緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第199弾 夜に明けて

夢を見ていた・・・

そこは、どこまでも続く平原で遠くには山がぼんやりと見える場所だ。

「・・・」

ざくざくと旅用のマントを羽織ながら僕は歩いて行く。

「み、水・・・」

リュックから水筒を取り出して口に当てて流し込んだ。

ぴちゃんと1滴だけ水が出た。

つまりは空だ。

「あ、ハハハ」

周りを見渡しても水らしいものは何もなく狼のような遠吠えも聞こえてくる。

「僕もう死ぬんだ・・・」

どさりと草の地面に座り込む。

もう、2日動き続けて気力がない・・・

「師匠・・・というか姉さん・・・僕もう駄目・・・」

姉である姉さんとこの大草原ではぐれてしまいさまようこと2日。

一人寂しく死んでいくのだろうか・・・

「うう・・・咲夜、鏡夜、母さん、父さんさようなら・・・」

目を閉じるとすぐに闇はやってきた。

      †

どれほど寝ていたのだろう。

目覚めると地面が振動していた。

いや、動いてる?

獣臭い臭いがして首を横に向けると僕と同じくらいの女の子が手綱を握っている。

馬の上かな?

「ねえ君」

「?」

薄いグリーンの髪に琥珀色の瞳。

その子は不思議そうな顔で僕を見てきた。

「助けてくれたの?」

「うん」

少女は頷くと腰の鞄から水筒を出して

「のど渇いてる?」

「う、うん!頂戴!」

僕はそれをひったくるようにして無我夢中に口に流し込んだ。

そして、一息つくと息を吐いてから

「ふぅ、死ぬかと思ったよ」

「・・・」

少女はかすかに笑った気がしたが無表情に近い表情だ。

「僕、椎名 優希。君の名前は?」

「蕾姫(レキ)です」

               †

闇の中で静かに目を開ける。

暗いな・・・ここどこだ?

辺りを見回すが誰も・・・いや・・・

長い・・・緋色の髪の誰かがいる・・・

「アリア?」

「外れ」

女性の声はそういうと振り返った。

アリアと同じカメリアの瞳に緋色の髪。

姉さんのように不適に笑うその存在は・・・

お、俺の女装バージョンじゃねえか

髪の色と目の色は違うけどな

「誰だよお前?」

少しうつむくと長い髪がその女の目にかかり見えなくなった。

口元をにやりとして

「私は・・・スサノオ」

「スサノオ?」

スサノオと名乗った女は俺を指差すと

「お前は私であり私はお前」

「はっ?意味分からねえこというな」

ていうか人に指さすなよ

「目覚めることは本来はなかった。だが、これはある意味宿命」

「・・・」

駄目だこの女頭狂ってやがる。

「緋刀の力は緋弾とは似て非なるもの。使い続ければお前は身を滅ぼすことになる」

「緋刀って身体能力が10倍になってあの変な光が使える奴だろ?」

「あんなものはおまけにすぎない。緋刀・・・今は失われた神器の力を告ぐ紫電と震電。あれを抜くことが許された人間

のみが緋刀の力を使える」

つまり、緋刀にはまだまだ、能力が存在しているってことか?

こいつ何者だ?

「誰だよお前?本当に何者だ?」

「言ったはずだよわが血を受け継ぐ子よ。私はスサノオ、かつて、緋刀により全てを失い死んだ哀れな女さ」

死んだ?

ああ、と女が呟いた瞬間辺りは再び闇につつまれた。

                  †

ああ、そうだな・・・

レキと・・・あの子との出会いはこんな感じだった。

姉さんが俺をわざとかどうかはしらんがはぐれて大草原を2日さ迷って俺はあの子と会ったんだ。

「レキ・・・」

呟いて目を開けると少し明るくなりかけた空が見えた。

「ここは・・・」

あのスサノオと名乗った女も夢の中に話だ。

だが、あまりに記憶が鮮明にある。

緋刀・・・この力は一体・・・

ずるずると俺は地面を移動しているようだった。

いや、引きづられてる?

首をひねると俺の服を掴んで引きづっている狼の姿が見えた。

ちょっと安心したぜ

「よう、戦友・・・」

「ぐるおん」

やっと、目が覚めたかというようにハイマキが口を離した。

20倍の差のシャー・ペイと戦ったはずのハイマキ。

あちこちが血まみれになりながらも無事だったらしい。

「無事だったんだな。そうだ水・・・」

俺は立ち上がりかけて再び地面に倒れこんだ。

あ、あれ?

何度か体を動かそうとするがほとんど体が動かない。

極限まで体力を使ったため体は休息を求めているらしい。

だが、ここで倒れるわけにはいなかった。

ぼろぼろのハイマキにこれ以上負担をかけたくない。

見ると、俺の制服も血まみれ。

あちこちに切り裂かれた後もあり正直ぼろぼろだった。

項羽は・・・水は撤退したのか?

顔を上げると前には山、そうか、道路まで降りてきてくれたんだな。

「う・・・」

幸い、手を放さなかった紫電を杖に立ち上がると道路を歩き出す。

その先はすでに住宅街だ。

京都の町をまだ、人通りがない道を歩いて行く。

気を失って倒れてしまいたい。

だが、今倒れるわけにはいかない。

項羽はレキを殺せといったららしいが俺は諦めない

誰かがレキを助ける可能性だってあるのだ。

合流場所は星伽神社

レキ・・・レキ・・・

あの子の無事だけを考えて俺はぼろぼろの体で1歩1歩を歩んでいく。

「うっ・・・」

どしゃっとアスファルトに倒れてしまう。

痛えな・・・

「ぐるおん!」

ハイマキが大丈夫かというように俺の手をなめてきた。

「ああ・・・」

それに答えるように言ってから再びよろよろと立ち上がる。

そんな時

「ちょ、ちょっと君待ちなさい!」

「?」

振り返るとパトカーから降りて歩いてくる2人組の警官だった。

偶然か通報か知らんがおれは血まみれだからな・・・

血まみれの高校生ぐらいの奴が刀を杖代わりに狼と歩いている。

うわ、通報ものだろこれ

「どうしたんだその怪我は?」

「武偵です。ちょ、ちょっと悪いんですが胸ポケットに武手帳が入ってるので見てもらっていいですか?」

「あ、ああ」

20代後半ぐらいの若い警察官が俺のポケットから武偵手帳を見て確認する。

これで、銃や剣を持つことに許可が出ていることを理解したのだろう。

「すぐに救急車を呼ぶ、待ってなさい」

と、警官が携帯を取り出したので俺は慌てて

「だ、駄目です!目立つと敵に見つかるかもしれない」

「敵だって?」

「俺、さっきまでSランク級の敵と戦っていたんです。そいつが近くにいるかもしれない」

「Sランクか・・・」

警官達が顔をしかめた。

Sランクは特殊部隊1個小隊と互角の戦闘力を持つ。

だが、水の項羽の戦闘力は多分それを凌駕しているだろう。

京都中の警察官が束になってかかっても負けるかもしれない。

「だが、君をこのままにしておくわけにもいかんだろう?」

先輩らしい中年の警官が言う。

「だったら、パトカーで星伽神社に送ってもらえませんか?」

俺は視界がぼやけるのを感じつつ

「こ、この狼も・・・一緒に・・・それと・・・武偵手帳の中の・・・電話番号の中の・・・土方歳三さんに連絡を・・・」

「お、おい!」

膝をついて俺は意識を失った。

                †

「え?レキちゃんって他の町に行ったことないの?」

「うん」

「じゃあ、僕と行く? 外の町に?」

「うん」

                †

どれほど眠ったのか・・・俺が目を開けると木の天井が見えた。

「・・・」

首を動かすと障子と畳の床だ。

実家か・・・いや、違うな・・・

「う・・・」

体を起こすのもやっとという消耗具合で上半身を起こした時、ぱたぱたと音が聞こえてきた。

「だから・・・まだ、意識は・・・ないと」

「ふん、ならその死にかけを拝んでやるだけだ」

「鏡夜!」

パタンと襖が開くとそこにいたのは弟の鏡夜と粉雪ちゃんだった。

俺は軽く手を上げると

「よう、弟」

「ふん、しぶとく生きていたか兄貴」

             †

鏡夜達の話を総合するとこうだ。

俺が大怪我でパトカーで星伽神社に保護されたと聞いた椎名の家は鏡夜を派遣した。

本来なら椎名の家に搬送が望ましいが狙撃手の存在のため断念した状況になっている。

にしても、鏡夜お前が動くとはな

「勘違いするな兄貴。俺はお前を助けにきたんじゃないこの女・・・粉雪にハンカチを返しにきただけだ」

洗ってわざわざかよハハハ

「粉雪ちゃんはなんでここに?」

「私は偶然用事があってこの分所に来ていただけです」

まあ、この子がいるなら多分・・・

「優君入るよ」

襖が開いて予想通り白雪と・・・

「雪羽さん?」

土方さんの奥さんの雪羽さんだ。

防弾スーツネロに日本刀を片手に入ってくる。

「よかった無事だったんですね」

「雪羽さんなんで?」

「援軍としてここにきました。歳さんが私ならノーマークとして派遣したんです」

土方さん・・・本当にありがとうざいます。

「そうだ。レキは?何か知らないか?白雪」

「レキさんなら・・・」

            †

「レキ・・・」

鏡夜に肩を借りて通された部屋にレキはいた。

「ぐる」

治療を受けたらしいハイマキがレキの枕元で顔を上げた。

一時は危篤状態だったそうだが・・・

「私に感謝してくださいねお兄さん」

なぜか、1年のアリスがいやがった。

お前がレキを治療してくれたんだな

「ありがとうアリス」

「いえいえ、私はお兄さんの専属の医師ですから」

「お兄さんだと?」

鏡夜そんな目で俺を見るな

「こいつが勝手にいってるだけだ!」

「それはともかく、相変わらずまた、ぼろぼろですねお兄さん。傷はないようですけど」

「ああ、例の力でな。体力はごらんの通りだが」

「んー、じゃあこれ飲んで寝ててください」

コブラドリンク

「おい」

「間違えました。はい、栄養ドリンクと薬処方しときましたので飲んで寝てください。ああ、寝る前にご飯ですかね?

食べたくないなら点滴にしますけど」

ぐううと腹がなった。

そういや、カロリーメイトだけしか食べてなかったか・・・

            †

「おかわりください!」

「は、はい!」

通された部屋で豪華な和食を食べながら俺は5杯目のご飯のおかわりを巫女さんに頼んだ。

「よく食べますね」

と一緒に食事をしていた雪羽さんがにこにこしながら言った。

「いやぁ、おなかすいてるんです」

ちなみに、この部屋には白雪、粉雪、鏡夜、雪羽さん、俺の5人がいる。

「それで、何があったんですか優希君」

食事をしながら俺は雪羽さんの質問に知る限りを答えた。

項羽、ランパンがまた、しかけてきたことを・・・

「実は、レキさんのドラグノフのスコープなんですが見てください」

渡されたスコープにはレキの狙撃の瞬間の相手の姿が映っていた。

ココか・・・

東京で俺を殺しかけた万武・・・

厄介だな・・・水も含めると武の達人が2人。

シン達の戦闘力も侮れない。

そういえば・・・

「ココですか・・・あ、村上はどうしてます?」

忘れてたがあいつにレキを託したんだ。

「村上君は大怪我を負ってましたが別室で眠っています」

そうか、村上・・・お前にはお礼を言わないといけないな・・・レキを守ってくれてありがとな

「それで、項羽が狙っていたのは・・・」

俺だろうな、正確には俺の緋刀

状況を全て説明してから俺たちは少し考えてから

「だとすれば、ランパンはこちら以外にもアリアさんを狙う可能性がありますね」

「アリアを?」

だがあちらにはキンジや秋葉もいるはずだ。

そうそう遅れはとらないだろう。

だが、アリア達が項羽に勝てるかといえば確信は持てない。

キンジは時に信じられないことする奴だからあるいは水に勝てるかもしれないが絶対じゃない。

「なら、そちらには俺が行く」

「鏡夜が?」

粉雪ちゃんが立ち上がった鏡夜を見て言った。

お前・・・

「勘違いするな兄貴。俺はお前を助けるわけじゃない。ランパンは俺達の身内に手を出した。そういうことだ」

アリアの護衛をしてくれるんだな

だけど鏡夜お前じゃ水には勝てない

だが、可能性はあがるかもしれないし襲撃は絶対じゃない。

「ありがとうな鏡夜」

「ふん」

「優希君。歳さんからの伝言ですが援軍は出せません。沖田さん、歳さんは東京から動くわけにはいかずあなたの護衛

には私がつきます」

「あの雪羽さん。俺なんかよりアリアの護衛についてもらえませんか?」

「いいえ、歳さんはここを動かずあなたを守れと命令しています」

何かを察知してるのか?

「希さんはどこにいるか分かりますか優希君」

「姉さんは今、ソマリアです」

「ソマリア・・・大・・ですか」

雪羽さんが何か小声で言う。

なんだ?

「優君。ここまで来たら、話さないといけないことがあるの。いい?」

白雪がいつになく真剣な顔で言ってきた。

なんなんだ?

「ん?」

「色金のことです」

俺の緋刀やアリアの緋弾のことか

「話せる限界はあるんだけど。私達星伽は色金のことを知っています」

「理解しづらいことかもしれないけど色金は人の心と通じ合う金属なの。そして、色金と通じることのできる

心は決まってるんです」

「シャーロックにある程度は聞いている。俺の力はよく分からないが」

「おそらくですけど、優君はアリアの血を輸血した。そして、緋弾が優君の体を貫通したときわずかに破片が残り、

それがアリアの血で覚醒したんだと思います。予想でしかないですが」

《それは少し違うな》

え?

「希さんに聞いたことがあるんです。かつて、椎名の家には大昔、緋弾・・・いえ、緋刀と同じ力を持つ人間がいたと」

雪羽さんの説明に目を丸くしたぞ。

初耳だ

「その名はスサノオ」

スサノオか・・・ヤマタノオロチを倒した存在。

草薙の剣を使い、この紫電のオリジナル。

あの夢に出てきた女も・・・

「このスサノオの伝承はあなたの方が知ってるんじゃないですか?」

一同の目が椎名の後継者である鏡夜に集まる。

鏡夜は舌打ちしながら

「詳しいことは分からない。母さんなら何か知ってるかもしれんがな」

母さんか・・・実家で書庫で調べたら何か出てくるかもしれんが今はその段階ではないか・・・

「話を戻しますが」

と白雪が口を開く

「スサノオが緋弾に近い緋刀や緋弾のヒヒイロカネ、そして、璃璃色金」

 

「それをレキが持ってると?」

「いえ、失礼ながら先ほどお体を検分させていただきましたが違います」

「レキさんはおそらく、郷里で璃璃色金のそばで長く過ごしていたんでしょうね。璃璃金に心を通じるいわゆる巫女のような存在として」

「失礼します」

その時、タイミングよく白雪の義妹の風雪が入ってきた。

白雪とよく似た大和撫子だ。

風雪は巻物をしゅるりとひろげると

「これは星伽西分。星伽神社に伝わる文書ですがここに璃璃色金についての記述があります。璃璃色金は穏やかにしてその力無なり

人の心を厭い、人心が厄災をもたらすとしウルスを威迫す。璃璃色金に敬服したウルスは代々の姫に心を封じさせ璃璃色金への心贄にしたとあるのです」

「時代は変わってもやはり、関わってくるのですね」

雪羽さんが思い出すように言った。

「そういえば、鈴・雪土月花のリンさんも・・・」

と俺が言うと

「ええ、ウルスの一族で私達の仲間です」

やっぱりというか姉さんは最初から何もかも知っていたんだろうな・・・

昔、姉さん関連でウルスの里を訪れたのもそれを裏付けている。

「ウルスの一族はその弓と矢でアジアを震撼させた蒙古の帝王、チンギス・ハン。その戦闘技術を色濃く受け継いだ彼の末裔の一族です」

まじかよ

「かつてウルス族は優れた弓や長銃の腕を恐れられた傭兵の民でした。しかし、次第にその数を減らし今のウルスは

48人、そして、女しか存在してません」

女だけしかいない・・・つまりは滅び行く民族。

そのため、自分でいうのはなんだが優秀な男の血をいれようとしたのか

だけど・・・

「ちょっと聞きたいんですが」

「はい」

「レキは髪の色は置いといても日本人に近い気がするんですが」

「レキさんがそう見えるのは日本人の血を引いているからです」

「というと?」

「レキさんの先祖は源義経。そして、彼は大陸に渡り、チンギス・ハンとなり一大帝国を気づきあげた」

おいおい

「ってことはレキの先祖は源義経で、チンギス・ハンの子孫なのか?」

「はい」

風雪の言葉にため息をつく。

そんな歴史のミステリーがあったなんてな・・・

               †

おなかも満たされ救護殿の裏側の縁側で背を柱につけて俺は1人で座り込んだ。

ここちいい風を感じながら空を見上げる。

レキは源義経の子孫でチンギス・ハンの子孫。

そして、璃璃色金の巫女のような存在ということは分かった。

というか俺は知ってたんだ。

さっき、みんなと話していて少しつづウルスの里で過ごした数ヶ月を断片的にだが思い出していた。

璃璃色金を体に宿している人にもおそらくあっているはずだがそこは、もやがかかったように思い出せなかった。

だが、覚えていることはある。

ウルスの里で外を見たいといったレキを連れて俺はレキと中国の大都市に向かったんだ。

何とかなると思っていた。

だけど、待っていたのは殺されかけたという現実。

一人の女の子を暴行していた男達にやめろと挑みかかり返り討ちにされ俺たちは殺されかけた。

周りの中国人たちは関わり持ちたくないように俺たちを無視していたが姉さんが現れ俺たちを助けてくれたんだ。

情けない話だけどな

「優希君」

ん?雪羽さん?

「どうかしたんですか?」

「少しいいかしら?」

「どうぞ」

この星伽神社には白雪達、大和撫子が多数存在しているがやはり、雪羽さんも大和撫子タイプなんだな。

黒一色の防弾制服ネロを着ていてもどことなく、気品があるというか落ち着きがあるというか完成された大和撫子

という感じだな

「?」

どうかしたのという顔で雪羽さんが見てきた。

本当にこの人30代か?どんなに高く見ても20代前半にしか見えないぞ

まあ、姉さんだって17歳にしか見えんがあの人は多分老化を止めてるからな

まったく、土方さん面食いだな

「えっと、何か話でも?」

「ええ、いろいろと大変だったと思うけどまだ、終わりじゃないの分かってる優希君」

「ランパン・・・水はまだ、諦めてないと思います」

「水・・・山の中で戦ったって言うランパンの戦士?」

「あいつは俺をだましてたんです・・・友達だと思ってたのに・・・それにあいつは言ってました自分は項羽の

子孫でその力を引き出せると・・・あれは2重人格なのかな?」

「項羽・・・世界を見回しても武では最強の存在ですね」

「雪羽さんは項羽がいることを知ってたんですか?」

「いいえ」

首を振りながら雪羽さんは言う。

「そうですか・・・」

「優希君。あなたは山の中で彼女と戦って生き延びた。あの山の中で項羽はどうしたんですか?」

「え?」

そうだ・・・俺はどうやって水から・・・項羽から逃れたんだ?

あの極光の光をかわした状態で俺は完全に手詰まりだった。

(手を貸してやるよ)

そういえば、意識を失う寸前声を聞いた気がしたがあれは・・・スサノオの・・・

「優希君?」

「あ、すみません」

ぼーとしてる場合じゃない

「覚えてないんです。気がついたらハイマキにくわえられて道路にいましたから」

「そう・・・分からないならその問題は後に回しましょう。レキさんにはもう会いに言った?」

「はい」

「ならいいの。一つ聞いておきたいんだけどレキさんはあなた達が追い詰められた時非常識な行動をとろうとしなかった?

自分が自爆して時間を稼ぐとかそんなことを」

「よく知ってますね。武偵弾で自爆して時間を稼ぐといってました。自分を置いていけとも」

「やっぱり。ウルスの女性って似てるわね」

思い出すように雪羽さんは微笑み、そして、まじめな顔で俺を見る

「優希君。今から言うことをよく聞いてね。ウルスにはある伝統があるの」

「伝統?」

「最後の銃弾。銃弾が一発だけになってそれを使っても活路が見出せないほど追い詰められた時。あるいは自分が主人の足手まといと判断したときその弾で自殺するの」

「なっ!」

そうかそれでレキの奴・・・

「ウルスの女性は一発の銃弾のように一途に生きる。そして、戦い続けるの。侍のように最後のその時まで」

「まるで見てきたみたいな言い方ですね雪羽さん」

「友達が・・・私の親友がそうだったから」

リンさんか・・・

土方さんも同じように狙撃拘禁された時今に近い体験をしたという。

そういうことか

「雪羽さん・・・俺はレキをそんな馬鹿な伝統なんかで死なせたくありません」

「・・・」

雪羽さんは黙って聞いてくれている。

「だからもっと俺は強くなりたいです」

そう、誰の攻撃だって跳ね返せるぐらい周りを守れるぐらいの力を

姉さんみたいに・・・

「焦ったら駄目よ優希君。あなたにはまだ時間があるし足りない分は私達大人が補います」

それでいいんだろうか?

正しいのかもしれないが今一つ納得できない・・・

「すみません。雪羽さん。俺レキの所に行ってきます」

頭を下げてその場を俺は逃げるように後にした。

                †

「あれ?お兄さん?」

レキの部屋に行くとアリスが丁度立ち上がるところだった。

「看病ありがとなアリス」

「いえいえ、経験は力なりです。後で請求書は送りますけどね」

「ハハハ、ちょっとは割引してくれよ」

「んー、どうしましょうかね。まあ、それは保留しますね」

「なんだよそれ」

こういう暗い考えのときお前のようなひょうひょうとした後輩の存在は救われるな

「レキは?」

「今は落ち着いています。というより、峠は完全に越えてますから大丈夫ですよ。ちょっと、私食事に行ってきたいのでお兄さん

レキさん見ててくれますか?」

「ああ、しばらく戻らなくてもいいぞ」

一瞬、アリスはきょとんとしたが小悪魔的な笑みを浮かべると

「クフフ、動けないレキさんを襲うんですね。襲うんですね」

2回言いやがった!

てか

「襲わねえよ!」

「きゃー、私も襲われます〜」

俺が拳を振り上げたのでアリスは慌てて逃げて言った。

なんだったんだ?

「ったく・・・」

布団の中でぴくりとも動かないレキ。

だが、わずかに上下する布団を見ると生きているのが分かる。

「レキ・・・」

やってはいけないのかもしれないが布団の中から出ていたレキの手に俺の手を置く。

驚くほど冷たく生きているのか不安になる。

アリスは峠を越えたといっていたが意識が戻らないこの状況は決して楽観していい状況ではない。

「俺少しだけど思い出したんだよ・・・草原にさ迷ってた俺をレキに見つけてもらって一緒に馬に乗って・・・

それで、外を見るために一緒に里をこっそり抜け出して・・・それで・・・」

目の前が歪んできやがる・・・

くそ、泣いてるのか俺は・・・

「なぁ、レキ目を開けてくれよ・・・もう俺はやなんだよ・・・俺の周りで人が死ぬなんてもう嫌なんだ・・・」

泣いている秋葉、憎悪に満ちた視線。

人の死は回りに与える影響が大きすぎる。

「最後の銃弾なんて伝統がお前の里にはあるんだろ?日本からの派生らしいけどもう、やめてくれよ・・・」

俺のために他の人間が死ぬなんて俺には耐えられない。

「お前は風なんかじゃない人間だろ・・・なら、自分で選べよ・・・風の命令なんて聞くなよレキ・・・」

風の命令を聞いて死んでいく

「そんな人生なんてつまらないじゃないか・・・お前はもっとわがままいっていいし幸せになるべきなんだよ・・・わがままなんていくらでも

付き合ってやるからさ・・・」

お前は笑えるんだ。

少なくても銃撃戦の時以外、昔にお前は俺に笑ってくれたよな

中国に行って散々怒られてウルスの里で別れる数日前に政略結婚みたいな形だったけど姉さんと里のみんなに

俺とお前の婚約の話をされて俺はあの時、子供だったとはいえ嬉しかったんだぜ?

              †

「優希さん」

「違うよレキちゃん」

「?」

「優って呼んでよ。許婚なんでしょぼくら」

「優・・・さん」

              †

そういえば優さんってレキが最初から言ってたのも俺のせいだったんだ・・・

それを俺は・・・忘れていた・・・

「ごめんなレキ・・・」

「・・・」

レキは動かない。

ぴくりとも動かない。

「レキ・・・」

            †

SIDE??

同時刻、星伽神社の正面の階段は数人の武装巫女が警戒に当たっていた。

それぞれが武器を持ち周囲に目を光らせている。

先ほど、白雪、鏡夜、粉雪をせた車は京都駅に向かった。

白雪はキンジと連絡が取れたらしくそのためであり、粉雪は青森に帰る前に白雪と少しでも長くいたくて新幹線を選んだのである。

んふふ、好都合好都合

堂々と方天画戟を手に正面から階段に近づいていく。

武装巫女達がこちらの接近に気づいて武器を構えている。

「止まりなさい!」

先頭にいる巫女さんが怒鳴るが私は止まらない

「優希とレキちゃんいるよね?通して」

にっこりと笑って言った瞬間、武装巫女達は切りかかってきた。

「力ずくでも通らせてもらうよ」

(代われ水)

頭の中で項羽の言葉が響く

「なるべく殺しちゃ駄目だよ項羽」

(気が向いたらな)

次の瞬間、武装巫女達は何が起きたのか分からなかった。

気がついたら地面に叩きつけられており激痛で立ち上がることすら出来なくなっていたのだ。

「殺してはいない。まあ、しばらくは動けないだろうがな」

堂々と階段を上りながら項羽は背中の武装巫女達に言う。

「やはり来たのですね」

声の方を見ると私は・・・項羽は強者を前に興奮する。

「ああ、お前か剣聖武田雪羽。お前とも戦って見たかったが片手で俺に勝つつもりか?」

「通しません。それが、最強の武人項羽であっても私はそれを倒します」

片手で構えを取る目の前の女は明らかに化け物クラスだ。

鈴・雪土月花の中で水月希を除けば接近戦最強の存在。

できれば、両手の時に戦いたかった。

「その羽散らせてもらうぞ」

「やらせません」

両者が地を蹴る。

かつて、Rランクに匹敵するといわれた剣聖。そして、武ではRランクに匹敵すると言われる覇王は激突した。

 


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