緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第189弾 妻は大和撫子!

アリアと喧嘩してから2日がすぎた。

とりあえず俺の安らぎの場といえば学校だ。

レキともクラスが違うから離れられるからな。

かなえさんの裁判の件で忙しいのかアリアもいないし理子はあえて、俺には接触してこなかった。

秋葉は気配はするのだが授業が始まる前に現れ、終わると文字通り風のようにいなくなる。

怒ってるのは明白だがどうしようもない・・・

マリはレキの威嚇が怖いのか姿を現さないので唯一レキのことを気にしないでいいのがこの授業中の時間だ。

不知火や武藤あたりには散々にからかわれキンジも同情してくれていたがなぜ、俺ばかりこんな目にあうんだ・・・

「ねーね。優希今日、遊びにいかない? 彼女さん連れてさ」

俺の斜め横に座っている水が言った。

そう、こいつも俺のクラスに転校してきたんだが俺のクラス転校生多すぎないですか?

「今日は駄目だ、人に会う約束がある」

「ちぇー、残念デートしたかったのになぁ」

と両手を頭に組んで椅子の前を少し浮かした。

行儀悪いぞお前!

見せそうだったのでキンジがヒステリアモードになりたくないためか慌てて目をそらしているな。

「ふ、鳳ちゃん!だったら俺とデートしてください!」

「あ、ごめんね。武藤君タイプじゃないの」

にこりとしてばっさりと言う水

「うおおお!何で、優ばかりもてるんだ!でてこい神!轢いてやる!」

と、恐ろしいことを言う武藤を見ながら俺はため息をついた。

水は順応能力が高いらしくあっという間にクラスの人気者になった。

アサルトでもSランククラスの戦闘能力もあるし人望もある。

唯一頭は平凡並という完璧超人というわけではない水だ。

「ふぁ」

俺の足元でハイマキがあくびした。

そう、レキがいなくてもこいつが俺を監視してるんだ。

まあ、ハイマキなら撒ける自信あるけどこいつは接近戦だけだし

「人って誰と会うの?」

「ちょっと、公務員にな」

「公務員?」

水が首をかしげる。

今日は金曜日、明日は休みのため土方さんの家に食事を招待されているのだ。

結局のところ、俺は土方さんに頼ってたんだがあの人は俺の事情を聞くとため息をついていた。

「お前もか・・・」

驚いたことに土方さんも昔、同じような状況に陥ったことがあるらしい。

それも、レキと同じウルスの少女に求婚されたんだそうだ。

同じく狙撃拘禁。

これ幸いと脱出方法を聞いたがまったく参考にならない方法で断念せざる得なかった。

そこで、俺はいろいろと調査しようと、まず、レキのいつも聞いている風の正体を探るためにレキのヘッドホンで聞いている

風を内緒でコピーし公安0に提出したのだ。

そして、今日は土方さんにお呼ばれしたといってレキと土方さんの家に泊まることになっているのだ。

そういえば、土方さんの家に行くの初めてじゃないか?

                       †

元新撰組副長、土方さんの生家は東京ではないが公安0に入った後に家を購入したらしいあの人の家は武偵高から

隼で1時間ほどの距離にある平屋だ。

隼にハイマキは乗られないのでハイマキはお留守番だが、レキと屋敷の前に立った俺はチャイムを押す。

「・・・」

レキは何も言わないでぼーと断っているが大丈夫かな・・・

いきなり、土方さんにドラグノフ向けたりしないでくれよ・・・

「はい」

とチャイムから声が聞こえてきた。

女性の声か、土方さんの奥さんかな?

「椎名 優希とレキです。ひじか・・・歳三さんに呼ばれて来ました。今日はお世話になります」

「今、開けますね」

キイイと音を立てて大きな木の門が開く。

そこにいたのは、長い黒髪を揺らしながら美人のお姉さんだ。

つうか、この人確か姉さんと同じ歳のはず・・・

20代前半にしか見えん・・・

「歳さんの妻、土方雪羽です。いらっしゃい優希君。レキちゃん」

「ど、どうも」

俺はレキの頭を掴んでぺこりとさせる。

お前は挨拶ぐらいしろ!

「アハハ、気にしないでいいのよ。 リンもいつもそんな感じだったから」

リン・・・姉さんと同じチームメイトで確か、レキと同じウルスだったなその人も

「リンは今どうしてるのレキちゃん?」

「居場所は分かりません」

とレキは首を振りながら言った。

「そうなの・・・あら、私ったらごめんなさいね。さ、中に入って」

                 †

やはり、土方さんは和の人なんだなとつくづく思うよ・・・

日本は2階建ての家を建てることが多いが、土方さんの家は平屋、おまけに庭も広く、道場のような建物もある。

大きなテーブルのある和室に通された俺達はそこに座ると雪羽さんが入れてくれたお茶をもらいながら

「そういえば、ひじか・・・歳三さんは?」

雪羽さんも土方って名前になるから慣れないな

「歳さんはまだ、仕事が残っていて部屋にいるの。来るまでは私が話し相手なるわ」

雪羽さんか・・・

信冬の年の離れたお姉さん

「・・・」

レキは座布団の上で体育すわりをしているな。

正座しろよ・・・

「えっと・・・」

改めて聞くことなんてないかな・・・

と俺が考えていると

「私から質問してもいい優希君」

「はい?」

「歳さんから聞いたのだけどレキさんと婚約したってことは信冬とは?」

その言葉におれはさーと青くなる。

そういえば、信冬にこの状況一切伝えてないし!

「ゆ、雪羽さん信冬にはこのことはしばらく内緒に・・・」

「いいわ」

と雪羽さんは薄く微笑んだ。

こ、これは・・・大和撫子タイプかこの人は・・・

土方さんも絶滅危惧種のタイプの人と結婚したんだなぁ・・・

「・・・」

キロリと違う女子の話をしたためかレキが睨んできた気がした。

やばい、話題を・・・

「そ、その写真」

ふすまの上に飾られている写真を俺は慌てて指差した。

「ああ、みんなとの写真ね」

年代は俺達と同じくらい。

5人の少年少女たちが様々な体勢で写真に写っている。

中央で若い土方さんらしい人の首に腕を回ししめあげてるのは姉さんだな。

まったく、容姿が変わってない。

それをあああとばかりに両手を土方さんの背中に向けているのは雪羽さんか

右端にいる狙撃銃を持っている人はリンさんか?

なんとなく、レキに似てるな

それと、この人は?

土方さんの背中の制服を右手でちょんと掴みこちらを見ているその人の目は青、黒髪で青の瞳は珍しいな。

「この人・・・」

「花音」

雪羽さんが目を少し落として言った。

「私達の仲間で16年前に・・・」

この人がそうなのか・・・

姉さんはあまり、この人のことを語りたがらない。

だから、顔を見るのも始めだったんだが・・・

姉さんはこの人が殺されて最大級の怒りで相手を殺した・・・

そうかこの人のために姉さんは・・・

って

「す、すみません!」

過去に死んだ人を掘り返すのは最低の行為だ。

「いいの。時々思い出してあげないとあの子も浮かばれないから・・・」

写真を見る雪羽さんは悲しそうだった。

そこで、俺は1つ気づいたことがあった。

雪羽さんの左手・・・あれは義手か?

動きがぎこちないから分かったが写真の雪羽さんは義手じゃない。

何かあったのか?

そ、それにしも、どうしよう・・・

レキは無言だし

「お前が気にすることじゃねえよ」

土方さん!

振り返ると家着らしい和服で中に入ってきた土方さんは上座に座り雪羽さんのお茶を受け取る。

「どうぞ、歳さん」

「おう」

土方さんは俺とレキを見ると

「今日はよく来たな。ゆっくりとしていけ」

                 †

その日の夜、レキが風呂に行った瞬間を見計らい俺は、土方さんの部屋を訪れた。

「失礼します」

とふすまを開けて入ると和室が現れる。

壁には誠と書かれた新撰組の旗がかけられており、その下には日本刀と小太刀が並んで置かれている。

部屋の隅には小さな机があり、整理整頓されている部屋は土方さんの性格を現しているな。

「来たな。そこに座れ」

と、進められた座布団に座る。

土方さんは日本酒に手を出すとくいっと口に運んでから俺に向き直る。

「飲むか?」

「あ、俺未成年だから」

「冗談だ本気にすんじゃねえ」

そういいなが酒を机に置いてから紙を引き出しから出して俺に見せる。

「俺個人の人脈でその中にあった音は調べさせてもらった」

レキが出てくる前に話を終わらせないといけないので土方さんは話し始めた。

「結論から言えばなその風の音に暗号の類は一切ない。ただ、ウルスの故郷の風を録音しただけのもんだ」

「でも、レキはこの風の音から指令を受けてるみたいな感じなんだ」

「リンもそうだったな」

ふぅと土方さんはタバコを取り出すとライターで火をつける。

最近気づいたことだが、俺はわりとタバコの煙のにおいは平気だ。

吸いたくはないけどな

「リンさんって、土方さんのチームの」

「ああ、希と並んで扱いにくい奴だな」

姉さんと同格の変人かよ。

どんな、人なんだ?

「風の場所はその紙に書いてある範囲だ。そこがウルスの里だからな。紙は持って帰るなよ?覚えて頭に封印しとけ」

「なんで?」

「あんまり、人には知られたくないんだよ。いいな」

じろりと土方さんが睨んできたので俺は頷いた。

そのモンゴル北部からシベリアに至る中に書かれた場所を見る。

「次にあのレキだ。少しだが調べてあるが聞くか?」

それは、レキのプライバシーに関わることだ。

だからこそ、土方さんは確認したんだろ。

だが、今は情報が少なすぎる。

「お願いします」

「あいつは、お前、星伽白雪、遠山キンジ、神崎・H・アリアを探っていた可能性がある」

「俺達を?」

「鷹の目だ」

鷹の目とはスナイパーの優れた目を生かして対象を遠くから監視するライバードの隠語である。

「さっき言った連中の対する鷹の目をあいつは何度か受けている」

レキと俺は昔から知り合いだったらしい。

ということは、俺に注目する意味はないとはいえないがなぜ、アリア達まで・・・

「もう一つは完全には情報収集できなかったが14歳ごろからロシアや中国にいたらしい。武偵ライセンスの国際化

をロシアと中国が批准する前に武偵ライセンスをその2つでとったらしい」

「それで?」

「あいつはそこで、記録に残らない仕事をしていた可能性がある」

「記録に残らない仕事・・・」

そこではっとする

「まさか」

「ああ、スイーパー。つまりは、殺し屋だ」

「・・・」

中国の武偵は人を殺していい。

違反にはならんしスナイパーってのは暗殺に特化した位置にもいる。

だが、レキはそんなことを・・・

責める気はない。

違反じゃないしやったという証拠もないからな

「証拠というわけじゃねえがリンは少なくてもこれに限りなく近い奴だった」

「スイーパーだった?」

「さあな」

事実かどうかは分からないが土方さんはこれ以上はリンさんのことを語る気はないようだった。

「俺もリンの狙撃拘禁から逃れるのに相当苦労したがお前もがんばれ」

「どうしたらしいのさ・・・」

「望むなら力ずくで排除してやってもいいぜ?」

「それは・・・」

土方さんならそれは出来るだろう。

「希が妨害しないのが前提だがな・・・」

ふぅーと煙を吐いて土方さんは言った。

そりゃそうだろう。

姉さんを敵に回したら公安0だろうがなんだろうが壊滅させられてしまう。

でも、俺の心は決まっている。

「力ずくは嫌なんだ土方さん。レキは俺の友達。出来るなら穏便にしたい」

「そのまま、嫁にもらうのも手だぜ」

ふっと土方さんは面白そうに笑う。

「い、いやそのレキは嫌いじゃないけど本気じゃない求婚は・・・」

「なんだ?まんざらじゃねえのか?」

「土方さん!」

ちょっと怒り気味にいうと土方さんは微笑みながら

「冗談だ。まあ、力を貸す必要がないならお前に任せるがいざとなれば頼れ」

「土方さん・・・」

感動するな。

やはり、この人は頼りになる。

「それとな希に会ったら伝えとけ。逃げるな。話がしたいってな」

「伝えとくよ」

「ああ」

土方さんは私室にも飾られている姉さん達の写真を見ながら言った。

そろそろレキも出てくるかな

「土方さんそろそろ俺、部屋に戻るよ」

と立ち上がる。

「そういやお前もうすぐ修学旅行だったな?」

俺は振り返りながら

「そうだけど?」

「場所はどこだ?」

「京都から大阪、神戸かな」

「ちっ」

土方さんは舌打ちし

「ランパンが日本で動いてるという情報もある。気をつけていけ」

東京は公安0のお膝元、だが、関西エリアはそうもいかないということか?

「ひじか・・・」

「優さん」

詳しく聞こうとしたがレキが部屋の外から声をかけてきた。

「お前の嫁だぜ」

「やめてって土方さん!」

そういいながら俺は外に出ると自分の寝室に向かった。

レキはとことこついてきたが雪羽さんが俺達の部屋で寝てくれたので大事には至らなかった。

どうでもいいがレキ風呂あがりぐらいはヘッドホン外せよ・・・

にしても修学旅行もなんだか無事に済まなさそうな感じがするぞ・・・

頼むから平穏に終わって欲しいものだな・・・

 

 


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