緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

229 / 261
ちょこちょこ書いて長くなっちゃいました。
相変わらずの起承転結下手くそです


第228弾 優希VSヒルダ 裏切りの理子

最初に理子に会った時の事は今でも覚えている。

ブラドの手下というか使い走りに地下牢に叩き込まれぎゃーぎゃー言ってた時後ろに気配を感じて振り向いたんだ。

ぼろぼろの服を着て端で震えながら俺から1歩でも遠ざかろうと壁を背にする金髪の女の子。

 

「君は? 君もブラドに捕まったの?」

 

その時の俺は捕まってるのが自分だけじゃないという事にちょっと、安心を感じていた。

やはり、その頃の俺は弱くて・・・ドラキュラに捕まり怖かったんだからな

 

「・・・」

 

理子は・・・あの子は怯えて何も言ってくれなかった。

でも、俺はそれでもへこたれず

 

「僕、椎名優希って言うんだ。君の名前は?」

 

「・・・」

 

少女の口が少しだけ動く。

名乗るかを一瞬躊躇したんだろうが・・・

 

「理子・・・峰・理子・リュパン3世」

 

              †

              †

              †

 

デートもどきなんて何回も経験しているぞ!

レキの時も事実は違うがデートみたいなもんなんだし理子とデートも余裕余裕と考えていた俺が馬鹿だった・・・

 

「よーし!次行ってみよ~!」

 

考え方が甘かった・・・レキと理子は性格が完全に違うわけだから似たようなデートになるはずがなかったのだ。

 

「そろそろ休もうぜ理子・・・」

 

「えーユーユ貧弱だ!まだ、2時間ぐらいしかたってないんだぞ!理子フラグ回収する気ならがんばんないとだぞ」

 

理子フラグねぇ・・・まあ、理子は可愛いし普通の男なら泣いてでも回収するんだろうがこの子の相手は疲れるぞ・・・

理子に呼び出されて都内に来たのはいいがデートと称して理子の買い物や行く先々合わされているのが現状だ。

出会ってそうそう驚かされたのは理子の格好。

俺は武偵高の制服なのに理子と言えばふりふりの私服だ。

リボンが一杯付いているが理子には似会うな。

ちょっと、顔を赤くした理子の顔も珍しいものだったし・・・

一瞬でふざけた時に使う笑顔に戻ったけどな・・・

 

「とにかく少し休まないか?ついでに色々話したいこともあるし」

 

ヒルダの件も話とかないとな。魔封弾も手に入ったしもう少し準備出来たら・・・

っておい!いきなり、理子が腕に抱きついてきたぞ

 

「いーよ!どこ入る?理子が決めちゃっていい?」

 

ふわりと理子の胸の弾力が腕に押しつけられる・・・意識するなって方が無理!俺男だし!

 

「そ、そうだな・・・」

 

それでも何とか平静を保つ。

何これ!拷問!

 

「クフフ、ユーユー照れてるなぁ。理子の胸におぼれちゃう?」

 

「そ、そういうふざけたことやめろ!」

 

「えー、ふざけてないよぉ。ユーユーなら触らせてあげてもいいよ」

 

な・・なんだと!

そりゃね。俺も男だし女の子の胸には興味が・・・ってそうじゃなくて!

 

「あそこに入るぞ!いいな!」

 

「いいよ。ユーユーの行く所理子ありだ!」

 

腕に抱きつかれたまま、その店に入る。

よし、店に入れば・・・

 

「いらっしゃいませお嬢様!旦那さま!」

 

しまったぁ!ここメイド喫茶だぁ!

今日の俺は運に恵まれてないぞ・・・

 

「たっだいまぁ!」

 

理子は乗りよく返してるし・・・

席に案内され理子がのりのりでメニューを読み上げ店員さんが行ってしまう。

まあ、店はここでも話はできるさ。

 

「理子。ヒル・・・」

 

俺は言いかけて言葉を止めた。

ヒルダの名を出そうとした瞬間、理子の顔から笑顔が消え、青ざめがたがた震える。

 

「り、理子?大丈夫か?」

 

「聞きたくない・・・」

 

「え?」

 

「今の時間だけはあいつの事思い出したくない・・・名前も聞くのも嫌だ・・・」

 

怯えてる・・・無理もないか・・・ヒルダとの因縁は俺以上に深い・・・

子供のころからいじめられトラウマになってるんだろう・・・

俺だって姉さんがいなければ理子と同じになっていたかもしれない。

ヒルダには立ち向かう。

それだけの力は俺にはない。

だが、周りの協力があればそれも可能だろう。

1つ決めた・・・ヒルダは理子のいない場所でぶっ潰す!

エル悪いな・・・今の理子を見て俺は決めたぞ。

師団から卷族に移る話は無しだ。

そうと決めたなら今日は理子にとことん付き合ってやろう。

 

「分かったよ。その話はしないよ」

 

本当というように理子は顔を上げたので俺は頷くと理子はどこかほっとした顔をした。

 

 

その後、注文を取りに来たメイドさんに元気を取り戻した理子がメイドさんとできるゲームを選択したり、それに巻き込まれたりしたんだが割愛しておく・・・

 

メイド喫茶を出た後も理子とのデート?は続く主に理子の趣味であるいわゆるゴスロリ系のゲーム捜しにつきあわされたりアニメイトに連れて行かれたりデートというか理子といつも遊ぶ乗りになってきて俺もいつもの調子を取り戻しながら理子と遊んだ。

理子が腕に抱きついてくるのはまあ、ドキドキするけどね・・・

 

時刻は午後18時を周り少し空が暗くなりだし、そろそろお開きかと思っていると理子がふと足を止めて店のショーウィンドーを見上げてた。

何見てんだと思いながら俺もそちらを見ると赤いウェディングドレスだった。

それも、理子の好きそうなふりふりのついたもんで新作と横には書かれている。

誰がデザインしたのか知らんがウェディングドレスって純白が普通じゃないのかな?

 

「いいなぁ・・・」

 

理子が小声でそう言ったのを聞き逃さなかったんだがやはり、理子も女の子・・・ウェディングドレスってのに憧れがあるんだな・

 

「理子に似合いそうだな」

 

実際似合いそうなのでそう言うと理子はえっという顔で俺を見る。

 

「理子に似合うかなこれ?」

 

「まあ、着てみないと本当の所は分からないと思うけど似合うと思うぞ」

 

理子と結婚する奴は幸せだろうな。

性格がこれだから旦那になる奴は大変だろうが美人の奥さんだし結婚生活もすごく楽しいものになりそうだ。

 

「じゃさ。優希と結婚するならこれ買ってくれる?」

 

「え?」

 

いや、結婚って・・・俺と理子は友達で恋人ですらないんだぞ

 

「・・・」

 

てっきり、からかっているのかと思ったが理子は真顔だ。

これは不真面目に答えられない状況だぞ・・・

なんて言えばいいんだろう・・・

 

「その・・・」

 

まいったなと思った時

 

「よろしかったら試着してみませんか?」

 

天からの助けだ!お店の人が出てきて声をかけてきてくれた。

 

「ぜひ、お願いします!」

 

渡り船とばかりに店員さんの言葉に飛びつき、俺達は店の中に入った。

理子は答えて欲しかったのかちょっと残念そうな顔をしていたがカーテンの中で店員さんと話している声を聞きながらどう答えるべきだったんだと腰の刀に手を当てながら考えているとカーテンが開いた。

一言で言うなら俺は見惚れた。

薄く化粧もしているらしく、赤いウェディングドレスに頭にベール。

胸元の開いたデザインだがそれが理子によく似合っている。

美少女のアリアやレキでもここまで似合いはしないだろう。

主に胸のせいで・・・

これはまさに、理子のために作られたウェディングドレスといってもいいドレスって気がするな。

 

「お似合いですお客様!」

 

店員さんも絶賛中だ。

 

「どう・・・かな?」

 

顔を赤くして理子が聞いてくる。

化粧も相まっていつもの理子じゃないみたいだ・・・

 

「綺麗だな・・・」

 

嘘偽りない気持ちだった。

その瞬間は間違いなく俺は理子が世界一綺麗だなと思ったんだ。

 

「優希に褒められるとうれしいなぁ」

 

本当にうれしそうな理子の笑顔。

この笑顔が消えないようにヒルダに勝たなければならない・・・絶対にだ。

 

 

 

 

 

 

店員さんにお礼をいって店を後にした俺達だったがちょっと、空気が違う。

なんというか少し甘い感じがする・・・

 

「こ、これからどうする理子?そろそろ帰るか?」

 

道を歩きながらそいうが理子は少しだけ前を歩きながら答えない。

 

「1人になるのが怖いなら知り合いのとこに泊めてもらうか?土方さんの家なら強い人達が・・・」

 

「・・・」

 

理子は振り返らずに先を進んでいく。

なんか怒らしたか?覚えないんだが・・・

それ以上、なんか話す言葉も見つからず理子の後ろを歩いていったんだが駅からは離れてるな・・・どこに行くんだ?

 

数分歩いた時、理子が再び路地を曲がった。

その際理子が小さく何かをつぶやいた。

 

どう言う意味だと俺もそれに続き曲がったが

 

「ん?」

 

理子がいない。

少し開けたそこはビルも立ち並ぶ交差点だが状況的にありえないそれに、俺は刀に手をやった。

この、スクランブル交差点には夕方のこの時間ものすごい数の人々が行きかう場所だ。

会社帰りのサラリーマンや学校帰りの学生など数えきれないぐらいの人々が・・・

だが、交差点には車もなく誰一人いない・・・

ありえない非現実的な光景には1つ心当たりがある。

人払いの鬼道術・・・

理子はどこに行った?

無事なのか?

 

「理子!どこだ!」

 

大声を出してみるが返事はない・・・いや

 

「他人の心配とは余裕ね。椎名 優希。いえ、ゴキブリ」

 

上空からの声に顔を上げると電柱の上に立っているは紫電の魔女ヒルダ・・・

 

「てめえか蝙蝠女!理子をどこにやった?」

 

こいつがここにいるなら理子は連れていかれたと考えるのが妥当だろう。

仲間に空間転移のステルス持ちがいれば簡単な話だ。

いや、さっきの理子のつぶやきは・・・

 

「口を慎みなさいなゴキブリ。吹けば消えてしまうあなたの命消してしまうわよ」

 

くるくると黒い日傘を回しながらヒルダは妖艶に笑った。

やばいな、この状況・・・強がってはみているが完全に敵の手の内って感じだ。

 

「簡単に消せるの思うなよ?んなことより理子はどこだ?」

 

「まだ、分からないのかしら?」

 

「あ?」

 

ヒルダに対する怒りが積み重なってきている。黙とう無しで戦闘狂モードになれるぞあと少しで

 

「裏切られたのよあなた。私のかわいいお友達にね」

 

ヒルダは哀れねと言うように目を閉じた。

 

「友達?お前に友達なんているのかよ?」

 

さっきの理子の言葉・・・まさか

 

「なら言ってあげる。私の結界の中にあなたを招き入れたのは峰・理子・リュパン4世よ」

 

どくんと心臓がなった気がする。

心拍数も上がるが落ち着け・・・

あいつが裏切るわけないだろ・・・

 

「そんな嘘に騙されるかよ。姉さんが後ろにいた嘘の仕返しか?」

 

にやりとして言ってやるが内心は冷静じゃない。

まさかという感情があるからだ。

 

「あらやだ?じゃあ、なんで結界にあなた一人がいるのかしら?1人で迷い込んできたとでもいうの?」

 

「そういう偶然もあるだろ?」

 

「ホホホ、もう一度言ってあげるわ。裏切られたのよゴキブリは。この結界の中にあなたを連れてくるように私は頼んだの。お友達。峰・理子・リュ・・・」

 

ドオオン

 

デザートイーグルの銃弾がヒルダの額に穴をあけヒルダは首を後ろに倒してから前を向いてにぃっと笑った。

 

「黙れよ!蝙蝠女!」

 

腹が立つ。んなことありえねえ!そうだとしても俺は信じない!てめえはヒルダ何か卑怯なことしやがったんだ!絶対に許さねえぞ!

戦闘狂モードに覚醒したのを感じた。

 

「そうはいいつつ考えてるんじゃないのかしら?理子に裏切られんじゃないって?なぜ?どうしてって」

 

「だとしても構わねえよ」

 

「へえ、どうしてかしら?」

 

「答える気はねえよ」

 

仮に裏切られたとしても俺は理子を恨まない。俺は1度そういうつもりがなかつたとはいえ理子を見捨ててる。

裏切られても自業自得ぐらいに考えとく。

あいつを恨んだりはしねえんだよ

 

「それより、ヒルダいいのか?」

 

「?」

 

「出てきたならてめえは倒す!今日この場でな!」

 

ヒルダは何かを考える仕草をしてから

 

「予定通りにはいかないものね。義理は果たした以上、ここからは好きにやらせてもらおうかしら」

 

パリっとヒルダの体から放電現象が起こるのを目に俺は自分の装備とヒルダを沈める方法を模索する。

 

「やってみろ」

 

奴が電気を使うなら刀はリスクがあるな・・・

紫電があれば話は違ったんだろうが銃のみでやるしかない。

 

「フフフ」

 

ヒルダは笑いながら電柱のケーブルを左手で儂掴みにすると右手を俺に向ける。

バチバチと雷の玉のようなものがヒルダの手の中に現れそれが大きくなっていく。

吸ってやがるのか電線から電気を!

 

「ほら!避けてみなさい」

 

雷球が俺に向かい投げられる。

どれだけの電力があるか分からんがまともに食らえばやばいのは分かる。

ワイヤーをビルに向かい放ち巻き上げて空に飛ぶ。

直後雷球が地面に激突し俺がさっきまでいた場所がバリバリと音を立てて放電現象を起こした。

食らいたくねえな・・・

 

「ほらほら次行くわよ!」

 

ヒルダが再び雷球を放ってくる。

時間が少ないため今度のは小さめだが迎撃できるかあれは?

 

「この!」

 

デザートイーグルを単発で撃ってみるが雷球はものともせずにこちらに迫ってくる。

通常の弾丸じゃ迎撃も出来ないわけか・・・

一瞬、魔封弾が頭に浮かぶが駄目だな。ぶっつけ本番で使うにせよ6発しかない弾丸は簡単には使えない。

ワイヤーで雷球の軌道から避け、ビルの屋上に降り立つ。

ヒルダは蝙蝠のような翼を広げて俺に向けて急降下してくる。

 

「ホホホ、鬼ごっこと行こうかしらゴキブリ」

 

ヒルダが両手を前に突き出して俺に迫ってくる。

美少女が両手を広げて突っ込んでくるなんて考えてみればおいしい状況なのかもしれないが掴まれたら電撃で動けなくなる。

 

「願い下げだババア!」

 

ガバメントを抜くと3点バーストで翼をズタズタにするとヒルダはにやりと笑い、トプンとそのまま落ちながら影の中に消えた。

それがあったな・・・

今は夜で闇なんて腐るほどある・・・

ここにいたらやばいと思い飛び上がろうとした瞬間背後からの殺気に反射的に体が動く。

俺の影からヒルダが飛び出してきたがぎりぎり空に逃れヒルダの手が空を切った。

ヒルダは空に逃れた俺を追撃するために翼を広げ迫ってくる。

空中じゃ動きは限定されるが!

ワイヤーで左へ少し移動しヒルダも追うために旋回してくる。

位置は俺が下側、ヒルダが上!ここだろ!

空中でマガジンをリロードしヒルダに向ける。

ガバメントでフルオート全弾発射だ・

ヒルダは回復を頼りに回避の動きを見せなかったが空中で弾丸が命中した瞬間夜空に連鎖的に大爆発が起こった。

ガバメント全弾による炸裂弾14連発。

どんなに離れてようがこれなら魔臓を一気に破壊できるはず。

公安0で言っていた跡形もなく吹き飛ばすは無理だが近い効果はある。。

ヒルダのあの細身の体で受ければ魔臓が破壊された時点で死んだだろう・・・

耐えられるはずがない

つまり、9条破り・・・

爆炎を見上げながらため息が出る。

とうとうやっちまった感がもあるが今さらって気もするな・・・

仲間を守るためなら俺は武偵憲章を破る。

そう決めていたがいざ破っちまうと・・・

一瞬、秋葉の母親葉月さんや実家で切り殺した人々の光景がまぶたの裏に浮かんだ。

そうだな・・・人殺しは今更だ・・・

 

「これで理子も・・・」

 

解放されると思い振り返った瞬間、ズシンと何か重いものが地面に降り立つ音・・・

バチバチという音に振り返るとそこにいたのは化け物・・・

荒い息を吐きながら血走った目で激怒の表情を浮かべているその毛むくじゃらのそれは・・・鬼

ハハハ・・・嘘だろおい

 

「ふうふう・・・今のは危なかったわ。第2形態になるのが一瞬でも遅かったら確実に死んでいたわ・・・屈辱よ・・・本当に許しがたいわ・・・ゴキブリ、いえ椎名優希。ローズマリーが何を言おうと今ここであなたは殺すわ」

 

そりゃ、ブラドが出来るなら娘のヒルダがあの姿に慣れないわけがない。

美少女完全崩壊だが・・・

あの筋肉の鎧で炸裂弾の魔臓同時破壊を防いだわけか・・・

まいったな殺すつもりの切り札で倒せないとなるとどうすればいいんだ・・・

だが、化け物姿だが裸の姿で魔臓の位置は分かった。

それを同時破壊して勝利する。

 

「ぶっ潰されて死になさい!」

 

ドンと鬼となったヒルダが突っ込んでくる。

その速さはブラドよりも早い。

 

「くっ!」

 

右に飛んでそれを交わした瞬間、地面に拳が激突しアスファルトにクレーターを開けた。

パワーもブラド並みか。

 

「死ねと言ったわよ!」

 

「!?」

 

ヒルダは陥没した地面から殴ったアスファルトのでかい破片を横殴りに俺に投擲してきた。

予想外の攻撃だが反射的に体をひねるが反応が一瞬、遅れ少しだが体をかすめる。

 

「ぐっ・・・」

 

頭をかすったらしくどろりと血が左目に滴り落ちてきたので左目をつぶりながら激怒しているヒルダにデザート―イーグルを単発で発砲。

炸裂弾かと思ったのかは分からないがそんなもの知るかとばかりにヒルダが突っ込んできたのでまともにそれを受けた。

カッと目を開けてられない光があたりを散らす。

武偵弾閃光弾だ。

よし、この隙に・・・

身を隠してそこから強襲と考えた瞬間横からの殺気に俺はとっさに相手とは逆の方に思いっきり飛んだ瞬間ガードした腕からすさまじい衝撃を受けてブッ飛ばされた。

数10メートルは飛ばされたかかなり飛んだ気もするが地面に激突しごろごろ転がり一瞬、意識が飛んだ。

1秒もなかっただろうがうつぶせで倒れていたので顔を上げるとヒルダがズシンズシンとゆっくりこちらに歩いてくる所だ。

 

「くっそ・・・」

 

気付かれたのか目をつぶったのか閃光弾は失敗だったか・・・

体中が痛いが致命傷は貰ってないしまだ、戦える。

左手がちょっと痛いが折れてはないはずだ。

 

「小細工は無駄よ!ゴキブリ!さっさと死になさい」

 

ズシンズシンと歩いてくるヒルダ。

破ろうとしたもんを出すのはおかしな話だが武偵は諦めるな。決して諦めるな・・・

心にそれを刻みながら刀を抜く。

さっきのヒルダは怒りで雷を付属させていなかったようだが次はない。

 

「串刺し?それとも、ぐちゃぐちゃに潰そうかしら?」

 

ヒルダの手にはパイプが1つ。

それには、電気が流れているのだろう。

刀で打ちあえば感電は免れない。

完全じゃねえがあれとやりあうには今ここであれを完成させる

 

「ホホホ!ほらよけないと感電するわよ」

 

電撃を纏った鉄パイプを上段からヒルダが振るってくる。

俺はそれを刀で擦りつけるように斜めに激突させ火花が散りながらもヒルダの懐に飛び込むことに成功する。

感電しないことにヒルダは驚愕しただろう。

だが、零距離とったぞ!今この時こそ最高にして最後のチャンス!

 

右胸下、下腹部を2刀で切りつけさらに腰の2つのワイヤーで右腿、左腿の魔臓の位置を知らせる模様を同時に貫いた。

その時のヒルダの顔は一言で言えば驚愕。

ありえないものを見たその表情。

貫いた武器を引き抜き俺は背後に後退した。

ヒルダはよろよろと歩いている。

これで傷の回復は無くなったわけだ。

 

「飛龍3式『刀気』」

 

ヒルダの電撃を防いだ名を俺はヒルダに聞こえるように言った。

ステルスに対抗するためその昔、雪羽さんが姉さんに教えられ生み出されたステルスの打ち合える刀を作り出せる技だ。

刀身に気のバリアを張り、ステルスの攻撃を通さないようにする。

今、俺に出来るのはこれだけだが姉さんの技の数々もこの技の応用技だ。

荒木も気を使い攻撃してきていたわけだ。

気は遺伝も関係しているらしく誰でも使えるわけではないようだが雪羽さんはこれを応用した技を数々編み出したがその技に流派はつけていない。

1代限りの自分だけの技とするためあえて言うなら『無流』。

だから俺が使うなら椎名の剣術飛流として使って欲しいと雪羽さんは言っていた。

 

「お前の負けだヒルダ」

 

後は動けなくして土方さんに突き出してやる。

気を刀に纏ったまま1歩前に踏み出すがヒルダがにやりと牙を見せて笑ったのが見えた瞬間、俺とヒルダの前に巨大な蒼い炎の壁が巻き起こった。

 

「っ!」

 

熱風から逃れるため後退するが蒼い炎・・・ローズマリーか!

 

「お久しぶりですの優希」

 

蒼い炎が消滅し炎の壁の向こうにいたのは銀の魔女ローズマリー・・・

赤い瞳を俺に向けてから天使のような微笑みを俺に向ける。

 

「俺は別に会いたくねえよ。姉を助けに来たのか?」

 

ローズマリーの後ろにヒルダはいない・・・

 

「絶望しなければ意味ありませんの。ですので今日の所はこれまでですの」

 

ローズマリーはポンと両手を叩くと周囲に人の気配が戻ってくる。

刀を抜いている俺を見て通行人がぎょっとした顔をして慌てて離れていく。

ローズマリーと対峙していることが分かったのか俺達の間だけ人がいなくなるが周りは人だらけだ。

 

「戦いますの?私は何人焼き殺しても構いませんわ」

 

にこりと微笑みながら恐ろしい事をローズマリーは言う。

こいつと戦えば死人が出る。

ここじゃ戦えない。

それにここでローズマリーと戦えるだけの体力は俺には残されていない。

武偵弾も使いつくした。

魔封弾はあるが未知数すぎる。

3式も・・・

だが、これだけは・・・

 

「理子はどこだ?」

 

「まあ、裏切った売女を気にしますの?優希を売ったのに」

 

「関係ねえんだよ!理子はどこだって聞いてるんだ!」

 

「嫉妬しますの」

 

ローズマリーは人差し指を唇の下に当てて少し頬を膨らませた。

その仕草だけでも見るものを虜にする美少女ぶりだ。

ここじゃ戦えない。

だが、理子は・・・

 

「だーめですの。教えませんわ」

 

ローズマリーはフフフと笑いながら言った。

その時

 

「おい!お前ら何してる!」

 

群衆をかき分けて警官が5人ほど走ってくるのが見えた。

ローズマリー小さくため息をついた。

 

「私邪魔される嫌いですの」

 

ローズマリーが警官に右手をかざした。

まずい!

 

蒼い火球が警官に向けて撃たれるのと俺が警官の間に入ったのはほぼ同時。

刀気で保護した刀で火球を切断する。

警官達は仰天した顔をしたが銃を抜くとローズマリーに向ける。

こんな群衆の中で撃つわけにはいかないから撃つことはしないはずだが・・・

 

「大人しくしろ!」

 

巡査長の階級章をつけた警官が怒鳴る。

 

「やめろ。あいつはRランクだ!あんたらが束になっても適う相手じゃねえよ!」

 

「あ、Rランクだと!?」

 

Rランクは小国の軍隊と互角の戦闘力の持ち主へのランク名だ。

ただの警官が何千いようとRランクにはかなわない。

 

「優しいんですのね。優希、そんな所も好きですの」

 

「俺は嫌いだよ」

 

「まあ、ご冗談を」

 

さて、どうするか・・・

 

ローズマリーはにこにこと微笑みながら警官なんかいないように俺の方を見ている。

こう着状態だ・・・無理に行動すれば死人がでる状況では場の支配権はローズマリーにある。

理子の居場所を強引に聞くこともこれではできないだろう。

 

「優希はどうすれば心の底から絶望してくれますの?」

 

そう言ってローズマリーは蝙蝠のような翼を背中から出した。

 

「ごきげんよう優希。また、来ますの」

 

ばっと空にローズマリーは浮かび上がりその姿は夜空の中に消えていった。

それを俺は攻撃することも追う事もできない。

くそったれめ・・・だが、あいつのことは後回しだ。

理子を探さないと

 

「君は武偵だろ?少し話を聞かせてもらっても構わないか?」

 

巡査長が話しかけてくる。

悪いがのんびり話をしてる時間はない。

理子を探さないと

 

「すみません。武偵活動中なので時間がありません。俺は椎名優希です。公安0の土方歳三さんに問い合わせてもらえば俺の身元ははっきりするはずなので話は後日にしてもらいます」

 

「公安0・・・殺しのライセンスを持つ連中か・・・君は一体」

 

「失礼します」

 

警官から背を向けて群衆をかき分けて走り出す。

スマホを取り出しこういう時に頼りになるのは神戸時代の友達のハッカー千鶴だな。

あいつに、ハッキングしてもらって理子の場所を・・・

そこまで思った時急に視界がぐにゃりと歪む。

 

「う・・・」

 

頭を押さえながら壁にもたれかかる。

やばいな・・・3式の刀気は完全じゃない。

使えば緋刀に近いぐらいの疲労感がある。

だが、倒れてられねえんだよ・・・

1歩踏み出すが体はそれに反し右ひざをつき地面が迫ってくる。

こんなとこで・・・倒れてる場合じゃねえのに・・・

理子を・・・助けないと・・・

 

「・・・・」

 

誰かに抱きかかえられるような感触を最後に俺の意識はそこで途切れた。

 




ヒルダもそうですがステルス使いって優には最悪の相手なんですよね。
優自身刀が使えないから銃やワイヤー技術を磨き更に、刀も使えるようになったことで遠距離以外は対応できますがステルスは苦手です。
それを埋めてた紫電はアズマリアに取られましたしじゃあどうすんのと言えば新しい戦技開発です!
雪羽に弟子入りしたのはこれを教えてもらうためでそれが飛龍3式刀気です。
アズマリアやローズマリーに対抗しないといけないので一段強くなってもらいヒルダ第二形態と一人で戦えるぐらいにはなりました。
まあ、原作知る人はヒルダがどうなってるか分かるはずです。

さて、理子の裏切り、それを助けようとして気絶した主人公。
ヒルダとの決着は物語の中の次の日に決着します!
今回もあれぇ!原作にない展開だぞ!を目指していきます!
当たり前ですが…
そしてオリジナル章に突入だぁ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。