緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第181弾ー8月30日の悪夢

世の中には理不尽な力というものがある。

それは、戦争で軍隊に蹂躙される民間人や民兵なんかがその気持ちを理解できるだろう。

すなわち、勝てっこない。

逆らうだけ、無駄だなのだ。

ドオオオンと大砲のような音がし、その理不尽な力が相手のゴールに突き刺さる。

電光掲示板を半笑いで見ると

港南高校5−東京武偵高98

5対98というサッカーでは絶対にありえない数字がそこにはあった。

野球だってこんな馬鹿げた数字は存在しないだろう。

「もうやめて!港南高のライフはとっく0よ!」

観客の女性が泣きながら悲鳴を上げる。

その通りに、すでに港南高校の面子は前半の威勢はどこにやら・・・

完全に戦意を喪失していた。

だが、試合放棄だけはしないという最後のプライドだけは残っているらしい。

そのプライドこそがこの悪夢を長引かせていると知りながら・・・

ピー

港南高校のキックで試合が再開された。

のろのろと味方にパスしようとしたのを不知火に簡単に奪われ

「山洞さん!」

蹴り上げた先にいたのは秋葉だ。

「タイ○ーシュート」

原作とはまったく違うのにその名前を言いながら5メートルほど飛び上がった秋葉は空中から右足を軽くボールに当て

ると次の瞬間、風がボールを包み込み、光を暴風で屈折させたのか光を放ちながら弾丸のように数十メートル離れた港南高校のゴールに突き刺さった。

ゴールキーパーはいない。

秋葉のシュートの直撃を受けて何人か交代したがすべてが倒されてしまっていた。

まあ、音速を超えたシュートの直撃を受けたらまず、無事ではいられまい。

秋葉は風のステルスでただ、シュートしただけという演出をしているので反則もとられないしな・・・

港南高校5−東京武偵高99

「ちょっとやりすぎたかな・・・」

ここまで来ると相手がかわいそうで仕方ない。

ちなみに、ステルスを使うこと自体は違反ではない。

ステルスがあまり、認知されていないこともあり、ステルスを試合で使用してはならないなんてルールは

存在しないのだ。

「あの子一人で勝っちゃいそうね優」

やることがあまりないのでアリアが寄ってきたが俺はその虐殺の光景を見ながら

「人間が蟻を踏み潰す時ってこんな気分だよな・・・」

「クフフ、理子に感謝しないと駄目だよユーユーこんな楽なクエスト持ってきたんだから」

勝てば1.7単位もらえるこのクエストは理子が紹介してくれたものだ。

ダムダム弾を密造していた東京武偵高のサッカー部が停学になったので変わりに11人集めて試合に勝てという

内容で負けても0.6単位入るというおいしい仕事だったのだが前半は俺、理子、アリア、秋葉、キンジ、武藤、不知火

、ジャンヌ、マリ、レキ、白雪という不知火以外素人集団のため5点とられ相手は楽勝だと笑っていたのだが

切れた俺が秋葉にステルスを使えといった後半がこんな結果になったのだ。

防御も完璧で風のガードがゴールを守っているため、相手はもう、点を入れることはない。

「もう、いいんじゃないのか?」

99点とれば十分だろう。

試合時間は残り30秒、この点差からロスタイムはありえない。

「3桁で敗北なんて冗談じゃねえ!みんなこの1点だけは決めさせんな!」

100対5なんてなれば、確かに歴史に残る大敗北で未来永劫語り継がれるだろうな伝説の試合として・・・

99でも同じだと思うが・・・

「優君?」

どうしますかと俺の方に風で声を飛ばして聞いてくる。

もちろん俺は親指を立てて首を切るしぐさをした。

止めをさせと

秋葉は頷くと相手からボールを奪い取った。

これもまた、風でボールを弾き飛ばして

「あ、あのごりら女にボールがわたったぞ!」

悲鳴が港南高校に響く

「誰がゴリラなんですか?」

秋葉が飛び上がる。

「死守しろ!なんとしても!」

射線上に港南高の連中が飛び込んでくる。

「なるほど、ボールは友達怖くないですね」

と、秋葉行ったがそれ違うから!

ドオオンと大砲のようなシュートが暴風を纏い放たれる

「ぐああ!」

まず、1人のがゴミのように弾き飛ばされ

「あべし」

2人目が回転しながら吹っ飛ばされる

「ちくしょおおお!」

無謀にもヘディングで止めようとした奴は縦にくるくると回転して地面に突き刺さった。

そして、最後には

「ボールトモダチ!コワクナーイ!」

ロドリゴとかいうブラジル人が立ちはだかり、腹にまともにボールを受けた

「うごはああ!」

ロドリゴ君は吐血しながらボールごとゴールのずたずたになったネットにボールごとシュートされてしまう。

てんてんとボールが転がりながらロドリゴ君はぴくぴくと痙攣しながら

「ぼ、ボール怖い」

と気絶してしまう。

それと同時に試合終了のホイッスルが鳴り響いた

この試合を見ていた人はいう。

「あれはもう、サッカーじゃない。虐殺だ」

まあ、こうして俺達の単位は補填されたんだが・・・

事態はそう甘くなかった。

『椎名 優希 ステルス乱用の首謀者のため、単位半減0・3進呈、残り、0.4不足、遠山キンジ単位補填完了』

そう、8月30日の時点で0.4の単位足りないという恐ろしい事態が俺を襲う。

これは・・・もう駄目だ・・・

1日0.4は不可能だ。

そう思って最後の希望を求めてマスターズに足を運んだのだが担任の高天原先生には

「1日で0.4はちょっと無理ね」

といわれてしまった。

それは留年確定といわれた瞬間だった高天原先生はあ、そういえばと書類を見てから

「椎名君剣使えたわよね?」

「はい? 使えますけど?」

「今年は始業式の水投げ前のセレモニーとして試合をすることになってて、今年は中国の留学生

が出場することになってるの。椎名君その相手にならない? 勝ちか引き分けで0.4単位特別に進呈できるけど?」

うーん、あんまりみんなの前で刀握りたくないが背に腹は変えられないか・・・

「ちなみに負けるとどうなるんですか?」

と、念のため聞いてみると

「留年確定ね」

と先生は苦笑して言った。

冗談じゃねえぞ。

絶対勝たなきゃなんねえ

こうして、夏休み最後の日8月31日が始まった。

 

 


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