緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第18弾 ハイジャック事件幕開け

東京が強風に見舞われた週明け、俺は部屋で包帯を外して塗り薬を塗ってから手の状態を確かめた。

まだ、無茶はできないが握力は銃を撃つ分には問題ない。

デザートイーグルとガバメントの弾を確認して予備のマガジンをカバンに放り込んでから最後にナイフを確認してワイヤーを腕につける。

防弾制服に手を通しながら部屋を出るとキンジも個室からでてくる所だった。

 

「よう! 俺今日サボるな」

 

「え?」

 

突拍子もないことを言った俺にキンジが首をかしげている。

 

「ああ、クエストか?」

 

「まあ、そんなとこだな」

 

そう、これはクエストだ。

あの電話の相手がくれたチケットを手に寮を出る。

キンジに言うか迷ったがあいつの分のチケットは貰ってない。

強引に乗ることはまあ、できるといえばできるが緊急事態でもないのだから何も起こらなければ問題になる。

アリアがイギリスに帰ることはあのかなえさんの件の後、電話で知らされた。

何者か知らんが随分、迅速な情報だ。

アリアが帰る件を言うか迷ったがキンジにはそれも黙っておいた。

 

 

 

 

 

 

羽田の第2ターミナルで手続きを終えて飛行機に乗り込む。

武偵であれば帯銃で乗ることも可能なのだ。

 

「おお、すげえすげえ」

 

通された場所はホテルみたいな部屋だった。

確か空飛ぶリゾートとかいう超豪華旅客機だ。

こんな機会じゃなきゃ一生のらないだろうな。

だが、その一生に一回かもしれない機会に用はない。

部屋を後にして機内を回る。

特に不審な点はないようだがすみずみまで調べるのも難しい。

アリアの個室をフライトアテンダントに聞いてから部屋に戻る途中離陸準備のアナウンスが聞こえてくる。

1度戻るかと俺の個室に向かう途中

 

「―武偵だ! 離陸を中止しろ!」

 

「お、お客様失礼ですがどういう・・・」

 

聞き覚えがあったので行ってみるとフライトアテンダントに怒鳴りつけてるのは・・・

 

「説明している暇はない! 今すぐこの飛行機を止めるんだ!」

 

フライトアテンダントが走っていき両膝をついたキンジに声をかける。

 

「ようキンジ」

 

「ゆ、優か!? なんでいるんだよ!」

 

目を丸くして驚くキンジ

 

「お前こそ・・・」

 

機体が揺れた。

離陸準備に入ったのだ。

さっきのフライトアテンダントが膝を揺らしながら

 

「あ、あの・・・駄目でしたぁ。 き、規則でこのフェーズは管制官からの命令でしか止めることはできないって・・・」

 

「ば、馬鹿野郎!」

 

「おい!キンジ! 何があったんだ! 説明しろ!」

 

なんとなくわかるけどなアリア関連で何かが起こったのだ。

 

「優、アリアの部屋は分かるか?」

 

「ああ、説明しろよ」

 

歩きながら俺はキンジに簡単に説明を受けた。

武偵殺しがアリアを狙っている。

それは知ってる。

だから、俺はここに乗り込んでるんだ。

 

「優はなんでここにいるんだ?」

 

「ああそれは・・・」

 

まいったなどう、キンジに説明しよう。

アリア護衛の話は本人以外にも話さないように言われてるからな。

 

「悪いけど言えないんだ。 クエスト関連だと思ってくれたらいい」

 

「分かった」

 

時間がないらしくアリアの個室の前に来るとノックもしないでキンジはいきなり扉を開いた。

 

「な、何!? キンジ!? 優まで!」

 

アリアは驚いたらしく紅い目をまん丸に見開いた。

そりゃ、地上にいるはずの俺達がいたら当然の反応だな。

 

「さすがリアル貴族様だなこれ片道20万するんだろ?」

 

「断りもなく部屋に押し掛けてくるなんて失礼よ」

 

「いや、アリアそれ言う資格ないだろ」

 

と俺が言うと怒りながらもアリアは黙った。

 

「武偵憲章第2条 依頼人との約束は絶対に守れ」

 

「・・・?」

 

「俺はこう約束した。 アサルトに戻って1件目の事件をお前と一緒に解決してやる。 武偵殺しの1件はまだ解決してないだろ?」

 

「何よ! 何もできない役立たずのくせに」

 

がぅと!小さいライオンが吠えるようにアリアは犬歯を向く。

 

「帰りなさい! あんたたちのおかげでよくわかったのあたしはやっぱり独奏曲(アリア)あたしのパートナーになれるやつなんか世界のどこにもいないんだわ!だからもう武偵殺しだろうがなんだろうがこれからずっと一人で戦うって決めたのよ」

 

「ならもっと早く言えばよかったろ?」

 

俺はそういうとソファーに腰を下ろした。

キンジもアリアの向かいの椅子に座る。

 

「ロンドンに着いたらすぐ帰りなさい! エコノミーのチケットぐらいは手切れ金代わりに買ってあげるから! あんた達はもう他人 あたしに話しかけないこと」

 

「元から他人だろ?」

 

「うるさい! しゃべるの禁止!」

 

飛行機は東京湾を出る。

俺はふくれっつらで窓の外を見るアリアに苦笑しながら装備を確認していた。

飛行機の中だからな。

こいつは使いたくないな。

破壊力だけなら絶大な大口径のデザートイーグルは今回は出番は少ないかもしれない。

そうなるとガバメントを始めとした・・・

 

「―お客様にお詫び申し上げます。 当機は台風による乱気流を迂回するため到着が30分遅れることが予想されます」

 

機内放送か・・・

 

ガガ―ンガガガ―ン

うわ!雷か?

この機の操縦下手だな。

あるいは、運が悪いのか雷雲の近く飛んでやがる。

 

「怖いのか?」

 

俺がキンジの声に振り向くと

 

「こ、怖いわけない。 バッカみたい。 ていうか話しかけないで」

 

ガガ―ン

お、また近い

 

「きゃ!」

 

ほほう、アリアの苦手なもの発見だ。

雷が苦手なんだな。

キンジも苦笑いしてるし

 

「雷が苦手ならベッドにもぐって震えてろよ」

 

「う、うるさい」

 

「ちびったりしたら一大事だぞ」

 

「バ、ババ馬鹿!」

 

ガガ―ン

 

「うあ!」

 

アリアは飛び上がってベッドに飛びこんで布団をかぶってしまう。

 

「ハハハハハ!」

 

「ば、馬鹿優!笑ったわね! 風穴地獄に・・・」

 

ガガ―ン

 

「~き、キンジぃ」

 

ついにアリアは毛布から助けを求めるように手を伸ばしたので俺は苦笑しながらその手を握ってやった。

アリアはそれでも怖いのかキンジの袖を掴む。

キンジが気をまぎわらすようにテレビをつけるとそこに映ったのは有名な時代劇だった。

 

「この桜吹雪見覚えねえとは言わせねえぜ」

 

遠山の金さんだな。

なんでもキンジの先祖らしい。

この人もヒステリアモードが使えたんだからさぞ暴れたんだろうな。

 

「ほら、これでも見て気を紛らわせろよ」

 

「う、うん」

 

話しかけるなというアリアルールは消えたらしい。

ぶるぶる震えながらぎゅっと俺とキンジの手と袖を握る姿はかよわい女の子そのものだった。

守ってあげたい。

そう、思える。

 

 

 

パン パァン

 

銃声!

俺は立ち上がる。

 

「アリア! キンジ先に行くぞ!」

 

返事も待たずに廊下を飛び出すと大混乱になっていた。

無理もない。

1日に必ず聞く音として認識している俺達とは違うんだからな

銃声のした機体前方を見るとコクピットの扉があけ放たれている。

そこにいたのは・・・

さっき、キンジと話してたアテンダントか

 

「おいお前!何してる!」

 

俺は両手のガバメントを抜くとアテンダントに向けた。

なぜならその手には機長と副操縦士が引きずられていたからだ。

 

「―動くな!」

 

キンジも拳銃を向ける

 

「お気をつけくださいでやがります」

 

というと何かを投げる。

やばい!

 

「みんな部屋に戻ってドアしめろ!」

 

缶からガスが出るのを見て俺は怒鳴り雷の恐怖を押し殺してでてきたアリアをキンジと押し戻すとドアを閉めた。

ばちんと機内の照明が落ちて紅い非常灯が照らす。

 

「キンジ! 優大丈夫?」

 

大丈夫みたいだな。

手にしびれはあるがこいつは毒とは関係なさそうだ。

息もできるし意識もはっきりしてる。

 

「アリア、あのふざけたしゃべり方、やっぱり武偵殺しだ。 やっぱり出やがった」

 

「待て! キンジもあいつがここに出てくることを知ってたのか?」

 

「も? ってことは優も知ってたのか?」

 

「俺の場合は手助けもあったからなんだがな」

 

「武偵殺しはバイクジャック、カージャックで事件を初めて、さっきわかったんだがシージャックである武偵をしとめた。 そして、それはたぶん直接対決だった」

 

つまり、キンジの説明はアリアが電波を傍受しなかった理由は武偵殺しが直接船に乗り込んでいたということになる。

まあ、いきなりチャリジャックって小さくなってるがこれはアリアに対する宣戦布告と言うわけだ。

かなえさんに罪を着せて・・・

 

「・・・今お前と直接対決しようとしてる。 このハイジャックでな」

 

悔しそうに歯を食いしばるアリア

そこにベルト着用サインが点滅を始める。

和文モールスだなこれは

訳すと

 

おいでおいで イウ―はてんごくだよ おいでおいでわたしはいっかいのばーにいるよ

 

「誘ってやがる」

 

「みたいだな」

 

「上等よ風穴あけてやるわ」

 

アリアは眉をつりあげてガバメントを2丁スカートから取り出す。

 

「俺たちも一緒に行ってやるよ。 役にたつかどうかは分からないけどな」

 

「こなくていい!」

 

ガガ―ン

 

雷鳴が鳴り響く。

 

「く、くれば?」

 

不謹慎だがなんというか可愛いなお前・・・

さて、これで片だ。

武偵殺しを捕まえてな

 


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