緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第179弾粉雪パニックー弟と妹

「ただいまぁ」

鏡夜と別れて1時間たっぷりと時間を置いて、部屋に戻る。

念のため、キンジに連絡を取るとすでに帰っているらしく早く帰ってこいと急かされたので家に入ると

ギンと俺と目が合った瞬間にらみつけてきた

「へへヘ」

と俺は右手を頭の後ろにおいて苦笑する

「お姉さまの指示ですからやむ終えなくお入れするだけです。この色魔」

「ごめんなさい」

心に改心の一撃を浴びながら俺は素直に謝った。

どう言い訳しようがあれは俺が悪い。

「許しません」

ぴしゃりと言い放ち、粉雪ちゃんはつーんとそっぽを向いてしまった。

どうやらキンジも似たような感じだったらしい。

まあ、俺みたいなことはしてないみたいだから俺以下のツンツンぶりなんだろうが・・・

白雪も困ったように俺と粉雪を見比べてごめんねと手を合わせてきた。

まあ、年下なんだから多少の無礼は許せるさ、まあ俺が悪いんだが・・・

そういや、星伽神社に姉さんと少しだけ行った事がある。

俺は中に入れなかったが星伽神社が男子禁制なんだそうだ。

一応、椎名と星伽は険悪なわけではないから入ろうと思えば入れたんだろうが・・・

粉雪の男嫌いというかあのツンツンぶりはそこからきてんのかもな・・・

キンジに対する態度を思い出しながら俺はため息をついた。

「キンちゃん、優君おせんべいがあるよ。粉雪がお土産に持ってきてくれたの」

と、テーブルにせんべいを出してみらったので粉雪ちゃんを見て

「食べていい?」

と許可を取ってみると

「好きにしたらいいじゃないですか」

と嫌そうにというか話しかけるなオーラー全開で言われたのでおせんべいをぼりぼりかじる

うまいんだけどこの塩味は涙の味か?

「あのね、キンちゃん。半日で0.3単位もらえる仕事見つかったよ」

と白雪がとんでもないことを言ってきた

「「本当か!」」

俺とキンジの声がはもると「その反応優お前・・・」

「キンジもか・・・」

互いに単位が足りていないらしい

「それでね。マスターズに確認したら各教科共通の単位として認められるんだって」

「そ、それで内容は何なんだ?」

0.3とはおいしい仕事だ

「入学希望者の依頼を受けた形にして粉雪に学園案内するの」

「俺も案内していい!」

助け舟とばかりに俺は白雪に言ってみたが

「ごめんね優君。これ、1人につき1人が案内する決まりらしいの」

といいにくそうに言ってきた。

あ、ハハハ、もう本当に駄目かも・・・

「粉雪、お前、武偵高に入学するのか?」

「違います! 武偵高なんて大嫌いです!ここはお姉さまが星伽を出る原因になった場所ですから」

キンジの言葉に粉雪は振り返らずドラマの買い物シーンをじーと見なが言った。

うーむ、入学案内入学案内・・・誰かいないか?

奏ちゃんは中学2年だし、千夏ちゃんは小学生・・・咲夜は論外だし・・・あああ!

「粉雪はね星伽の伝言を届けにきてねできそうなら私を武偵高から連れ帰ろうとしてるみたいなの・・・」

キンジと白雪が話しているが俺は携帯を取り出す

「悪い」

と番号を呼び出す

「なんだ兄貴?」

しばらくして、鏡夜が電話に出る。

こいつ、中学3年だからな年齢的には

「鏡夜。明日、午前中東京にいるか?」

「いるにはいるが・・・」

「なら、午前中付き合ってくれないか?」

「別にかまわないが・・・」

「よし、明日朝10時に武偵高正門前に来てくれ」

「待て! 何がどうい・・・」

電源ボタンを押して無理やり携帯を切る。

あいつはこうしておけば多分くるだろう。

正面から頼んでも聞いてくれない可能性があるからな

さらに携帯でマスターズに学園案内の申請をしておいた。

そこまで終わったとき

「きき、キき・・・」

ん?

粉雪ちゃんの方を見ると顔を真っ赤にした彼女が見ていたのは女優とキスするシーンだ。

「キー!」

いでえ!

いきなりテレビを消したリモコンを投げつけてきたので完全に油断した俺の頭に命中した。

「ふ、不衛生です!不衛生です! 汚物は消去です!」

とげしげしと床に倒れた俺の顔面を踏んでくる。

いたたた! 人によってはごほうびなんだろうが俺にそんな趣味はねえ!

と手でガードしながら怒るにおこれず粉雪ちゃんからの攻撃を耐えるのだった。

次の日、不機嫌な鏡夜に学園案内の話をした瞬間

「帰る」

「ま、待て!」

がしりと弟の右手を掴むと不機嫌そうというか不機嫌そのもので俺をにらんでくる。

「留年しそうなんだよ!助けてくれ!」

「知るか! 学業をおろそかにした兄貴が悪いんだろうが!」

「いや、書類の不備で一応単位分はやってたんだけどな・・・」

それについてはうそ偽りない。

解決した事件を考えればおつりがでるぐらいなのだ。

鏡夜もイ・ウーの事件がなかったことにされたことを悟ったらしく舌打ちした。「仕方ない。 行ってやる。案内しろ」

「助かる!弟!」

お前いいやつだな!

つい1ヶ月前には殺し合いをしたばかりなのにな

「勘違いするな。俺はお前を助けるわけじゃない。 うっとおしから早く終わらせろ」

「はいよ」

と、校舎に入った瞬間

「「あ!」」

粉雪ちゃんを案内しているキンジとばったりと出会った。

「よう、キンジ」

「おう、優もか? あれ?お前は?」

と、鏡夜を見る。

一応は面識はある2人だが

「遠山キンジ」

「年上を呼び捨てにするな」

とキンジが切れ気味に言った。

まずいな・・・鏡夜は俺の家での行動から仲間に激しく嫌われてるんだよ。

ここは俺が間に入ろう

「せめて、遠山先輩ぐらいつけろ鏡夜! 年功序列は学生の間は大切だ」

鏡夜は嫌そうな顔をしたが

「遠山先輩」

それでいいんだ。

次に鏡夜と粉雪の目が合った。

あ、あれそういえばこいつら昨日・・・

「またあなたですか? のぞき魔」

軽蔑しきった声、まあ、鏡夜も覗いたもんな・・・粉雪ちゃんの胸

「ふん、覗き魔だと? 見られるほどの大きさもなかったが?」

おいいいい!

「なっ!」

粉雪ちゃんは胸を隠すように涙目になって鏡夜を激怒して睨み付けている。

「図星を指されてだんまりか? まあ、胸のない女はおとな・・・」

ごんと俺は鏡夜の頭を殴った。

もう、因縁とか知ったことじゃない。

これは無礼にもほどがあると俺でも分かるよ

「っ!何する兄貴!」

「馬鹿か! 昨日のは完全にお前が悪いだろ!素直に謝っとけ」

「断る! 俺が入ったら兄貴がそいつを抑えていただけだ! 俺に落ち度はない!」

それはそうなんだが・・・

やっぱり男なんてろくな・・・と粉雪ちゃんが怒りで震えているのをまずいなと思いながら

「と、とにかくだ!学園案内しようぜ! じゃなキンジ!」

と鏡夜を無理やり連れて案内に戻った。

にしても、鏡夜・・・お前、正しいと思ったことは何でも口に出していいわけじゃないんだぞ・・・

そこが、あまり家から出たことがない世間知らずの弊害といえる・・・

俺も姉さんと旅するまではそれはひどいもので今、思い出したら顔から火が出そうな恥ずかしさだ。

まあ、俺の場合鏡夜ほどひどくはなかったんだけどな・・・

その後、俺は運がないのかはたまた、鏡夜と粉雪ちゃんの遭遇率が高いのかことあるごとにキンジ達と

出会うのだ。

そのたびに粉雪が怒り、鏡夜が馬鹿にしたようにいなすの繰り返しでフォローしている俺達はへとへとになっていった。

土方さん・・・今ならあなたの気持ち分かります・・・

なんだかんだで、鏡夜も武偵高には興味を持っていたらしい、粉雪ちゃんと遭遇しない間は

それなりに、学園の設備を見回したりしていたからだ。

「ここが、最後の学科だ」

と、アサルトの訓練場の前まで来て言うと鏡夜はそれを見上げながら

「兄貴が所属している学科か?」

「まあな、一応戦闘訓練とかあるし、銃が剣とかの戦闘訓練もできるから結構学ぶことも多いぜ」

「・・・」

椎名の家でも無論、対銃の戦闘訓練は行われる。

上級者になれば、銃弾切りも当たり前に教えている辺り、一般人から見ればうちも怪物の集まりなんだよな・・・

姉さんクラスはさすがにいないが・・・

2人で体育館を入ると、目の前にもう、見慣れた2人の背中が見えた。

「おお・・・」

「またか」

鏡夜が舌打ちする。

どうやら、こいつ何かとつっっかって来る粉雪ちゃんが苦手らしかった。

椎名の家では咲夜や母さん達を除けば女はみんな部下で、反抗してくる奴は皆無だったから

新鮮な反応なのかもしれないな・・・

キンジと粉雪ちゃんの先ではA装備で殴り合っている1年の姿が見えた。

ただの喧嘩っぽいが粉雪ちゃんめちゃくちゃ嫌そうな顔してるぞ・・・

キンジたちが動き出したので、俺達も後に続いてアサルトの中を見せていく。

射撃訓練場なんかでは鏡夜もやはり、男なので銃に興味を持っていた。

試し撃ちもしてみたがやはり、刀がいいと結論づけた。

いろいろな武器持ってると便利なんだけどな・・・

「以上で学園見学は終了だ。 ほかに見たところはあるか?」

いつのまにやら、キンジと合流して回っていた最後の場所で、キンジが言う

「いいえ、もう十分です」

粉雪はふるふると首を横にふり、桜色の唇をへの字に曲げる。

鏡夜は何も言わずに粉雪を見ている。

「武偵高がいかに乱暴な場所かよく分かりましたから」

「ら、乱暴ってインケスタとかインフォルマはそこそこ平穏だったろ?」

「いいえ、彼らも同じ穴のむじなです。そもそも、金銭のために武力を用いる行為自体が卑しいですし。精錬たるお姉さま

がそのような場所にいるなんて私には耐え難いことです」

まあ、武偵ってのは外部からはそういうイメージい抱かれるんだよな・・・

少しフォローしとくか

「こなゆ・・・」

「ふん、女の考え方だな」

馬鹿にしたように鏡夜が言った。

ちょっ!おまえ!

「侮辱するつもりですか!」

粉雪がぎっと怒りのこもった目を鏡夜に向ける。

だが、鏡夜ははっと息を吐いてから「お前の言ってる事は武力すべてを否定する言い方だな。世の中の人間が金銭が絡まない状況で武力を用いたことがどれほどある?」

「それは・・・警察とか・・・」

「警官だって金をもらい、国から金を出してもらい武装してるんだ。金の絡まない武力などありえない」

「で、ですが星伽は・・・」

「同じだよ。俺のこの刀だって誰かが金と時間をかけて作ったものだ。お前の大好きなおねえちゃんのもってる

刀は1円もかからずにただで作ってもらえたのか?」

「・・・・っ!・・・!!!」

粉雪ちゃんは激怒しているが言い返す言葉が見つからないらしい

「ほら、言い返せないだろ?所詮女は女だな」

「鏡夜いいすぎだ!」

どうも、こいつは相手の意見が間違ってると自分の持論で相手を叩き潰さないと気がすまないらしいいわゆる

KY(空気よめない)というやつだ。

「ふん」

馬鹿にしたように目を閉じると鏡夜は壁に背をつける。

「こ、粉雪ちゃん?」

やばいぞとキンジと視線を合わせてからフォローしようとするが

粉雪ちゃんはなぜか俺をぎろりとにらんできた。

な、なんで?

「帰る前に伝えないといけないので伝えます! 昨日椎名様について托が降りました! 星伽の巫女の義務で嫌ですが

一昼夜のうちに伝えないといけないことになってますから少々唐突ですが今伝えます」

「托?」

ああ、予言かな?白雪にも似たようなこと言われてアリアにぶっさされたんだよな・・・

うう、星伽の予言ってあたるのか?

「2つあります。良いほうと悪いほうどちらから聞きますか?」

「良いほうから!」

迷わずに俺は言った。

最近、運がないことばかりだからな。

宝くじあたるとかかな?

「では、椎名様は求婚されます。今月中に」

「えええ!」

いや、信冬って婚約者がいる俺がいうことじゃないがちょっとびっくりだ。

あ、もしかして信冬との・・・んん?あいつとは、もう婚約者ってなってるのだからいまさら求婚ってのは

おかしいぞ?

違う奴ってことだよな?

誰だ?

「また、女がらみか」

鏡夜が言うのを聞きながら

「ま、まあそれは当たるかは分からんがもう一つの悪いほうは?」

粉雪は一瞬、言うか迷うような素振りをしてから

「愚者があなたを襲う」

「愚者?ってなんだ?」

「分かりません。これだけしか托には書かれていませんでした。ただ、これは凶兆、それに間違いありません」

愚者・・・愚者ねえ・・・

あ・・・

1つだけ、心当たりがある。

大アルカナ

姉さん達が昔、潰した最悪の組織のリーダーは愚者を名乗っていた。

まさかな・・・

愚者は姉さんが殺したと姉さん個人から聞いている。

跡形も残らず消滅させたらしい。

その現場にいなかったから分からないがおそらく姉さんが本気で激怒したのはあれが最後だと土方さんも言っていた、

だが、それじゃないとすれば愚者の意味はなんだ?

ま、深く考えないで

「愚者も求婚もありえないってことで」

「あ、ありえない? 私を馬鹿にするんですか?」

怒りを再発させて粉雪ちゃんが1歩踏み出した瞬間、薬きょうを足で踏んでバランスを崩した。

「あ!」

「危ねえ!」

俺とキンジが動くが1番近い場所にいたのは・・・

とんと鏡夜が粉雪ちゃんの肩を掴んで倒れるのを阻止する。

「・・・」

何かいいたそうだが、鏡夜は何も言わずに粉雪ちゃんの姿勢を正して手を離した。

「あ・・・」

大嫌いな相手なんだろうな鏡夜は粉雪ちゃにとっては・・・

だが、ありがとうという場面だということも分かってるんだろう。

無言で立ち尽くしていると

「ふん」

と鏡夜は息を吐いて出口に向かい歩いていった。

「鏡夜!」

「帰る!」

と、俺の言葉を返してからアサルトを出て行った。

残された俺達、キンジと顔を見合わせてから

「俺達も帰ろうか?」

と促してみたが粉雪ちゃんは言葉が見つからないのか鏡夜と同じようにふん、男なんてと

悪態をついている。

こりゃ駄目だ・・・

将来、鏡夜が椎名の家を継いだら星伽と戦争状態になるかもな・・・

はぁ・・・やれやれだ。

 


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