緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第232弾 天空決戦

サイド??

 

「最強が聞いてあきれる。やはり、下等な人間ね」

 

 リバティーメイソン最強クラスと言われるリゼが椎名優希に負けたというのを知ったヒルダの言葉に私は心臓が小さく跳ねた気がした。

やっぱり、優希は来た。

レストランでリゼに負け、毒で動けなくなっても彼はそれを乗り越えてやってきた。

理子は知ってるよ。

あなたは、そういう人・・・

勝ち目がないと分かっていても自分が守りたいと思ったものは自分の命を犠牲にしてでも守りに来る。

信じたいよ・・・でも、私は・・・

目が合うと紫電の魔女ヒルダはにっと笑い

 

「信じてるわよ理子。私達はお友達ですものね」

 

「・・・」

 

 

 

 

 

サイド優希

 

状況的に、第一展望台で戦闘が行われていたと判断できるためそこにキンジの援軍に行くか、ヒルダがいる可能性がある最上階に行くか・・・

少し迷うが緋刀の力が消える前にヒルダとは激突したい。

エレベーターを乗り継ぎ、第一展望台をパスした時、緋刀化で7倍に高められた視力がキンジとエルとの戦いを一瞬、捕えた。

見立てではエルは薬を使ってくるだろうがキンジは確か、薬が効きにくい体質だ。

勝てよキンジ。信じてるからな

途中のエレベーターを降りて仮設エレベーターを乗り継いで435メートルとマジックで書かれた場所まで上がってきてそこでエレベーターは終了。

上に行くには簡易の階段を上がっていくしかない。

しかし、まあ気持ち悪いな・・・蝙蝠が一杯だ・・・蝙蝠女の部下だったりして・・・

1歩階段に足をかけた時、前方に気配を感じたので見上げる。

ああ、やっぱりいたな。

風に金髪をなびかせ、手にはワルサ―。

 

「よう理子!待ったか?」

 

にっと笑って軽く手を上げるが理子は悲しそうな目で俺を見ている。

 

「怪我はしてないようだな。よか・・・」

 

「どうしてきた優希」

 

男喋り・・・裏理子だな

どうしてか・・・答えは決まってる

だからしょうめんから言ってやるさ

 

「お前を助けに来たにきまってるだろ」

 

「っ!?」

 

理子は一瞬、息を飲んでからうつむいた。

 

「無理だよ・・・」

 

「だったら、そこで待ってろ理子。ヒルダは俺が倒す」

 

「無理だよ・・・」

 

強いったって俺1度勝ったんだぜ?

 

「ローズマリーに邪魔されなきゃ勝ってたんだ。今回も勝ってやる」

 

「無理だよ」

 

理子は首を横に振り同じ言葉を繰り返す。怖いんだヒルダには幼いころから恐怖を植えつけられてきた。

牢獄の中で震えながら理子は・・・

 

「理子」

 

俺は1歩2歩と理子に近づくが理子は怯えたように後ずさった。

 

「くるな優希。私はヒルダに命令されてるんだ・・・上がってくるなら殺せと・・・だから、このまま帰って・・・」

 

願うような言葉。

だが、足は止めない。止めてやらない。

それは理子の本心じゃねえ!断じて違う!

かつんかつんと階段を上がっていくと理子はワルサ―を俺に向けてきた。

手はガタガタと震えている。

緋刀の状態だから撃たれても簡単には死なないが通常の状態でも俺は足を止めないと断言できる。

 

「こないで!」

 

理子が叫んだと時、俺は理子の目の前にいた。

ワルサ―は俺の胸に押しつけられている。

 

「どうして・・・来るの?」

 

震えている奴を安心させる方法はいくつかある。

だから、俺は理子の背に手を回し抱きしめてやった。

 

「俺は理子のヒーローだからな。後は任せとけよ」

 

理子は抵抗しない。抱きしめてるので顔は見えないが抵抗しないってことは対応は間違ってないはずだ。

 

「・・・」

 

理子は何も言わない。

だが、震えは止まっている。

 

「確かに俺は姉さんのような化け物みたいな強さはないけど守ろうと思った女の子を守るぐらいの力は手にしてるつもりだ?」

 

ヒルダは確かに強いが勝てない相手じゃない。

 

「もう1度、俺を信じろ理子。お前のヒーローはあんな蝙蝠女に負けねえよ」

 

ぐすっと鼻をすする音と共に俺の胸に顔をうずめて理子はくぐもった声を出した。

 

「うん」

 

よし逃げる気なんてさらさらないがこれで完全に逃げられなくなったぞ。

 

「よし、じゃあヒルダをぼこりに行くか」

 

理子から離れて見上げる先にあるのはヒルダのいる第2展望だ。

アリアもそこに捕らわれているはず。

 

「理子、アリアは上だな?」

 

涙をぬぐいながら理子は頷いた。

 

「うん、アリアはヒルダに隠されてる。バラの花の下だよ」

 

「何か罠があるのか?」

 

「理子が動かないなら大丈夫だよ。ヒルダは理子に優希を排除させた後もし、キ―君が上がってくるならアリアに変装してヒルダが騙し打ちする予定だった」

なるほど、少しはヒルダもキンジをびびってるらしい。

とすれば・・・

理子と軽く打ちあわせをする。

そして、俺が先頭で第二展望台に突撃した瞬間、閃光が俺の視界に入ってきた。

 

バリバリバリと雷の音。

莫大なエネルギーの雷の球を手に纏っているのはヒルダだ。

その目は弱者を叩きつぶす時の絶対的な勝者の目。

 

「120%よ!ゴキブリ!」

 

圧倒的なエネルギーを持った雷球が俺に向けて放たれる。

後ろには理子がいる。

間にあえよ!

 

左腰から日本刀を引き抜いて両手で持ち雷球を見ながら右上段に振りかぶる。

緋刀の力を刀身に集中するイメージ・・・

ポゥと日本刀の刀身が淡い緋色の光を放ち更にエネルギーを注ぎ込むイメージするとまばゆい光が刀身を覆う。

 

「緋龍奥義!緋光剣!」

 

極光は仮名だったため、新しく考えておいたその名を言いながら刀を振りぬいた。

かまいたちのように刀身から飛んだ緋色の光が雷球と激突するとバチバチバチとその場で爆発のような光が明滅し次の瞬間雷球が消滅した。

同時に俺の日本刀の刀身が緋色の光と共に消える。

く、紫電じゃなきゃやっぱり使い捨てになるか・・・

そのまま、ヒルダに向けてかける。

大技を使った直後なら連射はできねえだろ!

もう1本日本刀を抜くと力を流し込む。

2回目放つのは初めてだが撃てる!

緋色に輝いた日本刀を見てヒルダが目を見開く。

悪いが殺す!手加減できる状況じゃねえ!

跳躍し上段からヒルダに向けて緋光剣を・・・

 

「いいのかしら?私の下にアリアがいるわよ」

 

「!?」

 

その言葉は俺の動きを止めるには十分だった。

ヒルダの下にはバラの花束。あの下にアリアか・・・

雷球処理で目に入らなかった。

アリアがいるなら空間ごと薙ぎ払う緋光剣をぶっ放すことなど・・・

 

「50%!これで十分!」

 

ヒルダの手に雷球が生み出されて俺に投げられる。

緋光剣は使えねえ!

位置的にワイヤーで回避は間に合わない!

くそ!

放出をやめ緋刀の効果範囲を刀周辺に収束し、同時に刀気を発動させ雷球をぶった切るがその先にいるのはヒルダだ。

このまま切り裂く!

そう思った時日本刀の刀身が消滅していることに気付いた。

緋刀の力に耐えられずに消滅したらしい。

 

「30%よ」

 

雷球が俺に直撃し同時に視界が明滅しバリバリと電気が体を駆け巡る。

痛いなんてもんじゃない。

失神しそうになりながらも攻撃の終わったヒルダの元から緋刀の身体能力で後退し右ひざをつく。

今ので決められなかったとなるとやばいな・・・

大ピンチだと言うのに口には笑みが浮かぶ戦闘狂モードの副作用。

楽しんで戦闘をしてしまうことだ。

 

「ゴキブリ、これでわかったかしら?」

 

「何をだよ?」

 

ヒルダがばさりと蝙蝠のような翼をはばたかせるとその風でヒルダの下にあった箱・・・いや、棺の周囲のバラが飛ばされその下からアリアが出てくる。

気絶してるようだな・・・

 

「人間は高貴なるドラキュリアには勝てない。認めなさい下等生物。許しを請うて靴を舐め永遠の従僕になるなら気が変わるかもしれないわよ」

 

「ほぅ、人間には勝てないねえ。姉さん倒してから言えよ。そんな言葉」

 

びりびりと体はしびれる。

緋刀の回復能力が鈍ってきてるんだ。

おそらく、アリアの血のドーピングも限界が近い。

 

「水月希・・・下等な人の突然変異体は人間とは認めてないわ」

 

「ハハハ、勝てない相手を押しのけて人間はドラキュリアに勝てないだぁ?都合がいいことだな」

 

「くっ、黙りなさいこのゴキブリ!」

 

ヒルダが右手に雷球を出現させるがその大きさは小さい。

しびれる体に鞭打ち投げられた雷球の軌道は単調。

交わしながらチャンスをうかがう。

ヒルダの後ろに倒れているアリアの救助。

そして、最後の緋光剣だ。

走りながら通常弾のガバメントでヒルダを狙う。狙いは手の関節部分。

雷球がどうやって出すのか分からないが再生しても一瞬でも手を破壊できればコントロールは鈍るはずだ。

 

「ちょこまかと!」

 

狙い通りヒルダの雷球のコントロールは大したことはない。

回り込むように走りながら武偵弾の閃光弾がないことを悔やむ。

あれがあれば一気に距離をつめれてかもしれないのに・・・

にしても雷球ってのはやはり、かなり厄介だな。

当たればしびれて体の動きは確実に鈍る、

だが、奴は無尽蔵に雷球を作れるのか?

姉さんじゃあるまいし、いつか限界が来るとは思うが。

だが、こっちはそれまで緋刀状態は持たない。

いつ切れてもおかしくない状態。

最後の特攻だ。

ヒルダとの位置関係が直線状アリアから外れた瞬間、雷球を投げた瞬間のヒルダに向かって突進する。

 

「ホホホ、血迷ったのかしら?」

 

雷球が再び投げられるがそんな威力が低いもん!

刀身が消滅し柄だけになった日本刀を左手と右手に持ち意識すると左の柄から緋色の光が放出される。刀身がなくても柄があれば緋光剣は発動するらしいな今、理解した。

柄から緋色の光が剣状に。

ビームサーベルみたいなもんだ。

 

「ふっ!」

 

雷球を消滅させ左の日本刀が柄から消滅したのを感じながら右手の柄に緋光剣を発動させる。

頼む!持ちこたえてくれ緋刀!

 

「!?」

 

ヒルダの目が大きく見開かれる。

直前に迫り、緋色の攻撃が来ようとしているのは恐怖を感じたのだろう。

 

「ひっ」

 

その瞬間ヒルダは怯えたように一歩下がる。

雷球を繰り出そうにも間にあう距離じゃない。

悪いが殺すぞヒルダ!公安0の跡形もなく消し飛ばす戦術だ!

魔臓ごと消し飛ばす!

柄を両手で握り上段から光の放出を叩き落とす。

ヒルダは恐怖に顔を歪めそれをただ見ているしかできず・・・

その体が緋色の光に飲み込まれる寸前に光が消滅する。

 

「!?」

 

時間切れかよ!後1歩だったのに柄が消滅しヒルダの前に無防備で立つはめになる。

ヒルダはそのチャンスを逃さず俺の右手を握り

 

「死になさい!」

 

激怒の表情を浮かべているヒルダを見てやばいと振りほどこうともがいた瞬間言葉にならない激痛が全身を駆け巡った。

奴のありったけの電気が体に駆け巡る。

 

「っ!」

 

悲鳴が言葉にならない。

電気が体に通るありえない激痛。

 

「死ね!死になさい!ほら死になさいよ!」

 

何万ボルトか分からないがこ、このままじゃ死ぬ!

緋刀の状態も解けているこの状態で・・・

 

「ヒルダ!優希を放せ!」

 

理子の声と発砲音がするがヒルダの電撃は収まらない。

 

「あなたには失望したわ理子。そして、知りなさい!愚かな希望を抱いたばかりにお前のヒーローは死ぬ。絶望しなさい!さあ!いつ感電死するのかしらぁ?椎名優希ぃ!」

 

ヒステリックになっているらしく美少女台無しのそのヒルダの顔を真近に意識が飛びそうになるのをぎりぎり耐えながら逆転の1手は・・・

駄目だ思いつかねえ・・・このままじゃ・・・

死ぬと思った瞬間、ヒルダの腕が飛んできた何かにちぎり飛ばされた。

続けてヒルダが何かにブッ飛ばされ展望台から投げだされ落ちて行く。

 

「か・・ふ」

 

電撃から解放されたはいいがそのまま、どしゃりと倒れこむが体が動かねえ

しびれて動けない状況・・・ハハハ、よく生きてるな俺・・・

それより、今の攻撃・・・

 

「大丈夫ですか優君?」

 

なんとか動く首を向けるとそこにいたのは山洞秋葉。

髪を風になびかせながら現れた風の援軍。

 

「大丈夫じゃねえな。体が動かねえ。それより、アリアの救出を頼む」

 

「それはキンジ君達が」

 

見ると少し遠くでキンジがアリアを連れロープをほどいているところだった。

 

「大丈夫か優希!」

 

エルがこちらに来て怪我の具合を見てくれる。

 

「エルか。お前、キンジと戦ってたんじゃないのかよ」

 

「それは僕の負けだ。今から僕は師団として君たちに協力する。リバティーメイソンへは帰ったら報告するんだけどね」

 

そうか、キンジはエルに勝ったのか流石だな。

 

「ヒルダは優希との戦いに夢中でここに来るまで全く気付いてなかったみたいだ。動けるか?」

 

「なんとか・・・な」

 

1分も立っていないがなんとか体が動くまで回復してきた。

普通あれだけ電撃受けたらしばらく動けないと思うが緋刀のおかげか通常状態でも多少は回復能力が高くなったようだ。

ま、頭はくらくらするしぴりぴりするけど

 

「優希」

 

理子が駆け寄ってくる。

 

「情けない話だが状況は有利だぞ理子」

 

当初の予定通り秋葉が来てくれた。

風のステルスがあれば戦術の幅は大きく広がる。

 

「遅くなりました理子さん」

 

「秋ちゃん・・・ありがと」

 

理子と秋葉は趣味も合うので仲がいい。

ずっと秋葉も理子を救いたいと言っていた。

これだけの面子がいれば負けるわけがない。

 

「で?秋葉はなんでここに?」

 

連絡する暇なかったので完全な不意打ち援軍だったわけだが

 

「公安0の土方さんから連絡をもらいました。それとこれを」

 

秋葉が差し出してきたのは日本刀だった。

それも見事な技者

 

「ここに来る前に武田家の使いから預かりました。ステルスの術式を組み込んだ宝剣で緋刀にも少しなら耐えられます。名前は白い柄が『天雷』、黒の鞘が『閃電』だそうです」

 

武田家なら信冬か。直接これない事情があるのかは分からないがこの贈り物は有難く借りておこう

 

「後、武田の使いが信冬様からの伝言を伝えて行きました。『電話してくださいね』だそうです」

 

う・・・信冬の奴怒ってるぞ・・・それも静かに・・・

笑顔で怒りを抑えている少女の事を思い出しつつととりあえず合流してきたキンジ、アリアに向き直る。

 

「ようアリア。無事だな」

 

「無事よ。あんたこそボロボロじゃないの」

 

そりゃ電撃をあれだけ食らえばな・・・

 

「ヒルダは?まさか殺したの?」

 

「そう願いたいが・・・まだだろうな」

 

ヒルダが落ちて言った方を見て天雷と閃電を体に鞘ごと固定する。

 

 

「優、あんたヒルダを殺す気で戦ってるわね?」

 

カメリアの瞳が俺を責めるように見てくる。

嘘言ってもしょうがない。

 

「理子を救うためだ。状況的にそうせざる得なかった」

 

「優、私たちは武偵よ。武偵憲章第9条、武偵は決して人を殺してはならない」

 

「アリア、俺の過去は前に話しただろ?今さらな・・・」

 

「過去の話をしてるんじゃないわ。今の話よ!私のチームメイトなら武偵憲章は守りなさい。命令よこれは」

 

「いやな、でもアリア・・・」

 

「仲間を信じ仲間を助けよ。これも武偵憲章よ優。みんなでヒルダを逮捕しましょう。いいわね!」

 

なんでだろうな?

この子にこう言われるとそうしないと駄目だという感じになる。

アリアは俺にとっての光なのかもな・・・

殺してでも守ると闇に歩いていこうとした俺を再びじゃあ、光の道を歩むかという気持ちにさせてくれる。

 

「たく、わがままだな。殺す気も失せたよ」

 

1人なら殺すしかなかっただろうが仲間がいるなら勝てるかもしれない。

 

「それでいいのよ。勝つわよレキはいないけどこのバスカービルの初陣よ!」

 

「話はまとまったかしら?」

 

バリバリと音に振り返るとそこに立っていたのは翼を広げた稲妻を纏う吸血鬼ヒルダ。

秋葉に吹き飛ばされた腕も再生している。

 

「諦めて降参しろヒルダ。この状態でお前に勝ち目はないぜ」

 

背後で秋葉達が攻撃の準備を開始する気配を感じながら言うとヒルダは不敵に笑みを浮かべた。

 

「ホホホ、椎名優希。ねえ、あなたローズマリーと戦ったことあるんじゃないのかしら?」

 

「それがなんだよ?」

 

「忘れてるのかしら?それともとぼけてるの?知らないのかしら?なら教えてあげる」

 

何が言いたいこいつ?

 

「ドラキュリアの第3形態テルツアよ!」

 

どこかに隠していたらしいトライデントを頭上高くヒルダが掲げるとそれを避雷針に雲の中から白い光と共に落雷の轟音を轟かせ周囲を光に染めた。

 

「きゃああああ!」

 

アリアがパニくった悲鳴を上げる。

雨を水蒸気に変えその場に吹き荒れその向こうには

 

「生まれて3度目だわテルツアになるのは」

 

耐雷性の下着とハイヒール。蜘蛛の巣状のタイツは残っているがリボンはなくなり長い巻き毛の髪が強風に揺れている。

 

たとえるなら悪魔・・・

これほどまで圧倒的な暴力は数人しか覚えがない。

それも完全な殺意として向けられるのは初めての経験。

 

「お父様はパトラに呪われテルツアになる前にお前たちに討たれた。私は第2形態は嫌いだし不覚にも椎名優希に不覚をとった形態は飛ばして第3形態にならせてもらったわ。さあ、遊びましょ」

 

普通ならひるむ。恐れる。

人は圧倒的な存在の前にはそうなるものだ。

だが、俺は慣れてる。

そんな化け物達と小さい頃から一緒に過ごして半殺しにされたことさえある。

だから!

 

「それがお前の切り札か蝙蝠女!はっ、姉さんに比べたら雑魚以下だなおい」

 

ヒルダの目が憐れむような目で俺を見てくる。

圧倒的な力の自信からくるものだ。

 

「そうね。長く遊ぶのも飽きたわ。だから、椎名優希、あなたには手足を焼き切った後生かしながら仲間が死んで行くのを見せてあげる。そうね。まず、1人確実に死を与えましょう。ねえ、理子」

 

バチ

 

背後から何かが弾けるような音と共に理子の右耳につけられたイヤリングが弾けた。

疑問を口にする前にヒルダが言う。

 

「毒蛇の腺液。10分後毒は回り死に至らしめる。残念だったわね。椎名優希」

 

ブチっと頭の中で何かが切れる音がした気がした。

 

「エル!理子を連れて病院行け!応急処置忘れるなよ!」

 

「分かった!」

 

退路を確認しようと後ろを向いたエルと俺に最悪な光景が目に入る。

カツンと優雅に階段を上がってきたのは白銀の髪の魔女。

 

「ごきげんようですの」

 

ローズマリー・・・

前門にヒルダ。後門にローズマリー。

最悪だ。最悪過ぎる。

 

「安心しなさい椎名優希!ローズマリーは戦闘に参加しないわ。ただし、理子に治療を施そうとしたり逃げたら自動参戦するけどね。ホホホホ」

 

あくまで、自分ひとりで全員を処刑する気らしいな。

だが、そうなると

 

「なら、てめえを倒したらどうなるんだよ?」

 

「出来はしないわ」

 

「どうなるんだよ?」

 

俺はローズマリーに直接聞いた。

こいつは必ず答えると言う確信を込めて

 

「引きますの。優希なら負けないと信じてますわ」

 

にこりと微笑みながらローズマリーは言った。

こいつは敵だがこういう時の言葉はおそらく守る。

方針は決まったな。

 

「10分以内にヒルダを倒して理子を救うぞ!」

 

みんなに聞こえるように言って俺は・・・いや、俺達はヒルダに一歩踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

天空でのドラキュラと武偵達の戦い。

彼らは知る由もなかったがその戦いは多くの者たちの目に止まっていた。

優希を陰ながらサポートしていた公安0の者達。

彼らは、戦いには決して参戦しない。

参戦するとすればヒルダが無差別に市民を襲ったなどそういう事態などだがそう言ったことはないだろう。

 

そして、アメリカの監視衛星を通じてアメリカと関わりを持つ者たちもこれを見ている。

他にもいるが一際離れた所から見ているのはウェーブのかかった蒼い瞳の少女だ。

強風にもかかわらず彼女の周囲は風が避けるようになびいていない。

彼女の視線の先にいるのは絶体絶命の窮地に立ちつつも第3形態のドラキュリアヒルダに立ち向かう武偵達。

 

「どういう選択するのかな?優希君は?」

 

まっすぐな少年が絶望にぶち当たれば彼はどうするのか?

そして、紫電なしでヒルダに勝つことは果たしてできるのか?

 

「見てて飽きないなぁ。ヒルダ勝てたら興味湧きそうかな優希君」

 

少女は・・・アズマリアはそういって戦いの監視を継続した。

 

 

 

 




遅れましたが最新話です。
ヒルダとの決戦ですが原作より人数多めの戦いになります。
秋葉と優、そして通せんぼローズマリー(笑)

10分以内にヒルダを倒すには当然魔臓破壊は必須。
さあ、次話もがんばろ!
ちなみに、12月に出たアリアの妹メヌエットですが早く出したいのでフライングしてくるかもしれません。
優の知り合いかどうかは本人が忘れてるかもしれないので不明です。

キンジは例のごとくでしたが優はどうだろう?
何もが見抜かれそうだ(笑)

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