緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第202弾 タイムリミットは80分

女は苦手だ・・・

実家では母上以外では俺に従ってくれる女ばかりだったからこの女、星伽粉雪という奴は俺にとって正直戸惑いの対象でしかない

日本裏社会の名門、椎名と星伽。

考えて見れば接点はありそうなものだが兄貴や姉上はともかく、俺はこれまで星伽と関わることはほぼなかった。

「ああ・・・至近距離でキンちゃん笑いしてくれたよぉ・・・かっこいい・・・かっこいい、かっこいいよぉ」

と、後ろのほうから星伽の人間、星伽白雪の声が聞こえてくる。

遠山キンジ・・・先輩。いや、心の中では呼ばないで置くか。

とにかくあいつと一緒に座っている。

途中までは神崎・H・アリアや峰・理子と同じく行動していたらしいがなぜか別行動をとっている。

聞いた話によれば神崎・H・アリアが峰理子になにやら相談事があるとのことだがその神崎・H・アリア達は別の車両だ。

東京に向かう新幹線の中俺は窓の外を見ながらため息をつく。

神崎・H・アリアの護衛を兄貴に代わって請け負ったが何事もなく東京に着きそうだな

「ブスッとした顔でいないでくれます鏡夜?何で私があなたなんかの隣に・・・」

「嫌ならどっかいけ星伽粉雪。俺は頼んだ覚えはない」

「できるならそうしてます。でもお姉さまの横は遠山様が・・・」

むぅとふくれあがり明らかに遠山キンジに怒りを向けている

「何をそんなにむくれてるお前は?」

「むくれてません怒ってるんです!」

同じ意味だろうが・・・

せめて、近い席ならよかったんだろうが残念ながら指定席は離れた場所しか開いていなかった。

年も同じなんだしこの際だから仲良くしたらどうだと?いう、遠山キンジの言葉のせいで星伽白雪まで同意してしまい・・・

くそ

「ああ、あんなに幸せそうなお姉さま・・・遠山様の毒牙にお姉さまが・・・」

ころころと変わる星伽粉雪の表情を横目にしながら分かったこと。

姉上が大好き人間だということがよく分かる。

そういえば姉上は元気なんだろうか?

そんなことを思ったからだろう

「お前は姉上が大好きなんだな」

「当然です!お姉さまこそ私の理想であり目標です!大好きな大好きなおねえさ・・・はっ」

熱く熱弁したことに星伽粉雪は気づいたのだろう。

急にトークダウンして立ち上がりかけていた腰を下ろした。

「鏡夜もお姉さまがいるんじゃないんですか?」

「姉上は椎名の名前を捨てて出て行った。それに姉上は兄貴にべったりだったからな」

「優希様の?お姉さまには遊んでもらったりとかは?けいことかもつけてもらったんじゃ?」

「数えるほどだな。けいことも俺が剣を本格的に始めたのはあの事件の後だからほとんどつけていない」

今でも時々夢に見る。

父上や近衛数人を切り殺し、妹の片目を切り裂いて失明させ返り血を浴びたあいつの・・・兄貴の姿を・・・

「事件・・・水月希様・・・鏡夜の姉さまが姿を消したあの事件のことですね」

やはり、知っているか・・・表の世界ではただの火事で済まされているが裏の社会の人間はある程度は伝わっているらしい

覗き込むようにこちらを見ている星伽粉雪を見ながら

「姉上がなぜ姿を消して今になって戻ってきたのかも分からない」

出来れば姉上にもう一度会いたい。

死んだと思っていたのにひょうひょうと生きて戻り、咲夜の会いにもこないあの姉上。

兄貴の前には何度か現れているらしいがもう、俺たちのことはどうでもいいのかもしれないな

「会って聞いてみたらいいじゃないですか」

「どこにいるかも分からない。まあ、姉上にとって俺はその程度の存在ということだな」

「そんなことないです!妹や弟を気にかけないお姉さまなんているわけがありません!」

まったくこいつは・・・

少しだけ笑みが浮かんでしまったがすぐに戻してから

「ああ、そうだな星伽白雪・・・先輩は優しいんだろ?」

「はい!だからきっと鏡夜のお姉さまも鏡夜のこと気にかけてると思いますよ」

自信満々に言い張ってくれるな。

だけど、そう言われたらそう考えたくもなる。

「ふん、礼は言わないからな」

「え?お礼?なんでお礼なんですか?」

頭に疑問符を浮かべて首を傾げる星伽粉雪。

そのしぐさを見るとなぜか顔が熱くなるのを感じた。

「うるさい黙れ!俺は寝る」

「う、うるさいとはなんですか!ちょっと鏡夜!」

となりで星伽粉雪が騒ぎ立てるがこれ以上こいつと話していると調子が狂う。

どうせ、東京で降りたらこいつはこのまま青森まで行くため別れるんだ。

そうすれば、当分会うことは・・・いや、生涯ない!

なぜ、俺は再開を望んでいるような考え方をしている・・・

くそ、本当にこの女、星伽粉雪といると調子が狂う。

 

                    †

「お休みのところ失礼します」

ん?寝ていたか?

意識を覚醒させて顔を上げるとそこにいたのは車掌だ

「切符か?いや、この刀か?許可はもら・・・」

「いえ、すみません」

といって脂汗をかいた車掌は荷物ラックと座席下を確認して言ってしまう

なんだ一体?

星伽粉雪の方を見るとこいつは眠っていた。

「くっ!」

その寝顔を見ると再び顔が熱くなるのを感じた。

「ふふ・・・お姉さま大好きぃ・・・」

寝言か・・・

「ふぅ」

こんな時でもお姉さまかお前は・・・

顔でも洗ってくるか

巫女服の星伽粉雪の前を抜けて洗面室に向かい歩いて行くがどっちにトイレがあるんだ?

新幹線に乗ったことはあるとはいえいつもは近衛が全てすませるから細かいことが分からないぞ

誰かに聞くのも癪なので歩き回ってようやく探し当てたがなんだ開かないぞ?

小窓から中を覗き込むが誰もいない・・・

故障か?

顔を洗うのはやめにするか・・・

ついでだ。

護衛対象の神埼・H・アリアを見に行くとするか

車両を移動していきドアを開ける。

「鏡夜様」

近衛の山洞秋とばったりとであった。

こいつは、今兄貴の命令とやらで神崎・H・アリアの護衛をしているはずだ。

「どうした?何かあったのか?」

「いえ、鏡夜様がこちらに来るのを風で探知してきたのですが・・・」

ふん、相変わらず便利

な能力だな。

「なら、その風でこの新幹線に怪しいものがないか確認しろ」

「それは・・・」

 

ん?

「どうした出来ないのか?」

確かにこいつは兄貴の・・・優希専門の近衛だ。

だが、この状況で俺の命令を聞くことができない理由はないだろう。

「いつもなら出来るのですが少し、ステルスが使いにくい状況です。近距離なら問題ありませんが車両全体を探ることはできません」

「役立たずが」

「すみません・・・ですが近い距離なら・・・」

無表情だがこいつからは申し訳ないという気持ちは伝わってくる。

あまりいじめると兄貴が激怒するか・・・こいつは兄貴にとっては命と同じくらい大切な奴だからな・・・

「なら、探知はもういい。この先の車両に神崎・H・アリアがいるな?」

「はい、理子さんもいます。ついでに言えばキンジ君も不知火君も」

なんであいつらがここにいる?特に遠山キンジは星伽白雪と同じ車両にいるんじゃなかったのか?

「まあいい。神崎・H・アリアの会話を少し聞かせろ。それぐらいできるだろ?」

「はい、それぐらいなら・・・理子さんと話していますが理子さんの会話も聞こえるようにしますか?」

「ああ、頼む」

「はい」

一瞬、空気が変わったような感覚がし

風に運ばれて声が届く

『・・・その辺女好きっぷりは個人差が大いんだけどねぇ。K君とY君はどうなの?』

峰理子の声か?

『女たらしよ!特にYは筋金入りの!もちろんKも相当よ!』

烈火のごとく怒っている顔が想像できてしまう。

神崎・H・アリアとは面識は少ないんだが・・・

「おい、YとKというのは何のことだ?」

よく分からない単語があったので秋葉に聞いてみる。

「Yは優君。Kはキンジ君です」

なるほどな・・・しかし

 

「優君だと?」

近衛であるお前が主にそんな呼び名で・・・

「優君に許可してもらいました。近衛であると同時に友達として接して欲しいと」

「なるほどな」

兄貴がそういうなら俺は口を出す気はもうない。

「鏡夜様」

「なんだ?」

「ありがとうございます」

年上だが近衛。だが、優希の・・・兄貴の大事な女か・・・ふん

無視して会話に集中する

『普段は駄目人間なんだけど女子の前では一瞬かっこよくなるって言うか。すごく、こう胸が苦しくなって、後でそのことばかりぐるぐる考えちゃうようなへんなことをたまに言うの

い、いきなり触ってきたりするしほんと、びっくりする。そういうのが上手すぎて、こっちはなにもできなくなってこっちはされるがままになっちゃうっていうか

頭がぼーっとなっちゃう。なんかへんへんになるの。わ、Yはそういうのとは少し違うんだけどK以上の女たらしでなんていうか女の子のためなら突撃して言っちゃうような。でも、そこに惹かれるってのもわかるし・・・でもあれはパート・・・奴隷というか大切な友達だしとられたくないっていうか・・・・ってあたしの友達が言っていたわ』

「兄貴は女たらしなのか?」

どうも会話を聞いているとそう思えてしまう。

あの女レキのこともそうだが

「優君は女たらたらしです。それも真性の」

どことなく怒りを感じるのは気のせいか?

「お前も・・・その兄貴にたらしこまれているのか?」

無表情のまま、秋葉が俺を見てくる。

完全に無表情だが、一瞬俺は聞いてはいけないことを聞いてしまったのだと悟った。

こいつは本気で怒っている。

「いや、なんでもない」

と言うと再び空気が変わった気がした。

この話はどうやら禁忌らしい

それから、神崎・H・アリアと峰理子は人物の名前はYやK、Rだったが内容はこんな感じだ。

神崎・H・アリアは優希と喧嘩してしまい更にレキに優希ととられてしまった。でも、同じチームでやってきたのだから

別れたくなく忘れられたくない。神崎・H・アリアは転校してしまう前にせめて仲直りだけでもしておきたい。それに対し、

峰理子が提案してきたのはもう一度だけ話し合うというものだった。

確かに誕生日などのイベントもあるらしいが優希に使うのは効果的じゃないといった内容だった。

よく分からない内容だな。

「お前も協力してやれ」

「私も優君とは喧嘩してますから」

それでも頼みは聞くんだなとおう言葉を飲み込んで第三者的な立場の星伽粉雪の顔が思い浮かんだ。

あいつに少し相談して見るか

「じゃあな俺は行く」

「はい、では私ももど・・・」

秋葉が体勢を変えた瞬間、ぐっと前にひっぱられるように少し揺れた。

「あっ!」

秋葉が倒れこんできたので受け止めて立たせる。

「すみません鏡夜様」

「気をつけろ間抜けが」

そういって窓の外を見た瞬間、駅を通り過ぎていく。

一瞬見えた駅名は名古屋駅だ。

ん?

「この新幹線は名古屋駅に止まると最初は聞いていたが?こういうこともあるのか?」

「いえ、こんなことありえません」

そういう秋葉の顔に少し緊張感が漂い始める。

降りようとしていた乗客たちが不思議そうに席に戻るのを横目にした時

『お客様にお知らせいたします』

車内アナウンスが流れる

『当列車は名古屋に停車予定でしたが、不慮の事故により停車いたしません。名古屋駅にお降りのお客様は事件が解決しだい最寄り駅から臨時列車で名古屋駅までお送りいたします』

車掌の声と思われる声は明らかに震えている。

事故で停車するなら話には聞いたことがあるが加速するなんて異常事態だ。それに、車掌は事件と言った。

粉雪の所に戻るか?だが、神崎・H・アリアの護衛の件もある。今は動くべきじゃない

車両のドアを開けて神埼・H・アリアのいる車両に秋葉とそっと入る。

「こら車掌出せ車掌!俺ぁ名古屋で降りなきゃいけねえんだよ!もう、ドームに客が入ってるんだぞっ!俺が誰だか知ってるのか!名古屋に戻せ」

大声で怒鳴っている奴がいるがうるさい奴だ。

 

『なお付近に不審な荷物、不審物がございましたら乗務員にお知らせください』

続けられたアナウンスに怒鳴り散らしていた男がシートを蹴飛ばした。

ちっ!

「不審物ってなんだば・・・」

それ以上は続けさせなかった。

秋葉の確保した空間で居合いから日本刀紅蓮の抜き放つと切っ先を騒いでいた男の首元に突きつけた。

「黙れクズ。殺すぞ」

「ひっ!ほ、本物?」

男が両手をあげて降参のポーズをとった。

列車内で悲鳴が上がろうとした瞬間

「武偵です!手荒な真似をして申し訳ありません!」

秋葉が武偵手帳を掲げながら風を使い車内に響くように声を上げる。

一瞬、車内は静かになるが別車両から出てきた乗客がおい爆弾らしいぞ!と怒鳴った瞬間、今度こそ悲鳴が巻き起こりパニック状態に

陥った。

「ちっ!」

紅蓮を鞘に収めてからしょんべんたらしてへたりこんだ男を無視して

辺りを確認する。

何人か乗り込んでいた武偵高の生徒が乗客を席に戻そうと必死になって叫んでいる。

「席に戻ってください!危険ですから!」

と、不知火が言った時がくんと後ろに足を取られる。

また、加速したのか?

窓の景色から見ても加速はわずかだろうがこんな急にするものなのか?

くそ、俺はこういうことには詳しくない。

電光掲示板の速度表示は130キロだ。

今の加速で不安になった乗客たちが運転席のある方に殺到していく。

こうなればもう、止めることは難しい。

状況は外界と隔絶された空間だ。

椎名の本家よりも、中で動くほうがいい。

「武偵高の奴らと合流するぞ」

「はい」

秋葉とわめきながらドアを開けようとしていた男を縛り上げている遠山 キンジの元まで行き

「遠山キンジ・・・先輩」

「ん?ああ」

遠山キンジが俺と秋葉を見て何かを言おうとした瞬間アナウンスが飛び込んでくる

『乗客の皆様にお伝えしやがります。この列車はどの駅にも止まりません。東京までノンストップで参りやがります アハハ アハハハ』

どこか機械的な女の声だが合成音声か?

『列車は3分おきに10キロつつ加速しないといけません。さもなくばドカーン!爆発しやがります。アハ、アハハハ』

車内中に悲鳴が巻き起こった。

3分おきに10キロの加速?この手口どこかで・・・

「優君とキンジ君が新学期の朝に受けたチャリジャックにそっくりです」

「ああ、だがこれは理子じゃない」

秋葉と遠山キンジが会話しながら俺を見る。

「兄貴の話では京都で戦った奴に似たような手口を使う奴と戦ったそうだ」

「ランパンのココ、レキさん以上のキリングレンジを持ちなお、キンジ君や優君を格闘戦で破り、さらにアリアさんと

アル=カタで引き分けた」

「ふん、万能の武人か」

ポケットから携帯電話を取り出すが圏外の文字。

外との連絡はできないか・・・

兄貴はまだ、星伽神社だろうし兄貴ご自慢の隼でもこの新幹線に追いつくのは厳しいだろう。

現状の戦力でどうにかするしかないが・・・

「遠山君、山洞さん」

「キンジ、山洞」

俺たちがいる車両後方に遠山キンジの友人らしい2人がやってくる。

確か、不知火と武藤とかいったか?

「えっと、君は・・・」

「俺のことは気にしなくていい・・・です先輩。こいつ・・・山洞秋葉の知り合いです」

「ごめんね。簡潔に事態を把握したいから」

と不知火は言ってから武藤が口を開く

「今、不知火と計算したんだがな。今のアナウンスが本当なら19時22分だぜ」

「東京駅に着くのがですか?」

秋葉の問いに不知火は頷き

「どこの駅にも止まらずこのペースで加速していったらそこで東京につくんだよ。その先には線路はない」

思わず時計を見ると18時2分

「タイムリミットまで80分ってことか?」

遠山キンジの言葉が言った。

「もっと早いかもしれないぜさっきのアナウンスは加速し続けろっていったな。この新幹線はN700系、東海道区間の営業最高速度は時速270キロだ。40分後にはそれを越える」

「越えたらどうなるんだ?」

「安全運転はできねえぞ。車体やレールに負担がかかるしカーブで脱線の危険もある」

「危険運転なら何キロ出せるんだ?」

「設計限界速度は350から360って言われてるけどな本当の所はJRも公表してねえんだ」

不知火が携帯の電卓画面を見せながら

「スピード不足だよ。19時過ぎには時速350キロ、最後は410キロ必要になる」

「噂じゃ試験車両で397キロまで出したって噂を聞いたことあるけどな。それ以上はどこまで出せるかわからねえ。410なんて未知の領域だぜ」

80分強かそれ以下で爆弾を発見し、解体、仮に敵が乗り込んでいるならそれも排除しなくてはならない

秋葉の風で・・・いや、こいつのステルスは今不安定と言っていた。

全員を脱出させるのは極めて厳しいだろう。

東京に爆弾ごと突っ込むのは問題ない。

核爆弾というなら当然話は別だが東京駅を吹っ飛ばす規模ぐらいなら被害0とは行かないが避難はされてるはずで人的被害は最小限ですむ

「みんな、この列車に乗っている武偵高の連中を集めて減速無しで爆弾を探して解除しよう」

「了解」

武藤と不知火は後方の車両に武偵高の生徒を探しに行くのについて俺も神崎・H・アリアの方に行くという秋葉に伝えることを伝えて星伽粉雪のいる車両に戻る。

星伽白雪に動かないように言われたのか席に座っていた星伽粉雪が不安そうに俺を認めると口を開いた。

「鏡夜、今のアナウンスは・・・」

「時間がないから簡潔に言うぞ」

これまで起こり、わかったことを伝えると星伽粉雪は一掃不安げに顔を曇らせた。

「大丈夫だなんとかしてやる」

「え?」

「と、兄貴なら言うんだろうが座ってろ。この状況でお前に出来ることはあまりない」

「鏡夜はどうするんですか?」

「爆弾を解除して敵がいるなら排除する。少なくても俺はここで死ぬわけにはいかない」

「・・・」

「最後の手段もある。本当に東京駅にぶつかりそうになるなら風でおろすことも試みてやる」

こんなことしか言えないとは情けない。

そもそも、無視していればいいのになぜ・・・

「あの・・・鏡夜私のこと心配してくれてるんですか?」

「か、勘違いするな。お前にはハンカチを貸してもらった借りがある」

「借りって・・・そんなことで?フフ」

そんなにおかしいことを言った覚えはないが星伽粉雪が噴出した。

わけが分からないな

「とにかくお前は大人しくしてろ。俺は神崎・H・アリアの所に・・・」

「キャアアア!」

その時、聞こえた悲鳴の方を見ると前の車両から乗客が我先に逃げてくる。

みんなひたすら後ろを目指しているようだ。

「鏡夜!」

星伽粉雪に手を引かれて座席側に入った瞬間、人々が並みのように走り去って言った。

なんだ?

席に座っているほかの乗客はぽかんとしているが・・・

「まったく、ちょっとどいてっていっただけで逃げるなんてひどいよねぇ」

とんとんとステップを踏みながら出てきた長い黒髪を先で縛る髪型。

黒い連結根を手に好戦的な目でこちらを見てくる。

「ああ、いたいた。優希の弟君と・・・んん?弟君の彼女?」

「「違う(います)」」

星伽粉雪と怒鳴り返と相手は少しひるんだようで

「そ、そんなむきになって否定しなくても」

くししと右手を下唇に乗せて少女は笑う。

「その容姿。お前が水か?」

「アハハ、優希から聞いた?発表しちゃいまーす!私は今回の爆弾仕掛けた組織の人間でーす!」

笑顔で周りに宣言するように彼女が言うと今までぽかんと水の登場を見ていた乗客たちは犯人の登場に悲鳴を上げて後ろの車両に走って言った。

残されたのは俺と星伽、粉雪のみだ。

「お前も行け星伽粉雪!」

刀を手をかけながら言うと星伽粉雪は従って行こうとするが

「ああ、やめたほうがいいよ弟君。今回の捕獲リストにその子含まれてるから」

「何?」

「星伽白雪捕らえるのは結構厄介だけどその子掴んどくと星伽に対する交渉材料にもなるしね。だから、自分の彼女は

そばで守るのがいいんだよんナイト君」

そういうことか・・・

「なら、俺も捕獲リストとやらに乗ってるのか?」

「ん?乗ってないよだって君拉致すると水月希が乗り込んでくるからねぇ。椎名との交渉以前にランパン壊滅だぁ」

おちゃらけている言動だが油断がまるでない。

「ん?駄目だよ項羽、君はもう十分戦ったじゃない。だから、今は私」

何を言ってるんだ?

「東京での続きしようか弟君」

黒い連結製の根左手を少し前に右手を上に、その構え方には見覚えがある。

「なるほど、東京で襲ってきた先生とやらはお前か」

刀を居合いの構えで構えるが打ちこめない。

切り込めば負けるという経験からの警告がその場の空気を支配している。

それに新幹線内という限定された空間での戦闘

「先生とかいうよりは利用しただけなんだけどね。一応言っておくけど優希の弟に免じて抵抗しないなら縛るだけで

勘弁してあげるよ」

「分からないな」

「ん?」

「どうして、そこまで兄貴にこだわる? あいつはここにはいない以上、関係ないはずだ」

「アハ、優希の弟のクセに何も分かってないなぁ弟君」

「なんだと?」

 

「優希は来るよ。絶対にね」

それは、信頼しているというより確信していると感じられる。

「なら、兄貴が来る前に俺がお前を沈める」

「無理だよ」

そう聞こえた瞬間、頭に衝撃が走り激痛と共に後ろに吹き飛んだ。

床に叩きつけられる寸前、星伽粉雪の悲鳴と水の声が聞こえた。

「君、弱いもんね」

先ほどのひょうひょうとした顔ではなく冷酷に・・・笑みを浮かべたまま人を見下した項羽ではない水は言い放った。

 

 


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