろちょろとした蠅ね!」

 

雷球を生み出しながらヒルダがボールのように雷球を空に向けて放つ。

その先にいるのは風に乗り移動する秋葉だ。

 

「秋葉の周囲で雷球が爆発し猛烈な雷撃が周囲を照らすが今のところ間一髪でそれを秋葉は交わしつ受ける。

彼女が受けたのはヒルダを倒すことではなく時間稼ぎだ。

 

「せめて鳥ぐらい言ってもらえないですか?」

 

空中から腕を振るいかたいたちがヒルダの襲う。

ヒルダはどうぞご自由にというように目を閉じ右腕がちぎれ飛ぶがちぎれた部分は黒い影になり傷口は瞬時に再生した。

 

「ホホホ、鳥?ならカラスはどうかしら?」

 

「・・・」

 

秋葉はそれには答えずに拳を握り右腕を振りあげる。

 

「風牙!」

 

それを叩きおろすと竜巻が巻き起こりヒルダを飲みこんだ。

だが竜巻はばりばりと中心からの莫大な電撃により消し飛ぶ。

 

「今、何かしたかしらカラス?」

 

「小手調べです」

 

「ホホホ、そうかしら?大技ばかり使って逃げ回って随分苦しそうだけど大丈夫かしら?」

 

「・・・」

 

ただでさえステルスというのは燃費が悪い。

ヒルダのような特別な状態でない限りエネルギー切れは必ずやってくる。

まして、秋葉の場合、ここに来る前ステルスで全力で使って来たのに加えヒルダを抑えるために大技を連発している。

限界が近いのは明白だった。

だが、それでも・・・

 

「私は優君に頼まれました。あなたを押さえれば私たちの勝ちです」

 

「ゴキブリの知恵かしら?面白いこと言うわね」

 

「なんとでも」

 

再び攻撃態勢に入ろうとした2人だがその間に声を割り込ませる。

 

「秋葉!」

 

走りながら引くように名前を呼ぶと秋葉は牽制代わりにかまいたちを連発しつつ後退する。

 

「ゴキブリ!私を倒す算段がついたのかしら?不可能なことよ」

 

ヒルダが俺の方を見ている。

だが、お前の相手はまだ、俺じゃねえぞ。

俺と逆の方にキンジとアリアがかける。

 

「陽動かしら?何かの作戦かしら?無駄よ!」

 

雷球が2つ生み出され1つは俺の方、1つはアリアとキンジの方に飛んでいく。

 

「プレゼントよ!トオヤマ!アリア!」

 

「それは!」

 

「いわないわ!」

 

キンジのデザートイーグル、アリアのガバメントから一泊遅れて弾が発射される。

1つは雷球に激突した瞬間に、光を放ち消滅する。

虎の子の魔封弾の一つだ。

続けて一拍遅れての弾丸がヒルダに迫るがヒルダは腕を払い雷でそれを薙ぎ払おうとするが着弾寸前に無数の水の固まりとなりヒルダに降り注ぐ。

これも魔封弾の一つ。

ヒルダの雷をくぐり抜け圧縮された水球がヒルダの目を打ち抜く。

瞬時に再生するがヒルダが1歩後退するがその顔は目を潰された痛みに対する激怒を2人に向ける。

その隙に俺は理子から教えてもらっていたあるものの隠し場所に走り目的のものを手にヒルダの背後から全力でかける。

アリアの棺の花束の中に理子が隠していたひまわりの花束の中にあった銃身を短く切り詰めたウィンチェスターM1887。

ショットガン、ようは散弾銃さ。

 

「即死しねえ事祈ってるぜ」

 

俺の声にヒルダが振り返り驚いた顔をするが遅い!

ガウゥン

稲妻にも似た音を立てて空中で無数の弾子になってヒルダの体の全身に余すことなく浴びせかかる。

そう、ショットガンならどこに魔臓があろうと同時破壊が可能だ。

 

「あ・・・っ・・・ううう」

 

よろりよろりとヒルダが無数の弾丸を浴びた状態でよろめく。

やったか?

距離を取りながらヒルダを見るが

 

「ああ・・う・・・これは悪夢。だっておかしいもの!私が・・・こんな奴らに・・・こんな・・・ひどい」

 

再生は見受けられない。

ということは魔臓は破壊出来たんだ。

後は、逮捕するだけだ。

っておい!

よろよろと俺達から逃げるように後退していたヒルダが展望台の端から足を滑らせ落下していった。

駆けようとするが俺が端に到達したときにはヒルダは絶叫を浴びながら遠ざかり450メートル下の地面に叩きつけられた。

思わず叩きつけられる前に目をそらしたが魔臓を破壊された以上結果は言うまでもないだろう。

結局殺しちまったか・・・

次の相手ローズマリーを見るが展望台に奴の姿はない。

決着がついたと考えて引いたのか・・・

展望台ではエルが理子に理療を施そうとしているところだ。

 

「やったね。優」

 

「ああ、勝ったぞ理子。武偵憲章は破っちまったが・・・」

 

「優希悪いんだがここでは治療の施しようがない。すぐに彼女を病院に運ばないと」

 

会話もそこそこにエルが言ってくる。

そうだな

理子の手を肩に回しキンジに手伝ってくれと言ってから展望台を降りる階段に急ぐ。

アリアが携帯を取り出して救急車の手配をしているのを横目に理子の様子を見ると理子の顔色は悪い。

死ぬなよ理子。せっかくヒルダを倒して自由になれたんだ。

 

「がんばれ理子。病院に着いたらすぐに治療してもらうからな」

 

「・・・うん」

 

急ぐにせよ450メートル降りるのはつらいな。

秋葉に運んでもらう手もあるがガス欠寸前の秋葉には無理だ。

 

「優希、なるべく彼女に話しかけておけ。意識が途切れないように」

 

「分かった」

 

「ねえ。優希・・・私はこれで本当の理子に慣れたかな?」

 

「ああ、慣れたさ。だから、これからの人生は本当の理子の人生だ」

 

もう、ヒルダやブラドにおびえなくていい本当の・・・

 

「アハハ、想像できないや」

 

「ま、俺に協力できることならするから」

 

「・・・じゃあ、またデートしてくれる?」

 

「普通にでかけるだけなら付き合ってやるよ」

 

「本当?約束だよ」

 

「ああ」

 

階段まで後、少しまで来た時空が光った。

ドオオオオンと雷が近距離に落ちたのだ。

 

「きゃあああ!」

 

アリアが悲鳴をあげる。

スカイツリ―に落ちたわけじゃないようだが・・・

その瞬間、猛烈な殺気を感じてばっと振り返り理子をキンジに任せて瞬時に刀気を発動させ、殺気の相手に向ける。

黒い影が一瞬、空に見えズズウウンと音を立てて着地したそれは・・・

 

「グウウウウウ」

 

低く唸り声を上げ正気を失ったただ、殺戮のみを求める獣。

第2形態と言っていたヒルダの姿だ。

かろうじて目玉模様で判別はできたが明らかなに何かが違う異質。

ドクンドクンと胸に透けて見える心臓のようなものはなんだ?魔臓なのか?

 

「ぐあああああ!」

 

大気を振るわせるような叫びをあげヒルダが手を振るうと生み出された無数の雷撃が縦横無尽に第2展望台をかけめぐる。

幸い誰もの当たらなかったが先ほどとは比べものにならない力だ。

第3形態があの普通の姿のまま雷撃を伝える形態だとするなら今の姿は差し詰め狂戦士

 

「第4形態ですの」

 

ローズマリーがばさりと羽を広げてヒルダの後ろから上がってきた。

 

「第4形態はドラキュリアの全潜在能力を引き出す隠された形態ですの。もっとも、通常ではなりえない形態。お姉さまは死にたくないというので差し上げましたの」

 

差し上げた?何いってやがる?

ローズマリーはにこりと微笑みながら

 

「さあ、続きですの。お姉さまをどうぞ倒して道を切り開くか絶望してくださいな優希」

 

「があああああ!」

 

雄たけびをあげるバーサーカーと化したヒルダ。

秋葉はガス寸前。魔封弾もほとんどない。武偵弾もない。

こちらは満身創痍に近い状態。

そして、理子のタイムリミットはほとんどないはずだ。

不幸中の幸いかヒルダは死んでいない。

なら、俺の好きなこの武偵憲章を言う資格はあるだろう。

 

「武偵は諦めるな。決してあきらめるな」

 

そう、諦めない。こいつを倒して理子を救うんだ。

第4形態のヒルダ相手に最後の戦いを挑む!

勝つんだ!絶対に!

 

 

 




というわけでヒルダ戦原作にない部分に突入しました。
原作に第4形態ないだろですがローズマリーが何かしたのです。

ちなみにヒルダ第4形態はブラドの第二形態を更に凶悪化した感じです。
理性もないので…いや、優への殺意はありますがまさにバーサーカー!

次回でヒルダとの戦闘はおしまい予定。
戦闘はね。

さて、AAがアニメ化しますね!
1巻初版からアリアファンの私としては嬉しい限り!
もちろんAAも漫画も全部初版の大ファンです!
AAから緋弾のアリア2期を期待したい!
せめてシャーロック戦まではやってほしい!
その先から更に私は好きなんですけど流石にメヌエット出るまでは無理だな。
願いますけどね!

では!また次回に

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