緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第207弾 覇王VS世界最強

水を腕の中に抱いたまま新幹線の上でごろりと寝転がり、姉さんが見下ろしている。

起き上がりたいがもう、全身痛い痛い。

「キンジ、他の敵はどうしたんだ?」

インカムに呼びかけてみるとすぐに返事が返ってきた。

「1人は逃げられたが他の敵は全員縛ってる。今、アリア達と武装解除してるところだ。そっちは大丈夫か?」

「まあな、全身ズタズタだけど命に別条はない。姉さんもいるから危険はもうないだろ」

「姉さん?Rランクの・・・さっき新幹線を素手で止めたの夢じゃなかったんだな」

呆れたように言うキンジに俺も苦笑いしながら

「ハハハ、この人もう人間じゃないよな」

「失礼な言い方だな」

べしと姉さんが俺の頭をこずいてきた。

「っ!頭蹴らないでよ姉さん」

手を置いてみたらなんか、流血してるぞ

「ハハハ。死にはしないさ」

まあ、それはともかく・・・

「さあ、水話せよ。俺と別れてから何があったのか?」

「・・・」

水は答えない。顔をうずめるように俺の胸に顔を押し付けている。

 

 

「おい」

「ごめんね優希・・・後一つ厄介事押し付ける」

「はっ?」

と俺が言った瞬間、水がばっと立ち上がり新幹線の天井に立った。

い、いや・・・まさか

「ふざけんな!」

と俺が言うと水の顔をした項羽は好戦的な笑みを浮かべて俺を見る。

「水の方が意識を失ったのでな。俺の時代はこの程度の疲労なんでもないわ!今度は俺とやろうぜ椎名」

まじかよと思った瞬間

「助けてやろうかぁ?」

と姉さんがいじわる気に見てくる。

選択肢ないよなぁ・・・

「助けて姉さん」

「お礼は後払いだぞ」

金とるのかよ!

俺が突っ込みを入れる前に姉さんはトンと1歩前に出て項羽と対峙する。

「貴様がこの時代の世界最強か!俺と戦え!」

「ハハハ、いいのか?私は新幹線を素手で止める女だぞ」

「あれぐらい俺にもできる!調子に乗らない方がいい」

 

 

まじかよ!水そんなことできるの!? いや、項羽がか?

「貴様・・・」

プライドを傷つけられたのか項羽が転がっていた槍を手に取り構える。

「殺す」

「そういえばお前には雪が世話になったそうだな」

すぅと姉さんは左腕を前に右腕を少し下げて拳をにぎる構えを取った。

あ、少し怒ってるみたいだぞ。

「剣聖、武田雪羽。期待はずれもいいところだった」

「そうかな?同年代の時の雪羽と比べたらお前は雑魚だ」

にやりと口元を歪めながら俺が苦戦した相手に姉さんは雑魚と言い放った。

「雑魚だと?俺のことか?」

対する項羽もプライドを気づ付けられたらしく殺気が濃密になっていく。恐ろしい殺気だが姉さんはまるで動じない

「ああ、雑魚だ。昔の雪の方が遥かに強かった」

「なら試してみろ!」

項羽が動いた。

稲妻のように姉さんに槍とたたき落とす

「覇山!」

「ふむ」

 

パシイと文字にするならそんな音。

姉さんは項羽の覇山をなんと人差し指と中指だけで白羽取りした。

「えええええ!」

その場にいた俺たちは全員同じ言葉を吐いた。

上半身を起こしたから分かったがココ達も目を丸くしてやがる。

レキだけは無表情だが視線は姉さんの手元だ。

あんたどれだけチートなんですか!

「ぐ・・・動かん」

項羽は力任せに槍を押し込もうとするのだがまったく動かないらしい。

「今度はこちらから行くぞ」

そう言った瞬間ズンと項羽の腹に姉さんの拳がめり込んでいた。

「がっ・・は」

項羽は今の一撃で吹き飛ばされると新幹線の天井に落ちて完全に伸びてしまった。

水の体でもあるんだけど・・・な

「前言は撤回しよう」

姉さんは右手から少し出た切り傷を見て

「少しはやるじゃないか」

どうやら、項羽は姉さんが攻撃を放つ寸前にカウンターを仕掛けたらしい。

今まで姉さんが傷つけられることはほぼなかった。

なので姉さん的には傷をつけたことは強者になるというわけだ。

まあ、なんにせよもう終わりだ。水はダギュラか警察に引き渡されるだろうが

土方さんに頼んで面会時間貰ってきっちり話してもらおう。

 

 

事後処理は任せるか・・・

意識を手放しそうになった瞬間

「まずい!優!」

あ?なんだ?

キンジの声のした方を見るとなんかココの形をした風船みたいなものがあるが・・・

「妹達! 撤退よ!一旦香港に戻るヨ」

見上げるとホームの屋根の上に人影が見える。

逃げたココ!?

逃げたのをあの風船でごまかしたのか?

ココはM700狙撃銃をろくに動けない俺に向けながら

「レキ動くの駄目ね!」

俺を狙ってるのに気付いたのかレキは持ち上げようとしたドラグノフの動きを止めた。

距離的に100メートルぐらいか・・・俺たちの射程じゃない。

秋葉の風ならあるいは届くかもしれないが俺がこの状況じゃ動けないがまったく問題ない。

忘れてるぞ世界最強を

「そんなものでどうするんだ?」

とスタスタとココに向かい歩き出した姉さん

「う、動くの駄目ヨ!水月希!椎名の後継撃ツヨ」

「撃てばいい。私が防御するのが早いぞ。同時にお前に気弾をプレゼントしてやろう」

頼りになりすぎるこの人。

姉さんが男でヒロインがいれば惚れちゃいそうなセリフだ。

ココは俺たちを見ていたがやがて

キヒっと笑みを浮かべた。

 

「何がおかしいんですか?」

秋葉が聞いた瞬間

俺の前に立った姉さんの前にいきなり、人影が現れた。

テレポートのステルス?

ぱさりとウェーブのかかった金髪が太陽の光を反射して輝く。

青い瞳が一瞬、俺と目を合わせにこりと微笑んでから姉さんを見た。

背中だったから姉さんの表情は分からない。

だが、その瞬間、感じたのは信じられないぐらいの怒気だった。

本気でブチ切れた姉さんなんて見たことないが断言できる。姉さんがこの子を見た瞬間切れた。

少女の姿がフッと再び消えた。

「絶対に逃がさん」

頭に血が上ったのかあの姉さんが後先考えずにその場から消える。

どうやら、少女を追っていったらしいが・・・

「形勢逆転ヨ椎名の後継」

M700を俺に向けながら言うココと目がさあどうするねと言っている気がした瞬間、俺は自覚した。

俺大ピンチ?

             

 

 

 




さて次回は最後の銃弾…果たして

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