緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第229弾 優希VSリゼ―最悪の未来

サイド??

 

なんであなたは・・・戦うの?

答える必要がないとヒルダに言ってその強さに屈した私はあなたをここに連れてきたのに・・・

たった一人でヒルダに立ち向かい私がどこにいるか何度もヒルダに問う・・・

なんであなたは私を怨まないの?

 

「ねえ、優希・・・」

 

アリアと敵対した時に用意しておいた隠れ家の一つの1室で私は目の前で眠る男の名前を呼んだ。

ぼろぼろになりそれでも私を探そうと倒れてしまった私の・・・

 

「理子はどうしたらいいのかな?」

 

彼の手を握ると自然に目に涙が浮かぶ。

彼は・・・椎名優希は理子を救おうと目が覚めたら行動を開始するだろう。

命をかけてヒルダに挑みそして・・・

 

「無理だよ・・・ヒルダには勝てない・・・」

 

水月希・・・優希の姉ならヒルダを倒すことはできるだろう。

だが、彼女は師団ではなく今回の件では助けには回ってくれない。

 

「助けて・・・」

 

少女の涙は頬を伝い少年の手にぽたりと落ちた。

 

 

 

                †

                †

                †

 

目が覚めると白い天井というパターンは何度かあったが灰色の天井と言うのも珍しいパターンだな・・・

上半身をベッドから起こし周りを見てみるが見覚えのない部屋だった。

 

「理子?」

 

かすかに残っているバニラのような甘い香り。

どこにいるかは分からないがいたのだ。ここに理子が

 

「っ」

 

ふらふらしながら部屋を探すが誰もいない。

机の上に銃や件が置いてあったのでそれを持ち上げるとひらりと紙が1枚床に落ちた。

それを手に取り目を通した瞬間俺はその紙を握りつぶしポケットに入れると外に飛び出す。

スマホを見るとあれから16時間たっている。

外は間もなく暗くなると言った時間帯。

ヒルダと戦ったのは夜中だったからな・・・

すぐに理子の携帯に電話をかけるが繋がらない。

くそ!

千鶴に頼もうにも情報が少なすぎる。

片っぱしから監視カメラを当たってもらうのは時間がかかりすぎるし・・・

理子が残していった紙にはこう書かれていた。

 

『ごめんね。さようなら』

 

ふざけるなよ理子!何がごめんねだ!さようならだ!こんな結果、俺は認めねえぞ!

土方さんに電話しようとした時、誰からか電話がかかってきた。

こんな時に・・・エルか・・・

 

エル・ワトソンからの電話に出るとすぐにエルが話しかけてきた。

 

「優希か?今どこにいる?」

 

「ここは・・・」

 

そうだ。エルがいるじゃないかヒルダもエルのことを嫌がってたし。

近くにあった看板から場所をエルに伝えてから

 

「理子がヒルダの所に行っちまった。今から捜すがエルも協力してくれないか?」

 

「そうか。それなら丁度よかったかもしれないね」

 

「どう言う意味だ?」

 

「リバティーメイソンが卷族に入るかどうかという話はしただろう?今夜、それについてヒルダと会う約束があるんだ」

 

ヒルダと?理子はヒルダと一緒にいる可能性が高い。

魔臓は破壊したがあのヒルダの笑み・・・安心はできない。

 

「それに俺を同行させてくれ」

 

「同行してどうする?」

 

「ヒルダを倒す!最低でも理子を連れて逃げる。エルも協力してくれ」

 

「それは・・・師団を選ぶという意味ととっていいのか?」

 

「理子を取り戻すってことはあいつらと敵対しないといけねえからな。悪いが俺は卷族には行けない」

 

「そうか・・・」

 

「エル、リバティーメイソン・・・お前は俺の味方でいいんだな?」

 

友達からの返答・・・もし、エルが敵に回るなら今の話も・・・

 

「僕と優希は友達だよ。それは変わらない。今夜ヒルダの場所に君を案内しよう」

 

「すまんエル」

 

「いいさ。だけど1つだけ条件がある」

 

「条件?」

 

「今夜ヒルダと会う前にアリアと夕食を約束しててね。そこに君も同行してほしいんだ」

 

「アリアと?なんでだ?」

 

「アリアと僕の婚約の話は知ってるだろう?それについてアリアと話したかったんだけどやっと、アリアと話をする場所を設けられたんだ。君もその場にいてアリアを説得するのを手伝って欲しい」

 

「それがヒルダの場所を教える条件ってわけか?」

 

「アリアの説得には苦労してるんだ。協力してくれると助ける」

 

「エルそれは・・・」

 

アリアとエルの婚約は個人的には反対だ。

だが、エルに直接反対だと言うのも気が引ける・・・

特に今はな

 

「分かったよ。じゃあ、こうしよう。優希はいてくれるだけでいい。ヒルダと戦う前に食事して万全の状態で会いに行こうじゃないか」

 

「それでいいのか?」

 

「ああ、だけどアリアにヒルダと会う事は言わないで欲しい。峰、理子の状況もね。僕らだけでなんとかしよう。リゼも同行するだろうけど彼女も強い。ヒルダと戦う時には戦力になるよ。それと、外部の協力者も今回は遠慮してもらいたい。ヒルダを刺激したくないからね。彼女と戦うなら仕込みもしておきたい」

 

「分かった。アリア達を巻き込む必要はないからな」

 

公安0や実家に助けを求めるなってことか・・・

アリアはヒルダに殻金をばらばらにされている。再び同じことをされないとは限らないからな。

 

「場所はメールで送るよ。1時間後を予定している」

 

「待て、エル。俺はヒルダと1回戦って消耗してるんだ。装備品の補充がしたい」

 

「それについては心配ないよ。武偵弾や銀弾はこちらで手配しておく。ヒルダと戦う前には君に手渡せる手はずは整えておく」

 

用意がいいな。流石はエルだ。

 

「悪いなエル。今度何かお礼させてくれ」

 

「・・・考えとくよ。じゃあ後で」

 

エルとの電話を終えて届いたメールに添付されてきた場所を確認してから場所はここから30分と言った所・・・

学園島に戻る時間はないがここからなら理子とデートした場所からも遠くないから隼を取ってから約束の場所に向かうことはできそうだ。

待ってろよ理子!今助けに言ってやるからなヒルダを今度こそ倒してな!

ローズマリーもいる可能性があるが同じことだ。

あいつも倒して因縁にも終止符を打ってやる!

 

               †

               †

               †

1時間後、エルに指定されたホテルの最上階の高級レストランに向かうためエレベーターに向かう途中

 

「優?」

 

振り向くとアリアだった。

なぜここにいるのと不思議そうな顔だ。

 

「よう、アリア。お前も最上階だろ?」

 

「あんたがここにいるってことはワトソンに呼ばれたのね?」

 

「同席を頼まれただけだ。何の話をするか俺は知らないしな。それに食事の後ちょっと、エルと用事があるんだよ」

 

「用事?1度聞いておきたかったんだけど優とワトソンはどんな関係何かしら?」

 

「言わなかったか? 昔、姉さんに連れられていろいろなとこ行った中にエルと一緒にいた時期があるんだよ。その時、友達になった」

 

「あのリゼって子もそうなの?」

 

「いや、あいつは最近会ったばかりだ」

 

いきなりキスしてきたりしてきたがどうにもあいつは俺のことを嫌ってる。

エルの前では言い子にしているようだが何か別の目的があるのか意味不明な子なんだよな・・・

俺達はエレベーターに乗り込みながら行き先のボタンを押してから

 

「その包帯どうしたの?」

 

アリアの言葉にぎくっとしたがまさか、ヒルダと戦った傷とは言えないので

 

「あ、ああ雪羽さんに最近、稽古つけてもらっててな。新技の稽古中の怪我だ」

 

「雪羽って鈴・雪土月花の雪の?」

 

「ああ、ついでに土方さんの奥さん」

 

「そうなの?」

 

ああ、アリア知らなかったか

 

「そうだよ。ついでに雪羽さんは信冬の姉さん」

 

「え?そうなの?信冬って研修先で一緒だったあんたの婚約者でしょ?」

 

「いや、婚約者っても前に言った気がするが実家が勝手に決めただけで・・・」

 

「あたしとワトソンもそんな感じよ。お互い大変ね」

 

「だよなぁ・・・」

 

思わぬ所に婚約者に悩まされるという共通点がアリアと俺にはあったらしい

 

「あんたの場合はレキともでしょ?」

 

「あれは姉さんのせいなんだけど・・・」

 

あれも厄介な話なんだよな・・・下手に断ったらウルスのお姉さん達が狙撃銃片手に襲いかかってきそうで・・・

にしても、エルと話をするからだろうか?アリアの調子が少しおかしい気がする。

これがキンジなら風穴と襲いかかるのだろうか?

襲われたいわけじゃないんだが・・・

 

「・・・」

 

「何よ?」

 

「いや」

 

思わずアリアの顔を見てしまったが・・・

諦めようとは思うんだけど諦めきれないって気持ちがあるのは事実なんだよなぁ・・・

キンジがはっきりしないのが悪い!

というかアリアはキンジに何か言わないのか?

 

「キンジとはまだ喧嘩してんのか?」

 

「き、キンジ? な、なんでよ」

 

この様子だと仲直りしてないようだ・・・まあ、エルとの件もあるから当然といえば当然か

 

「いや、なあアリア・・・」

 

エルとの婚約は当然断るのかと聞いてキンジの事も聞いてやろうと思ったんだがポーンと最上階についた音

 

「つ、ついたわね」

 

扉が開きその先が直接レストランになっている。

聞きそびれてしまったがアリアについて歩いていくとそこにいたのはエルが窓際の席に座っていた。

すごいな。個室になってるのか

いくらするか恐ろしい話だがここはエルが金を持ってくれるからこれたが普通なら一世一代の結婚しようとかそんな勝負どころ意外には使えない場所だな

 

「やあ、優希、アリア」

 

「こんばんは。ワトソン」

 

「よう来たぜ」

 

俺とアリアが着席し料理が運ばれてくる。

コース料理だがこの後ヒルダと会うんだ飯ちゃんと食べとこう。

 

「ワトソン、なんで優がいるの?私は聞いてなかったわ」

 

「僕が呼んだんだ。君のチームメイトだし僕の親友だ。それに日本の名家の出身で今回の極東戦役にも無関係じゃない。君との婚約も極東戦役に多少なりとも影響があると判断したから同席してもらうことにしたんだ」

 

「まあ、いいわ。優がいることに関しては」

 

アリアが俺の方をちらちと見てくる。

少しは期待してくれてるのかな?今回の状況の打開することに

 

「それで?昨日の電話の続きだけどメヌはなんて言ってたの?」

 

「ロンドンに戻った時、メヌエットさんはお姉さまをよろしくって言ってたよ」

 

「あの子ったら妹のくせに上から目線なんだから」

 

アリアが呆れたように言うのを飯を食いながら聞くがふーん、アリア妹いるのか・・・

メヌエット・・・メヌエット・・・んん・・・記憶にない名前だな・・・今回は知り合いってわけじゃないようだな。

過去の記憶が姉さんのステルスの影響で欠落してるから完全に知り合いじゃないとは言えんが・・・

 

「後、トランプの罰ゲームは継続中だって」

 

「相変わらずね。やらしいわ。ひねくれてるわ」

 

ふーん、そのメヌエットって子相当厄介そうな子だなアリアの反応見る限り・・・

高慢ちきなお嬢様タイプとかかな?

小さい肉を口に放り込みながらアリア達の会話を聞いているが口を挟む必要も見当たらないな今のとこ

 

「アリアがイギリスに帰ってこないのはどうしてだ?僕は明日にでも挙式を・・・」

 

おい・・・思わず手が止まっちまったが・・・

 

「あたしにはそういうのを考えるのはまだ早いわ」

 

「なぜ渋る?他に婚約者でもいるのか?」

 

「・・・」

 

アリアが黙ってしまった。

口を挟むべきか・・・

 

「どうした他に婚約でもしたのかアリア?」

 

「・・・」

 

助けを求めてくるようにアリアが俺を見てくる。

どういやいいんだよ・・・まさか、俺がアリアと婚約しましたなんて言ってもエルは100%信じないから無意味だし・・・

あ、そうだフフフ、ちょっとだけ

 

「そりゃ、無理ってもんだ。エル」

 

「優希? どういうことだ?」

 

アリアを見ていたエルがいきなり口を開いた俺に驚いた様子で視線を向けてくる。

 

「アリアには好きな奴がいるもんな」

 

「なっ」

 

アリアがぎょっとしたような顔で俺を見てくる。

 

「トオヤマか・・・」

 

「ち、ちちち違うわよ!キンジなんて好きじゃない!そんなわけないじゃない」

 

アリア・・・そればればれだって・・・

けしかけたのは俺だが・・・

 

「彼は君にはふさわしくないと言ったはずだけど?」

 

「だ、だから・・・」

 

いてえ!ズドンとアリアの足が俺の足を踏んできたぞ!

いたたぐりぐりするな!

分かったから!

 

「あのなエル。アリアとの婚約なんだけど考え直せ。お互いいいこともないぞ」

 

お前女だしとは言えないがアリアのぐりぐりが弱まったぞ。面白くないし反対してアリアの機嫌をとっておこう。

 

「そんなことはない。僕とアリアが一緒になればロンドン武偵局の切り込み隊長なんかじゃなくリバティーメイソンの幹部として迎えられる。それに、ワトソン家は日本の政界法曹界にも顔が効く。君の母親の裁判にも影響を与えられるんだよ」

 

「それはどうかな? 俺自身その件に圧力かけてもらうように椎名の実家に頼んでるが状況はよくない」

 

「優希。君は分かってない確かに、椎名の家は名家だが武家だ。武力の面には顔が効くが政界に強い影響力はないだろ?僕はイギリスという外国からの圧力も加えることができるんだ。どちらが裁判に影響を与えられるかわかるだろう?」

 

「それは・・・」

 

椎名の家は確かに裏社会に大きな影響を持っているが確かに法の世界にかんしては弱い部分はある。

自衛隊に道路を封鎖してもらうなどは出来るが直接自衛隊を動かすなどと言ったことはできない・・・

それに、もう一つの知り合いの公安0だってどちらかと言えば武力の世界なわけで法の世界に影響を与えるのは難しい。

 

「アリア、僕と一緒になれば優希以上のことが僕には出来る。だから、とりあえず書類の上だけでもいいんだ」

 

「・・・少し考えさせて」

 

アリアの足が俺の足から力なく離れた。

何もいえない俺も情けねえ・・・

エルと俺の目が合うがエルはそうだろう?と目が言ってる。

くそ・・・

それから、俺達は考えながらお互いに会話も少なく食事をする。

確かに、俺はアリアの母さんも裁判に影響を与えることはできなかったさ・・・

だけど、やれることはまだあるんだ。

アリアの証拠集めを手伝い卷族の連中を捕まえまくる。

それで最高裁までなんとか・・・

だが、それでいいのか?いや、間に合う可能性も低い。

それに、かなえさんの裁判は何か裏の事情も存在している可能性だってある。

それに協力できるのはエルの方がいいんじゃいのか?

ああ、くそ!考えてばかりでなんか眠く・・・ん?

目の前が少しぐらつくほど眠い。

待て、16時間眠ってたんだぞ・・・

眠いわけ・・・

こつんと肩に何かが当たる。

見るとアリアが目を閉じてもたれかかってきている。

気絶・・・いや、寝てる?さっきまで起きてたのに・・・

こいつは

 

「くっ!」

 

無理矢理立ち上がりアリアが崩れないように抑える。

ぐらりと視界が歪むが無理矢理意識を繋ぎ止めるように意識する。

そうしないと意識がなくなりそうだ。

 

「え、エルお前」

 

食事に睡眠剤か何か入れたのか?じゃないとアリアと俺の状況に説明がつかない。

 

「ごめん優希。全てが終わるまで眠っていてくれ」

 

がくりと右ひざが落ちる。

かなり強力な睡眠剤か・・・

ここで意識を失えばどうなるか・・・

嫌な予感しかしねえよな・・・

 

「ぐっ!」

 

腕から射出用のワイヤー先端の刃を左膝に突き刺す。

激痛が走るが意識が覚醒する。

アリアを抱えて立ち上がるとエルを睨みつける。

 

「どういうことか説明しろエル!」

 

「今は説明できない」

 

その言葉と同時に横から殺気を感じアリアを後ろに回した瞬間飛び込んできた人影に体当たりされ俺は後方に吹っ飛ばされる。

しまったアリア!

 

思わず手を離してしまったアリアから離れレストランの床を転がり立ち上がりつつ刀を抜いた。

 

「優希の相手は頼むよリゼ」

 

「分かりました」

 

「待て!」

 

エルがアリアを抱えてエレベーターの方に歩いていく。

追おうにも俺の前にはメイド服姿のリゼ。

その両手には俺の日本刀の刃の半分ほどの小太刀が逆手と普通に持たれている。

 

「どけ!」

 

「どきません」

 

すぐに飛びこまなかったのは薬で反応が鈍っているのもあるがリゼの構えから並みの相手じゃないということを直感が警告してきたからだ。

 

「優希」

 

リゼの背後でエルがアリアを抱きかかえて立ち上がった。

 

「全てが終わってからと思ってたけど選択肢を上げるよ」

 

「選択肢?」

 

「卷族にこい、優希。それがアリアと君のためにもなる」

 

「断る!アリアをこっちに渡せエル!さもないと」

 

「さもないと?なんだい?」

 

エルが俺の方を見てふっと笑う。

 

「ブッ飛ばしてアリアを取り戻してやる!」

 

右に飛んでから椅子を掴んでリゼに投げつける。

リゼはそれを左手の小太刀を上段に振り上げ両断した。

なんて切れ味の小太刀なんだよ!

 

リゼが一瞬屈んで床を蹴り接近してくる。

その動きはまるで獲物を狙うチーターのような動きだ。

ヒュンヒュント風を切りリゼが両刀で切りかかってくる。

俺はそれ片方の日本刀で受けながら右腰左腰のワイヤーを射出するがリゼはそれを読んでいたのか最小限の動きで交わす。

巻きもどしながらもう1本日本刀を抜いて2刀でリゼの剣を迎撃するが腕に軽くリゼの刀がかすめた。

ぱっと血が飛ぶが浅い!

だが、速度はリゼの方が上だ。

思いっきり背後に向かって飛ぶと同時に両方の日本刀を背後に向かい放りあげると同時にガバメントを引き抜き右でリゼを直接狙い。左は跳弾射撃。

リゼはそれを小太刀で弾きあるいは避けるが体制が僅かながらに崩れる。

 

撃ち尽くした銃をホルスターにしまって落ちてきた日本刀を受け止めると今度はぐっと地面を踏んでリゼに突撃する。

 

「飛龍2式双突!」

 

槍を突き出すように右腰に構え思いっきり突き出す2段の突きだ。

リゼは舌打ちし近くのテーブルを蹴りあげ俺に飛ばしてくるが左の突きの刀でテーブルを破砕し右の突きがリゼに迫る。

避けられないと判断したかリゼは懐から何かを取り出すと俺に向かい投げつけてきた。

破壊すると思った矢先再び直感から攻撃をやめて左に転がる。

ガシャンと言う音にの方を見ると瓶の中からの液体が床のカーペットを溶かしている。

硫酸か?

 

「・・・」

 

リゼが黙って小太刀を構えたので俺も再び

攻めのパターンを考えるが今の攻防で分かった事がある。

おそらくリゼの戦闘スタイルは俺や姉さんのように正面から戦うタイプではない。

様々な武器を使い相手の体力を削る暗殺者タイプ・・・

 

「・・・」

 

無言でリゼが攻撃してくる。

小太刀の斬撃を猫が爪を振りまわすと言った表現が正しいのか分からんが攻撃してくる。

正面から切りつけるのではなくじわじわ傷をつけてくる剣技だ。

 

「ちっ!」

 

俺はそれを受けることのみに専念。つまり防御しつつ攻撃の隙を探る。

同じ2刀でもこの距離では長い日本刀の方が少し不利だ。

徐々に後退させられているのを感じながらワイヤーで攻撃すると決めた瞬間リゼがブンと右足で横殴りに蹴りつけてくる。

当たらねえよ!

 

「・・・」

 

突如シャットリゼのブーツから刃が飛び出した。

隠し武器!暗器ってやつか!

リーチを読み違え服に軽くかする。

防刀しようじゃなきゃ貫かれてたか!

リゼはぐるんと蹴りの回転力を使い再び右の回転蹴りを繰り出してくるがそれは、悪手だぜリゼ!

動きを読んで当たらない位置に体を持っていきリゼの蹴りが来た瞬間反撃するつもりだったが蹴りが来た瞬間、リゼのブーツの仕込み刃が急に俺に向かい射出された。

 

「くっ!」

 

目に向かい飛んできたそれを寸前で交わすが頭の包帯が切り裂かれぱらりと地面に落ちる。

軽く頭が切れたらしく血がどろりと流れるのを感じた。

今の鈴さん村上への攻撃見てなかったら目に直撃してて詰んでたな・・・

同じ暗殺者タイプの戦闘スタイルの鈴さんいてよかった・・・

だが、安心している暇はない。

リゼは再び回転して蹴りを放とうとしていたからだ。3連回転蹴りかよ!

付き合えるか!

背後に向かい飛ぶがダンと壁にぶち当たる。

しまっ!いつの間にか追い込まれてた!

リゼの蹴りが再び迫ってくる。

日本刀の柄で受け止めたが勢いを殺しきれずにまともに壁に挟まれてリゼの蹴りを腹に食らった。

 

「がは」

 

肺の空気が一気になくなる感覚と激痛が襲うが柄のおかげで致命傷じゃない

 

「くっ!」

 

逆の手で日本刀を横殴りに振るうとリゼは跳躍し距離を取って息を吐いた。

 

「・・・」

 

がくりと右膝をつきながら息を整えようとするがこいつはやばいぞ・・・

強いとは思ってたがリゼの強さは想像以上だ。

正面から打ち合う水みたいなタイプはある意味俺は慣れたもんだが鈴さんやレキやこいつみたいな暗殺者タイプの戦闘スタイルの相手は大嫌いなんだ・・・

 

「ワトソンは行ったようですね」

 

「突然会話でもする気になったのか?」

 

会話してくれるなら体制を立て直すチャンスだ。

ここは付き合うぞ

 

「あなたは勝てませんよ」

 

冷徹な相手を見下すようなその視線。

その手の趣味の奴なら泣いて喜びそうだな。

俺にその趣味はないが

 

「似たようなこと言ってきた奴は何人もいたぞ?だが、最終的には俺が勝った」

 

「あなたが私に勝てると?」

 

「勝つさ。アリアを取り戻さないといけないし理子だって助けなきゃねらねえ」

 

「分かりませんね」

 

「あ?」

 

「それであなたは何を得るのですか?何の見返りがあるんです?ここで私に屈服し敗北を認め卷族に入ると言うのであれば私はあなたを殺しません。それがワトソンの意思ですから」

 

「言ったろ。降伏はしねえ。得るものうんぬんはどうでもいい。俺は俺の信念に従って2人を助ける」

 

「なるほど、よくわかりました。つまり、馬鹿と言うわけですね」

 

「はっ、かもな」

 

我ながら馬鹿かもなと思う。

もっと楽していける人生だって俺は送ろうと思えば送れるはずなんだ。

マガジンの1つを意識しながらデザートイーグルを抜いた。

使うか魔封弾。

リスクは高いが意表をついてリゼに勝つ。

時間をかけずにダメージをこいつを無力化するにはそれ以外方法はなさそうだ。

削り合いでは連戦に対応できなくなる可能性がある。

つまり、普通に戦えば無傷でリゼに勝つには不可能。

次にエル、続いてヒルダ。

考えてみりゃ今までの中で最悪の戦いじゃないかこれ?

S、S、Sと続けて3人のSランクとそれ級の敵と激突とかどんな罰ゲームなんだよ。

しかも1人で・・・

だがやるしかねえよな。

マガジンを掴もうとした瞬間がくりと膝が落ちたのを感じた。

そして、そのまま床が目の前に・・・

 

「う・・・」

 

軽い衝撃と共に地面に倒れたのだと分かった。

体中から力が抜けていくような感覚・・・

 

「やっと回りましたか。意外に時間がかかりましたね」

 

すぐ上からリゼの声が聞こえる。

なんとか首だけは動いたので彼女を見ると目の前で俺を見下すリゼ

 

「毒・・・か」

 

「ええ、神経系に作用する麻痺毒です。心配しなくてもいいですよ1週間ぐらいで動けるようになるはずです」

 

リゼはそういうと用は済んだとばかりに背を向ける。

 

「まち・・・やが・・・れ」

 

意識が遠くなりそうだがまだ、意識を失うわけには・・・

リゼは振り返らないまま

 

「次に目覚めた時、何人死んでるんでしょうね?」

 

ざけんな・・・ふざけるな・・・

待てよ・・・

リゼがエレベーターに消えて行くのを俺は見ているだけしかできなかった。

意識を保つのも精いっぱいで動くこともままならない。

リゼが言う言葉通りなら行動不能にする毒・・・何度も切りつけられたから刃に毒が塗ってあったんだ・・・

ここで意識を失ったら目が覚めるのは全てが終わった後になるのか・・・冗談じゃねえ・・・

冗談じゃない!くそ・・・くそ!くそ!

右手に思いっきり力を込めようとするがまるで手は動かない。

 

「理子・・・アリア・・・」

 

2人の名前を呼び俺の意識はそこで闇に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

                †

                †

                †

 

そして、次に目が覚めた時見えたのは白い天井。

横にいたのは土方さん。

彼から聞いたのは・・・

アリア、理子の死。助けに向かったキンジはリゼ、エルを退ける者の連戦で消耗した彼もまたヒルダにより死亡。

最悪の結末・・・あの時、目覚めさえしていれば・・・

悪夢であるなら覚めてくれ・・・

悪夢であるなら・・・

 

『これが現状のままなら辿る未来。それを覆したければ動け優希』

 

 




書いててリゼ優希の相手にして強すぎと思ってしまった。
ある意味ヒルダより最悪な相手な気もします。

最後に優が聞いた話は優が、あのまま気絶したまま原作ヒルダ戦が行われた未来です。
原作でもワトソン相手にギリギリ勝ったキンジですが連戦ではヒルダに勝てないと思います。
リゼにキンジは勝つでしょう。
なにせキンジは薬が効きにくい体質みたいですしね。
優は最悪な未来ではなく新しい未来を掴めるのか!
掴めなかったら失われた未来ですね(笑)それは今期アニメですけど。


次回は久々に隼の追撃戦やりますよ!

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