緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第209弾 風になりて

なんだこれは?

体がピクリとも動かない。

全てが時が止まったように感じる。

あの子が・・・

レキがゆっくりと後ろに倒れ・・・

ガシャンとドラグノフ狙撃銃が傍らに転がった。

「れ、レキィ!」

アリアがココ達に絡みつかれたまま叫んだ。

「あ・・・」

武偵としてここで心を折るわけにはいかない。

すぐにココの追撃が来る。

だが・・・

レキは即死だ。

心臓を破壊されて生きている人間など存在しない。

体が動かない。

理屈では分かっていても・・・

「また俺は・・・」

がくりと膝の力が抜けて脱力する。

もう・・・

「優!動けぇ!」

遠くからキンジの声と同時におっくうに殺気の方を見る。

ココが俺を狙っている。

レキを殺したあいつが・・・

「キヒ」

ココがにやりとしてM700から銃弾が発射される。

 

それすらも、スローに見える。

「優希ぃ!」

水の悲鳴のような声が聞こえた気がした。

弾が俺に向かい飛んでくる。

俺も死ぬのか?

視界に防弾制服が赤く染まっていくレキの姿が見えた。

ふざけるな!

「!?」

火花が散り携帯用ワイヤーを仕込んだナイフで銃弾を切り捨てる。

驚いた顔のココを見上げる。

『怒りで無理やり緋刀を使うか』

頭の中でスサノオの声が聞こえてきたが無視する。

「お前らランパンだけは絶対に許さねえ!」

俺は目から涙が流れてくるのを感じながらこの場にいるランパン全員を睨む。

「お前らがこんなことさえしなければレキは!」

携帯用ワイヤー仕込みのナイフが緋色の光を放つ。

「死ね!」

瞬時に光を開放させその緋色の剣はM700を持つココの足元を消滅させた。

危うく緋色の光に飲み込まれそうになったココだがバランスを崩し新幹線の天井にべしゃりと落ちてくる。

同時にナイフが跡形もなく消える。

紫電でないと消えてしまうらしいな。

だが、今はどうでもいい!

俺は殺意のこもるのを自覚しながらデザートイーグルを引き抜く。

「ま、待つヨ。椎名の後継!」

「待たない。死ね!」

武偵は決して人を殺してはならない。

そう憲章では言われている。

仲間が殺されるぐらいなら俺はこの憲章は無視すると決めていた。

なのに・・・

憎しみだけを胸に引き金を引き弾が飛び出す。

ココが目を見開くのとデザートイーグルの弾丸が何かに激突し弾き飛ばされたのはほぼ同時だった。

狙撃か?

「優希やめろ!もう、決着はついた」

閉鎖された場所から出てきたのは土方さん・・・鈴さん

どうやら、鈴さんが銃弾弾きをしたらしい。

「動くんじゃねえぞランパン。俺たちは殺しのライセンスを持ってる。逃げるなら容赦しねえぞ」

土方さんに睨まれ、更に鈴さんに狙撃銃を向けられてはココも逃げられないと判断したのあろう。

がくりと力を抜いてしまう。

それを部下に拘束するように土方さんが言うのを横目に俺はよろよろとアリア達に囲まれるレキの元に向かう。

「アリア、レキは?」

アリアは目を落としたまま静かに首を横に振った。

「即死だ。手の施しようがない」

キンジが悔しそうに言った。

レキが自分を撃ってまだ、2分も立っていない。

だが、心臓の破壊は病院への搬送が無駄だと分からせる十分な結果だ。

「こんなふざけたことがあるかよ・・・レキ」

 

俺が緋色の目でレキを見て言った時背後に誰かが立つ気配があった。

「ちっ」

悔しげに舌打ちしたのは姉さん?

「姉さん!レキが!レキが!」

「ああ・・・」

姉さんは黙ってレキを見ている。

そうだ!姉さんなら!

「姉さんなら何とかできるだろ!レキを治してくれ!」

「・・・」

「姉さん!」

「それができるならな・・・」

姉さんは表情を浮かべずに俺を見ながら

「あの時もそうしていたさ・・・」

姉さんでもレキは助けられない・・・

「土方さん!鈴さん!」

姉さんの後ろにやってきた2人を俺はすがるように見る。

かつて、世界に名を轟かせた3人。

 

 

 

「レキを助けてくれ・・・できるだろ?」

「優!やめなさい!もうレキは・・・」

 

 

アリアが悲鳴のように言いながら俺に叫んでくる。

「うるさい!今土方さん達に話してる!」

「優・・・」

新幹線の中にいた理子の声がこちらに来たらしく聞こえるが俺は土方さん達をすがるように見る。

「優希・・・」

土方さんが口を開こうとした瞬間、姉さんが携帯電話を取り出した。

パチリと画面を開くと姉さんは少し目を丸くして電話に出る。

「何の用だ?今、弟が・・・何? ああ、分かった」

姉さんが俺に携帯を差してきた。

なんだ?

「出ろ。話があるらしい」

「・・・」

携帯を受け取り耳に当てる。

「誰だ?」

「まず、先に言っておこう。君のお姉さん以外の他の人に僕からの電話だということはばらしてはいけない。これが条件の一つだ」

「シャッ・・・!?」

慌てて口を噤む。

声としゃべり方で分かる。

やはり生きてたのか

 

「何が起きているのかは分かっている。手短に話すとしよう時間もないはずだ」

「何を?」

「ウルスの姫、蕾姫を助ける方法が君にはある」

「なっ!教えてくれ!頼む!」

すがれるものなら何でもすがってやる。

たとえ犯罪者でも・・・

「落ち着きなさい。これには代償が必要だ。それを受け入れる覚悟は君にはあるかな?」

「代償? 今はそんなことどうでもいい!どんなことだってやってやる」

レキが・・・この子が助かるならどんなことだって・・・

「覚悟はあるのかい? といっても1度ぐらいならば大丈夫だろうがね」

「いいから教えてくれ!早く!」

「それは君の中のスサノオが知っている。彼女に聞いてみたまえ」

「分かった」

              †

目を閉じると闇の中に浮かぶ人影がある。

俺が女装した時と同じ顔立ち。

だが、本当の女性を思わせるスサノオ

俺は闇の中でスサノオと対峙する。

「スサノオ。お前の存在はまだ、よくわからない奴だけどレキを救いたい。力を貸してくれ」

 

「・・・」

スサノオは少しだけ口元をゆるめながら

「やれやれ、そんなに彼女が大事なのかい?」

「ああ、大事だよ」

「それは婚約者だからかい?」

「仲間だからだ」

「即答だね。恋人や婚約者が理由というなら分からない話ではない。だが、仲間という間柄のために君は代償を支払うのかい?」

「その代償というのは命とか戦えなくなるような致命的なものなのか?」

「いや、だが・・・いや、よそう。助けるには1つ代償以外にも答えてもらおう」

「なんだよ?」

急いでんだ早くしろ。

「君は蕾姫のことをどう思ってるんだい?」

「はっ?さっきいったろレキは・・・」

「仲間という以外で答えないと助け方は教えない」

こいつ、俺と同じ顔で・・・

レキのこと・・・

そうだな・・・

「失いたくない大切な奴だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「60点といったところだが。まあ、いいだろう」

「じゃあ、レキを・・・」

「それでは、彼女のことを強く思うんだ。幼い頃に会ったころから今に至るまでの全ての記憶を頭の中で満たす必要がある」

「ああ・・・」

俺はレキのことを考える。

あの子と会った日から再開したあの日から今日に至るその全てを・・・

レキ・・・レキ・・・レキ・・・

            †

SIDE土方

「おい、希お前何しやがった?あれはなんだ?」

目を閉じたかと思えば優希はその両手をあの学生、レキの破壊された心臓の上に置いた。

それと、同時に緋色の光が手に集中し始めたのだ。

「さあな。私も緋刀は使えんから分からん」

「緋刀だと?だが緋刀ってのは触れたものを時の彼方に飛ばすものじゃねえのか?」

「歳、緋刀の秘密は椎名の家でも完全には解明されていない。説明は不可能」

隣でレキと優希を見ながら鈴が言った。

こいつらが知らねえんじゃどうしようもねえか・・・

しかし・・・

緋色の光はレキの全体を包み込むように展開され光は心臓部分が一番強い。

「まさか、破壊される前の時間へ戻しているのか?傷口を?」

そんなことができるのだとすれば・・・

 

 

ポケットの中に握りしめたものを俺は離した。

未練だな・・・

悔やみきれない・・・あの時と状況は似てやがる。

                 †

SIDE優希

考えるのは完全なレキの姿だ。

傷も何もなかったあの時の・・・

不謹慎だが風呂場で見たあのレキの姿それをこの場に再現する。

時を少しだけ元に戻す!

それをしているのは俺の思いを受け止めているスサノオだ。

俺は彼の背後に立つような形で体をスサノオに委ねている。

レキの治療は俺とスサノオ2人がしていることになる。

『うん、これで傷は治った』

レキは生きてるのか?

『体を戻すよ』

スサノオの声と同時に体が俺の主導に戻った感覚。

同時に俺はレキの心臓に耳を押しあてた。

「ゆ、優?」

戸惑ったようにアリアが声をかけてくるが俺は焦りを感じていた。

心臓が動いてない。

「おい!」

『心臓の修復は完ぺきだ。君の蕾姫に対する思いは完ぺきだったからね』

どういうことだという前にスサノオが言ってくる。

「っ!」

俺はレキの体を少し動かし心臓マッサージと人工呼吸を開始する。

戻ってこいレキ!

戻ってきてくれ!

「医療班!」

後ろから土方さん達の声が聞こえ救急隊が走ってこちらにやってくる。

『さあ、次の段階だ』

スサノオの声が聞こえ俺の意識がバンと闇の中に消えた。

そして、次の瞬間俺の目の前に現れたのは・・・

「どこだここ・・・」

そこは草原だった。

俺は東京駅にいたはずなのに・・・

「あ・・・」

見覚えのある後姿が見えた。

俺は後先考えずに走り彼女の手を掴んだ。

「レキ!」

サアアと風が吹き彼女が振り返った。

「あなたは?」

「何ってるんだよ椎名 優希だ!忘れたのか?」

「?」

 

レキが首を傾げる。

どうしたんだと再び言う前に気付いた。

レキの姿が幼くなっている。

俺達が初めて出会ったあの頃と同じ・・・

「あなたはこんなところで何をしてるのですか?」

「俺は・・・」

言う前に気付いた。

俺の手足も小さくなりおそらくだがレキと同じくらいの・・・あの時の年齢になっている。

この草原は初めてこの子と出会ったあの時なのか?

緋刀は時空を操る。

そんなことがあるのかもしれないがここは過去じゃないと俺は思った。

だけど、目の前のレキはあの頃のままで・・・

「お・・・僕は迷子を捜しに来たんだ」

「迷子ですか?」

「その子は強情でさ。事あるごとに風風って言ってる困った子なんだ」

「あなたにとってその子は大切な人なのですか?」

「うん、とっても大切で必ず見つけないといけない」

小さなレキは風を受けながら俺の後ろを指差した。

「今、風になって故郷に帰ろうとしている魂があります。だけど、その人は・・・」

その言葉だけで俺は分かった。

あの子の魂はきっと今、俺がいるこの場所に風になって・・・

目を閉じると緋色の光を通して俺は見つけたかったものの手を掴んだ。

俺はそっと彼女を抱きしめると心の底から安堵して言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰りレキ・・・」

 




解釈的にはレキの魂は風になりて故郷に帰りそうなとこを過去のレキに見つけてもらい優は緋刀の力を使いレキの魂を捕まえて戻ったと考えてください。
文章力ないのを痛感します。


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